Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
この記事は、第174話(その6)です。
Message-ID: <newscache$j0vlqi$nc4$1@news01a.so-net.ne.jp>
にぶら下げる形となっています。
(その1)は、<newscache$7vxlqi$196$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<newscache$vkqyqi$s7d$1@news01d.so-net.ne.jp>から
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(その4)は、<newscache$g3gzri$c4h$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その5)は、 <newscache$96vhsi$9h5$1@news01f.so-net.ne.jp>から
それぞれどうぞ。
では、改ページ後にゲームスタート!!
^L
★神風・愛の劇場 第174話『盲目の愛故に』(その6)
●桃栗町・桃栗山の麓
人間が人為的に掘り進めた洞窟を利用した宿営地の一室。
レイはそこで目を覚ましました。
寝台で目を開けたレイは周囲をまず見回し、そして枕元に置いてあった時計──人間界
のもの──を手にして、現在の日時を確認します。
彼女達が作戦から帰還した翌日──現地時間で3月4日の朝でした。
「してやられたか…」
遊園地から引き揚げてきたレイとミナ。重傷を負ったミナを取りあえず宿営地に預ける
と、レイは報告のために山を越えた向こう側にあるノインの屋敷へと向かおうとしました。
そこに現れたのは、魔界から派遣されてきた王宮の「侍女」であるエリス。彼女は、レ
イに報告は後回しにして、まずは休養するようにと説得しに来たのですが、それが聞き入
れられないと知ると、レイ達が本当に身体が大丈夫か確かめさせて貰うと言うなりいきな
り彼女の能力を用いたのです。
咄嗟に障壁を展開したのですが間に合わず、そのまま倒れ込むように眠り込んでしまっ
たレイ。その時はミナの部屋にいた筈なのに自分の部屋で寝ているのは、恐らくエリスが
運んでくれたのでしょう。
起き上がったレイは術で服を普段の服に整えます。部屋の片隅にある机を見ると、一通
の封筒がありました。
開封してみると、中には一通の命令書があり、そこには5日に朝食会兼作戦会議を行う
予定であるので、報告はその時に行い、それまでは全部隊は休養に努めるようにと、ミカ
サの署名入りで記されていました。
何も命令が無ければ目覚めて直ぐにでも屋敷に押しかけるとでも思われたが故の命令書
なのでしょう。実際、そのつもりでしたから。
ミカサなのか、それともノインの命令であるのか判りませんが、手回しの良さに苦笑し
つつも感謝もするレイなのでした。
*
部屋の扉を開けると、辺りの様子がやけに静かであることに気付きます。
要所に配しているはずの歩哨は眠りこけ、上からは毛布がかけられています。
部隊の半数が眠らされたことを確認したレイは、エリスの能力の影響を受けていなかっ
た中隊の兵に、歩哨の再配置と通路で眠りこけている者を寝台に運ぶように命じました。
そのような措置を講じてから後、最後にミナの部屋を療兵を伴い訪れました。
「取りあえず出来ることはしました。しばらくの間は安静にして、肉体と聖気の回復に努
める必要があります」
眠り続けるミナを診察し、治療を行った療兵は、レイの見立て通りの診察結果を口にし
ます。
「判った」
「それと…、これは言いにくいことですが」
「何だ」
「ミナ様は今後しばらく、前線には出ない方が良いかもしれません」
「何故だ」
「再度重傷を負った場合、残りの聖気が危険な程減少する恐れがあります。その結果は、
お分かりですね?」
「消滅か、それとも天使で無い何かになるか」
