In article <cs38d1$dit$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>,
 "Hiroyuki" <smine13@hotmail.com> wrote:

> ひろゆきです
> 
> #ちょっと興味が湧いたので追求してみた
> 
> "Hiroyuki" <smine13@hotmail.com> wrote in message
> news:cqfvn6$okn$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp...
> 
> > そのぐらいの変化以上の変化を持つアリルだってあるだろうに、どうやって
> > 特定の遺伝子で推定できるんだろう。
> 
> Molecular evolution of FOXP2, a gene involved in speech and language
> ENARD et al. Nature 418, 869 - 872 (2002)
> をざっと読んでみました。よく分からない部分は飛ばし
> 読みなんで大いに間違えてると思いますが・・・
> 
> なるほどねぇ。この遺伝子は機能するアリルが2つ揃
> わないと(つまりホモのことかな?)でないと障害が起
> こるんですねぇ。この論文ではあまり確かな推定はで
> きてないようですね。機能するアリルが人類に固定さ
> れた時期は、結局人類史の最後の20万年の間に起
> こったことだぐらいしか言えてないようです。

私もこの論文にざっと目を通してみましたので、少し補足いたします.まず、
要点を簡単に紹介します.

1) FOX2P(全長715アミノ酸)のアミノ酸配列はきわめて保存的で、2個
 所にあるグルタミンの反復配列の長さの変異を除けば、ヒトとマウスの間
 でも3個所のアミノ酸しか違わない.

2) チンパンジー、ゴリラ、およびアカゲザルのFOX2Pでは、マウスとの違
 いは1個所しかみらない.つまり、3個所のうちの2個所はヒト固有であ
 り、また、ヒトの集団内では固定している.

3) ヒトに固有な2個所のアミノ酸が、チンパンジーとの共通祖先からヒトが
 分かれてから正の自然選択によって固定した可能性を検討するため、さま
 ざまな人種のヒト20人、チンパンジー2頭、オランウータン1頭につい
 て、FOX2P遺伝子のイントロンの配列を決定、比較した.

4) その結果、中立仮説からの予想に比べて、(1) まれな対立遺伝子が過剰で
 あること、(2) 派生対立遺伝子の頻度が高いことから選択浄化、つまり正
 の選択が働いたことが示唆される.

以上が主要な結果で、これから2個所のアミノ酸がヒトの集団で固定した年代
を推定しているのですが、それほど信頼できるようなものではないと思います.
最尤法を用いて推定した結果はなんと0年(95%信頼限界は0〜12万年)と
でたそうです(^^ゞ 近年の人口の急増による効果を考慮すると、固定年代は
おそらく1万〜10万年前であろうというもので、解剖学的に現在のヒトが成
立したと考えられる20万年前以降のことであろうというのが結論です.

という次第で、20万年という数字には.95%信頼限界の12万年よりは大
きいといった程度の根拠しかないと思います.こういう数字はとかく一人歩
きしがちですが...

-- 
Yoshiaki FUYAMA
fuyamay@cosmos.dti2.ne.jp