Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
またまた一ヶ月空いてしまいました…orz
もう少し書きためてからと思ったのですが。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
この記事は、第174話(その14)です。
Message-ID: <newscache$j0vlqi$nc4$1@news01a.so-net.ne.jp>
にぶら下げる形となっています。
(その1)は、<newscache$7vxlqi$196$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<newscache$vkqyqi$s7d$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<newscache$itlbri$943$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その4)は、<newscache$g3gzri$c4h$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その5)は、<newscache$96vhsi$9h5$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その6)は、<newscache$zrwrsi$s4k$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その7)は、<newscache$p093ti$xrc$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その8)は、<newscache$i4bsti$q6h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その9)は、<newscache$kmlkui$f61$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その10)は、<newscache$0gaavi$und$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その11)は、<newscache$2dwgwi$cth$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その12)は、<newscache$7dr5yi$6oe$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その13)は、<newscache$sl1yyi$vn1$1@news01d.so-net.ne.jp>から
それぞれどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第174話『盲目の愛故に』(その14)
●桃栗町・花の国公園
「ここよ」
「へー。ここにレストランなんかあったんだ」
桃栗町の中心街から歩いていける場所に、桃栗花の国公園はあります。
四季折々の花がある特定の時期に一斉に咲くように自治体が管理している公園で、花が
咲く頃には外の町からも大勢の人が訪れるのですが、そうで無い時は近所の人の散歩コー
スとしても親しまれていました。
都がまろん達を引き連れ歩いて行くこと二十分近く。
公園の中には何時の間に出来たのか、一軒の真新しいレストランがありました。
「自家製のパンとハーブを使った料理を中心としたハーブレストランなの」
「良く知ってたわね」
「家族で行ったことがあるんだ」
「知らなかった」
「まろんも誘おうとしたのよ? でもその時留守で。さ、中に入ろ」
「うん!」
レストランは昼食の時間からやや外れていましたが、日曜日でもあるために席はかなり
埋まっていました。
比較的空いていた店の庭にある席にまろん達は通されました。
「うわ高!」
メニューを開いた瞬間、思わず呟いてしまったまろん。
都に、思いっきり睨まれてしまいます。
「パスタランチで良いかな?」
有無を言わさない口調で言った都。
単品は別としてランチメニューでは一番安いメニューを頼むところを見ると、この店の
値段に関しては同意見なのだろうとまろんは思います。
「はい」
「うん」
「そうだね」
「すいませーん」
注文を済ませると、暫くは雑談に興じていたまろん達。
海を見下ろす小高い場所にあるレストラン故、自然と景色の話題が中心となりました。
「そう言えば都、覚えてる?」
「何?」
「ツグミさんとお母様の写真。この公園で撮ったって話じゃない」
「そうだっけ?」
都の反応に、やっぱりツグミさんの話題はNGなのだろうか。
そう思い、まろんは恐る恐る都の表情を伺います。
「(あれ?)」
怒ったような表情を見せているのかと思えばさにあらず、都は何だかしょんぼりしてい
るように見えました。
「どうしたの、都? 顔色悪いよ?」
「え、あ、ううん。あたしは大丈夫だよ。大丈夫…。思い出した。まろんが言っていたの
は、イカロスが行方不明で探していた時、本の山に埋もれていたアルバムの中から出て来
た写真のことでしょ」
「うん。そうそう。あ…イカロスって、私の友達のツグミさんの盲導犬の名前なの。一時
期迷子になっていたことがあってね……」
チェリーに、イカロスのことについてまろんは説明しました。
「凄い大きな犬なんだよ」
昨日ツグミを案内した浩美が、そう補足しました。
