Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
山田さん鯖がまた接続出来なくなっているので、復活するまで投稿を見合わせていたので
すが、未だつながらないようで(汗)。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
この記事は、第174話(その4)です。
Message-ID: <newscache$j0vlqi$nc4$1@news01a.so-net.ne.jp>
にぶら下げる形となっています。
(その1)は、<newscache$7vxlqi$196$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<newscache$vkqyqi$s7d$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<newscache$itlbri$943$1@news01f.so-net.ne.jp>から
それぞれどうぞ。
では、改ページ後にゲームスタート!!
^L
★神風・愛の劇場 第174話『盲目の愛故に』(その4)
●山茶花本邸・宿泊施設
ツグミが案内されたのは、宿泊施設の大浴場ののすぐ近くにある卓球場でした。
「山茶花家にはこんな物まであるのね…」
中に小さな玉が3つ入れられたピンポン球を手に持ち、振って音を確かめながらツグミ
は言いました。右手にはラバーが張られていない白木のラケットも手にしています。
そして卓球台には、木製のフレームが張られていて、ネットの下端がルール通り開けら
れていることも確認します。
「視覚障害者の方をにお招きした時に用意したものですわ」
「サウンドテーブルテニスのルールは、ボランティアで大会をお手伝いした時に知りまし
た。やっぱり、温泉と言えば卓球ですよね」
佳奈子がそう言い眼鏡を手で直すと、照明を反射して眼鏡が光ります。
「11点3セットマッチ、2セット先取の勝ち抜き戦で。サーブは5回交代」
弥白が言うと、ツグミは肯きました。
佳奈子が以前大会を手伝った時には、21点3セットマッチでしたが、そこまで気合いは
入れないということでしょう。
「それで、組み合わせはどうするの?」
「グーパーで組み合わせを決めて、勝者同士で決勝。残りは審判とボールボーイというこ
とで」
「わかったわ」
「それじゃあ、グーパー……」
*
「気をつけて下さい。お嬢様は本当は中々手強いですよ」
「そうでしょうね」
ツグミは、椿の言葉に肯きました。
「弥白様、頑張って下さ〜い」
と、声援を送っているのは佳奈子。
最初、椿と対戦することになったツグミ。
椿自身は、かつては盲人卓球と呼ばれていたサウンドテーブルテニスの経験が少なかっ
たらしく、ツグミは相当手加減したつもりだったのですが、あっさりと2セットを先取。
ツグミが勝利しました。
続いて行われたのは、弥白と佳奈子の試合。
健常者同士の試合なので、お互いにアイマスクをして望みました。
大方の予想に反して、佳奈子が健闘しました。
実は弥白も意外だったらしく、佳奈子の強烈なサーブ(…と言っても、ネットの下をく
ぐらせないといけない関係上、大したサーブは打てないのですが)を受けてレシーブミス
をしたり、逆に思わずホールディングしてしまったりと、最初の1セットを佳奈子が奪う
大番狂わせ。
しかし、佳奈子の力量を見極めた弥白は、残りの2セットを難なく取り、結局決勝は参
加した誰もが予想した通り、弥白とツグミの対決となったのです。
*
「では行きますわよ」
「はい」
アイマスクをした弥白は、卓球台の自分から見て右側にピンポン球を置き、対角線上に
あるツグミの側のコート目掛けてサーブを放ちます。
ラケットは球より10センチ以上離すルール故、慣れないと先程ツグミと対戦した椿のよ
うに、置いたはずの球の位置が判らなくなってしまったり、ラケットではなく手で球を打
ってしまったりするのですが、ラケットが台に当たった音すらさせずにサーブを放ってき
た弥白はかなり慣れていると感じます。
ラケットをお腹の位置で構えていたツグミ。
ツグミのことを強敵だと考えていたのでしょう。
最初から遠慮無しの本気のサーブ。球がサイドフレームに当たり戻って来たのも打ち返
さないといけない辺りが通常の卓球とは違います。
ツグミは意識して、音を立てて打ち返します。そうしないとホールディングで相手に点
が行ってしまうからでもありますが、
「はいっ」
がらがらと音を立て、弥白の方に飛んで行ったツグミのレシーブを弥白はアイマスクを
した状態で難なく、何ら迷いも感じさせずに打ち返し、ツグミも負けじと打ち返します。
