携帯@です。

かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜第十二話「やがて恋が始まる」
について雑感など。


その前に、かしまし公式ハンドブックが発売となりました。

各キャラ毎に2〜6頁を使ったフルカラーキャラクター紹介(声優インタビュー、漫画版、
キャラクター原案、アニメ版のそれぞれの絵描きコメント付)、原作ストーリーダイジェ
スト、あかほりさとる、桂遊生丸、中西伸彰監督、花田十輝シリーズ構成、小説版の駒尾
真子のインタビューなどが掲載されています。

あかほり氏が「かしまし」の仕事をする時は、他の仕事を全部終えて、それだけに集中し
ないと出来ないと言っていたのが印象的(「毒素」を抜いてから集中するんですねと聞き
手の突っ込みも中々)。

総じて、作り手、中の人の作品への愛が感じられるかなり濃いファンブックだったかと思
います。代金の元は取れた。


では、色々な意味で話題沸騰の最終話の感想をば。
あまり好きではないのですが、最終話位は手動改行。

あのね〜

あ

の

ラ

ス

ト

シ

ー

ン

は

販

促

だ

〜

●また鹿縞山へ

はずむ「(とまりちゃん、いつもそばにいてくれた。小さい頃からずっと、ずっと…僕の
    ことを一番判ってくれる女の子。とまりちゃん、大好きだよ)」

はずむ「(やす菜ちゃん。寂しげな、けれど生きる力を与えてくれるような素敵なフルー
    トを吹く女の子。初恋の人。やす菜ちゃん、大好きだよ)」

はずむ「僕は、心のどこかで、女の子同士だからって、甘く考えてたのかも。そのせいで
    二人を…。本当に人が人を好きになるって、恋って…なんですか?」

 最終回なのでOPは無し。第1話と同様に夜の鹿縞山を登るはずむ。第1話では失恋の
痛みを忘れるためでしたが、今回は…。

 小さい頃から一番はずむのことを判ってくれる女の子、とまり。
 原作第1巻のおまけ四コマ漫画で登場した小さい頃に女装させられていたはずむのエピ
ソードが出て来ました。本当に、あの両親は女の子が欲しかったんですね(笑)。

 そしてはずむがやす菜に恋愛感情を抱いた理由が漸く。
 原作の第三巻ではもう少し詳しく描かれているのですが、最初は屋上庭園にまで届くフ
ルートの音に惹かれて…ということのようですね。とまりとのつながりの描き方に比べる
と弱い気もするけれど、第1話であのはずむが自分から告白しているくらいなのでそれ位
はまぁ。

 それにしてもはずむよ、初恋というなら「お婿さんにしてくれる?」とまで言ったとま
りの方が先だろうに。忘れた訳でも無し。……という辺りのはずむの意識からも今回はず
むが出した結論が予想されてしまいます。

 恋って何ですかというはずむ。要するに、それすらも理解しないままに今回の結論をは
ずむを出してしまったということかな?


●夏の終わりに

はずむ「はー。もう、夏も終わりだね」

 本編Aパート。荷造りしているやす菜。集合写真を手にして顔を背けるのが嫌過ぎです。
それぞれ家から出るとまり、そしてはずむ。
 「もう、夏も終わりだね」荷造りが一夜で終了するとも思えないので、前回の話から日
数が何日か経過しているんでしょうね。

 それは兎も角、はずむのヘソ出しファッションは凶悪だ。あんな酷いことを言いに行く
服とは思えない。

●はずむの選択

はずむ「あ、あのね、その、だから…」
とまり「なんだよ」
はずむ「だから、その…」
とまり「あのな」
はずむ「ちゃんと言う!」
とまり「あ…」
はずむ「ちゃんと言うって決めてきたんだ。だからちゃんと言うね」
とまり「はずむ」
はずむ「あれからずっと考えてたんだ。僕はどうしたら良いのか。どうしたいのか。自分
    で決めなきゃって、毎日ずっと。それで決めたんだ。僕、やす菜ちゃんの側にい
    る」
とまり「そっか」
はずむ「ごめんね。とまりちゃんの気持ちはとってもうれしいよ。けど…」

