Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
佐々木@横浜市在住です。
# 「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から着想を得て
# 書き連ねられているヨタ話を妄想と呼んでいます。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第175話『霧が晴れたら』(その7)
●桃栗町の外れ・ノインの館
忙しく外に飛び出したオットーでしたが、宿営に戻った訳ではありません。
単に習慣として連絡の際には見通しの良い場所に出るというだけの事。
とは言うものの館の周囲には彼がやって来た時には無かったはずの霧が、
にわかに立ちこめ始めていました。結界の中は昼間でも頻繁に霧に包まれます
が、この夜の物は少し気配が濃い様に感じられます。オットーは“ははぁ成程”
などとひとりごちながら適度にヨレヨレで着こなしているという感じの漂う軍服
をまさぐります。そして腿にあるポケットから、角の塗装が剥げて金属の地の色
が見えている通信機 − 実際に電波が出る本物で御丁寧にも魔力では無く電力で
駆動される品 ー を取り出し、腹心の部下である軍曹を呼び出します。ちなみに
軍曹と呼ばれる彼の階級は、実際には軍曹ではありません。誰彼と無く何故か
軍曹と呼んでしまうという、そんな風貌の持ち主なのでした。そして彼自身、
そう呼ばれる事に抵抗は無く、何時の間にか本名を名乗る事が無くなっている
のでした。
「軍曹か」
「はっ、何でありますか隊長殿」
「腕の立つ者を選抜して三個分隊を編成せよ。十五分以内に本営横手に集合」
「装備を決定する為に作戦概要の説明を願います」
「作戦については後で話す。全員、標準夜間戦闘装備。それと霧が出てきた、
動体検知機もあるだけ持って来い。プラス、今回の遠征で使いそびれている
“逸品(ヴィンテージ)”を各自持参」
「は?」
「イベントだ軍曹。留守番する奴らにやっかまれない様、極秘だぞ。ついでに
俺のコレクションも持ってきてくれ」
しばしの沈黙。そして力強く“イェッサー”と応答があった後に通信は切れ、
かっきり十五分後にはノインの館の庭には見るからに軍人といういでたちの者が
三十余名集結していました。ただし一点だけ、軍隊というモノを知る者が見れば
奇妙に思われる点があったのです。それは全員、誰一人として同じ武器を持って
いない事でした。そしてざわめきを聞きつけて外に出てきたノイン達もまた、
少なくとも組織化された軍隊の何たるかをある程度知っている者達でありました
から、彼等の奇妙さにはすぐに気付きます。そしてオットーが集めた人材を見て、
本当に嬉しそうに笑顔を綻ばせるノイン。そこから数歩下がった背後ではミカサ
とエリスが二人そろって同じような呆れ顔で肩をすくめており、更にその後ろ
ではユキとアンが不安そうに顔を見合わせていました。
「こんなもんで如何ですか」
「いや、実に結構です。ね、エリス」
「はぁ、まぁ良いんじゃ無いでしょうか」
「歯切れが悪いですね、あなたの発案なのに」
「内容についてはノイン様の決めた事ですから」
「嬢ちゃん」
オットーがつかつかと近寄って来て、迫力の笑みを見せながらエリスに問いかけ
ます。
「構わない、思った通りの感想を聞きたいな。俺たちは紳士だから何を言われ
ても怒らないぜ」
「本当に?」
「ああ。おい、そうだよなぁ?」
後の言葉は背後の部下達へ向けた物。がやがやと騒々しくしている割に、彼等は
事の始終をちゃんと聞いていました。そして全員が構わないという趣旨の返事を
返します。その殆どがスラングで、半分程はエリスにも意味不明でしたが。
「な。で、感想は」
エリスは両手を腰に据え、小首を傾げて見せてから宣言しました。
「武器マニアの集会にしか見えません」
これを聞いて、あわあわと見るからに動揺したのはユキとアンの二人。それ
以外の者は全員無言で凍りついた様に動きを止めました。そしてしばしの間
の後、オットー以下彼の部下全員が大爆笑していました。
「的確だなぁ、嬢ちゃん」
「その通りだぜメイドさん」
「言っとくがガンだけじゃなくてガールも大好きだぜ」
「ベッドで俺のマグナムも見てくれ」
「てめぇのデリンジャーなんか見たくも無ぇ」
「毎回一発で終りってか」
「勘違いすんなよデリは二発だ二発」
「上品に行こうぜ、子供が見てる」
「貴様、今度私を見て子供と言ったら殺すからな」
「軍曹。何故我が部隊はこんなにムっさいのでありますか」
「女が居ないからだろ〜」
「おいお前、今何て言った」
「女っ気無しって言ったんだよ聞こえなかったか」
「アタシの何処が女じゃ無いってのさ」
「俺等の辞書には雌ゴリラは女とは別の生物って書いてあんだよ」
「死ね馬鹿野郎」
「それと、こど…いや何でも無ぇ」
「そんな事よりメイドさんかみ〜ん」
「意味が逆だ馬鹿」
「いいんだよ奴は総受けだから」
「同じカマを掘った仲か」
「それ飯の間違いじゃねぇか」
「ぎゃはは」
途中から再びスラングと人族の方言の入り混じった歓声となりサッパリ意味が
判らなかったものの、とりあえず怒っている訳では無い事は伝わりユキとアンは
胸を撫で下ろします。そして同じく事が荒立たなくて良かったと思ったミカサは
別の感想も抱いていました。まるで悪魔族の騒ぎの様だと。この熱気と遠慮の
無さ、時に無礼とも思える事さえある前向きな考え方、つきない活力。それが
種族を越えて共有されるのが魔界の者になるという事の意味。自分にもやがて
彼等の様に、思う通りにのみ気楽に生きる日が来るのかどうかとミカサは考えて
みます。そしてそんな自分がまるで想像出来ない事に気付くのでした。
そんな彼の思いをよそに、ノインがオットーを通じて依頼した内容が再度その場
に集った戦士達に伝達されます。極くあっさりとしたメモが付されただけの、
館の周囲の地形図を全員に渡すという簡潔な方法によって。
「ん…」
殆ど全員が、今度は完全に押し黙ります。そしてオットーが全員の疑念を
代弁する形で確認を求めました。
「こいつは、マジですかい」
「ええ。本気ですよ」
ノインはにこやかに頷き、そして背後に控えていたユキを手招きします。勿論
その前には、ミカサに軽く頷きかけて同意を得た上で。そしてユキもまた同様に
ミカサの方を先ず見、それからノインの傍へとやって来ます。
「何でしょう、ノイン様」
「話を省略し過ぎた様ですので、貴女から簡単に説明を」
「そ、そんな、私出来ません。ミカサさ、隊長を差し置いて」
「構いませんよね」
その言葉はミカサに向けた物。同時にユキの縋る様な視線が彼に向けられます。
どうか断ってくださいとのユキの願いは、実にアッサリ退けられました。
「やってごらん」
「えぇ〜、でも」
「経験しておいて損は無いし、オットー隊長の部下なら統制もとれている。
悪魔族相手に話を通すよりはずっと楽なはずだよ」
その通りとの、自画自賛の声が戦士達の間から聞こえてきます。
「では、改めてお願いしますよ」
ノインに背を押され逃げられないと悟ったユキは、深呼吸を一つしてから皆に
向き直ります。
「では、地図に注目してください」
ユキが続けて何事か小さく呟くと同時に全員の手元の地図の上に、それまで
記されてはいなかった赤い文字がぼんやりと光りながら浮かびます。歴戦の
戦士達であり、幾人かは魔術もこなす彼等の中から感嘆の声と囃し立てる様な
口笛が響きます。
「敵は天使族二、人族一の計三名。我が陣地外縁部に接近中のはずです」
ちらりとオットーの方を見るユキ。さっと、何かユキの知らない小さな装置に
目を向けてからオットーは頷き返します。
「意外に慎重な連中ですな。結界の第一層到達まで、まだ暫くかかりそうだ」
「ありがとうございます。そこで皆さんには彼等の相手をして頂きたいのです。
その上で」
ユキが自分の手元の地図を指でなぞると、全く同じ軌跡が全員の地図の上に
浮かび上がります。
「彼等を此処へ追い込んでください。その後は私たちが引き継ぎます」
「確認したいんだが」
オットーがユキに身体全体を向けて尋ねます。
「敵に増援の可能性は」
「無いと思います。仮にあってもあと天使が一人」
「追い込むってのは必達条件かい?」
「そうです。ですが」
「ですが?」
「別に全員が追い込まれなくても構いません」
「一人二人倒しちゃっても構わないんだな」
「無論です。手加減も要りません」
「だとさ」
再び湧く戦士達。同時にあちらこちらからバシッガチャっといった、銃器を
作動準備状態にする音が響きます。
「参謀さんよ」
「…は?」
「ありゃ参謀じゃ無かったっけか」
「私はミカサ隊長の副官です」
「あぁ、じゃ副官さん。この地図、俺が書き込んでも皆に伝わるか」
「ええと、私が中継すれば」
「ミカサ隊長」
オットーは少し離れた所にいたミカサに声をかけます。ちょっと来てくれという
ニュアンスを悟ったミカサは、彼の方へとやって来ました。
「何か」
「すまんがちょっとの間で良い。副官殿を貸してくれ。この地図は便利だ」
頷くミカサ。
「ユキ、オットー隊長の手伝いを」
「はい…でも」
少人数での作戦でミカサの傍にべったり、という思惑からどんどんズレていく
気がする事が不安なユキ。
「ユキは私の考え方や物の見方に影響を受け過ぎるきらいがあるから、他の
指揮官の話を傍でじっくり聞いてみるのも良いだろう」
「はい…」
「期待してる」
「はいっ!」
「若いってのは良いねぇ」
オットーの茶々はユキの耳には全く届いていませんでした。そして茶々が全く
聞こえていないらしいと気付いたオットーは、今度は決して控えめとは言い
難い咳払いをしてユキの注意を引くのでした。
「そろそろ、中継って奴を頼めるかい」
「あ、はい」
少しばつが悪そうに目を伏せ、それから両手のひらを合わせるユキ。
次にその手を開いた時には、掌に一本の羽根ペンが乗っていました。
「これで書いてください」
「こりゃまた粋だねぇ」
今度はハッキリと恥ずかしそうに俯いてしまうユキ。それでも役目はしっかりと
果たしました。オットーが手早く、しかし正確に地図の上に引いた縦横等間隔の
線は即座に全員の地図に転写されます。更に続けて、地図の上辺と左辺に数字と
アルファベットを書いていくオットー。そうしてから、地図上の升目を二つの
文字の交点で呼び分けます。そして各升目に対して数名から時には一人を指名
すると、呼ばれた戦士は黙って頷き夫々の場所へと散って行くのでした。
(第175話・つづく)
# 下品な会話は書いていると止まらないので無理やり中断。(笑)
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■ 可愛いんだから
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■ いいじゃないか
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