空調でボールの動きが変わってしまうからということで、暖房も止めていたのですが、
実際に試合をしている二人は汗をかいています。
何しろ音を頼りに打ち合うスポーツであるため、審判とボールボーイの椿と佳奈子は、
応援を控え文字通り息を呑んで見守っていました。
もっとも審判に徹していた椿とは異なり、佳奈子は白熱したラリーだけで無く別の楽し
みもあったのです。
弥白とツグミが動き回るたび、浴衣から覗いて揺れるものを佳奈子はピンポン球を追う
振りをして追いかけていました。
「あっ」
ツグミがミスをして、弥白にポイントが入ります。
佳奈子がボールを拾っている間、ツグミは浴衣の襟を直し、周囲をきょろきょろと見回
まわすのでした。
*
「はぁっはぁっはぁっ」
「良い試合だったわ。多分、大会に出ても良い線行けると思うわ」
「あり…がと…う」
白熱した試合も結局は経験の差というべきか。
結局は2セットをツグミが先取し、この小さな大会はツグミが優勝者となりました。
もっとも点差は無きに等しかったので、健常者で音の感覚が自分よりは遙かに鈍い弥白
に対してはツグミはちっとも勝った気はしなかったのですが。
●山茶花本邸・弥白の部屋
サウンドテーブルテニスを終えたツグミ達は、全の様子を見に行きました。既に全が寝
てしまっていることを「お世話係」のメイドから聞いた後で、弥白の住む建物へと向かい
ました。
弥白の部屋に招かれ、夜も遅いのでとハーブティを弥白が自ら入れて出してくれました。
ツグミには良く理解出来なかったのですが、この時間からは椿はメイドとしての勤務時
間からは外れ、弥白の友人として過ごすことになっているようでした。
*
「そう言えば、遊園地の方はどうなったんでしょうね」
「テレビをつけてみましょうか」
弥白がリモコンを操作すると、壁の一面からモニターが2つ出現します。
そのモニターには別々のチャンネルが映し出され、そのうちの片方のチャンネルからの
音声がスピーカーから流れます。
“今日のニュース11。まずはこのニュースからです”
音声が流れたのは、むにゃむにゃとしたしゃべり方をする有名ニュースキャスターのニ
ュース番組のものでした。
“本日、怪盗ジャンヌより濱坂市の「海の聖母マリア教会」の聖母子像に対して予告状が
届けられました。警察の厳重な警戒の中、午後5時45分頃、怪盗ジャンヌが「海の聖母マ
リア」教会に出現しましたが、ジャンヌは何も盗まずに逃走。逃走の際、現場に隣接して
本日オープンした遊園地、水無月ギャラクシーワールドのジェットコースター『ネプトゥ
ヌス』を破壊しました。この際、ジェットコースター一台が宙づりとなりましたが、乗客
は全員救助されました。この事件の影響で、明日、正式に一般客にオープンする予定だっ
た「水無月ギャラクシーワールド」はしばらくの間、営業を休止することとなりました”
半壊したジェットコースターの映像が映し出されました。
「そう言えば、うちの体育館の方はどうなったんですの?」
「今日一日、警察が現場検証をしていたようですが、大した成果は得られなかったとの報
告が来ていました」
椿が、コピー用紙で左肩斜めホチキス止めの書類を差し出します。
「ふぅん。物証として、布きれが幾つかある位…」
「元は黒い布だったらしいので、ジャンヌとは別の誰かのものということと推測されてい
るようです」
「あの体育館、修理は出来るんですの?」
「どうやら、建て直すことになりそうです」
「また、寄付をお願いされることになりそうですわね」
ため息をついた弥白は、ツグミの方を見ていけないと思います。
「ごめんなさい。内輪のお話で。昨日、枇杷高校で新体操の地区大会の団体戦があったん
ですけれど、確か、ツグミさんはいらして無いわよね?」
「ええ」
「大会の後でその時の会場だった体育館に怪盗ジャンヌが現れて、うちの体育館が半壊し
てしまったの」
「え……? そうなの?」
「これでは、ますます怪盗ジャンヌはテロリスト扱いですわね」
「そう……」
ツグミの表情を窺う弥白。
その表情は、「本当は違うのに…」と語っているように弥白には思えます。
やっぱり、この方はかなり「知っている」んだろうか。
「(いけませんわ)」
弥白としては、ツグミを困らせるつもりは無いのです。
それなのに、口から出て来るのは想いとは逆の言葉ばかり。
「簡単には人は変われないものですわね」
「え?」
殆ど声にはなっていない呟き。
それにツグミは耳ざとく反応します。
「あ…、独り言ですわ。そうね、私も変わらないといけませんわね」
「変わるって、弥白様?」
「稚空さんのことよ」
「名古屋君の?」
「観覧車の中で、稚空さんの心が何処にあっても構わないって言いましたわよね? それ
は私の本当の気持ち。だけど、それは私の願いではない」
稚空さんは私の許嫁。彼の存在は私にとって全て。
彼にとってもそうだと信じて来た。
だけど、あの女がその想いを打ち砕いた。
あの女さえいなければ……。
そう思い、この1年を過ごして来た。
だけど……。
「婚約者だなんて、親同士の決めたことなどどうでも良い。私は稚空さんのことが好き。
もし、稚空さんに他に気になる方がいるのでしたら、その方のことを稚空さんが見ないよ
うにするのでは無くて、その方よりも私が輝けば良いのですわ。だから、私はもっと、こ
れまで以上にあの方に見て頂けるようになるつもり」
そう。稚空さんは最後には必ず私を選んでくれる。
この前だって、私にそれを証明してくれたじゃない。
「……」
弥白がツグミの方を見ると、ぽかんとした表情をしていました。
取りあえず、話を上手いこと誤魔化すことが出来たかしら。
「取りあえずは、次の全国大会ですわ」
「新体操の?」
「ええ。また、個人戦で日下部さんと競うことになりますわ。そして、全国の他の強豪と
も。ここで勝って、あの人の前で輝いてみせることが当面の私の目標」
「流石ですわ弥白様」
「が…頑張って下さい」
「全国大会。ツグミさんも見に来て頂けるかしら」
「ええ。元々、日下部さんにも誘われていましたし」
「やっぱり、日下部さんの応援?」
「ええと…」
「それで構いませんわ。でも、その次位には私を応援して下さる?」
「もちろんよ」
微笑むツグミを見て、漸く弥白は胸を撫で下ろすのでした。
*
それから暫く違う話題──稚空と弥白の昔話──を聞かされて、日付が変わる頃には休
みましょうという話になりました。
椿により2階に用意された寝室へと案内されたツグミ。
何とか歯を磨いてから、ベッドに倒れ込むように横になってしまいます。
イカロスが、主人のことを心配するようにベッドの側によってくるのを物音と匂いで感
じたツグミは、その方向に手を伸ばします。
イカロスの頭に触れたツグミの手。心配しているかのようなその想いが伝わって来ます。
「イカロス、心配してくれているの? 私は大丈夫よ」
ツグミはそう呟きます。
「山茶花弥白さん……。弱さと強さを使い分けられる人……」
俯せになり、暫くイカロスの頭を撫でていたツグミはやがて仰向けになります。
「……やっぱり無理ね。私には」
そう呟くと、羽根布団を被ってしまうツグミ。
やがて、眠りへと落ちていくのでした。
*
その夜。佳奈子は弥白の寝室へと招かれました。
二人でも広すぎる位の弥白のベッド。
前にも見た事があるのですが、圧倒されてしまいます。
思わず、弥白よりも先にベッドに飛び込み柔らかさを堪能してしまい、後で顔を赤らめ
てしまいます。
「あ、あのごめんなさい。私、つい……」
「良いのよ」
微笑みながら、弥白もベッドの上に上がります。
「明日は早いわ。もう寝ましょう」
「はい」
二人して、布団の中に潜り込みます。
「あ、灯りを…」
「大丈夫よ」
灯りを消そうと、布団から起き上がった佳奈子を制し、弥白は枕元のテーブルにあった
リモコンで消灯してしまいます。
暗闇に包まれた寝室。僅かにカーテンの隙間から漏れる光だけが灯りです。
「弥白様」
眼鏡を外そうとして、思いついたように佳奈子は隣の弥白に呼びかけます。
「何?」
「どうして、ツグミさんに名古屋さんのお話を?」
瀬川ツグミ。弥白様のライバル、桃栗学園の日下部まろんの友人…というよりは恋人に
近い存在。今日見た彼女の様子は、聞いた話を裏付けるものだった。
してみれば、今日の弥白様の話は、日下部まろんに筒抜けになる恐れがあるはず。それ
なのに何故?
これだけの意味を込め、佳奈子は弥白に問いかけます。
「さぁ…。どうしてなのかしらね。私にも判らないわ。……そうね、強いて言うなれば、
誰かに聞いて欲しかったのかも。私の決意を。私と、稚空さんと、そして彼女を知る誰か
に……。後は………」
「弥白様?」
弥白の声は段々と小さくなっていって、最後には台詞は途切れて小さな寝息となってし
まいました。
「どうして、名古屋さんなのかしら」
しばらくして、微かな声で佳奈子は呟きます。
佳奈子は弥白が本当に眠っているのか、恐る恐る手で触れて確かめます。
本当に眠っていると確信してから、佳奈子は自分の顔を弥白の顔に近づけると、閉じら
れた弥白の目。そのまぶたに口づけます。
少し迷ってから、佳奈子は弥白の首筋にも同じ事をしました。
「お休みなさい。私の弥白様」
自分にだけ聞こえる声でそう言うと、佳奈子は眼鏡を外し、自らも眠りの世界へと旅立
つのでした。
(つづく)
次回は少し間が空くかもしれません。
# 黒ミサのため。^^;;;;
では、また。
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