6回裏[1]
◆18:00 6回裏 プロミストアイランドの攻撃・・・の前に
ずごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご
白雪 「す、凄いですぅ・・・」
咲耶 「此処に、こんな設備まであったなんて・・・」
四葉 「まさに科学の脅威デスね!」
若干の慣れはある彼女たちは兎も角、流石に免疫の無いセーラー
戦士達は一言も無い。あんぐりと口を開け、呆然として目の前の信
じ難い光景に見入っていた。それほど、轟音を立て地上の瓦礫を押
しのけながら、巨大な建築物が地面の下から生えてくるのを見るの
は、壮観と言うより冗談の様だった。
ごごごごごごごご・・・・・・・・・・がぁん!がきょがきょ
可憐 「終わったみたいね。」
鈴凛 「まだしばらく内装と外装の接続が続くけど、もう入っても
良い筈だよ。」
雛子 「はいろー、はいろー、新しいところー!」
白雪 「今度のキッチンは、どんな構成なのかしら?」
千影 「今度の…球場には…呪術場もあるのか…?」
鞠絵 「さ、流石にそれは無いと思うけど。」(^^;)
此方は流石に慣れているシスプリチーム。先の回こと6回表で、
まこととメカ鈴凛の艦砲射撃戦により外野席を残しほぼ完全に破壊
し尽くされた球場の瓦礫を押し退けながら目の前に浮かび上がった
新品(?)の球場へ、まだ轟音を立てながら各種接続を完全自動で行
っているらしい建物内部へ入ってゆく。
みちる「・・・はるか・・・はるか、はるか?」
はるか「え?あ?あ、あぁ・・・僕らも行こうか。」
呆然としたまま、先を行くシスプリチームを追うセーラーチーム。
無言のままに新球場の回廊を歩く。ぽつり、とみちるが言う。
みちる「プロミストアイランド・・・
確かに私たちが考えているほど、甘くも柔くも無いわね…」
◆18:10 6回裏 プロミストアイランドの攻撃
爺や6「プレイ!」
さて漸く始まった6回裏。まぁ6回表が軽く1試合分もある様な
投球数と打撃数と破壊率(?)だった為に無理も無いが、両軍の選手
とも流石にだれていた。だれていないのは球場と合わせて新調され
た審判の爺やsくらいなものだ。のろのろと打席に入りバットを構
えるこの回の先頭バッターこと、可憐に代わる2番バッターの雛子
など、見るからに消耗していた。
雛子 「おねがい、しま〜す。」
またセーラーチームも矢張り覇気が無い。唯一元気そうなのは前
回で十二分に鬱憤を晴らせたらしいまことと、次回に打順が回って
きた際のキメポーズを懲りずに考えているらしいはるかくらいだ。
うさぎなぞ1塁ベースの上でたれぱんだと化し、見事にたれている。
美奈子「ま、小学生相手だし。打たせて取りましょ。」
勿論、自分が3球で討ち取るよりあわよくば1球で済ませられる
方が楽だから、もしもヒットになっても踏まれるのはうさぎだし、
とか考えたに違いないのだが。自分同様にだれているバックを自己
都合宜しく信じきり、美奈子は打ち頃の球を放った。…放ったが。
白雪 「雛子ちゃーん! ここで打ったらステーキですのぉ!」
1塁側から白雪の声が上がり、
雛子 「ステーキっ!」
これに反応した雛子の「やる気ゲージ」が轟然と跳ね上がり、
亜美 「しまった! まだ打席じゃ使ってなかったわ!」
亜美が「3塁側ベンチ守護の時に使ったからこれは無いわね」と
憑依対策候補から切ってしまった事に臍をかんだ、その瞬間。
かきっ!
