Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
佐々木@横浜市在住です。
# 「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から着想を得て
# 書き連ねられているヨタ話を妄想と呼んでいます。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第175話『霧が晴れたら』(その14)
●桃栗町の外れ・何処か
その敵に対する最初の反応は三人の性格がそのまま表れたものでした。トキは
慎重さ故に相手の出方を見、稚空は相手の姿に先手を躊躇、アクセスは相手の
姿がハッキリと見えた時点で即座に気の集中を始めていました。そして準備が
出来た途端に光球を撃ったのも当然アクセスです。そして敵、ユキはその動きに
ぴったりと呼応して片手をさっと横に振りました。まるで光球を手で払いのける
様な動きでしたが、それは光球がアクセスの手を離れるよりも先の事。実際には
その手の動きに合わせて空間が青い炎を上げて燃え、その炎が消えた後には極く
小さな球体が数個現れています。球体は光球とは違い金属光沢を持つ固体であり、
ユキの身体からある程度の距離を置いた空間に留まり浮いています。そして
アクセスの放った光球の接近に合わせて素早く移動し、その正面に激突。直後
には光球もろとも爆裂していましたが、それは光球の大きさの割には控えめな
爆発でした。
「あれ?」
思わず呟いたのは攻撃を放ったアクセス自身。ですがトキと稚空も同様に
不審そうな表情を見せています。
「何だありゃ」
「アクセス、どういう手応えです」
「何か、吸い込まれた感じ」
その答を聞いた直後には自らも光球を放つトキ。渾身の一撃という訳では無い
ものの、瞬時に放ったものとしては力を込めています。ですがそれも先ほどと
同様に敵には届かずに消滅してしまいます。トキはアクセスの言った感触を
自身でも確かめ、同時にもっと別な事実にも気付きます。
「殖えてます」
「え?」
「あの球体です。数が初めよりも多い」
稚空とアクセスは言われてから初めて、その球体をざっと目で数えました。
「そう…か?」
「変わらない気がするけど」
「見ていてください」
トキは今度は見るからに気の入っていない、かなり小さめの光球を放ちます。
三人が見守る中、それは例によって擦り寄ってきた球体に阻まれ消失します。
直後、一緒に消滅した球体の浮かんでいた辺りを埋める様に別な球体がするり
と移動して来ますが、良く見ると光球が炸裂した辺りにも別な球体が何時の
間にか存在しており、更に全体としては以前と同じ程度の密度に見えるのです。
「ほんとだ、減ってない」
「というより、僅かずつですが増殖しています」
「攻撃が切っ掛けになってないか」
「そう、見えますね」
「何だよ、攻撃出来ねぇじゃん」
「型通りの手では」
「ならコレはどうだ」
言うが早いかブーメランを放つ稚空。今度は数個の球体がまとめて移動し、
飛来したブーメランを上下から挟む様にして受け止めてしまいます。それから
球体は手を離すかのごとく力を抜き、ブーメランは乾いた音を立てて床に落ち
てしまいます。そして球体は元の場所へとふわふわと戻って行きました。
「駄目か」
「あの物体は殖えませんでした。幸いです」
「何か、バカにされた様で嬉しくないぞ」
「あちらも同じ事を思ってそうだ」
「は?」
アクセスの指摘に稚空が目をこらすと、敵は何故か口元を不満そうに曲げて
いる様にも見えるのでした。
*
わざわざ空間移動するまでもない距離。玄関ホールを見下ろす階段の途中にて
客の来訪に気付いていたにもかかわらず、すたすた歩いて現れるのは悪魔らしく
無いというエリスの指摘に素直に従ったユキ。そこで一旦無関係な場所へ移動
した上で、敵の正面へと転移して来ていたのです。そうやって空間から忍び出
ながら、ユキはそっとエリスに話しかけていました。
“出現!って感じにしてみたんだけど、ちょっと派手過ぎかしら”
“いいえ、丁度良いですよ。ユキ様、格好良いです”
“考えてみると何だか演出っぽくて恥ずかしいわ”
“良いんですよ、実際演出なんだから”
“格好、変じゃ無い?ちょっと布が薄過ぎた気がして、下着とか透けてないかな”
“大丈夫です。ちゃんと隠れてますから”
本当は身体の線が見えるくらいに透けた方が神秘的な感じがして良いんだけど、
とは思ったものの、それを言うときっと敵にそれと判ってしまうほど赤面する
だろうと予想できるので言わずにおいたエリス。しかし声を出さない会話を
成立させる為に、ユキに対して心を大きく開いている最中でしたので印象だけは
しっかり伝わってしまっています。
“殿方には、そういう方が喜ばれるのかしら”
“まぁ人によりけり、ですね”
ミカサ様はどう思われるかしら、と呟き以下の囁きに似たものがエリスに届き
彼女を微笑ませます。逆にユキからエリスに余計な事が伝わるのは、単にユキが
迂闊な所為ですが。
“聞いてあげましょうか”
“え?”