 とまりの家を訪れたはずむ。だがとまりは出かけた後。
 学校の屋上へ行くと、そこにははずむの家を訪れて空振りだったとまりがトマトに水を
やっていた。
 お互いに、話があるんだと言うはずむととまり。

 予想はしていましたが、嫌な予感が……。はずむが散々言い淀んでいる間、観ているこ
ちらがハラハラドキドキです。
 「僕、やす菜ちゃんの側にいる」ああっ、ついにはずむ言っちゃいましたよ。でも良い
の? 本当にそれで?

●報復の連鎖

はずむ「ごめんね。とまりちゃんの気持ちはとってもうれしいよ。けど…」
はずむ「わっ」
とまり「悪い、手が滑った」
(中略)
はずむ「待って、僕は本気で」
とまり「だから判ってるよ」
はずむ「え…」
とまり「はずむだったら、今、私がどうして欲しいか判るだろ」

 言い訳をしようとするはずむに、とまりは突然水をかけます。
 悪い、手が滑ったって、シャワーの先の部分外して、無茶苦茶わざとです。

 「はずむだったら、今、私がどうして欲しいか判るだろ。こういうことだよ」と更に水
をかけるとまり。
 明るい表情でとまりは言ってますが、要するに今は側にいないでって意味にしかとれま
せん。ああっそれなのに……。

はずむ「もう一本あるんだよーだ」
とまり「はずむ」

 はずむはもう一本あったホースで水をとまりにかけちゃいます。
 流石はずむ。空気を全然読めてません。いや、とまりの気持ちが判るからこそ、自分も
明るく振る舞ったのかな。ともあれ、女の子同士の水掛け大会キター!!

●水に濡れた美少女

はずむ「お日様の匂いがする」
とまり「ああ」
はずむ「とまりちゃん好きだったよね。干した布団にくるまるの」
とまり「布団全部山にして、二人で潜ってさ、家の母さんに怒られたよな」
はずむ「綿が悪くなっちゃうって、とまりちゃんお尻叩かれて」
とまり「なんでか知らないけど、お前は叩かれないんだよな」
はずむ「だって、、最初にやろうって言うのはいつもとまりちゃんだもん。お母さんだっ
    て判ってたんだよ」
とまり「でも、お前だって好きだったんだろ?」
はずむ「うん。暖かくて、安心で、気持ちよくて、ずっとこうしていたいなって」

 濡れ鼠になったはずむととまりが屋上に寝ころんでいます。
 各所でブラ透けキター!! と祭り状態だったようですが、二人とも下はキャミソールだ
ったような。どちらにせよ、濡れた二人の下着が透けて見える絵はグー。

 お日様の匂いがするというはずむ。
 小さい頃、干した布団にくるまったエピソード。
 暖かくて安心で、いつまでもこうしていたいなってというはずむ。それは要するに、こ
れまでのとまりとやす菜との関係のことですね。

はずむ「ねぇ、どまりちゃんの話って何だったの?」
とまり「もう良い」
はずむ「言ってよ」
とまり「最後に一日遊んでくれ。それでお前のこと諦めるからって」

 前回とまりがやす菜に言ったとおり、とまりもはずむのことを諦めようとしていたので
した。
 とまりなら決めたら速攻で言いに行きそうな気がするのですが、それでもやっぱり言う
のには躊躇いがあったらしい。

