6日目その2 [岩手県道266号国見温泉線]

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走行日: 2010年8月5日(木)

[地図: 橋場〜国見温泉ゲート]

江戸時代から現代までに4代の道が通された山, 仙岩峠。現在一般に有効とされる道は, その中でも最も新しい1977年(昭和52年)開通の『仙岩道路』で, 最奥部は仙岩トンネル(全長2,544m, 標高570m)です。しかし国道の県境長大トンネルの例に違わず, 自転車での通行は難しいと聞きます。1981年開通の雄勝トンネルは比較的マシだったから(参照 → 羽州街道を逝く - 4日目その8 [雄勝峠〜横堀]), こちらも実際に走ってみれば聞くほどでは無い可能性もありますが……どうなんだろ。

雄勝峠と仙岩峠では, 一つ大きな違いがあります。それは, 雄勝峠の旧道は通行が事実上不可能(旧道雄勝隧道は民間転用され私有地, 旧々道は旧道工事で一部破壊され進入困難)であるのに対し, 仙岩峠旧道は閉鎖されただけだということです。実際, ヨッキれんさんを始め, 自転車で通った報告も多数あります。であれば, 旧道の峠道を通りたいって言うのが, 乙女心じゃないですか(松居直美風 ← 本人だって絶対憶えてないよこんなネタ!)。

ただ懸念は, Web上で探した限り, 2006年頃を最後に自転車での走破報告が見当たらなくなっている事です。『行ったけど通れなかった』という報告も無いので, 可とも不可とも言えません。ただ伝え聞くのは, 2006年頃に岩手県側のゲートが『秋田県側以上に鉄壁の守りになった』ということと, もっと前から秋田県側で路盤崩落が起こっているということ。どちらであっても自転車が完全に阻まれる要因としては充分です。さて, 実際のところは……?

写真コメント
[写真: 仙北市案内板]
(07:41)

道の駅雫石あねっこを過ぎると, 道路勾配が更に厳しくなります。ここからは竜川の谷底を這うように道が続くのです。序盤こそ僅かな農地と農業小屋らしきものが地図に描かれていますけど(丁度写真の付近), それ以後は本当に何もありません。ひたすら, 登る, 登る, 登る!

『ようこそ仙北市』と言われても, まだ県境まで10km近くあるし……そもそも国見温泉(岩手県側)まで8.5kmって, 自分で言ってるじゃないの(^^;;;

[写真: 太平橋付近]
(07:45)

太平橋で竜川左岸へと渡ると, その直後にこーんなガチガチの擁壁が築かれています。ただでさえ等高線が密な所なのに, 無理矢理拡幅したね……。

[写真: 高さ4.5m制限]
(08:00)

高さ4.5m制限のゲートがありました。この先, 高さ制限が必要になるような場所って言うと, ……仙岩トンネルしか無いよね。でもって多分, ここから先では大型車の転回ができないっていうことなんでしょう。

[写真: 旧国道分岐 1]
(08:02)

国見温泉・駒ヶ岳登山道入口・国見温泉キャンプ場(町営)方面が分岐します。全部同じ方向, 同じ距離です(^^;;; ここが旧国道の分岐点でして, 正面が1977年(昭和52年)に開通したバイパスの仙岩道路です。角館まで33kmというのも, 当然仙岩道路経由での距離ですね。

[写真: 旧国道分岐 2]
(08:03)

右の国見温泉方面は, 1963年(昭和38年)にこの地で初めて自動車道として開通した国道46号旧道です。ここがヘアピンカーブになっていることからも判るように, 緩和曲線など知った事かとばかりに屈曲の多い道です。特に秋田県側で顕著なのですが……それはまた後で。

[写真: 岩手県道266号国見温泉線]
(08:04)

現在, 旧国道は3区間に分けられており, 岩手県側の仙岩道路分岐から国見温泉入口までは岩手県道266号国見温泉線として整備されています。標識にもあった通り, 秋田駒ヶ岳の岩手県側登山道入口もありますので, 国道ほどではありませんが山間部にしてはそこそこ交通量のある道です。実際, この写真を撮った直後, 後ろからやってきた自動車の方に「登山道入口はこの先で良いのか」と道を尋ねられました。と言われても, 私も初めて通る道だし……。標識や地図から考えて多分そうです, としか言えませんでした。

[写真: 路肩弱し]
(08:11)

旧国道に入るとますます勾配が激しくなります。そして道路整備もややいーかげんになります(^^;;; 路面はしっかりしているんですけど, 路肩とかね。『その他の危険!』なんて珍しい標識もありますし。県道区間で既にこんなだと, その先は果たしてどうなることやら。

[写真: 荒沢橋]
(08:14)

旧国道で最初の橋梁, 荒沢に架かる荒沢橋です。分岐からここまでの旧国道は, ほぼこの荒沢を捲くための道筋だったと言って過言ではありません。この時点で仙岩道路の下荒沢橋(実は分岐点の写真の奥に写っている)とは60m以上の高低差があります。ここからまた荒沢渓谷沿いに進んで, 竜川渓谷へと戻るのです。

[写真: 荒沢]
(08:15)
[写真: 鹿倉橋]
(08:26)

続いてスガクラ沢に架かる鹿倉橋。こうやって橋に近付く時, 橋を横から眺められる場所があるのは良いですね。ここは仙岩道路の下鹿倉橋と90mほどの高低差があります。

[写真: スガクラ沢 上流方向]
(08:28)

スガクラ沢の上流方向と下流方向です。深山幽谷……と言うには道路が近代的過ぎますが, その一端を感じさせる場所です。この付近はただでさえ地形が強烈なのに, そこを大幅改変して無理矢理道を作った感が, 地図から容易に読み取れます。明治新道がこっちにルートを取らなかった理由はこういうところにあるのかも。

[写真: スガクラ沢 下流方向]
(08:27)
[写真: 上から眺める仙岩道路]
(08:35)

事前に地図上でシミュレートして, 旧国道から仙岩道路が見える可能性がある場所を2箇所チェックしておいたんです。そしたらそのうち1箇所で, 本当に道が見えました。ここ, 仙岩トンネルの手前400mくらいの地点だと思います。手前を良く見ると橋になっていますが, これは多分, 下晩鳥橋だと思います。

[写真: 晩鳥橋]
(08:41)

地形図に川・橋の記号あるけれど, いずれも名前は記されぬもの……と何故か一首詠んでしまいました。親柱に銘板がちゃんとありまして, 「晩鳥橋」となっています。さっきの仙岩道路の橋と80mくらいあります。なお, 読みはどうやら「ばんとりばし」のようです。

[写真: 晩鳥沢?]
(08:40)

すると橋の下を流れているのは晩鳥沢と言うことになるのかな。こちらは晩鳥沢(?)を直接跨いでいますが, 仙岩道路の橋は晩鳥沢(?)が合流した直後の竜川を渡っています。

[写真: 笹森山?]
(08:46)

正面が開けて, 奥の稜線が見えました。……山頂に恐らく巨大であろう人工物が見えますね。この付近の山の上であんな大きなものがあるところというと, 国見温泉しか思い付かないのですが……国見温泉って山頂だっけ? 地形図を見る限り, 竜川最上流部の出会いなんだけど。山と言うなら, むしろ笹森山(994.6m)? 調査……電波反射板か! 建物ではないから, そりゃ地図に載らない訳だ……

[写真: 何かの跡地?]
(08:51)

路肩に広い空き地がありました。門柱のようにも見える石柱が立っているし, 昔ここに何か建物が建っていたんでしょうか? 今ではせいぜい転回場。地形図に水準点689.6mが置かれている場所かな。なお奥の白飛びしている看板には, 国見温泉3kmなどと書かれています。

[写真: 秋盛幹線鉄塔]
(08:51)

この空き地部分は崖側の植生も少し薄くなっており, 竜川対岸の尾根が良く見えます。そこに高圧線鉄塔が2本並んで立っていることも。これは秋盛幹線と言い, 秋田火力発電所・能代火力発電所で発生させた電力を岩手県へ送る275kV送電線です(参照: 東北電力)。このうちいくつかが正に仙岩峠を経由しているため, この山越えの頂部付近は送電線との距離も進行の目安になるのです。

[写真: 舞離岩橋]
(08:57)

橋1つ, 飛ばしてしまいました(沖野橋, だったかな……)。この辺りまでくると地図でも, 等高線は沢であることを示しているけれど, 水線は描かれなくなってきます。で, この橋ですが……

[写真: 舞離岩橋 銘板]
(08:57)

……この銘板の文字, 読めます?

[写真: 舞離岩沢?]
(08:58)

正解は舞離岩橋……字が判っても, 読めない……っ! まさか『ブリガンばし』じゃないでしょうね!?

[写真: 黒岩橋]
(09:01)

仙岩道路も山岳国道らしく多数の橋梁(と多数の長大トンネル)を繋いだ道ですが, 旧国道もどうしてどうして, 多数の橋梁を繋いでいますね。隧道はまったくありませんが。これは戦場ヶ原……もとい黒岩橋です。

[写真: 黒岩沢?]
(09:03)

国見温泉ももうすぐそこだからでしょうか, そろそろ硫化水素の臭いが感じられるようになってきました。

[写真: 国見温泉ゲート 1]
(09:07)

……辿り着きました, 国見温泉ゲート。岩手県道266号国見温泉線はこのゲートの前で右折し国見温泉へと向かいますが, 国道46号旧道はゲートの先を直進するのです。

[写真: 国見温泉ゲート 2]
(09:08)

厳重な『通行止』の他, 送電線工事中の看板が立てられています。これ, 逆に言うと工事のための人通りがあるという事で, 道が通行できる事を示しています。

[写真: 国見温泉ゲート 3]
(09:08)

同時に, ゲート破壊に対する警告も示されていました。奥羽山脈は山菜採りの盛んな地ですから, 以前より通行止を突破して車を入れる人が多く, 結果として2006年頃にゲートが設けられるに到りました。しかし聞く所によると, 設置直後から錠が壊され, それ以降もいたちごっこだとか……恐るべし山菜採りの執念。

[写真: 国見温泉ゲート 4]
(09:09)

このゲートを果たして通り抜けられるのか, がまず第1の関門でした。何しろ情報が無かったもので。結果は御覧の通り, 徒歩・自転車であれば実質通り放題でした。良かった良かった。……右側の側溝に転がっているコンクリートブロック, きっと本当は隙間を塞いでいて, 徒歩以外の通行を阻止していたんだよね……。やっぱり恐るべし(略)。あ, 私がどかしたんじゃありませんからね!

ここまでの走行記録……走行時間1.54.46, 走行距離24.32km, 平均速度12.7km/h, 最高速度38.2km/h(変わらず), 総走行距離9,328.8km。平均速度が一気に遅くなっていることに注目して下さい。ここまでの道の勾配はホントきつかったんです。

6日目その1 [雫石〜橋場] | 6日目その2 [岩手県道266号国見温泉線] | 6日目その3 [雫石町道国見ヒヤ潟線]

水野夢絵 <mwe@ccsf.jp>
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