Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
佐々木@横浜市在住です。
# 「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から着想を得て
# 書き連ねられているヨタ話を妄想と呼んでいます。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第175話『霧が晴れたら』(その10)
●桃栗町の外れ・何処か
初めは慎重に行動していた稚空達でしたが、一旦敵の攻撃を受けてからの行動は
迅速でした。反撃は最低限度に止め、むしろ殆どは受け流す戦法で前進する事を
最優先としたのです。その結果、今では既に敵陣のかなり深い所へと到達して
いると確信するに到っていました。何しろそこは。
「五里霧中という事ですか」
「え?」
「周りがサッパリ見えない事を言うのさ」
「ふ〜ん。でも稚空のソレなら見えるんだろ」
「敵がある程度近くに居ればな。離れてると見えない事には変わり無い」
「何だよ〜、駄目じゃんか」
「そう言うなよ。気配は?」
稚空の問いかけはどちらへとも無く発せられた物ですが、応えたのはトキの方。
「相変わらずです。消えるでも無く近づくでも無く」
「やる気が無いのか、あいつら」
「その点なのですが、今更ながらに不自然な気がしています」
「罠だと、そう言いたいのか」
「判りません。罠なら、もっと引き入れてから攻撃して来るべきとは思います」
「じゃ、普通の敵襲への応戦なんだろ」
「そうなのでしょうが、何処かが妙な」
暫く押し黙る三人。最初に口を開いたのは稚空です。
「でもな。罠であれ何であれ、俺達の次の行動は同じなんじゃないか」
トキが珍しく苦笑気味の表情を見せました。
「実はそうなのです。我々には前進しか選択肢がありません」
「何だよ、なら行こうぜ」
「おう」
力強く相槌を打った稚空に頷いて見せ、見通せない先を見る様に振り向いた
アクセス。その彼の障壁を激しく震わせる一撃がやってきたのは、まさにその
時でした。
*
スコープの中に見える敵の像が動きを止めた時、本来ならば引き絞られるはずの
彼の指を止めたのはヘッドセットから流れた言葉でした。彼は沸き起こる笑みを
押し殺しつつ、銃身に込められた弾丸をレバー操作で発射する事なく排出します。
それからおもむろに胸のポケットから取り出した予備のマガジンを、既に銃に
刺さっていたマガジンと交換します。新たなマガジンに入っている弾丸、見た目
は先ほど取り出した弾丸と殆ど同じソレの、唯一異なる点は弾丸の先端近くに
ぐるりと帯状に模様が入っている事でした。実際にはそれは、目を近付けて委細
に見る事によってやっと模様では無く何らかの文字であると判る物でした。
魔界の、主に人族が中心となる技術者集団が考案した魔術を文字で固定する技法。
人族の魔術師達が呪符と呼ぶ、紙に魔術を封じ込めるアイデアを弾丸へと応用した
代物の、それは試作品の一つでした。そして彼のヘッドセットに続けて届いた
知らせは、まさにその弾丸を使うべき時を示していました。
「よし。H、K、及びPQRの前衛各員は敵の背後に。追いたてろ」
彼は自分の銃の銃身を撫でながら呟きます。
「行くぜ相棒」
引き金を引き絞る指に、そして支える腕に伝わる心地よい反動に彼は目を細め
ます。二発、三発と繰り返す毎に恍惚感は高まって行くのでした。
*
「うぉっ、重い」
障壁その物を押し返す激しい衝撃に思わず声を洩らすアクセス。実際それは、
彼が声を上げずとも傍に居たトキや稚空の息を飲ませるのに充分な攻撃でした。
必要にして充分な範囲に展開していたアクセスの障壁全体が、敵の攻撃に反応
して光を放ちます。それが何度も続いた為、アクセスは稚空を含めて全方位へ
向けていた障壁を攻撃を受けた側=背後へと集中しなければなりませんでした。
そしてがら空きとなった正面には即座にトキの障壁が集中されます。
「これはまるで」
「何だ何だ、今度は悪魔族の攻撃かよ」
「いや違う、さっき通り過ぎた時に食らったのと同じ閃光が見えてる。銃だ」
「でもこの圧力はさっきと全然違うぜ」
「分析は後です。少なくとも私たちは彼等の戦力を侮った、そういう事です」
「ちくしょうっ!反撃の隙が無い」
「アクセス、行け!」
「でもよう、それじゃ稚空が」
「俺は大丈夫だ。何処から撃っているのか見えてる。立ち止まらなければ何とか
なるさ」
「…判った」
障壁を展開したまま、敵が潜んでいると思われる方向へと飛び出すアクセス。
同時に稚空は全力疾走で前進を再開、トキは呼吸を合わせて彼の前を飛翔します。
*
前線より入る報告から、相手が分断された事を知ったオットーは呟きます。
「おいおい、脇が甘過ぎだろ君ら」
それから即座に次なる指示を出しました。
「軍曹。彼等にちょっと教えてやってくれ。自分達の情況を」
「了解」
簡潔な応答の後、軍曹と呼ばれる彼は自身の武器の引き金を引きました。続けて
レバーを操作して次弾を装填。彼はセミオート並の速度で、連射の利かないはず
のボルトアクション銃を操ります。そして彼の銃は一昔前の大砲のごとき低音の
唸りを上げて、普通は生き物へ向けて撃つ物では無い20ミリ口径の弾丸を吐き出す
のでした。弾丸は正確に彼の前方を横切る様に飛翔する天使=アクセスの頭部を
目指して着弾。ですが正確過ぎたが故、それはアクセスの正面側に集中していた
障壁の半球を斜めにかすめて爆裂していました。それでも、その衝撃はアクセス
を真横に吹き飛ばし一時的にではありますが彼の意識を朦朧とさせる威力をみせ
たのです。
*
「アクセス!」
爆音を聞き付けて振り向いたトキと稚空にはアクセスの姿は既に霧の向こうに
消えていて状況が判りませんでした。トキは心の声で何度も呼びかけ、稚空も
同様に彼の羽根を通して彼を呼んでいました。そして少しの間があった後、彼が
返事を寄越した事で二人同時に安堵の溜息を漏らします。
「大丈夫なのか」
「まぁ、な」
「アクセス、声が乱れていますが」
「あぁ…大丈夫だ、ちょっと食らったけど怪我とかは無いから」
「何だったんだ一体」
「良く判んないけど、さっきの奴の、もっと強力な奴かな。感じは同じだけど
とにかく強いんだ。障壁ごと吹っ飛ばされた」
「まだまだ敵には使っていない攻撃手段がありそうです。前進速度を落として
でも、障壁は全方位に展開したままとしましょう」
「了解。実はもうやってる」
その理由はトキと稚空にも直接耳に届いていました。ズスンズスンという、
およそ銃とは思えない音があれから連続していたのですから。
「まさか戦車でも混ざってんのか」
そう呟いてから、何かに気付いたかの様に足元を見る稚空。その様子に気付いた
トキが怪訝そうな顔を向けました。
「何か」
「今ほど天使の翼が羨ましいと思った事は無い」
「は?」
「いや、何でも無い。行こう」
これで地雷でも埋まっていたら終りだなという稚空の不安は、口に出すと余計に
歩きにくくなりそうだというもう一つの考えによって封印されるのでした。
*
同じ音を全く逆の印象 − 心地よさ − として聞いていたオットー。彼の許に
まさにその音を発生させている当人からの連絡が入っていました。
「隊長、駄目ですな。やはりあの障壁とか言う代物は貫通しません」
「そうか、貫けないか」
同時通話が可能な無線に他の戦士の声が割り込みます。
「軍曹の20ミリが駄目なら俺のじゃ余計無理だわ」
「ちぇっ、撃つ前から駄目って判ると面白くねぇなぁ」
「何持ってたっけ、お前」
「シモノフ」
「シモネタ?」
「くだらねぇ事言うな」
「折角だから撃っとけよ、気晴らしにはなるぞ」
「せめて足止めにはなるってくらい言ってやれ」
途中から紛れ込んだ部下の雑談に一言言い添えるオットー。直後には先ほどまで
とは異なる銃声が響いて来ました。そして着弾の際に起こる派手な爆裂音が、
少しずつ彼の方へと近づいています。
「どれ、一丁いってみるかな」
オットーは足元に下ろしていた背嚢から突き出している十数本の火器 − 棍棒状
の物やら筒状の何か − から一本を抜き出して肩に乗せ、その横に取って着けた
様に飛び出たスコープを目にあてがいました。そして狙いを定めて引き金を引き
絞ります。シュッンと軽い音と共に白煙が上がり、直後に筒の先の部分だけが
前方に向けて飛んで行きます。筒を無造作に放り出し、暗視機能付きの双眼鏡を
覗くオットー。軽く舌打ちして呟きます。
「前過ぎたか」
*
走る速度を少し緩めながら稚空はトキに声を掛けます。
「派手になってきた。敵が集まったのかな」
「いえ、どちらかと言うと初めから潜んでいた敵が動いたという印象です」
「そうか」
「それよりもっと気になるのは」
頷く代わりに正面を見据える稚空。
「真正面からだけは撃って来ないな」
「ええ。おそらく…」
途中で言葉を切るトキ。稚空も即座にその理由に気付きます。二人の耳には、
これまでとは異質な音が届いていたのです。ですがそれは身構えて音のする方を
見定めようとした二人の前方やや右よりから現れ、左後方へとかすめて通り過ぎ
てしまいます。それからやや間を置いて、かなり後方から大きな爆発音が聞こえ
て来ました。直後には土くれと恐らくは樹木であろうと思われるささくれ立った
破片が二人の上に降り注いでいました。
「今のは」
「冗談じゃない、RPGじゃないか!」
咄嗟に飛来した方向を凝視する稚空。微かでしたが、人影と思われる物が闇の奥
で白っぽく見えていました。
(第175話・つづく)
# あと何回で終わるのか五里霧中。(ぉぃ)
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■ 可愛いんだから
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■ いいじゃないか
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