“ミカサ様、透け透けの服はお好きですかって”
“嫌!駄目よ、そんなの!”
思わず正面に居る訳では無いエリスに向けて手で払う様な仕草をしてしまう
ユキ。そして同時に、彼女を守る楯でもある枷が自動的に作動してユキの中の
一部分を眼前に迫った敵の攻撃に集中させます。そしてほぼ瞬時に展開した気の
流れが凝縮して球体となり、以後は自律して続く攻撃を防いでいきました。
“便利だなぁ〜”
“どうせ私は仕事にも集中出来ない子供よ…”
まだ引きずってるのか。今度は注意深くユキに向けては開いていない、心の
奥底で呟くエリスでした。そしてこうも考えます。ユキ様は間違いなく、あの
方の妹君ですよ、と。
*
敵=悪魔の背後でエリスがそっと壁際まで退って行くのに気付いた稚空は少し
だけでしたが、複雑な思いにとらわれます。そして何とはなしに呟いた言葉に
トキは別な側面から同意していました。
「あの悪魔が居れば、アイツはする事が無いんだな」
「用心しましょう。強力な敵です」
「だけど眺めていても始まんないぜっ」
そしてトキが止める間も無くアクセスはユキに向けて突っ込んでいます。即座
にトキと稚空も続いていました。何れにしろ、光球を撃ち込んでいるだけでは
事態は変わらないとはトキ自身も考えていたのです。そして稚空もまた、先程
落とされてしまった武器を拾う為にも前に出る必要がありました。真っ先に
飛び出したアクセスは何故かいきなり拳を繰り出していましたが、球体が数個
集まって見事にこれを受け止めてしまいます。トキは両手にそれぞれ可能な
限り小さくまとめた光球を作り出していて、これをユキの身体に押し付ける
様にして放出。充分に間合いを詰めていた為に、これには球体が割り込む隙は
ありませんでしたが、ユキ自身が即座に瞬間移動して避けています。結果として
外れた光球がホールの奥の壁を穿っただけ。稚空は丁度ブーメランを拾って顔を
上げたところでユキの移動を目撃していた為、新たに現れた場所へと進む方向を
変え、投げる代わりにブーメランの縁を刃物の様に扱って斬り付けます。ですが
やはり少し躊躇があり、充分深くは踏み込んで居なかった為に再度球体に押さえ
込まれてしまいます。もっとも、稚空もそれは予期していた為にそのまま力を
更に加えて振り貫いています。ユキは咄嗟に半歩退き、それまで彼女の占めた
空間を勢いは殺されながらも稚空の一撃が横切っていきました。ユキはそのまま
片手を前に突き出し、即座に三個の光球を生成します。稚空は自分が最初の標的
になった事に狼狽しつつ後退。ですがユキの光球は彼女の腕の向きとは全く関係
なく踊る様に三方向へと飛び出して、一つずつが三人の相手へと勝手に向かって
いくのでした。稚空は真上から来たソレをギリギリまで待ってから避けて床で
炸裂させ、トキとアクセスは障壁でこれを防ぎました。一旦はユキを囲む形に
なりかけた三人でしたが、今の攻撃から囲む意味は低いと判断し再び並ぶ形で
ユキに対峙しています。
「邪魔だなアレ」
「アクセス、手は大丈夫なのか」
「ん、あぁ別に。むしろ肩がグギってなった」
「直接触れた感じはどうです」
「硬い様な柔らかい様な」
「稚空さんの印象は」
「意外に軽い。見た目は金属っぽいが木の玉みたいな感じだ」
「ところで、気付いてますか」
「何が」「何にだ」
トキが指差した先にはユキが居て、その周りには相変わらず球体が浮かんで
彼女を取り巻いています。最初はトキが何を言っているのか判らなかった二人。
ですが良く見ると球体の様子が変わっていました。
「また増えやがった」
「いやまて、大きさが違うのが混ざってないか」
「ほんとだ」
「稚空さんが斬った分です」
「え?」「俺が?」
恐らく光球の様な“気”に拠る攻撃は吸い込まれて増殖の為に使われてしまう
が、原始的な攻撃からは糧が得られず斬られると再生しないのではないか。
トキはそういった趣旨の仮説を二人に手短に伝えます。原始的という点が少し
だけ引っかかったものの、一番効いたのが自分の攻撃という点では稚空は悪い
気はしませんでした。もっとも、それは一瞬の優越感でしかありませんでしたが。
「でもよ、増えちゃったら意味無いじゃん」
「くそ。確かにそうだ」
この間、三人が顔を突き合わせて話し合っていたなどという事は当然無く、
じっとユキから目を離さずにいました。ですが相手から動く気配は無く、何か
様子を見られているかの印象です。その事が、特にトキには引っかかるのでした。
*
唇に柔らかく、そして熱いものが触れる感触。どうやらそれもまた唇で、その