「そう言えば、前にも聞いたかもしれないけど」
「え、何?」
「イカロスって行方不明の間、何処にいたのかな? 死んだとみんなで思い込んでいたの
に」
「そうだねぇ…」
まさか悪魔のミストと一緒でした、なんて言えるはずもありません。
「でも犬って凄いですよね」
「え?」
「南極に置き去りにされても生きていて御主人様を待っていたり、亡くなった御主人様の
ことを何時までも待ち続けていたり、遠くで迷子になっても御主人様のところまで歩いて
戻って来たり。イカロスが居なくなった間、どうしていたのか私にも想像は出来ないけれ
ど、きっとツグミさんって人のことを忘れずに、戻って来たんですよね」
本当はミストに返して貰ったんだけど。
まろんは心の中で突っ込みますが、もちろん口にはしません。
「うん。そうだねぇ。それにしてもチェリーちゃん、忠犬ハチ公とか、南極物語とか、随
分と日本の話に詳しいのね」
「えへへ…。ママから聞いた話の受け売りです」
チェリーは頬を少し赤くしました。
「それに引き替え人間様は……。うちのパパとママも今頃何処の空の下やら」
そう言い、まろんはため息をつきます。
「そう言えば、仕事で外国にいるんですよね」
「うん。でももう何年も顔を合わせていないし」
それが、悪魔に取り憑かれたせいだとまろんはノインから聞かされたことがあります。
しかし、それでも……と思わずにはいられません。
「大丈夫。きっと、まろんのパパもママも、まろんのことを忘れちゃいないわ」
真剣な表情で、都はまろんの手に自分の手を重ねます。
「仮に、まろんの両親がまろんのことを忘れていたとしても、あたしの家がまろんの家。
あたしとまろんは家族ってことでどう?」
都に真っ直ぐ見つめられたまろん。
自分の顔が赤くなっていないのかが気になり、横を向いてしまいます。
でもすぐに、心を落ち着けて都の方を見て言いました。
「ううん。やっぱり家族じゃないわ。それよりももっと大切なもの」
「な、何よ」
まろんは都の頬に手を添え、耳元に口を近づけて何事か囁きます。
すると都は顔を真っ赤にするのでした。
そんな都の表情の変化を見て、これで都の機嫌も直ったかなぁとまろんは思うのでした。
●桃栗町中心部
「私…涙なんか流していたの?」
噴水広場で昨日に引き続き再会したツグミと麗子──レイ──。
泣いていると指摘されたツグミは慌てて目元を手で拭います。
「今日も一人?」
「ええ。あなたも?」
「うん。ここ、良いかしら?」
肯くと、レイはツグミの右隣の椅子に腰を下ろすとコーヒーを注文しました。
「どうして泣いていたのかしら?」
「さぁ…。どうして泣いていたのか、私にも判らない」
レイはツグミの手に自分の手を重ねます。
すると、ツグミの心の中が手に取るように判るような気がします。
実際にはこの程度の接触で判るのは感情の「色」だけで、細かい部分は判らないのです
が。
「(寂しさ…?)」
情報によれば、神の御子──日下部まろん──とかなり親密な関係とされる瀬川ツグミ。
その彼女が寂しさを覚えるとすれば、得られた情報からはレイには一つの理由しか思いつ
きません。
「(神の御子と最近疎遠なんだろうか?)」
昨日、大切な人がいるのか、と聞いた時にツグミが口ごもったことをレイは忘れてはい
ません。
「(さて、どうしたものか…)」
レイは、自分の椅子を限りなくツグミの側に近づけつつ考えます。
「(魔界に棲む悪魔は人間の心の闇を利用し、人間を思うがままに操ると天界で聞かされ
た。でもそれは天界に棲む者も同じ。ただ、利用するモノが人間の良心や罪の意識である
ことだけが違い。そしてある人間にとっての良心は別の人間にとっての悪意に他ならず、
人間の罪の意識は心の闇とかなり重なる部分がある。結局、人間を利用して何かを成そう
としていることに、天界も魔界も違いは無い。私は魔界に来てそれを知った。だけど、出
来ればそんなことはしたくは無い……)」
そこまで考えた辺りでレイは思い出します。
自分が、何を手にしてここまで歩いて来たのかを。
「思い出した。今日は元々、貴方に用事があったのよ」
「私に?」
「そう。これよ」
レイはここまで手にしていた箱を持ち上げます。
ツグミは目が見えないのを思い出したレイは、箱をツグミの鼻先に差し出しました。
「あら、ケーキ?」
ツグミは鼻をくんくんと鳴らして言いました。
「そう。沢山貰ったので、お裾分け。昨日買い物に付き合ってくれたお礼も兼ねて、ね」
そう言えばあの出っ張りのある果物を未だ食べていなかったとレイは思い出します。
「ミナさんの具合はどうなの?」
「ああ。もう大事無い」
答えつつ、何か違和感をレイは感じます。
ただ、この時はその違和感の正体に気づかなかったのですが。
「それは良かった」
涙をそっと拭いつつ、ツグミは微笑みを見せました。
「早速、食べてみない? 美味しいぞ」
「ここじゃ駄目よ」
言うなり、箱を開けようとしたレイをツグミは止めました。
「この店に悪いわ」
「それもそうか」
「ね、良かったら家に来ない?」
「良いのか?」
「このケーキで午後のお茶にしましょう」
「では、今日はお言葉に甘えて」
そう答えつつ、心の中で「よしっ」と叫ぶレイなのでした。
(第174話・つづく)
今回のラストは最初から決まっていて、既に話は終盤に入っているような気がするので
すが……^^;;;; では、また。
−−−−
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Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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