レイの呟きに、療兵は無言で肯きます。
「判った。ミナは私が説得する」
「それと、折角の機会ですのでもう一つご報告が」
「何だ」
「部隊の中から何名か、戦闘に耐えられない状態の者が出始めています」
「未だ行動らしいことは何もしていないのだぞ?」
「全ての天使が中隊長殿のように聖気を多く持つ訳ではありません。ご存じとは思います
が、我々堕天使は魔界に来て得た魔の力を造られし時より持つ命と力の源、聖気で制御し
ています。従って、天界の天使よりも強い力を持つ可能性がある反面、ただ生きるのみで
も聖気の消耗も激しいのです」
「そうだったな」
「魔界からの長旅の結果、兵は事前の予想以上に聖気を多く消耗しています。更に、暗い
宿営地に閉じ込められた現状では聖気の回復もままなりません。このままでは、戦う前か
ら戦力が半減する可能性も」
「このことは?」
「取りあえず該当者は病気ということにして、他の兵からは遠ざけてあります」
「それで良い。また、何かあったら報告して欲しい」
「判りました」
療兵が下がって後、レイは眠り続けるミナの顔をのぞき込み、呟きます。
「…大丈夫。私一人でも何とかしてみせる。だけど……」
寝台の側に置かれたパイプ椅子に腰を下ろし、レイは腕組みをして暫し、何かを考えて
いました。
●桃栗町
「恋の病、か…」
言われるまでそんなこと、考えたこと無かったなとツグミは思います。
既に朝食は済ませ、洗濯物すら山茶花家でクリーニングされたものを渡された今となっ
ては、午前中は特にすることがありません。
もちろん、進学のために勉強するとか、他にもすることは幾らでもあるのですが、その
ような気分になれないのでした。
やがて、ツグミは立ち上がります。
じっとしていて、何かを考えていても何も良いことは無い。
そう考えたからでした。
「出かけるわよ、イカロス」
ツグミはイカロスと共に、街の中心部までバスで出かけます。
そこから、記憶を頼りに普段の散歩のコースとは異なる道を歩いて行きます。
ツグミが下り坂を降りている最中のことでした。
「キャー!!」
もの凄いブレーキ音と共に、自転車が急停止する気配を感じました。
どうすることも出来ず、ただ立ちつくすツグミ。
しかし、何も起きませんでした。
「へ、平気ですか!?」
低めながらも幼い声。多分、小学生低学年位の女の子ねとツグミは想像します。
「ええ。私は大丈夫よ」
「ごめんなさい。スピードを出し過ぎちゃって」
「危ないから、気をつけてね」
「はい…。あの、お姉さん」
「何?」
「ひょっとして、目が見えないんですか?」
「ええ。でも、大丈夫よ。私にはイカロスがいるから」
「盲導犬ですよね?」
「ええ」
「あの、どこに行くんですか? 良かったら案内します」
案内の必要は無かったのですが、断る理由もありません。
ツグミは、素直に好意を受けることにしました。
「この近くの桃栗学園に行こうとしているのだけど。新体操部に友達がいるの。今日も練
習をしていると思うから」
「ひょっとして、まろんお姉ちゃんのことですか?」
「日下部さんのことを知っているの?」
「昔、お姉ちゃんに助けて貰ったことがあるの」
怪盗ジャンヌに助けられた一人なのだろうかとツグミは思います。
「あなたは、何て名前なの? 私は瀬川ツグミよ」
「浩美です。宮坂浩美」
●桃栗学園
「体育館はこっちです。ツグミお姉ちゃん」
「ありがとう」
休日の土曜日なので、学校に登校しているのは部活動に参加している生徒と顧問の先生
のみでした。
浩美に案内されるまでも無く、如何にも新体操で使われそうな感じの音楽が流れていた
ので、体育館の場所はすぐに知れました。
幸い、体育館の扉は開いていて、中の様子を伺うことが出来ました。
「日下部さんはどこにいるのかしら?」
「ええと…」
扉から中の様子を伺った浩美。しかし、中々見つけることが出来ないでいる様子でした。
「何か用ザマスか?」
覗き込んでいるツグミ達を見とがめたのでしょう。
誰かが話しかけて来ました。最も、口調からツグミにはそれが何者なのか知れました。
「顧問の五十嵐先生ですね? 日下部まろんさんは居ますか?」
「あなたは、確か…」
「瀬川ツグミ。日下部さんは私のお友達です」
「ああ、あなたがツグミさん…」
「知ってるんですか?」
「日下部があなたのことを話しているのを聞いたことがあるザマス。だけど残念ザマス。
日下部は今日は無断欠席ザマス。昨日は風邪を引いたと電話があったザマスが、どうだ
か」
「風邪…ですか」
成る程、昨日は仮病で学校を休んだのね。そう気付くと、ツグミはクスリと笑います。
「あなた、日下部とはかなり親しいザマスか?」
「ええ、まぁ…」
「時間があったら後で家まで様子を見に行って欲しいザマス。どうせサボりに決まってる
ザマス。けど、万が一、一人で寝込んでいたりしたら大変ザマス」
「あの、日下部さんのことだったら東大寺さんが知っているのでは」
「用事があるとかで休むと連絡があったザマス。もっとも、留守電に入っていたので、何
の用事かは知らないザマスけど」
昨日、都と一緒にいたまろんと出会ったということをもちろんツグミは告げ口などする
気などはありません。
「判りました。五十嵐先生」
まろんが居ないと判ればこの場には用事はありません。
身を翻しかけたツグミは背中から呼び止められました。
「あなた、瀬川ツグミさんね」
「はい。あなたは?」
「私は桐嶋まなみ。日下部さん達より1年上の新体操部員よ」
「ああ…。日下部さんから噂はかねがね」
その噂は、本人にはとても直接話せない類のものでしたが。
「噂…ね。どんな噂なのかしら。ところで、日下部さんの家に行くのよね?」
「ええ」
「耳、貸してくれない?」
「え?」
戸惑いつつも、言われるがままにしたツグミにまなみは囁きます。
「日下部さんと東大寺さんに伝言。二人で浮かれるのも良いけど、程々にねと」
「はぁ」
この人は何を言いたいのだろうか、判断しかねたのでツグミは曖昧な返事をします。
「じゃ、よろしくね」
ツグミの態度を勝手に了承と取ったらしく、まなみは練習に戻って行くのでした。
●オルレアン
桃栗学園を出た所で新体操クラブの練習に行く途中なのだという浩美と別れ、今度は一
人でオルレアンへと向かったツグミ。30分弱の時間をかけてゆっくりと街の中を歩いて行
きました。
マンション7階の702号室の前にたどり着き、チャイムを押したものの返事がありま
せん。何度押しても、どれだけ待っても返事は無いのでした。
「(昨日の今日で疲れて、寝ているかと思ったのだけど…)」
ツグミは今度は隣の稚空の部屋のチャイムを鳴らしました。
「すいませーん。ツグミです。誰かいませんか?」
今度は、声でも呼びかけます。
稚空が留守でも、居候の天使達が聞きつけるかもしれないと期待してのことでした。し
かし、こちらの方も何も反応がありません。
「(お休みなのに、誰も居ないなんて…)」
どうしたものかと考えたツグミは、まなみからの伝言を思い出し、今度は都の家のチャ
イムを鳴らします。
「はぁい。あら、…ツグミさん?」
「私を知っているんですか?」
「ええ。都からお話は良く」
「それで、都さんはいますか?」
「ごめんなさい。都は新体操部の大会を控えて朝練なの」
「え!?」
都は桃栗学園にはいなかった、という話を慌てて飲み込んだツグミ。
「すると日下部さんも?」
「まろんちゃんも一緒のはずよ」
「…そうですか。判りました」
「ごめんなさいね。今度は、まろんちゃんの家だけで無くて家にも遊びに来てね」
「はい」
笑顔を見せつつ、じゃあ二人は何処に行ったのだろうかとツグミは思うのでした。
(つづく)
順調に展開は予定よりも遅くなっています(笑)。
では、また。
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Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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