 はずむに先に言われてしまったので、帰ろうとするとまりを呼び止め、はずむは今日一
日遊ぼうと言います。

●最後のデート

 田村ゆかり…というよりは来栖とまりの歌う「半分」をBGMに、はずむととまりの最
後のデートが描かれます。

 自転車で出かけた二人の最初の行き先が、番台亭の一貫チャーハンの大食いだというの
がとまりらしい。

 バッティングセンターで意外と上手いバッティングを見せるはずむ。運動神経、一応あ
ったんだ…。ちなみに「かしまし」公式ファンブックによると、男の子の頃のはずむは園
芸をやっていた関係で意外と筋肉があったとか。女性化した際、その筋肉が柔らかいお肉
に…というのがあの犯罪的なボディの秘密。

 ゲームセンターのクレーンゲームの横でじたばたするはずむのリアクションが可愛い。

 エスカレーターでとまりのスカートの中身が見えちゃうと、お尻を押さえるはずむ。第
2話でされたことをやり返してますが、とまりの履いていたのはスカートぢゃないです。
…というか、そういう服の存在を知らなかったのか。未だ未だ女の子経験の浅さを露呈し
ています。はずむの母は偽スカートは不許可?
 説明するとまり。捲ってしまうはずむが何とも。

 カラオケに入った二人。とまりが入れた曲は、「梅雨空のイルクーツク」
 …って、イルクーツクに梅雨、無いし(そういう突っ込みをする場面じゃないのは承知
で)。

●それぞれの願い

はずむ「やす菜ちゃんが良くなりますようにって」
とまり「あ…」
はずむ「ごめん。言わない方が良かったね」
はずむ「とまりちゃんは?」
とまり「あたしは良いよ」
はずむ「ずるいもん。僕だけ言わせて」
とまり「しょうがねーな。一緒だよ」

 鹿縞神社にお参りした二人。とまりに何をお願いしたのかを訊ねたはずむ。
 ここまでのデートシーンで、とまりを振った直後であることを二人とも微塵も感じさせ
なかったのですが、ここでとまりの願いを聞くとははずむも中々残酷。本人、全く自覚は
無いですけど。

 ばすむの願いはやす菜が良くなりますようにということ。
 謝るはずむにとまりは、はずむの願いと一緒だと言います。

 初見の際には、とまりもやす菜の方が自分よりもはずむを必要としていることを認めて
いた上、ちゃんと友達になっていたので、本気でやす菜が良くなるようにとお願いしてい
たのかと思ったのですが、本当はとまりは、はずむの幸せを願っていて、はずむの願いを
聞いてやす菜の幸せがはずむの願いだから、それに合わせた、というのが真相なのでは…
と後から考えました。

 でも、その後のはずむの笑顔を見ると、はずむはとまりの心中はあまり深く考えてなく
て、自分と同じ想いでいてくれて嬉しいという感じしかしません。
 とまりがもう帰ろうと言ったのも、結局はずむの頭の中はやす菜のことで一杯だからと
感じたからでしょうね。

 最初はグーとジャンケンで階段を下りていくとまり。子どもの頃、やりましたね。今の
子どももそういう遊びするのかな。最近の子どもが遊んでいる場面を見かけないので。ち
なみにグーで勝たなかったのは大人の事情でしょうか。…って、この遊びに使う言葉、全
国共通なんだろうか。

 そんなとまりを見て、ばすむは最後にお願いがあるんだと言います。

 その頃、家を出発しているやす菜。両親が付き添って上げたりしないのかな。もっとも、
どちらも見えないので、側にいない方が良いと思ってのことでしょうけど。二人が遊んで
いる間に、やす菜が居なくなっていたりしたら、一生後悔しそう。^^;;;;

●公道で二人乗りはいけません

とまり「このまま海まで行くか?」
はずむ「海…あ……うん。本当に行けたらいいね」
とまり「遠すぎる、よな」
はずむ「う…とまりちゃん」
とまり「黙れ」
はずむ「とまりちゃん!」

 Bパート。橋の上のあゆきは、はずむの自転車が残されているのに気づきます。ところ
で河川敷に「私有地」とあるのが目に付きます。何の意図があるのか、そもそも河川敷が
あんなに長い区間に渡って私有地なんてありか? …と思ったのですが、二人乗りしてい
るのも私有地なら問題なし、という意図らしい。

 とまりの漕ぐ自転車の後ろに乗っていたはずむ。「普通、こういうのは男が漕ぐもんだ
ぞ」「だって僕、もう女の子なんだもん」お約束、お約束。

 子どもの頃に帰り、二人乗りで自転車ではしゃぐ二人。「このまま海まで行くか?」と
言われ、「海…本当に行けたら良いね」というはずむ。
 今日一日、という約束で遊んでいるという現実。二人して判ってはいたけれど、表面に
出さないでいた現実を二人は思い出すのです。
 それまでの笑顔が嘘のように、あふれ出すはずむのとまりへの想い。
 はずむはやす菜を選んだ、というよりやす菜を選ばなければいけなかったという義務感
がやはりこの期に及んでも強いような。

 今回のはずむととまりのシーンを観ていると、何だか「神無月の巫女」最終話の戦いの
後で別れる直前の姫子と千歌音を思い出してしまいます。

●思い出は誰にも侵せない

はずむ「だって…だって…だって…」
とまり「もう良い加減、そういうのは卒業しないとな」
はずむ「でも」
とまり「決めたんだろ」
はずむ「うん」
とまり「じゃあ、お前が泣いちゃ駄目じゃないか」
はずむ「そうだよね。でも、とまりちゃん優しくて。僕凄く酷いことしてるのに、優しく
    て。元気づけてくれて。ごめんね…ごめんね…」
とまり「謝るな…謝るな! そんなことして欲しくない。あたしのことは気にすんな。お
    前が自分で決めてくれて、嬉しかったよ。やす菜なら、まぁ、許せるしさ」
はずむ「とまりちゃん!」

 耐えきれなくなってとまりに抱きついたはずむ。
 自転車毎斜面を転がり落ちた場所が第6話と前話で登場したドラム缶のある、二人の思
い出の場所だというのは凄い偶然というか。

 とまりを振っておきながら、はずむの方が先に泣き崩れちゃいました。
 そんなはずむをとまりは激励します。振られたとまりの方が振ったはずむの背中を押し
てやって励ましているのって一体。はずむも自分で酷いことしていると理解はしているよ
うですが。

●生涯ストーカー宣言

とまり「はずむはさ、いるから、いつも、あたしの中に」
はずむ「とまりちゃん」
はずむ「川、渡ってくれただろ。あたしのお婿さんになるってさ。あの時のはずむはさ、
    ずっとずっとあたしのものなんだ。あたしだけのものなんだ。誰にも渡さない。
    誰にも奪うことの出来ない、あたしだけのものなんだ」
はずむ「う…」
とまり「凄いだろ? そんな物持ってるんだぞ、あたしは。はずむが結婚して年取っても、
    ずっと自慢してやる。プロポーズしてくれたはずむを。あたしを好きだって言っ
    てくれたはずむを」
はずむ「う…」
とまり「よぼよぼになって死んじゃうまで、はずむの子どもにはずむの孫に自慢してやる。
    お前の親は、お前のばあちゃんは、あたしのために川を渡ってくれたんだぞって。
    あたしをお嫁さんにするために。世界で一番凄いことしてくれたんだぞって」
はずむ「うう…」
とまり「だから行けよ。あたしは大丈夫だから」
とまり「平気だから行けよ」
はずむ「う…」
とまり「行けよ。行け! 男だろ?」

 子どもの頃、自分にプロポーズしてくれたはずむ。
 その思い出だけは誰にも奪うことが出来ない。はずむとの思い出を胸に残りの人生生き
ていくつもりですか(泣)。
 虚勢張っているとまりちゃんが痛々しくて見ていられません。
 もっとも、はずむが結婚して年取ってもって、やす菜とは結婚出来ないしましてや子ど
もも出来ませんが、そんな突っ込みを入れる場面では無いですね。

 いやもしかしたら、過去のはずむはやす菜には奪えないし、はずむの未来もやす菜は得
ることなんか出来ないと自分で自分に言い聞かせているのかも。
 はずむの子どもに昔のはずむが自分に凄いことしてくれたと自慢する、というとまり。
一生はずむきゅんのこと追いかけるつもりですか?