表面は濡れていて触れただけで吸い付くように纏わり付きます。そして触れる
唇の間からは、何かしっとりと溢れるものがあります。それは逃がしては良く
ない気がして、自分から更に唇を押し付け舌で舐めとろうとするのですが、舌を
這わせると奥から余計に溢れてきて、しまいには合わせた唇と唇の間から滴り
落ちてしまいます。今度はそれを手ですくおうとするのですが、指先に纏わり
付くわりには、さらさらと指の間を流れていってしまいます。逃がさない様に、
もっと強く唇を合わせないと…相手の身体をきつく抱きしめようとして、手が
何も無い空をまさぐっている事に気付きます。ハッとして目を開くと、ぼんやり
と薄暗いながらも暗闇では無い部屋の壁が見えます。まだ霞んだ心の中で、
まろんはツグミが何時部屋の模様替えをしたのだろうかと考えていました。
首だけを少し動かし壁にそって視線を動かしていくと、部屋を柔らかく照らして
いる明かりが見えました。
「(蝋燭…ツグミさん、寝室で火を使ったりして…危なくないのかな…)」
“危ないから、この家には火が着く物はなるべく置かないのよ”
何時であったかツグミが語った言葉が鮮明によみがえり、まろんは途端にバッと
ベッドの上で身体を起こします。
「ここ、何処!」
咄嗟に部屋中を見回し、全く見知らぬ場所である事だけは即座に理解するまろん。
同時に無意識にまさぐったベッドの上で、別な身体が横たわっている事に気付き
ます。
「ツグミさんツグミさんツグミさんっ」
ツグミがどういう状態なのか先ず確かめるべきだろうとは全く思いもせず、ただ
ひたすらツグミの身体を揺さぶるまろん。幸い、彼女もまたただ眠っていただけ
であり、揺さぶられて良くなかったのは寝覚めだけでした。
「…はぁ、ぃ…何…」
「ツグミさんっ、起きて!」
「おはよう…日下部さんが先に起きるなんて珍しいわ」
「朝じゃ無いと思う…多分」
「じゃぁ何…」
まろんと同じく身体を起こし、しばらくぼんやりとしていたツグミ。ですが突然
ベッドの縁から足を下ろすと逃げる様によろよろと歩きだし、そして壁に思い
切りぶつかってよろめきながら部屋の隅にうずくまりました。まろんが慌てて
助け起こそうと近づきますが、ツグミは背中を向けたままで、手を振り回して
追い払う様な仕草を見せました。
「来ないで、放っておいて」
「ツグミさん」
「駄目、ごめんなさい、急に電話で呼びつけて、あんな…」
振り回される腕を素早く掴み、その腕を引く様にしながら彼女の背中に身体を
押し付けるまろん。そのまま背後より抱きしめてしまいます。
「ツグミさん、落ち着いて。私は気にして無いし、むしろ嬉しかった」
「…でも…嫌だわ、恥ずかしい」
「いや、今更ああいうのを恥ずかしがる仲じゃ…」
言ってしまってから、やはりかなり恥ずかしいと思い直してしまい真っ赤になる
まろん。同時に身体も火照ったらしく、それがツグミにも伝染します。
「…ほら、恥ずかしがってる」
「……ちょっと、ね」
暫くの間、そのままじっとしていた二人。やがてまろんがそっと立ち上がります。
回した腕をほどかず、一緒にツグミを促しながら。
「立てる?さっきぶつかったけど、何処か痛く無い?」
「平気よ。ところで、此処は何処?」
「あ、やっぱり判るんだ」
「だって私の家の寝室、ベッドから壁までこんなに離れて無いわ」
「おぉ、成る程」
「それで此処は?」
「知らない。目が醒めたら二人で寝てたの」
「目が醒めたらって…何時から眠って…」
「それは、その…」
「日下部さん?」
どうやら自覚が無いらしいツグミにむけて、彼女の熱い口付けの直後から眠って
いたらしいとは言いづらかったまろん。しかし何と説明したものかと口ごもって
いる間に、ツグミの方が何かを察してしまっていました。
「私が、また何かしでかしたのね。それでこんな事になっているんだわ」
そこで押し黙ってしまうツグミ。まろんは唇を噛んでいるツグミの肩にそっと
手を回して寄り添います。
「大丈夫。私が何とかするから。何度でも」
「…ええ」
「(あぁもぅっ!ションボリしているツグミさんも可愛いっ!)」
等と考えていると、まろんは不思議と元気が湧いてくるのでした。
(第175話・つづく)
# 何となく、この妄想を書き上げる前に
# fjとの縁が切れそうな気がしてきた…
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■ 可愛いんだから
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