Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
この記事は、第174話(その16)です。
Message-ID: <newscache$j0vlqi$nc4$1@news01a.so-net.ne.jp>
にぶら下げる形となっています。
(その1)は、<newscache$7vxlqi$196$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<newscache$vkqyqi$s7d$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<newscache$itlbri$943$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その4)は、<newscache$g3gzri$c4h$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その5)は、<newscache$96vhsi$9h5$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その6)は、<newscache$zrwrsi$s4k$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その7)は、<newscache$p093ti$xrc$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その8)は、<newscache$i4bsti$q6h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その9)は、<newscache$kmlkui$f61$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その10)は、<newscache$0gaavi$und$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その11)は、<newscache$2dwgwi$cth$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その12)は、<newscache$7dr5yi$6oe$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その13)は、<newscache$sl1yyi$vn1$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その14)は、<newscache$56uo0j$4qk$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その15)は、<newscache$wc9n1j$ao8$1@news01a.so-net.ne.jp>から
それぞれどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第174話『盲目の愛故に』(その16)
●オルレアン・稚空の部屋
「こんにちわ。こちらは名古屋稚空さんのお宅ですか?」
稚空の部屋の前に立っていた金髪の少女。
扉を開けようかどうしようか、一瞬の躊躇いの後、男としての性が打ち勝った稚空が扉
を開けると、その外見とは裏腹に全く流暢な日本語が彼女の唇から発せられました。
「ええと、何かご用でしょうか?」
他の相手であれば、もう少しぶっきらぼうに訊ねる所、丁寧な口調となるのは、もちろ
ん相手が美少女であるが故。
ですが、まろんがこの場に居なくて良かったと思う理性も稚空にはあります。
「ええ。この家で私の友達がお世話になっていると聞いたものですから、ご挨拶に」
「…俺は一人暮らしですが」
少なくとも、人間は。嘘は言っていないと稚空は一人で納得します。
目の前の少女は稚空の返答に少し首を傾げてから納得した表情になって言いました。
「申し遅れました。我が名はミナ。「花の期」の生まれの天使です。私の同期のアクセス
とトキが、この家にご厄介になっていると聞いたので…」
「ああ、成る程」
彼女はさっきトキが言っていた増援の一人なのだろうか。もう地上に居たんだっけか。
それに玄関から入って来るとは珍しい。羽根が見えないがしまえるのか?
などと疑問が幾つかありましたが、ともあれ、こんな美人ばかりなら、増援は大歓迎と
稚空は思うのでした。
●桃栗町郊外
悪魔の仕業による交通事故に巻き込まれたまろん達。
偶々、海でサーフィンで遊んでいたのだという昨日出会った筋骨隆々とした若者達──
シド達──は、あれよあれよという間にバスの中に乗っていた乗員乗客を救出しました。
幸いにして乗客は二人しか乗っておらず──これは、すぐに意識を取り戻した乗員と乗
客の証言で明らかとなりました──、その上重傷を負った者も居ませんでした。
一方、未だ気を失っているダンプカーの運転手の方は、車体自体が頑丈な上、シートベ
ルトもしっかりとしていたため、こちらも命に別状は無さそうです(と、シドが教えてく
れました)。