 そこまで言われ背中を押されても泣き続けるはずむを動かしたのが、「男だろ?」と、
本作の主題を否定するかのような言葉だったのが印象的。この台詞は今でもはずむを男と
して見ているとまりにしか言えません。

●言ったそばから…

とまり「やだ…行っちゃやだ」

とまり「やす菜が待ってる」
はずむ「うん」

とまり「追いかけて、くる訳ないか」

とまり「あ…覗きか、趣味悪いぞ」
あゆき「肩が必要かと思ってね」

とまり「お前の肩なんて要らないよ」
あゆき「とまり」
とまり「あたしには自分の足がある」
あゆき「あ…」

あゆき「あたしが代わりに泣いてあげる」
とまり「サンキュー、あゆき」

 駆け出したはずむ。…しかし、すぐにスローダウン。とぼとぼと歩くはずむ。大丈夫か
な…と思っていたら、とまりの方が先に崩れちゃいました。
 立ち去る速度に比べ、「行っちゃやだ」と聞こえてから戻って来るのが早いこと。とま
りを抱きしめるはずむ。何だか、キスしているような態勢ですが、直後のシーンから見る
と抱きしめていただけ?

 このまま想いが溢れてとまりエンドか? …と期待させておいて、とまりは「やす菜が
待ってる」と言います。

 ところで今日やす菜が祖母の所に行くということ、二人は知らないと思うので「行け
よ」というのはちょっと変な気もします。やす菜の家に出かけて告白して来いってとかな
ぁ。

 はずむから離れたとまりは、思い出の石伝いに川の向こう岸へ。

 振り返ると、もうはずむの姿はそこにはありません。微かに、追いかけて来るかと期待
していたんですね。
 そんなところに現れたのはあゆき。はずむの自転車が河川敷にあったので…ということ
なのでしょうが。
 肩が必要かと思ってというあゆきに、自分の足があるというとまり。
 近づいてくるあゆきの顔は、まるでとまりにキスしようとしているかのよう。

 とまりを抱きしめて泣いているあゆき。
 前回に引き続き、あゆき×とまりな場面です。「あたしが代わりに泣いてあげる」と言
い、泣くあゆき。あゆきはとまりの方こそ幸せになって欲しかったのかな。あゆきちゃん
はとまりちゃんを幸せにしてあげて下さい。

 はずむのことが好きだとやす菜に言ったあゆき。でもとまりのことも大好きで、舞台に
上がらないのはとまりのためだったということなんでしょうね。だからとまりが傷ついた
時、あれだけ怒りを見せた。
 はずむがやす菜に奪われた今、あゆきととまりの間を阻むものは何もありません。

# ……いや、あゆきは実ははずむがやす菜に取られた悲しみで泣いているのかもしれない
# けど。

●そして世界が開く

やす菜「こんなに人がいるのに、あたしには誰も。もう、誰も…」

はずむ「やす菜ちゃん、怖がらないで、僕のお願いを聞いて欲しいんだ」
やす菜「お願い」
はずむ「僕の、僕の側にいて欲しい」
やす菜「嘘」
はずむ「嘘じゃない! 決めたんだ。やす菜ちゃんの側にいるって。だから!」
やす菜「信じて、良いの?」

やす菜「はずむ君!」
はずむ「やす菜ちゃん、大好きだよ」

 学校の屋上にいたやす菜。日暮れと共に屋上を去ります。
 はずむとの思い出に浸っていたのかな? その間、はずむがとまりといちゃついていた
というのを知ったら何て思うことやら。

