At Fri, 11 Jun 2004 14:27:02 +0000 (UTC),
in the message, <cacffk$1747$1@news.jaipa.or.jp>,
oikawa@po.jah.ne.jp (Hiroyuki Oikawa) wrote
>>不法行為として損害賠償請求できるでしょうか?
(中略)
>>単に領収書を請求できるだけなのでしょうか?
>
>というよりむしろ、受領証を渡さなければならないし、拒否した場合は弁済
>を拒否でき、その場合は弁済者が履行遅滞を問われることはない、と読めま
>すが、如何なもんでしょう。

これ自体は一応正解ですがおそらく質問の答えにはなってないでしょう。

元記事はもはや読む気がまったくないので読んでないから正確な内容は知りま
せんけど、受取証書の不交付が不法行為になるかどうかという問の答えは、
「なるかも知れないしならないかも知れない」としか言いようがありません。
要するに「不法行為の要件を充せばなるし充さなければならない」というだけ
で、それは過去何度となくfjで繰り返された不法行為の要件論に帰着するだ
けの話
(過去最低2回は書いた記憶があるがさすがに面倒なので今回は書かな
 い。)。

これはすなわち、
  486条自体は「不法行為とは関係がない」んだから486条があるという理由
  で不法行為になるか?と言えば「なるわけがない」。
  486条は不法行為の根拠規定ではないのだからそんな「条文」を根拠に
  「不法行為として」なんて話をするのは不法行為の何たるかが解っていな
  いだけ。
  不法行為との関係で486条を根拠に言えるのはせいぜい、受取証書を交付
  しないことが権利侵害として違法性の要件を充すことになることだけ。
  しかしこれとて、仮に486条がないとしても受取証書の不交付が違法とな
  る可能性はあるし、その場合、他の要件を充せば当然不法行為たりうる。
  結局、486条と不法行為の成否は「直接には」関係がないしあってもせ
  いぜい「不法行為の成立要件の一つを充すことを示す根拠とすることが
  できる」という程度。
という話。
だからその意味では、
「486条は不法行為の成立を規定した条文ではなくて単に受取証書の交付請求
 権およびその効果として同時履行の抗弁権を認めただけだから486条がある
 からと言ってそれだけでは不法行為に基づく損害賠償請求はできず受取証書
 の交付請求をすることができるだけ。」
というのが正解。
(本当のところこんなことを言う必要はないのだが、こういう区別が理解でき
 るかどうかで「まともな」論理性及び理解力の有無が判るのだ。)

……まあ一般論としては受取証書不交付で直ちに損害が生じるとは思えません
けどね。
とまれ、支払拒絶ができるんだから拒絶すればいいだけのこと。

ところで、既に支払ってしまった場合に受取証書交付請求訴訟というのをやっ
たという話は聞いたことがありません(純粋に聞いたことがないというだけで
それ以上でもそれ以下でもありません。)。
できなくはないだろうけど、あまり実益はなさそうです。

# 昔、治療費の領収証発行について発行手数料を取るというふざけた病院が
 あったな。

-- 
SUZUKI Wataru
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