ども、みやこしです。

 前回、$10で買えるメイドロボなんて物を話題にしましたが、現代で、しかも
中程度の収入しかなくても、れっきとした人間のメイドさんを持つ事は可能な
ようです。
 ただし、場所はインド。
 こちらのサイトでは、商社の現地駐在員の夫と共に、インドに住んでいた方
の体験記が紹介されていますが、その中に、メイドさんに関する話題もあった
りします。
↓
http://www.chuzai-madam.jp/index.html

 結構シャレにならない話もあったりして、メイドさんに何か夢を抱いている
と悲しくなったりしますが、まあ、現実はこんなものなのかもしれません(^_^;

「英国戀物語エマ」第六章「訪問」

■朝の情景
 父リチャード・ジョーンズの朝は、執事のスティーブンスが持ってくる一杯
の紅茶と、新聞を読む事から始まります。
 新聞で、貴族の結婚相手を募集する広告を見て、この国を生きるのに一番大
切な事は身の程を知る事だ、と言う父リチャード。

 父が見ていた新聞広告は、直訳するとこんな感じです。
「名高い英国貴族の方との結婚を望みます。
 私は、礼節も教養もある、富裕なアメリカ人の娘です。
 私は、名高い英国貴族の方との結婚を望みます。
 私は、この結婚にあたり、6万ポンドを準備しています。
 より高い爵位には、もっと支払う用意があります。
 興味がある方はご連絡ください」

 意訳すると、画面に出ていた字幕の通り、「爵位を買うぞ」という事になる
んでしょうね。

 一方、先生の朝食の用意をするエマ。エプロンを着ける場面なんかをちゃん
と入れてくる辺りはさすがですが、残念ながらこの場面、第一章のバンクっぽ
い(^_^;
 先生の朝食は、紅茶と、パンが4切れ。それに一輪の花を添えるのは、女主
人に対するエマの心遣いなのでしょう。

 再度、ジョーンズ家の朝の風景。大勢のメイドさん達が、掃除に、朝食の準
備にと忙しく働いています。掃除をしているメイドさんの中に、フランシスと
メアリの姿も見えますが、今日はお喋りは無し(^_^;

 この辺は、後半に向けて、上流階級とそうでないものとの差を描き出そうと
しているのだと思うのですが、ちょっと露骨かな、という気がしないでもない
です。特に掃除をしているメイドさん達、一箇所に集まり過ぎのような…。

 また一方、前回の怪我のせいで、エマに肩を借りなければ歩く事もできない
先生。アルに杖を作ってもらおうかしら、と言う先生に、エマは、私は大変で
はない、と言います。
「大丈夫です。奥様の御用は、何でも私が…」
 今回ちょっと引っ掛かった点その1。エマのこの台詞、先生に対する気遣い
というか忠誠心というか、まぁそういったようなエマの気持ちを表わそうとし
たのだと思うのですが、自立しようとしている人に水を差すような感じにも取
れてしまって、ちょっとどうかな?という気がしました。この台詞の後の、先
生の微妙な表情が気になったというのもあるのですが。
#気にしすぎかな、という気がしないでもないですが。

 再々度のジョーンズ家。一家揃って食後のお茶を、といった感じです。父リ
チャードが葉巻を吸いに席を外した途端にお喋りを始め、ついでにコリンをか
らかって泣かせてしまうヴィヴィー。コリンはもう少し耐性を付けなければ(^_^;

 今回ちょっと引っ掛かった点その2。お茶の給仕をメイドさんがしていたの
にちょっと違和感が。給仕は、男性使用人(Footman)がするもの、というイメ
ージがありましたし、今までの話で出てきた食事の場面でも、給仕は男性がや
ってたように思いましたので。お客さんが居なくて家族だけの時は、こういう
事もあったのかな?と、とりあえず保留。

 ちなみに、ヴィヴィーがコリンをからかうネタにした、「アーサー王の死」
のビアズリーの画は、こんな感じでしょうか。
 ↓
http://www.babu.com/~laurel/arthurianpages/agbeardsley.html

 確かに、坊っちゃまが「おまえが見るようなものじゃない」というのも判る
気がします(^_^;

 さて、朝食の席に居なかったハキムはというと、テラス(というか、あれは
玄関の庇ですか?でかいけど(^_^;)に陣取って寛いでおりました。
 思うがままに振る舞えていい、とハキムの事を羨む坊っちゃま。百人近くの
使用人を使うジョーンズ家の跡取りとしての立場が、それを許さない。それを
ハキムも判っていますが、友人としての助言も忘れてはいません。
「自分が望めば、世界は変わるさ」
 そのハキムの言葉に、ただ微笑みを浮かべる坊っちゃまでした。

■逢引
 で、結局仕事も手につかず、出かけてしまう坊っちゃま。執事のスティーブ
ンスも行き先を知らない、というのを聞いて、父リチャードは今夜の舞踏会の
事が心配になってきた様子。

 坊っちゃまの行き先は、やはりエマの所です。いつものように、サラさんの
店で待ち伏せ…と思いきや、今日は、エマの方も店に坊っちゃまが居る事を承
知しているようで。店を覗き込むエマと、それを見てそそくさと店を出て行く
坊っちゃまとに、サラさんも半ば呆れたような、半ば微笑ましいような台詞。
「うちの店を堂々と逢引に使うようになっちゃったわね」
 逢引と言うには、一緒に歩いて話をするだけ、というあまりにも可愛らしい
ものですが、端から見ればやはり逢引にしか見えないでしょうなぁ。

 晴れたら一緒にどこかへ出掛けませんか、と坊っちゃまに言われて、嫌では
ないと答えながらもエマが困った様子なのは、もちろん先生の事があるからで
しょう。
 ここで先生の怪我の事を坊っちゃまに言うのかな?と思っていたのですが、
それには触れずに、雨が降りだした事もあって、エマは急いで帰ります。先生
の事を話さなかったのは、単に聞かれなかったからか、相手が坊っちゃまとは
いえ、主人の不調を妄りに話すものではない、と思っての事か、あるいは坊っ
ちゃまに心配を掛けまいと思ったのか、単なる制作者の都合か(^_^;

■舞踏会にて
 その夜の舞踏会。結局坊っちゃまはバックレてしまったようで、父リチャー
ドはハキムを連れて参加です。

 今回ちょっと引っ掛かった点その3。ハキムが、坊っちゃま抜きでこういう
場に出てくるというのがちょっと意外です。また、父がハキムだけを連れて来
る、というのも意外。
 まあ、ハキムは、こういう場自体は好きそうなのですが(^_^;
 ちなみに原作では、ハキムが舞踏会に出るのは、坊っちゃまがエレノア嬢と
初めて会った舞踏会の時です。話の順番が入れ替わっているため、アニメでは
出てきていませんでしたが。

 ハキムがお花抱えて回っているのを、壁際で憮然とした様子で見ている父リ
チャード。この様子が、第二章で壁飾りと化していた坊っちゃまにそっくりで、
さすが親子だなぁという感じです。

 その父に声を掛けるのも、やはりキャンベル夫人とエレノア嬢です。坊っち
ゃまが来ていないのを聞いて、残念そうな顔をするエレノア嬢に、今度遠乗り
にでも誘いに来てください、と言う父リチャード。くっつける気満々といった
感じですが、キャンベル夫人も坊っちゃまを気に入っている様子で、本人達の
いない所で着々と話が進んでいっているようです。

 そして父は、キャンベル夫人から、先生が怪我をした事を聞かされます。

 今回ちょっと引っ掛かった点その4。キャンベル夫人まで先生の事を知って
いるとは、アナタ何者ですか先生!?と驚いてしまいました。まさか、こういう
形で、先生の怪我の事が父の耳に入るとは。
 確かに、三十年余りに渡って家庭教師をしていた先生の事ですから、上流階
級の人達の間で多少は名が知れていても不思議は無いかもしれませんが、それ
がよりによってキャンベル夫人というのはちょっとビックリです。
 ちなみに原作では、父が先生の怪我を知ったいきさつは、はっきりとは描か
れていません。坊っちゃまが先に知っていて、ある日いきなり見舞いに来る事
になってます。小説版では、坊っちゃまが父に説教されている時に、答に困っ
た坊っちゃまがつい話してしまう、という流れになっています。

■訪問
 早速、見舞いの手配を調えた父リチャードは、坊っちゃまもしっかり同行さ
せます。

 今回ちょっと引っ掛かった点その5。父が、「今日の午後見舞いに行く、と
手紙を届けさせた」と言ってますが、いくらなんでも、手紙を届けた当日に行
く、というのは早過ぎるんじゃないか、という気がします。せめて、相手から
の返事を待ってから行くものなんじゃなかろうか、と。
 また、坊っちゃまが、いつの間にか先生の怪我の事を知っていますが、これ
も何時知ったんでしょう?
 直接的に聞いた話ではない、と言っていますが、エマから聞いたにしては、
先の「逢引」の時にそんな素振りはありませんでしたし(それに、エマから聞
いたのなら、直接聞いたも同然なので、この物言いはちょっと不自然です)。
画面に映っていない所で何かあったのかもしれませんが、ちょっと唐突な感じ
がします。
 ちなみに原作では、先生が怪我をするのは、ミューディーズの話の前になっ
ています。それで、エマが先生の代わりに本を借りに行く→エマ、受付の人に
代わりに来た理由を話す→エマ、坊っちゃまと遭遇→坊っちゃま、本を借りる
→受付の人、エマと坊っちゃまが話をしていたのを見ていて、先生の怪我の事
を坊っちゃまに話す−という流れで、坊っちゃまの知る所となります。

 さて、市場で買い物をしているエマ。アスパラは、原作では明言されてはい
ませんが、小説版では、先生の好物という事になっています。

 第一章からお馴染みの、八百屋の親子の公立学校(Board School)に関する
やり取りは、ほぼ原作通り。せっかく学校に行けて嬉しい所に、父親に水を差
されて不機嫌な姉ですが、エマに「頑張ってね」と励まされて笑顔が戻ります。
エマにしてみれば、学問で階級の差がどうこうなるものではない、という八百
屋のオヤジの言葉が、他人事とは思えなかったのかもしれません。
「頭のいい女なんて、嫁の貰い手も無くなっちまう」という、田嶋某とか土井
某とかが聞けば只では済まなさそうな台詞も、この当時においては、「典型的
な女性観」であったそうです。

 ちょうどエマが買い物から帰って来た所に、ジョーンズ家からの手紙が届け
られます。
 手紙の宛て名は、
“Mrs Kelly Stownar 122 Lit Marylebone Street, N.W. London”
「ロンドン市北西地区リトルメリルボーン街122番地 ケリー・ストウナー様」
てな感じでしょうか。実在する住所なのか、それともシャーロック・ホームズ
の家のように架空のものなのかは不明です。
 ちなみに、切手を貼っていない所を見ると、公共の郵便ではなく、ジョーン
ズ家の使用人を使って直接届けさせたようですね。

 エマが驚き、先生が「珍しい人から」と言った差出人は、ただ
“Richard Jones”
とだけ。手紙を読んだ先生に、ジョーンズ親子が見舞いに来ると聞いて、また
驚くエマ。

 そしてやって来た父リチャードと坊っちゃま。エマが、表を見ている時に手
を固く握ったり、いざ出迎えの時に深呼吸したりと、落ち着かない様子が何と
も(^_^;

■父、リチャード・ジョーンズ
 中に通されたジョーンズ親子。座ったままで出迎える先生に、丁寧に挨拶を
する父リチャードとは対照的に、エマの方ばっかり見ている坊っちゃまは、相
変わらず判り易すぎます(^_^;
 その坊っちゃまと、玄関で出迎えた時からずっと目を合わせようとしないエ
マが、これまた対照的。実際には、一瞬目が合いかける度に視線を逸らせてい
るようなのですが、この辺りの芝居がまた細かいです。

「まったく、万事において気が利かない息子で」
「良い生徒でしたわ。ただ少ぅし、気が散り易かったですけど」
 父と先生とに挟まれて、目の前で自らを評価される苦行に耐える坊っちゃま。
蛇に睨まれた蛙といった風情ですが、実際、原作では、先生と父の背後に蛇が、
坊っちゃまの頭には蛙が描かれていたりします(^_^;

 この辺りの、先生の見舞いに来たにも関わらず、いつの間にか坊っちゃまの
品評会になっている父リチャードと先生とのやり取りはほぼ原作通り。
 エマが、父にティー・カップを手渡してしまい、そのまま固まってるのも原
作通りなんですが、これ、未だに意味がよく判りません。基本的に、物を直接
手渡すのは失礼にあたる、というのがありますので、落ち着いてお茶を淹れて
いるように見えてもついそんなミスをしてしまうぐらい、実は坊っちゃまの事
や父の話が気になってしょうがないという、エマの内心を表現しているのかな、
と思うのですが、それにしては、そもそも父が先に手を伸ばしているというの
が謎ですし…。

 父の話は、更に坊っちゃまに家業を継がせるだの、身を固めるだのという所
にまで及びます。まとまりかけている話がある、との父の言葉に驚く坊っちゃ
ま。相手が、他ならぬキャンベル家の令嬢−エレノア嬢と聞いて、そんな親同
士が決めた話にハイそうですかとは言わない、と反抗しますが、父に、誰か決
めた相手がいるのか、と聞かれても答えられる訳も無く。

 この間、背中を向けたまま、黙々とスコーンの用意をしているエマですが、
父の「ジョーンズ家に相応しいレディなのだろうな?」という言葉を聞いて、
うっかり紅茶の中にスコーンを落っことしてしまう辺り、動揺しまくってると
言うか、注意が完全に背後の会話に向いていると言うか(^_^; しかも、先生に
注意されるまで、スコーンを落っことした事にも気付かないという、かなり珍
しい光景が見られます。

「お前の個人的な感情ももちろん大切だが、結婚は、同じ国同士が望ましい」
「いえ、別に外国人というわけでは…」
「英国は一つだが、中には二つの国があるのだよ。すなわちジェントリと、そ
 うでないもの。この二つは、言葉は通じれども、別の国だ」
 きっぱりと言い切る父リチャード・ジョーンズ。突きつけられる現実に、何
も言い返せない坊っちゃまと、表情を消したエマ。さすがに先生にたしなめら
れ、父もこの場に相応しくない話題であった事を詫びて、お見舞いを切り上げ
ます。
見送りの時も、坊っちゃまや父と目を合わせようとしないエマが印象的。
閉じたドアが、二人の間に立ちはだかる壁のように思われるラストシーン、ド
アの前に立ち尽くすエマの後ろ姿が、妙に小さく、また寂しげに見えるよう、
構図を取っているのが上手いなぁと思いつつ、続きは次回。

■次回予告
 第七章「水晶宮」。
 さてさて、次回はいよいよ水晶宮−クリスタル・パレスの一幕です。夜、二
人きり、見つめ合う二人と、怪しい雰囲気がいっぱいですね。エマが首に掛け
ているのは、前回先生から譲られたネックレスのようです。何か、気合が入っ
ている、かも(^_^;

■全体をみて
 今回は、Aパート全体とBパートの始めの所までがオリジナルで、エマの買
い物の所からが、ほぼ原作第七話の通りになっています。
 上でも書いてますが、今回は、オリジナルの部分でちょっと引っ掛かる所が
多く、また作画の面でもやや疲れが見えてきたような感じもあって、前半はい
ま一つ入りきれなかったのですが、後半はさすがと言うか、良い感じになって
きて安心しました。
 今まで、何だかんだありつつも、割と階級の差に煩わされる事無く付き合い
を続けていた二人ですが、ここに来て、一気に厳しい現実が見えてきたといっ
た感じです。
 物語の方は、原作の単行本第1巻の分を概ね消化した所。このペースで1ク
ールとすると、やはり原作第2巻までをアニメ化するという事でしょうか。原
作通りの展開で終わるのか、あるいは独自の結末を用意しているのか。
#もしかして2クールで、もっと先までやる、という事は…無いかな(^_^;

いよいよ、ふたりの物語は、激動の第2巻へと突入します。

では。

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宮越 和史@大阪在住(アドレスから_NOSPAMは抜いてください)
BGM : 小さな祈り by 岡崎律子