 一人鹿縞本町駅に向かったやす菜は、ぶつかって落とした鞄を拾ってくれた女性も認識
出来ません。こんなにも人がいるのに…。女性どころか、周りの風景全てがやす菜に認識
出来なくなっていきます。

 そんな中、もやもやの中から声をかけてきたのははずむ。
 僕の側にいて欲しいんだと言われ、すぐには信じられないやす菜。
 でもやす菜の側にいると決めたと言われ、抱きしめられた上で、「やす菜ちゃん、大好
きだよ」と改めてはずむがやす菜に告白した瞬間、やす菜の世界が実にあっさりと開け、
男性まで見えるようになったのは驚きです。
 認識出来なくなるのも一瞬だけど、治るのも一瞬。愛の奇跡という奴ですか?

 この治り方からすると、やす菜が父親を認識できないでいたのって、何だか父親自身の
やす菜への接し方に問題があるような…。

●お前だけには言われたくない

宇宙仁「人を求める心、他者を慈しむ心。愛、愛を語ることは難しく、愛を見ることも出
    来ない。それどころか、愛は時に苦痛をうみ、互いの溝を深め、傷つける武器に
    さえなる。しかし彼らはそれでも彼らは愛を求める。それが生きる目的だから。
    誰かとの別れを悲しみ、誰かとの出会いを喜び、心を通わせ、笑い、泣き、怒る。
    その一つ一つを経験するために、その中にある愛を求めて、命は生きようとする
    のだ。もし、君達の星に選択の時が来たら、どうか、過ちをおかさないで欲しい。
    どんなに苦しくても、どんなに辛くても愛が無ければ生命は生きていく価値を失
    うということを」
(中略)
ジャン・プゥ「プゥ。愛しいオネニーサマと皆さんに、ジャン・プゥからお別れの涙プ
    ゥ」
宇宙仁「愛しい?」
ジャン・プゥ「だって、オネニーサマはジャン・プゥのファーストキスの相手でプゥ。初
    恋の人でプゥ」
宇宙仁「生体端末のお前が…。つくづく愛とは偉大なものだな」

 はずむとやす菜の姿を見て、何やら愛について語っている宇宙仁。
 人とのコミュニケーション能力が欠如している星の出身である宇宙仁さんに愛を語る資
格があるんですか?
 母星へと去って行く宇宙仁とジャン・プゥ。ジャン・プゥは光の雨を街に降らせます。
愛しいみんなとオネニーサマのための涙というジャン・プゥ。
 愛の無いはずの星の技術で作った生体端末が愛を宿すということは、宇宙仁さんの母星
でもコミュニケーション能力を取り戻す可能性が出て来たということですね。

 オネニーサマはファーストキスの相手ということですが、これは第1話でぶつかった時
のことですね。原作のスルーされていたエピソードがこんな所で。

 宇宙船は地上の人間達からも見えていました。見上げるはずむの両親の側に、植えてあ
るのは第1話ではずむが植えると言っていた梅でしょうか。芸が細かい。並子先生が泣い
ていたのは、宇宙仁さんの正体に気づいていたのかな。
 そして、とまり、明日太、あゆきも空を見上げています。

 寄り添うはずむとやす菜の上に降り注ぐ光の雨。ホワイトクリスマスの代わりというこ
とですか。

●ED

 EDも特別版。曲も「キミのためにできること」と別の曲に。
 新学期。はずむの両親は、可愛い服を着せようと相変わらずの様子。はずむが食べてい
たベーコンエッグ載せトーストは原作でも食べていたメニューですね。

 父のトーストを奪って食べちゃうやす菜。以前の話で食卓にいないやす菜、というシー
ンと比べて大きな変化。すっかり病気は治ったばかりか性格まで明るくなったようで何よ
り。

 はずむの家に迎えに来ているとまり達。何だか、第1話の友達関係に戻ったということ
なのかな?
 出て来たはずむのスカートが捲れそうで、デレッとする明日太にとまりがキック! し
ゃがんだあゆきはとまりのスカートの中身を覗こうとしている風にしか見えないのは気の
せいでしょうか?

