走行日: 2010年8月5日(木)
事前調査では走破できるかどうか判らなかった, 国道46号旧道・仙岩峠。国見温泉ゲートは無事に通過し, ヒヤ潟を越え, いよいよ秋田県へと入りました。崖崩れだの路盤崩落だのと, 普通なら不通になる(洒落かよ)こと請け合いの事態が起きていると何度も聞かされた区間です。こちらは自転車ですから多少の災害なら無理矢理突破できますが, もし完全に通れなくなっていたら? 引き返すしかないですよね……。
現状を確認しレポートする, それだけでも行く意味はあると自分に言い聞かせて, いざ秋田県。廃道33年の道の現実を, 今ここにお送りします。
写真 | コメント |
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(09:42) |
ヒヤ潟から秋田県側へ下り始めて, まだ200mくらいしか進んでいないんですが……既に岩手県側とは違うと自覚しました。岩手県側では実際に自動車3台に追い抜かれていることから判る通り, 一般車両通行止ではありますが車両の通行が全く無い訳ではなく, 車が通れるように最低限の整備がされていました(担当: 雫石町)。しかし秋田県側は, 皆無かどうかは判りませんが交通量が岩手県側より少ないのは明白です。植物の侵食による幅員減少が著しい…… もし秋田県側からも事業用車両が入るとしても, この先にあるであろう崩落地点を通り過ぎることはできない筈ですから, すると今居る区間, 峠と崩落地点の間は, 車両が来ることの無い区間と化している……? |
(09:43) |
「空中回廊」の一端である連続擁壁が見えて来ました。と同時に, 落石も見えて来ました……。だああ, 明らかにこれは自動車が通れる状態ではない……っ! |
(09:44) |
自動車が通れる状態では……それどころじゃねええええ。路面を埋め尽くす石, 石, 石! 明らかに最近の崩壊の痕跡です。7月29日のさきがけに, R46現道で土砂崩れがあったという記事があったから, その時の豪雨が原因の可能性は高いでしょうね。谷側に一筋だけ道ができているのは, 登山者や山菜採りの人がついでに旧国道を少し歩いてみた跡か, 若しくはオブローダーの人か。 |
(09:45) |
谷の対岸を走っている, 今居る道の続き。擁壁でガチガチに固められた山肌……が, 良く見ると『ほとんど垂直』ですよね。今日の道路工事では考えられない設計です。そしてもっと良く見ると, 道の山側だけでなく谷側も『ほとんど垂直』ですよね……。草木が茂っていて道の上からでは良く判らないだろうけど, 季節が違って植物が薄かったら, どんなに怖い道でしょう。……ま, まさか, 今居る場所も!? |
(09:46) |
「空中回廊」谷の最奥部, 地形図で標高808mとなっている地点です。奥の擁壁がまるで行き止まりのように見えてしまいますが, 実際には擁壁にぶつかったところで左へと折り返します。擁壁を無理矢理よじ登って140m上へ行けば, 藩政期の国見峠に達します。 ここが, 落石だけでなく洗い越しとなっていました。谷部ですから水が流れるのは当然なんですけど, 仮にも元一級国道……。多分, 1週間前の崩落で, 道路の下にあった暗渠が埋まってしまったとか, そんな感じなんでしょうね。 |
(09:47) |
で, 洗い越しに差し掛かった時, 流水ではなく落石と倒木(写真中央下)に足を取られ, 昨日の北上とは逆の右側へ転倒しました。転び方は北上の時より軽く済みましたけど, 何しろそこら中に石が転がっていますからね。変なぶつけ方とかしなかったのは幸いでした。濡れたのもこの暑さならすぐ乾くでしょうし(嬉しくない)。 |
(09:49) |
チェーンが外れたりすることもなく, 本当に被害は軽微でした。ほとんど唯一の被害は, ハンドルが回転したこと。ここだけは北上よりも激しく, 45度近くずれました。修正修正っと。 |
(09:52) |
あうあうあー, 夏でも見れたよノーガード路肩。空も飛べそうな堀木沢の谷を眼前に控え, ガードレールもガードロープも駒止めも何も無い路肩が僕達を迎えてくれます(誘いに乗ったら死にます)。 |
(09:52) |
路外の景色は良いけれど, 路上の景色はこんな感じ。本来は2車線道の筈ですが, 現在の実質は1車線未満ですね。それも数mずつ落石で歪められた, 徒歩道。自転車乗って進むのが大変です。踏むと洒落で済まないような石がゴロゴロしているから足元に注意しないといけないし, かと言って手前ばかり気にしていると, 奥の大崩落を見落とす危険性があるし。 |
(09:55) |
……来たよ, 谷側大崩落。ここが国道46号仙岩峠線を実質的な廃道と為さしめた, 路盤喪失地点です。2車線で少なくとも4.5mはあったであろう幅員が, ここだけ0.5mすら残っていません。ヨッキれんさんのレポートで数年毎の比較がされていまして, 崩落が進行していく様子が生々しく描かれていましたけど, もう既に単車ですら通れないでしょうね……。 |
(09:56) | |
(09:56) |
ここ数年の報告が無かったのはこの地点も同じでして, それ故に「物理的に通れなくなってしまっていないか」は初日出発前から危惧していました。最悪, 崩落の様子を確認して, また峠まで戻り国見温泉ゲートまで戻り国見温泉入口まで戻り, 仙岩トンネル経由で秋田県へ入り直す覚悟も決めていました。が……通れる! ギリギリですが自転車でも通れる! 道は僅かながら命を保っていました! 山側に這っているパイプは, さっきまで路盤下に埋められていた通信ケーブルだと思います。流石にこの崩落箇所は, 違う方法で線を保護するしか無かったんでしょう。が, これのせいで道が余計に狭くなってしまっているのも事実です。これが無ければ, 単車でもどうにか通れたかもしれません。 |
(09:57) |
配管によって更に狭まり, 10cmを切っている幅員を, どうにかこうにか通っているの図。この写真を撮影している最中, 私の左足はマジで半分アスファルトの外に出ています!? |
(09:58) |
足元だけでなく, 足の行き着く先を(行き着いちゃいけません!)。ええ, 踏み外したらここを真っ逆様, 堀木沢の底まで150mくらいゴロゴロですよ。 |
(09:59) |
距離としてはほんの数mなんですけど, あまりにも濃過ぎる区間を通り抜けました。そしたら路上が綺麗に掃除されてる(^^;;; いや, 人為的な掃除かどうかはともかく, ここから先は秋田県側からの整備が可能な区間である事を想像させてくれます。多少ではあれ整備が行われている, だから状態があまり酷いことにはならない, ということで。行き届いているかどうかは別にして, 『整備が可能』という点は大きいと思うんですよ。 |
(10:02) |
よく見りゃ描かれている中央線。つまり, 右側車線がまるまる土砂の下で, しかもその状態で固定化されているという……。一般車両は通れないんだし, 大崩落がある以上『向こうから来る車』も存在しない訳で, 1車線あれば充分って事なんでしょうね。必要以上の整備しなくても問題は無いと。自転車としては, 通れれば良いです。 |
(10:04) |
また小さな谷を回り込んでいる最中です(現在なら橋を架けるところでしょう)。対岸の擁壁, かなりグズグズになってますね。さて, 谷側大崩落を越えた先には, 山側大崩落もある筈なのですが(その後にもう1つ, 逆の谷側大崩落), そろそろかな。 |
(10:09) |
さっき見えたところではなく, ここですね, 山側大崩落。この写真はまだ始まったばかりですが, 道幅が確実に1車線をも割り込んでいます。軽自動車くらいならまだ何とか通れるかも? |
(10:09) |
これはもう, 軽自動車でも駄目でしょう。少なくとも瓦礫に片輪を乗り上げなければいけません。ということで四輪で生保内側から進入したとしたら, あの谷側大崩落にすら辿り着けないということになります。何らかの作業で本格的に車を入れる必要がある時だけ整備レベルを上げるのか, それとも単車で済ませているのか。取り敢えず単車が通れるくらいの道幅は今も確保されています……。 |
(10:10) |
これが「山側大崩落」の真髄。ヨッキれんさんのレポートによると, 7年前の時点では存在していた落石防止柵が5年前には粉砕されてしまっていたそうですが, それは5年経った今も修復されないままのようです。朽ちた柱が残っているものの, 肝腎の柵は無いも同然。安定したところでは既に植物が繁茂していますけど, 崩壊面もまだまだ現在進行形です。 |
(10:11) |
現役当時『瞰湖台』あるいは『湖山望』と呼ばれた場所にやって来ました。ここは名前の通り, 湖を俯瞰できるところです。ここから見える湖とは……そう, 田沢湖! 三湖伝説の第3にして日本最深の423.4mという深さを誇る湖です。辰子姫(と現代では八郎太郎)の住む湖, そしてネイガー・マイの力の源(^^;;; 仙岩道路は生保内川の谷の中を通るため, 田沢湖はまったく見えません。旧国道だからこそこうやって見ることができるのです。ちなみに明治新道は堀木沢側を通るので無理, 江戸道は稜線上を通るので多分可能。 |
(10:12) |
少し角度を変えてみると, 仙北市の中心市街地の一つにして旧田沢湖町の中心市街地である田沢湖生保内(たざわこおぼない)の一角が見えます。中央を走って左へ曲がって行く道が国道46号生保内バイパス, そこへ更に右から斜めに突き刺さっているのが旧国道。私, これから, あそこへ行くんだ……。なお, 写真の右側には田沢湖駅も見えています。 |