ぶん!と振られた雛子のバットが、安易に投じられた美奈子の投
球を真芯で捉えた。非力な小学生ではあるが、バットの重量と美奈
子の軽い球、そして何より食欲への執着心が相俟って絶好の打球と
なる。加えてだれきっていたセーラーチーム内野陣もこれに反応し
きれず、振り遅れ気味に飛んだ打球は見事にうさぎの頭上を越える
ポテンヒットとなった。まぁたれぱんだに野球なぞできるはずも無
いのだが。ちなみに雛子が塁を踏むより先にショートからすっ飛ん
できたレイちゃんがげしげしげしとうさぎを踏んでいるのは御愛嬌。
花穂 「雛子ちゃん、凄いすごーい!」
雛子 「そんな事より!ホントにステーキにしてくれるんだよね!」
白雪 「えぇ勿論ですの! 雛子ちゃんには特別の分厚いのを差し
上げますの!しかもリブロースですの!400gですの!」
小学生の食欲、恐るべし。と言うか今回ばかりは憑依元のキャラ
が3年に渡って本編で裏切られ続けた食事シーンに対する怨念の塊
が齎した勝利と言えよう。ともあれこれで1塁。迎えるバッターは、
まこと「こ、こいつか・・・」(^^;)
悠然と、と言うより幽然とバッターボックスに立ったのは千影。
憑依ネタも無しにセーラーチームを瓦解寸前まで翻弄する恐るべき
中継ぎ投手であり、かつ打者としても確実に前へ転がす強打者。し
かも1回裏にはそれが得点に結びついている。まさに脅威。
美奈子「仕方ないわね・・・バックは信頼できないし・・・
此処はボールを散らして翻弄するか。」
アイコンタクトでキャッチャーの亜美とサインを交わし、投球を
始める美奈子。さほど剛球も投げられない自分では、コースを突い
て三振を取るしかない。例の超やまなり球も、はるかから教えても
らった(と言うか話を振ったら無理矢理詰め込まれた)魔球も幾つか
あるが、それらを使うたびに巻き起こる阿鼻叫喚の惨劇を考えると、
両軍ともだれきっている現在の状況では使いたくなかった。
ひゅっ ぱす
爺や6「すたーいく、わん!」
ひゅっ ぱす
爺や6「ぼーる、わん」
ひゅっ ぱす
爺や6「ぼーる、つー」
ひゅっ ぱす
爺や6「すたーいく、つー。 つー、つー。」
ひゅっ ぱす
爺や6「ぼーる、すりー。 つーすりー。」
事ここに至り、5球目を受けた亜美は唖然としてバッターボック
スの千影を見上げた。全くバットを振る様子もなく、無言のままで
じっと美奈子を見据えている千影。正直言って気味が悪い。何を考
えているか判らない、と言う意味で寧ろ脅威だった。と、其処で。
千影 「・・・・・・・・・・」(^.^)
ふ、と千影が笑いバットを構えなおした。何か違う、と思いなが
らもそれが何かは判らず、最後の1球を受けるために構える亜美。
勿論脳裏では調べ上げた千影の憑依元ネタと今の千影の様子を照合
している。が、流石に無言のまま淡々とバットを構える彼女の様子
からは、何も窺い知れなかった。
亜美 「大丈夫。この様子なら千影ちゃんは千影ちゃんのまま。」
カードを広げられない彼女なら、幾ら何でもこれは予想できまい。
こう亜美は考え、ミットをど真ん中に構えた。流石にマウンドの美
奈子が驚くが、直ぐに亜美の考えを知る。大丈夫。此方の裏を書く
事が得意で、それで此方をマウンドから翻弄する千影が、まさか自
分が裏を書かれることになるとは思うまい。そう考え、亜美の指示
通りに最後の球を投げる美奈子。と、その瞬間。千影が呟いた。
千影 「やっぱりフィーフィーちゃんの言う事は正しいな…。」
しまった、このキャラが居たか!と亜美が思い返す間もなく。
かきーん!
鋭い打球がレフト方向に飛んだ。尤もホームラン性は薄い弾道だ
が、それだけにほたるのサイレンスウォールも効果が無い。
レイ 「ファイアー・ソウル!」
まこと「シュープリーム・サンダー!」
ショートのレイとサードのまことが、自分たちの間の頭上を抜こ
うとしていた打球を自分たちの技で止めようと、上空を低空で飛行
するボールへ瞬時に自分たちの技を浴びせた。雛子の好打で身構え
ていたのが功を奏した訳だが、しかし今回はこれが裏目に出た。
レイ 「あっ、まずっ!」
まこと「いけない、あげちゃった!」
セーラー戦士の技は敵を打ち倒すためのものだから、基本的に打
撃技がメインになる。標的に重量級の衝撃を与え、これで敵を破壊
するか敵を吹き飛ばすのが主体だ。が、今回の標的は「敵」ではな
い。鈴凛の超技術により特殊強化されているらしいボールはメカ鈴
凛とまことの艦砲射撃級の打ち合いにも耐えるほどに頑丈だが、
これはつまり「セーラー戦士の技でもこのボールは破壊し難い」と
