野村@物理.九大です。

"Kenji Kobayashi" <kenji@nasuinfo.or.jp> writes:

> 「波動関数は数学的実在だと考えます」を書いた小林@那須です。先の記事で
> は名のるることを忘れていました。

...

> >電波とか交流電流とかも複素振動なんだけど、どうします?
> 
> 交流回路での複素数は、単純に便法で使われているだけです。フーリエ変換と
> の相性が良いためです。交流信号が複素振動しているわけではありません。電
> 波の複素振動は不勉強で知りません。一般的ではないとも思います。
> 
> 交流回路では複素数をなくして sin/cos 表記をすることも可能ですが、波動
> 関数では複素数をなくすことができません。[P,Q] = ih` と複素数が基本的な
> ところで出てきてしまいます。自然自体が複素数を要求していると考えます。

電波の複素振動は、sin/cos 表記をすることも可能ですが、その場合、電場を
cos とすると磁場は sin の関係で、エネルギー、運動量の関係考えると必ず2
つ成分の組み合わせででますね。その意味では波動関数との類似性はあります。
違いは、電場、磁場を独立に観測可能であることでしょう。

その意味で電磁場の複素表示と波動関数の複素表示は意味が違います。

> でも波動関数には、
> 
>     ・直接に観測できない複素振動をしている
>     ・波動関数の振動数が、等速運動する座標系からみたとき変わってしまう
>     ・波動関数の遷移が光速を超えて瞬時に行なわれる
> 
> 普通の物理量ではありえない性質があります。河野さんは、それでも波動関数
> を物理的実在と考えられますでしょうか。

確かにおっしゃるとおりです。

波動関数を2つの実数の組として表現することも形式的には可能なようですが、
独立に観測可能ではないはずです。
# GON さん、間違っていたら指摘して下さい。

しかし、1つの平面波に対応する波動関数の位相は観測可能ではないですが、2
つ(ないしそれ以上)の平面波に対応する波動関数の位相差は観測可能ですよ
ね。
# 現実に電子波(中性子波)の干渉縞観測可能ですし。
これを波動関数の複素表示なしに説明しようとすると困難なことになりません
か?無論、他に確率密度、確率の流れ(いずれも観測可能)なものに対する保
存則や実験事実とも辻褄合わせなくてはなりません。

つまり、全体の波動関数の位相には不定性あり、観測手段もない(だから座標
系のとり方によって振動数変わっても、物理量には関係しない)が、位相差は
観測可能であり、位相差を表現する手段として複素数表示を用いていると。

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小林憲次さんの問は、
「では、波動関数の複素表示は認めるとして、波動関数全体の不定で観測手段
もない位相部分の物理的意味はなにか?」
と置き換えると意味があります。

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Kiyohide NOMURA
Department of Physics,
Kyushu University,
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