(10:13) |
もう少し先へ進んだところから, もう一度田沢湖を。ほんの300mくらいの距離なんですけど, 道の正面に田沢湖を見据えながら下って行く感じなんです。 |
(10:14) |
そしてここには, ヒヤ潟脇にあった監視小屋(?)以来久々となる建物……廃屋があります。かつてここに『峠の茶屋』があったのです。場所が瞰湖台であるだけに観光名所として賑わったことでしょう(駐車場があったかどうかは知らない)。 |
(10:22) |
瞰湖台で尾根を回り込み, 堀木沢の谷から六枚沢の谷へと移動します。そして秋田県側旧国道名物(?)・7連続ヘアピンカーブエリアへとやって参りました。ここは下から数えて第4ヘアピンの直前で(目の前の左カーブが正にそれ), 前述しました『第2の谷側大崩落』の舞台でもあります。転落防止用のガードレールが倒れて潰れてしまっているのが, 目印というか何と言うか。車の皆さん, 明らかにガードレールを踏みつけて通行してますよね! |
(10:23) |
崩落面はコンクリートで保護されており, 堀木沢谷側大崩落のようにますます崩落が進むことは無いでしょう……当面は。なお, ここから六枚沢の谷底までは, 160mほどあります。 |
(10:29) |
下り急勾配ですが, 路肩の植物が濃く視界が良くないこと(向こうから車が来る可能性が無い訳じゃない), カーブは即ちヘアピンなので曲がり損ねると一発で死ねること, などからそうそうスピードを出す訳にもいきません。ブレーキをガンガンに効かせながら降りて行きます。そして……辿り着きました, 生保内ゲート。国道46号旧道, 走破です! |
(10:30) |
崖下, と言う程では既に無くなっていますが, 路肩の下を現道の仙岩道路が走っています。久々の一般車両! 道路の対岸には, 瞰湖台にあった『峠の茶屋』の現在の姿が望めます。ここ, 田沢湖は見えないけど, 仙岩トンネル群を控えた休憩所にして生保内川の谷が望め, そして谷底に田沢湖線が見える場所として, やはり観光名所なのです。 |
(10:30) |
さて, 走破したと喜んでいる場合ではありませんよ。ここはまだゲートの内側, ゲートを越えない限り完全な終わりにはならないのです。崩落で先へ進めないのなら, 岩手県側まで戻る覚悟はあったけど, ゲートまで来ておいて戻るのは嫌だなあ。このバイクも, 雫石側から来てゲートを突破できずに乗り捨てたんだったりして(バイクなら戻るの楽でしょうに)。 |
(10:31) |
ゲートの左側はガードレールと接触しているのですり抜け不能。では右側は? ……コンクリートブロックで塞がれています。国見温泉ゲートも本来はこんな形だったんでしょうね。さてさて…… |
(10:31) |
ゲートの錠はしっかり下ろされています。破壊するつもりは毛頭ありませんよ。そもそもそんな事ができる道具はありません。実は鍵が掛かっていないっていうオチはないかなーと思って見ただけです。去年の及位隧道旧道ゲートは(ほにゃらら)だったので簡単に通り抜けられましたけど, ここはそんな安直な手法は許してくれそうに無いですね…… |
(10:34) |
(1)リアキャリアからリュックサック・サイドバッグを全部外す。 |
(10:35) |
(2)自転車を担いでコンクリートブロックの上を通り抜ける。ゲートの上を通すことも考えましたけど, ミスったらクランクをゲートにぶつけてしまって危険なのでやめました。 |
(10:43) |
(3)荷物を積み直す。ゲート突破終わり。いや, 言葉ほど簡単ではないんですよ。リュックサックの縛り直しは凄く大変なんです。8分かかっているほとんどがリュックサックとの格闘時間です。 ここまでの走行記録……走行時間2.40.34, 走行距離33.87km, 平均速度12.6km/h, 最高速度38.2km/h(変わらず), 総走行距離9,338.3km。 |
(10:48) |
お昼にするには微妙に早い時間なので, 峠の茶屋脇の自販機で「糖分が多そうな」ジュースを飲むだけに留めておきます。脇の駐車場で線路を眺めていた子供が, こまち来たってはしゃいでました。 |
(10:49) |
峠の茶屋の先には, 仙岩トンネル群のうち最も手前にある湖山トンネルが口を開いています(ちなみに最後の仙岩トンネルの途中で県境を越え, 以降の岩手県側にトンネルは無い)。左端に旧国道の第1ヘアピンも見えていますね。さて, このトンネル群を自転車で通る日もいつか来るのでしょうか? 自販機で水も1本買い込み, 11:00, 出発。 |