言うことになる。よって、与えられた衝撃は全て運動量に変わった。
これが単に垂直方向に変われば良かったが、そうは問屋がおろさな
い。加えて二つの必殺技が発生させた炎や煙幕の効果もある。結果。
鈴凛 「抜けたっ!」
花穂 「走れ走れ走れ走れ走れーーーっ!」
レフトのほたるとセンターのせつなが電撃と炎に気を取られてい
る間に、ボールは転々と両者の間を抜けていった。地球すら壊しか
ねない必殺技を持っている二人だが、単に「転がるボールを拾い、
これを走者が走りこむ塁上の守備に投げる」様な細かい技は持ち合
わせていない。まぁせつなさんが時間を止めれば良いだけなのだが、
草野球に生死をかけるセーラー戦士もいないだろう。そして。
2塁爺「セーフ!」
3塁爺「セーフ!」
小中学生の脚ではあったが、はしっこい雛子が掻き回した甲斐も
あってか、見事に千影のツーベースヒットとなった。3塁塁上で大
喜びの雛子。そして僅かに微笑んでいる様な2塁上の千影。ホーム
も狙えたかもしれないが、その場合はせつなさんがセンターからデ
ッドスクリームで返球し、結果としてグランドスタンドが破壊され
るだけでは済まなかったろうから、この判断はナイスだった。
レイ 「すごいわねー、千影ちゃん。」
流石に1本のヒットも無い自分を恥じてか、素直に千影へ感心す
るショートのレイ。それへ恥ずかしげに微笑む千影。こんなキャラ
だったかな?と思うものの、まぁ胸を張って威張られるよりはマシ
だから素直に可愛いと思う。と、千影が腰に下げている人形が目に
付いた。素直に聞いてみるレイ。
レイ 「随分と小さな人形ね? お守り?」
ふるふる、と横に首を振る千影。はて?と思い首を傾げるレイに、
千影が小さな声で答えた。
千影 「これ、フィーフィーちゃん・・・私の分身・・・」
その、何処ぞの女子高校公式野球部で5番レフトを不動の位置に
していたながらも過去にはは関東中学女子軟式野球大会で最優秀選
手に選ばれたがいじめにあったキャラの様子に、何故に千影がこう
までスラッガーなのかが、レイは漸く得心がいった。ふと、彼女が
もじもじと弄る宇宙人(?)人形を眺めると、どうもそれが件の憑依
元の人形と若干違うような気がする。何処かで見たなぁ?と思った
レイは、これもストレートに、漸く憑依モードが解けたらしい千影
へ聞いてみる。
レイ 「フィーフィーちゃんって・・・確かとうもろこし人形みた
いな細身のアクセサリーじゃなかったっけ? でもこれ、
まるでガシャポンの2頭身マスコット人形じゃない。」
千影 「それは先代のフィーフィーちゃんだ・・・これは2代目・・」
レイ 「2代目って、確かその人形・・・・・
しもべ
八角形のリングから出てくる月天様の僕じゃなかったっけ?」
こくり、と頷く千影。またぽつり、と言う。
千影 「これもまた、私だからな・・・」
そのピンク色の髪を巨大なチャイナ風のシニョン2つにまとめた
小振りの人形が掛ける前掛けには、「伝心」の2文字がある。これ
を見て取ったレイは、何故に千影が投手の投げるコースを的確に
「読む」のかが、漸く得心が行った。
レイ 「ダブルで憑依するなら、そりゃ時間も掛かるわね…」(^^;)
さて、こうしてノーアウト2・3塁となった6回表。1打大量得
点の絶好のチャンスに、迎えるバッターはこれまた1回表で2得点
を叩きだした咲耶。当然まだまだネタには事欠かない。迎えた危機
に戦慄するセーラーチーム。急遽あつまって対策を練る。
うさぎ「ねぇねぇねぇ、どーするどーすろどーする?」
美奈子「どうしよう・・・」
亜美 「どうしましょう・・・」
レイ 「ホント、どーしたものやら?」
まこと「どうしようかねぇ。」
せつな「如何しましょうか。」
みちる「どうしましょうね。」
ほたる「みちるママ・・・」
はるか「よし! 矢張り此処はボクが出て、真なる魔球を」
どすばきどがどごす(全員参加)
どうやら結局有効な解決手段は出なかったようだ。暗澹たる思い
で上空を見上げるセーラーチーム。と、其処へ。
「だらしないのねっ みんな!」
■6回表0アウト|1|2|3|4|5|6|7|8|9|− ■
■Sailors|0|0|1|1|0|0| | | |2 ■
■Sisters|2|0|1|0|0| | | | |3 ■
■2・3塁 NEXT:咲耶・春歌・鞠絵 ◆ マウンド美奈子(?)■
水野夢絵 <mwe@ccsf.homeunix.org>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735