At Thu, 05 Jun 2003 21:32:17 +0900,
in the message, <20030605213217cal@nn.iij4u.or.jp>,
cal@nn.iij4u.or.jp (SASAKI Masato) wrote
>>From:SUZUKI Wataru <omegafactor@anet.ne.jp>
>>Date:2003/06/04 23:11:30 JST
>>Message-ID:<3eddde16.4698%omegafactor@anet.ne.jp>
>>
>>考えていないものはそもそも「許諾」とは言えないということ
>
>本当?

# ……わたしの意見がそうだってだけなので「本当」も嘘もありません。

この点しばらく考えていたんですが(正確にはしばらく放っておいた。)、
ちょっと考えを改めたので撤回します。

その上で、どう換えるかというと、
許諾の意思の内容は、「権利者に無断でできない行為をできるように、許諾権
者としての立場で当該行為を許可する」ということについての意思で足りると
します。

そして、その上で、その意思表示の結果、当該行為が適法になり違法性を阻却
するがそれ自体を目的とする意思であるわけではない、と言っておきます。
意思表示の内容となっていない法律効果は法律行為から一切発生しないわけで
はないのでこれでも全く問題はないと。

これは、貸借において貸主の意思表示の内容が借主の占有を適法にする事を目
的とする必要がないというのと同じ。

>>簡単にいうと、「自転車貸して」「いいよ」と「君の撮った運動会のビデオコ
>>ピーさせて」「いいよ」ってのと何が違うのか?ってこと。
>
>だいぶ違うんじゃない?

処分権限(前者にあっては所有権、後者にあっては著作権)を有する者が、一
定の権利の使用ないし処分等の行為について、これを認める行為という点では
全く同じ。
そしてそのこと自体が本質。

>後者は
>「ビデオテープについての使用貸借&複製についての許諾(?)」やん。
>「君の持っている「男はつらいよ」のビデオをコピーさせて」
>「いいよ」
>ってやりとりにすれば明確でしょ。

そりゃ全然だめです。
これでは複製について許諾権を有する者の許諾行為じゃないもの。
「君の撮った」とわざわざしているのは、63条の許諾は許諾権者の許諾だか
ら
(条文に「著作権者は」って書いてあります。
 問題になった投稿だって「権利者が」って言ってる。)。
許諾権者の許諾行為の法的性質を論じているのに、許諾権者以外の行為を論じ
てもしょうがない。

そもそも、許諾権者以外が行う許諾行為なんて単なる事実行為。
貸しビデオ屋から借りてきたビデオをコピーするのに、貸しビデオ屋の許諾な
どあってもなくても法律上はどうでもいいということ。
仮に貸しビデオ屋がいいと言ったところでそれは63条の許諾ではないからここ
では全然関係がない。

ついでにいうとビデオテープの使用貸借については、無関係なので徒に話をや
やこしくするだけ。
なのでこの点は、「今借りてる君の撮った……」と設例を変え既に使用貸借は
成立しているので改めて考慮する必要がない状態として、排除します。

>>>その意思表示が錯誤として無効になるのかい……とか
>>>本来は無効だけど外観法理で救済するのかい……とか
>>
>>とせざるを得ないでしょう。
>>……効果意思が無いのに'権利'の処分の効果を法律で強制するんですか?
>
>効果意思が無いのに法律上の効果が発生するから
>意思表示じゃないって話でしょうが。
>「意思がないのに強制するのか?」って問いかけは無意味やん。
>そういう規定は現に存するんだから。

多分間が空いたんで話の流れを見失ったんでしょうけど、そういう話ではない
ですよ。

「意思表示とすれば」という前提に立てば
「効果意思がなければ」
「意思表示の瑕疵欠缺の規定が適用される」という結論になるのはしかたがな
い。
「意思表示とすれば」という前提に立ちながら
「効果意思がない場合に」
「意思表示の瑕疵欠缺の規定を適用しないで」
「効果を法律で強制するんですか?」。
と言っているんですけど。

つまり、意思表示ではないかというわたしの言に対して
佐々木<cal@nn.iij4u.or.jp>さんが、それでは意思表示の瑕疵欠缺の規定が適
用になるのか?と言うので、適用しないわけにはいかないでしょう?って言っ
てるだけですよ。

要するにここで言っているのは、意思表示ならば意思表示の瑕疵欠缺の規定を
適用すべきでしょ?ってこと。
すなわち、意思表示であることの帰結を述べているのであって根拠を述べてい
るのではない
(前にも同じ様な展開があったような気がするけどまあいいや。)。

# 本当は必ずしもそうなるわけではないんだけどさ。
 まあ原則論だから。

>>「許諾をしたこと」は確かに事実ですけどそんなものは初めから問題になって
>>いません。
>
>そうか?
>すずきさんは「許諾は意思を示したもんだ」ってとらえているから
>
>>ここで問題になっているのは「許諾をしたこと」ではなくて、「許諾する行
>>為」それ自体です。
>
>ってなるけど、私はそう考えることに疑問なんだから。

「許諾」が意思と無関係というのが理解不能です。
「許諾するかしないかは許諾権者の意思と無関係に決るものである」というの
は有り得ません。
許諾するかしないかが許諾権者の意思と関りないのであれば許諾権者は許諾す
るかしないかを決定する権限を有しないということになるということ。
単に事実として存在する許諾常態を通知するに過ぎないということになり通知
の意思(表示意思と同じ。)だけで足りるということになると。

しかしそんなことはありません。
許諾するかどうかは許諾権者が自己の意思に従って決めることであって、許諾
権者の意思と無関係に許諾という事実が存在するわけではありません。
そもそも一定の行為をするしないかを決めるのは意思以外の何ものでもありま
せん。
その意思に従って許諾をするのにそれが意思ではないなどと言うのは全く理解
不能です。

債権譲渡の通知は、債権譲渡自体ではなくてあくまで譲渡が「存在する/し
た/これから発生する」という事実を伝えるだけ。
債権譲渡は権利の処分行為だけど、譲渡の通知はそれ自体は事実を伝達してい
るだけ。
許諾は、一定の行為を許すという意味で権利の部分的、制限付きの処分行為で
あって、単に許諾が「存在する/した/これから発生する」という事実ではな
い。
許諾は許諾の通知とは別もの。
と、そういうこと。
本件は許諾権者が行った許諾の存在を誰かが使者として伝えているという設例
ではない。

もうちょっと見方を変えれば、債権譲渡の通知は、通知によって譲渡の存否が
決まるわけではないけれど、許諾は許諾によって初めて許諾が存在するという
こと。



……友達の家を訪問しました。「(君が住居権を有する住居に)上がってい
い?」「いいよ」。これが観念の通知?
「(君が所有権を有する)自転車ちょっと貸して」「いいよ」。これが観念の
通知?
んなわけないわな。
なんでこれがいきなり「(君が複製について許諾権を有する著作物を)複製し
ていい?」「いいよ」だと観念の通知になるのやら。

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SUZUKI Wataru
mailto:omegafactor@anet.ne.jp