佐々木将人＠函館　です。

>From:himtkitk <himtkitk@insat.rnu.tn>
>Date:2004/10/11 23:55:00 JST
>Message-ID:<416a9ecc$0$13107$44c9b20d@news3.asahi-net.or.jp>
>
>> 羞恥を覚えるかどうか判断するのは見られた本人と
>> 裁判官、そしてその判決を新聞等で見る我々です。
>
>一般常識としては勿論その通りと思いますが、法的には
>裁判官だけが判断するのでは？

これはhimtkitkさんの別投稿
>From:himtkitk <himtkitk@insat.rnu.tn>
>Date:2004/10/12 01:54:24 JST
>Message-ID:<416abac7$0$18213$44c9b20d@news3.asahi-net.or.jp>
>
>『周りの人が犯罪に当たるとするから犯罪である』となるのではなく裁判官が
>『通常の判断能力を有する一般人の理解において』判断するのでしょう。

という表現が一番的確だと思います。

細かい書き方をしますと
刑法における構成要件該当性の問題
すなわち
「人を羞恥させる、不安を覚えさせる卑猥な言動」の基準は
これは特に指定がないので一般人な訳ですし
言い換えれば社会通念に基づく判断なのです。
そしてここのレベルで言うなら
>> 羞恥を覚えるかどうか判断するのは見られた本人と
>> 裁判官、そしてその判決を新聞等で見る我々です。
という記述もそれほど外しちゃいません。
（裁判官を外してくれればもっと明快だった……。）

そして刑事訴訟法における有罪認定の要件の問題
すなわち
「ある行為が条例に該当するか否か」の判断は
これは裁判官なのですが
それは端的に
「その事件が刑事訴訟として係属したので
　担当裁判官が
　「一般人が羞恥したり不安を覚える卑猥な言動か否か」
　を判断する」
ということに尽きます。

そして構成要件が明確でなければ罪刑法定主義に反して
刑罰権を発動できないというルールにおける
「明確」の判定基準が
前にも書いた「通常の判断能力を有する一般人の理解において」なのです。

「誰が判定するのか？」という議論において
「あれ？」と思った場合
ぜひこういう「実体法と手続法の峻別」というテクニックで
解析してみてください。
（「要件効果を明らかにする」というテクニックでもいいけど。）
「あれ？」の原因が
「なんだ、問題の切り分けができてないやん」と気づくはずです。

>見られた本人が裁判で別に羞恥も不安も覚えなかったと証言
>すると、判決の変る可能性は有るのでしょうか？

厳格に言うとですね〜。
ＡＶの盗撮ものの撮影をするという状況で
強制わいせつや公然わいせつにあたらない程度のいわゆる盗撮を
公道（もしくは公共地下道）で
当然女優さんの承諾の下で行った場合に
周囲に誰もいないとなると
構成要件該当性に疑問の余地が出てきます。

しかしこの条項よく読むと
「不安を覚えさせる卑猥な言動」も処罰していますよね。
ということは特定１人の被害者を想定している訳ではない。
「羞恥させる卑猥な言動」がいきなり盗撮の被写体に限定され
周囲は一切関係ないというのは
これは不自然な解釈だと思います。
ですんで、見られた本人の証言次第で左右されるということは言えないでしょう。

もっとも現実には見られた本人の供述調書も証拠請求されることが多いですが
これはそれが犯罪の成否にかかわるというよりは
「被害感情・処罰感情を持っている」ことを示すのに
証拠請求されているだけだと思います。

>もし都条例に言う『人』が被害者を指すなら、この条文は親告罪
>とすべき物になってしまいます。

個人的法益に関する罪が全て親告罪だという訳ではありません。
したがって親告罪の規定があれば個人的法益に関する罪だとは
言えるかもしれませんが
親告罪の規定がないことは個人的法益の罪ではないことを示す
……とはなりません。

>まあ、日本は判例主義を取っているから判例が出ないと結論は
>でないのかもしれませんが、、、(裁判で被害者が証人喚問される
>かどうかもヒントにはなりますが、、、)

それでも予想をすることはできます。
というか法解釈学の議論というのは
「判例がなかった場合には、
　もし判決が出るとしたらこのような判決が出るだろうと予想するもの」
であり
その予想も法解釈の技法によって導き出せる予想なのだということを
当然の前提にしている訳です。

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