 宇宙仁さんの写真を手にして歩いている並子先生。最終話でもやっぱりマンホールに落
ちますか^^;;;;

 学校で待っていたやす菜と二人で屋上庭園の世話をしているはずむ。
 そして、とまり達も含めてみんなで昼食。

 やす菜ととまりの二者択一が苦しくて、逃げ回って、最悪の結果を迎えそうだったはず
むやす菜を選ぶことはとまりとの別れを意味しており、以前やす菜とキスした時にそうな
りかけたのですが、EDではやす菜以外とはずむとの関係は、第1話以前とほとんど変わ
らないようですね。
 とまりは相変わらずはずむとは仲良くしている上、やす菜とのことも応援していてやす
菜との関係も良好。
 この世界って、実は女性化したはずむが望んだ世界そのままなのでは?

 やす菜が病気故にはずむからもとまりからも放っておけなくて、やす菜が選ばれたとい
う展開がちょっと不満だったけど、みんな幸せそうだからこの結末もありかな、と思いか
けたのですが……。

●そして舞台の幕は真冬に上がる

やす菜「あのね」

はずむ「とまりちゃん!」
とまり「う…」
はずむ「あのね!」

 花壇の世話をしていたはずむ。とまりとあゆきの誘いをはずむは断ります。
 花壇に植わっていたのはまたプリムラ?

 やす菜と花壇で待ち合わせていたらしいはずむ。
 二人が手を繋いで仲良く歩いて行くと、第1話ではずむが告白した桜の木が。
 ここで、やす菜ははずむの手を離して「あのね」と言います。
 思い詰めたような、それでいて柔らかい表情に見えたやす菜。

 ここで改めて告白して二人の愛を確かめて終わりでも、何かを言って何を言ったのか視
聴者に想像させるのでも、どちらにせよやす菜エンドとして王道のラストシーン。全てが
始まった場所でもありますし。

 成る程、こういう終わらせ方かと肯いていたら、直後に驚愕展開に。

 やす菜が「あのね」と言った直後。
 舞台は河川敷。とまりの横を悲しげな表情で走りすぎたはずむ。
 思い出の石伝いに川を渡り向こう岸からとまりに「あのね!」と呼びかけてのエンディ
ング…。

 えええええええええええええええええええっ!?
 直前まで綺麗なやす菜エンドの話をしておいて、このラストは何なのでしょうか? 画
面の前で思わず固まってしまいました。軽くネットを巡回した限りでも、一同唖然、そし
てかなりの割合で不評の嵐。

 このラストシーンさえ無ければ、やす菜エンドに不満を覚える人は多くともここまで叩
かれることは無かったと思うのですが…。
 はずむが川をとまりの目の前で渡るという行為は、とまりに対するプロポーズの再現に
他ならず、やす菜に振られてとまりエンドになるということ?
 それにしても話が急過ぎです。これじゃとまりも怒るだろ…と思いつつ再度視聴してみ
ると、はずむととまりは冬服。一瞬で3〜4ヶ月は経過した模様。

 この間に何かあったんだなと匂わせ、最後にははずむはとまりを選ぶ(か、いつまでも
三人で)ということを示唆しているのでしょうね。10月発売の予定のDVD収録の第13話
が出るまで、一体二人の間で何が起こるんだと色々と議論を呼びそうなずるいラストシー
ンだと思います。某作品の故事に倣い、「あのね」止めと認定しましょうか。

●今回の総評

 やす菜を選ぶことを決意したはずむ。
 そしてそれを受け入れたとまりの最後の一日をじっくりと描いた最終話。

 選ばれたはずのやす菜が屋上で放置され、その時とまりとはずむが二人で一緒に過ごし
ていたというのは、ブーイング覚悟と思われるラストシーンへの前振りだったような気が
します。

