Sun, 03 Jul 2005 23:58:05 +0900,
in the message, <da8u11$p1k$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>,
Yasuyuki Nagashima <yasu-n@horae.dti.ne.jp> wrote
>相続の対象にならないとすれば、その理由は
>「被相続人の一身に専属したもの」しかあり得ません。
>役員職ってのはそういうものなんでしょう。

って言うか、「受任者の死亡は委任の終了原因」です(民法653条1号)。
で、「取締役と会社の関係は委任」(商法254条3項)。
なので取締役が死亡すれば委任関係が終了し取締役としての地位は消滅しま
す。
つまり、使用貸借における借主の死亡と同じで「死亡により権利義務関係が消
滅する」ので「相続の対象になりようがない」だけです。

ちなみにいわゆる執行役員みたいな「法律上の取締役でない役員」は、会社と
の間の労働契約に基づく地位であり労働契約は死亡により終了するのでこれも
同じ。
だけどこっちは、「死亡が労働契約の一般的終了原因であるという明文の規定
は無い」。


……尤も、形式的な話はともかく本質は共通。
つまり、権利義務の一身専属性の問題と受任者(或いは労働者)の個性の問題
はいずれも、当該個人が当該法律関係の当事者であることに重要な意味がある
ということに由来する。
その意味では、死亡を法律関係の消滅原因とする規定を明文でおいているかど
うかだけの違いと言っても間違いではない
(と言うか本質論として正しい。)。

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SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp