SASAKI Masato wrote:

>もともとの質問の
>
「この元々の質問」は結局、大日本帝国憲法第三条は「君主無答責」を定めた
ものか「神格化」を定めたものか、に帰着する。これについては安井氏は「明
治末期から昭和初期にかけて通説であった立憲学派に言わせれば、明治憲法3
条は天皇の法的・政治的無答責を示す条文であり、『神格化』をことさらに規
定したものではありません。」とはっきり示されている。それに対して佐々木
氏答えて曰く、

>が純粋な歴史的な史実としてのそれを聞くのであれば
>それはfj.soc.lawではなくfj.soc.historyに投稿すべきですし
>それをあえてfj.soc.lawに投稿するのであれば
>その基準は現在の法律学においては……であると考えています。
>
>で、大日本帝国憲法の条文で言うなら
>「国家統治の大権は朕が之を祖宗に承けて之を子孫に伝うる所なり」
>などと言っておきながら
>その大権が制限的なんだという主張は
>解釈としてはやはり破綻していると言うべきではないでしょうか?
>
この部分の(1)前半は安井氏に対して、暗に、「純粋な史実」を語るのでは
なく法律学として語るべきであると「したい」ためのもので、それ以上の意味
は何もない。馬鹿馬鹿しくって聞いてられない話であるが程度を落として少々
付き合うことにする。

まず、「純粋な史実」とは何ぞや?史実に純粋・不純のへったくれなどあろう
筈はない。総ては「同じ」歴史上の事実であって、ただ、同分野を系統的に見
ると言うことがあるに過ぎない。まさに、安井氏のは「法解釈学史」を、それ
も「通説」を追い、分かりやすく紹介したものである。佐々木氏の好きな
「(当時の)通説」である。(笑い)

次に、これは何度も言っていることではあるが、訳の分からない「純粋な史実」
という視点で見ようと「法解釈学」という視点で見ようと、当時の学説がどう
であったかと言う「事実」は一切変わることは無い。観点を変えれば事実が変
わるとする誤謬をここでも犯して議論されている。尤も、佐々木氏の場合はい
つものことである。

(2)後半に移ろう。佐々木氏は、大日本帝国憲法第三条が、「神格化」規定
だとする自己の主張の解釈的根拠として「国家統治の大権は朕が之を祖宗に承
けて之を子孫に伝うる所なり」と言っていることと大権が制限されてはいない
ことを上げている。みるところ、安井氏とは視点が違うとされるところの、佐
々木氏のよって立つ「法解釈的」根拠とはたったのこれだけ。

思うに、「神聖にして侵すべからず」(三条)はいわば、天皇へのリップサー
ビスに過ぎない。当時の政治的美称也。つまり、天皇は、特に教養のない者以
外は通常の知識を元に考えれば神でないことは明らかであり、「大権」の根拠
を強調するための政治的文言に他ならない。当時通説であった「天皇機関説」
は天皇は単なる国の「機関」と捉えるのだから、「神」でないことは解釈上は
明らかであった。尚、以下のように言う学説がある。

   「明治憲法典は『大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す』と述べるほ
    か、天皇に多くの権能を規定していたが、教養有る者は、それを、君
    主制原理の<タテマエの表示>にすぎず、国務大臣の『補弼』によっ
    て決せられることこそ憲法の主旨であると考えていた。貴族院や枢密
    院、軍部などが天皇の権能行使に影響力をもつことは立憲的でないと
    考えつつ、他方、憲法典に規定もされていない内閣が国政を指導する
    ことを立憲的と考えたのは、このような考え方と関連している』と。
                           (小嶋・講話)

>まだ明解な記述としては2冊しか見つけていませんが
>そのいずれもが明治憲法を必ずしも立憲主義のものとしてはとらえていない
>総括をしていることは
>立憲主義的な解釈が多数派であったとする安井さんの指摘が本当だとしても
>法解釈学からは正当な解釈とは言えないという批判が妥当しますし
>

そんなめちゃくちゃな批判は妥当しません。「解釈学」とは言うけれども、そ
もそも、その「解釈学」が見えない。(笑い)

>だとするとそのような解釈がなぜ多数派を構成したのかという
>それこそ歴史学の興味深い話に突入できるのではないでしょうか?
>

逆さまの議論である。まず、後ろから。勝手に佐々木氏が歴史的説明にしよう
としているだけであって、安井氏の紹介は当時の「解釈」なのである。当時の
「通説」なのである。従って、解釈学的立場からはことさら興味深い話ではな
く、「正当な解釈」である以上、当たり前に多数を占めたと考えるべきである。

尚、明治憲法を立憲主義的だとしていないとするのは嘘である。先にあげた小
嶋・講話もそうだが芦部・憲法など、殆ど立憲的だとしている。すなわち、

   「わが国には、明治時代以前は、立憲主義的な成文憲法は存在せず…」
   「明治憲法は立憲主義憲法とは言うものの…」
   「明治憲法には立憲的諸制度も採用されていたが、…不完全…」

とりあえずいったん終了。

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one of the people in general