 はずむがやす菜を選んだのも、とまりがそれを受け入れたのも、結局ははずむがいない
とやす菜がどうにかなってしまうから。そしてやす菜を癒すことが出来るのは、はずむ以
外には出来ないと考えられたから。

 なので、はずむがやす菜を選んだのは運命であり義務であるように見え、はずむととま
りの関係は、運命によって引き裂かれたようにも見えます。二人はこんなにも想い合って
いるのに、やす菜を救うというはずむの運命のためにそれを諦めてしまう。最後のデート
とお別れのシーンを観ていると、そのように思えてなりません。

 全てが終わった時にはずむの手を離したやす菜。やす菜は自分こそがはずむを縛ってい
たことに気づいて、運命から解き放って上げたのかも。
 ……という辺りは推測するしか無く、推測するにもあの一瞬だけでは何とも言えない訳
ではありますが。

 ……そんなことを考えたりもしたので、実のところラストシーンを観た時、呆れかえり
つつもほっとした自分が居たのですが、そう思う人は多分少数派。

●シリーズ全体を通して

 最初表明したように、本作の原作のファンでした。
 男の子が女の子に性転換して、波乱が何度もありつつも女の子同士の緩やかな三角関係
が始まる…という原作の魅力をアニメでも楽しめるのだろうかと思ったのですが、蓋を開
けてみれば、ストーリーは原作に沿っているはずなのに、シリーズ構成、オリジナルシー
ンの追加ではずむ、とまりにやす菜の女の子同士のガチな恋愛物となったので吃驚です。

 原作は未だ継続中でもあるので、はずむに無理に二人のうちどちらかを選ばせるような
ことはしないだろうという予想も大外れ。
 「かしまし」公式ファンブックには、監督の中西氏とシリーズ構成の花田氏のインタビ
ューが掲載されているのですが、監督の中西氏は当初ラストシーンはみんなで集合写真み
たいなイメージだったそうですが、花田氏はいわゆるハーレムエンドにはしないつもりだ
ったそうです。やられた。ちなみにあかほり氏は「はずむは男に戻ることはない」、「は
ずむが女の子になった戸惑う描写はあまり入れない」という点以外は、アニメに特に介入
しなかったとか。

 女の子同士だから、と三角関係を単純に肯定するのでは無く、きっちりとはずむにやす
菜を選ばせたこと、そしてその上でとまりとはずむの最後の一日を丁寧に描いた上での、
やっぱりはずむに「行かないで」というとまりは良かった。本作の真ヒロインは誰がどう
見てもとまりです。
 そんな辛い別れがあった後で、やす菜エンド。こちらもきちんと病気が治って良かった
です。とまりとも友達のままで居られて、全ては丸く収まって…と心爽やかなEDかと思
ったら、最後の最後をあんな形で締めたものだから、この先が気になって仕方が無いじゃ
ないですか。

 テレビシリーズ本編がやす菜エンドで綺麗に終わらせ、第13話でラスト15秒の話をやっ
てとまりエンドということにすれば、誰も文句をつけない(むしろとまりファンからは絶
賛でしょう)はずなのに、ここにこうして思わせぶりなシーンをつけることで、作品全体
の価値が下がったかのように叩かれてしまうのは非常に残念です。

 私的に殆ど殿堂入りな作品ではあるのですが、テレビシリーズのラストで思わせぶりな
ことをしたのでちょっと減点(それでも殿堂入りですが)。

 しかしこんなことをしておいて、生半可な出来の第13話を作ったら未来永劫スタッフ
を恨んで、地獄通信にアクセスしてしまいそうです。
 ……と、普段ならばスタッフへのお礼を書くべきところをスタッフへの応援の言葉に変
えて、「かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜」スレッドの最終話の感想を終えたいと思
います。

 みやこしさん、木津さん、佐々木さん、村上さん、渋谷さん、長田さん他全てのフォ
ローをつけて下さった方も、本当にありがとうございました。

 いずれまた、次の作品で。
−−−−

携帯@ mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp