Re: 絶対収束する級数は収束する
平賀です。
前便は鴻池さんの疑問に十分答え得ているとは思えませんし、
かえってミスリーディングな点、私自身が十分詰めてなかった点もありますので、
改めて書き直します。
kounoike@mbh.nifty.com wrote:
> 鴻池です。
>
> "Yuzuru Hiraga" <hiraga@slis.tsukuba.ac.jp> wrote in message
> news:419729C7.1080807@slis.tsukuba.ac.jp...
>
>>なおちょっと注意が必要な点として、次の解答は似て非なるものです:
>> 「Σ|a_n| は収束するから、S+_n, S-_n は収束する。
>> そこで lim S+_n = P, lim S-_n = M とすれば、
>> Σ|a_n| = P+M であり、一方 Σa_n = P-M だから Σa_n も収束する。」
>
> ...(中略)...
>
> 上の場合でもS+_n, S-_nを使うなら単に途中の
> Σ{k=1 to n} a_k = S+_n - S-_n
> が無いだけのようにも思えるのですが。上の場合は,Σa_nを2つの部分級数に分割したと
> き,つまり
> Σ{n=1 to ∞} a_n = Σ{n=1 to ∞} p_n + Σ{n=1 to ∞} q_n ----(1)
> Σp_n,Σp_nが収束するので,Σa_nも収束するですよね?
> 数列と違うと所といえば,
> Σ{k=1 to n} a_n = Σ{k=1 to n} p_k + Σ{k=1 to n} q_k の式が成り立とうが成り
> 立つまいが関係ない(つまり,途中はどうでもよい。つまり(1)さえ成り立てば。)という
> ことくらいしか無い様に思うのですが。
> ...(後略)...
結論から言えば、鴻池さんのおっしゃるとおりで正しいです。
ただ、それは「数列の極限」の場合と同じ話ではなく、自明ではない、
したがって証明が必要でしょう、というのが言いたいことです。
S_n = S+_n - S-_n ...(*)
が成り立つというのは強い主張で、すべての n について成り立つ、つまり:
S_1 = S+_1 - S-_1
S_2 = S+_2 - S-_2
S_3 = S+_3 - S-_3
S_4 = S+_4 - S-_4
....
がすべて成り立つことを述べています。これが「輪切り」と述べたことです。
これにより、(S+_n, S-_n は収束しますから)極限の差の公式が適用できて:
lim S_n = lim S+_n - lim S-_n
が成り立ちます。
これを級数の形に戻せば、lim S+_n は a_n の正項の和、lim S-_n は負項の
和ですから、Σ a_n の和をとる順番は確かに変わっています。
そして今の場合はそのような順番変更してかまわないことを保証しているのが
(*) に他なりません。
今度は一般に、数列 { a_n } を2つの部分列 { p_n } と { q_n } に分割し、
その上での級数・部分級数の収束を考えます。
部分列・部分級数ですから、a_n の各項の順番は変更しません。
例えば
a_1 = p_1
a_2 = p_2
a_3 = q_1
a_4 = p_3
a_5 = q_2
a_6 = p_4
a_7 = p_5
...
ここで部分級数 Σ p_n, Σ q_n がそれぞれ収束し、その極限値をそれぞれ
P, Q とすれば、
Σ a_n = Σ p_n + Σ q_n = P+Q
が成り立つかが問題です。あるいはさらに一般化して、
p_n, q_n のそれぞれの項は順番に、しかし両者はいり混ぜて:
p_1 + q_1 + p_2 + q_2 + p_3 + q_3 + ...
q_1 + q_2 + q_3 + p_1 + q_4 + p_2 + ...
のように順番変更を行なった場合でも、その和が P+Q に収束するかが問題です。
これは結論としては正しく、鴻池さんの「途中がないだけ」というのは
その通りということにはなります。
# なお Σ p_n, Σ q_n が条件収束でもかまいません。
しかし先ほどは「輪切り」という支えがあったのに対し、今度はそれがありません。
そして自明かと聞かれれば、やはりそうではないと思います。
実際、証明するには、S+_n, S-_n に相当する「輪切り」を導入することが実質的に
必要でしょうから、そこに戻ることになるわけです。
# 証明そのものは省略しますが、上がそのヒントです。
(平賀)
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