その様な訳で、都が電話で呼んだ救急車と警察が来るまでの間、まろんはただ呆然と座
り込んでいました。
「都! まろんちゃん!」
「父さん…」
十分以上かかって漸く現れた救急車と相前後して現れた警察の車。
本来であれば関係は無いはずなのに、氷室警部がパトカーから秋田刑事を伴い姿を現し
ました。
「どうしてここに?」
「昨日の事件の現場検証の帰りだったのだが、都が事故に巻き込まれたという報せを受け
てな。だが、怪我も無いようで良かった」
氷室は、都とまろんの肩に手を置いて、二人を交互に見ながら安堵した表情を見せるの
でした。
*
事故について警察官から色々と訊ねられたまろん達。
まろんは気づきませんでしたが、横で無言の圧力を氷室警部が加えてくれたお陰で、通
常よりは早い時間で家に帰っても良いことになりました。
一方、現場で救助活動をしていたシド達は、まろん達が気がついた時、警察が到着する
前にいつの間にか姿を消していました。
「お手柄なのに、どこ行っちゃったんだろう。急いでいるのかな?」
そんな疑問を都の耳元で囁いたまろん。
すると都は助けたのがシド達だと警察には言わないように注意しました。
何処の誰だか判らない人が助けてくれて、名前も名乗らず立ち去ったと答えるようにと。
「どうして?」
「シドさん達。不法入国かオーバーステイなのかもしれない」
「それって本当は警察に言わないとまずいんじゃ?」
言う気などありませんが、まろんはそう訊ねました。
「人助けしてくれたのだから見逃してあげることにする」
何だか都らしく無いなと思いつつも、もちろんまろんはそれを口にはしませんでした。
*
「どうやら、神の御子達は僕たちのことは黙っていてくれるらしい」
警察の事情聴取を受けているまろん達を山の上からシド達は見下ろしていました。
事故現場は急な斜面で人間の足では登るのにも一苦労ですが、龍族の屈強な若者達であ
れば、この程度の斜面を登るのは大したことはありません。
先に引き上げてきていた龍族の者達に、まろん達の会話を盗み聞きしていたシドが後か
ら現れ、安心させるように言いました。
「しかし、あそこで我らの力を見せたのは拙かったのでは無いか?」
「神の御子が我らの正体に気づいたかも」
魔界からやって来た龍族の若者達が口々に言います。
しかし、シドの答えは他の者達を唖然とさせるものでした。
「別に良いよ、気づいても。仮に気づいたところで、神の御子──日下部まろんが、僕た
ちを自分から攻撃することなんて無いだろうから」
たった一度会っただけですが、それまでの資料と総合して、シドのその考えは確信に近
いものがありました。
「しかしだなシド…」
「それとも、僕たちの正体を隠して攻撃するつもりだった? でもそれはトールン様は好
まれないんじゃないかな」
そしてもちろん、卑怯な手口は好まない傾向にある龍族の若者達も、その意見には異論
は無く、それぞれ肯き合うのでした。
●オルレアン・稚空の家
「ミナちゃんですです!?」
ミナが稚空の後からリビングに現れると、セルシアがもの凄い勢いでミナに飛びつき、
しっかと抱きしめました。
「セルシア、久しぶりね」
「羽根を隠しているから、一瞬判らなかったですですっ」
ミナの胸元に顔を埋めるセルシアの頭をミナは良し良しという風に撫でてやります。
成る程、同期というのは本当らしいと稚空は思います。
「セルシア」
しかし、感動の再会シーンはトキによって中断されました。
トキの言葉を聞くや否や、セルシアはミナからばっと離れて、警戒するように身構えま
す。稚空の背後では、トキだけで無くアクセスも同様に身構えていました。
「お、おい…」
「以前、同期の天使が『楽園』を追放されたという話をしたでしょうか」
「アクセスからそんな話を聞いたような」
「ここにいるミナは、その追放された天使の片割れです」
「堕天使ってことか」
トキが頷くと、稚空も身構えました。
とはいえ、目の前の少女からは敵意を感じることが出来ません。
「親友が土産まで持って来たというのに、随分な歓迎ね」
ミナは手に大きな紙袋を下げていました。
「今は敵同士です。しかも、あなたは一昨日、まろんさんを襲った一人でもありますし」
「何!?」
「気づいて無かったんですか……」
「それが任務だったから。でも、今は戦うつもりは無いわ」
両手を上げて、ミナは敵意が無いことを示します。
「私はミナちゃんを信じるですですっ」
どうしたものかと稚空が考えようとする前に、セルシアが双方の間に割り込み、両手を
広げて言いました。
「セルシア…」
「トキ、事情は良く判らないが、ミナ…だっけ? 彼女を信じて見たらどうだ?」
「俺も稚空の意見に賛成」
「3対1…ですか。良いでしょう」
渋々といった表情で、トキはそう言いました。
もっともトキと一番付き合いの深いセルシアは判っていました。
トキがこの場でミナを追い返す展開とならずにほっとしていることに。
*
ミナがお土産として持って来たのはケーキでした。
そこで稚空が用意した紅茶と合わせて、少し早めのティータイムとなったのです。
実はつい先ほどまで昼食の用意をしようとしていた稚空ですが、お腹を空かせたセルシ
ア共々、ケーキの前にそんなことは忘れ去っています。
「それじゃ、再会とお互いの無事を祝して」
アクセスの音頭で乾杯した一同。セルシアはお茶もそこそこにケーキに取りかかります。
「美味しいですです。でも…ちょっと違うですです?」
「違う?」
「まろんちゃんが買って来たり作ったりするケーキと、味付けが少し違うですです」
「そうかぁ? ただ、飾り付けがちょっと変わっている気はするけど。あの、このケーキ
は自分で焼いたんですか?」
「実はもらい物なの。レイがノイン様のお屋敷から頂いて来たのだけれど、沢山あって食
べきれなくて」
「ノインだと?」
「ええ。その家のメイドさんが焼いたそうよ」
「そのメイドって確か色黒な」
「ああ、この前の作戦の時に会ったのね。そう、彼女が焼いたのよ」
「へぇ…」
あの強敵が…と思うと、ケーキの味わいも変わるような気がします。
「それで、今日は何の用事で来たのですか?」
トキは紅茶には口をつけたもののケーキには手をつけていませんでした。
「そんな怖い顔しないでよ。旧交を温めに来たというのでは駄目かしら?」
「本当にそうなら、私も安心してこれに手をつけることが出来るのですが」
「大丈夫よ、毒なんか入ってないから」
その言葉を聞いた稚空は、ケーキを喉に詰まらせかけました。
「そう言えばレイは今日は一緒では無いのですね」
「今日は偵察も兼ねて街へ出かけてる」
「一人で? 何時も一緒のあなた方が?」
トキの質問を聞く度、稚空は段々と不安になって来ました。
「トキったら相変わらずの心配性ね。本当のことを話すわ。一昨日の戦いのことは知って
るわよね? その時、神の御子との戦いで怪我をして、私は二日間程寝込んでいたの。だ
からレイは私が未だ休んでいると思ってる。確かめてみる?」
ミナは、隣に座っているセルシアに片腕を出しました。
セルシアはミナの腕に触れ、目を瞑ってしばらく何かを感じているようでした。
「ミナちゃんの言っていることは本当ですです。未だ無理をしないで寝ていた方が良いで
すですっ」
「そんな訳で私は今日はお休み。折角なので、次の作戦の前にアクセス達に会ってお
こうかなって。レイは真面目だから、敵の所に行けるか〜って言いそうだし」
稚空以外の天使達は、レイが目を釣り上げて怒る様を想像して苦笑します。
「判りました。あなたの言うことを信じることにします」
そしてトキは初めてケーキに手をつけ、そして小さく呟きます。
「美味しい…」
●桃栗町中心部
太陽が傾き、空の色が変わりかけた頃、まろん達は噴水広場へと向かう小道をとぼとぼ
と歩いていました。
「ね、まろん」
「何〜」
先に歩いていた都が立ち止まり、振り返って言いました。
「噴水広場のカフェでお茶して行かない?」
「そうだね〜」
交通事故に巻き込まれそうになり、現場検証に付き合わされたりしたお陰で、まろん達
は疲れ切っていました。特に、事故の真相について知るまろんは。
とにかく、何か冷たい物でも飲んで人心地つけたい気持ちでした。
「!」
まろんはある気配を感じました。
そしてそれに気づくと同時に意識せず、身体が動きました。
「キャッ」
都が悲鳴を上げて尻餅をつくのと、まろんの背後で何かが落ちて壊れる音が同時でした。
都を前から押し倒す形となったまろんが振り返ると、路上に鉢植えが落ちて割れている
のが判りました。
「(悪魔…!)」
まろんが感じたのは、悪魔の気配でした。そしてその気配はもう消え去っています。
本来であれば、彼女にそれを報せてくれる筈のプティクレアは、何もまろんには教えて
くれませんでした。
「痛た…。何すんのよ!」
「だって…」
突然押し倒され、抗議の声を上げる都。
しかし、まろんの視線の先にあるものに気づきます。
「うわ、危なかった…。助けてくれたんだ。まろん、ありがと」
「うん…」
まろんは生返事を返します。
都を押し倒したまろん。その身体は都の太股の間に割り込むような形で、倒れた時のま
ろんの顔の位置は丁度胸の辺り。この態勢のまま、都の顔を間近からのぞき込むと、何だ
か妖しい気分になってしまいそうでした。
「……あの、まろん?」
「え、何々?」
「その…どいてくれない?」
「あ…」
都の頬もやや赤みが差しているように見えたので、考えていることは同じなんだろうか。
そんなことを一瞬考えつつ、まろんは慌てて立ち上がりました。
「痛…」
まろんは膝に痛みを感じます。
「まろん、血、出てる…」
「うん。大した事無いよこんなの。つば付けとけば治るって…え?」
まろんは続く都の行動に言葉を失いました。
都がまろんの前で四つん這いとなり、まろんの膝の擦り傷を舐めて血を拭き取っていた
のです。
「ちょ、ちょっと都」
背後のチェリーと浩美を見ながら、ちょっとまろんは赤くなります。
「つばつけとけば、治るんでしょ?」
「それはその」
「はい、終了」
ドギマギするまろん。気がつけば、膝には絆創膏が貼られていて、都は立ち上がり手を
ぱんぱんと叩いていました。
「あ、ありがとう」
「気にしないで。それにしても危ないわね。どこから落ちて来たのよ、こんなの」
都は側の建物を見上げました。
「もう良いわよ。何事も無かったんだし。早くお茶飲みに行こうよ」
「それもそうね」
鉢植えの持ち主に文句を言いに行く勢いの都の背中をまろんは押して行きました。
そして思います。そう言えば、ツグミさんと知り合ったのは、鉢植えが落ちて膝をすり
むいたのがきっかけだったなぁと。
(続く)
次は黒ミサの後かな。^^;;;
では、また。
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