佐々木将人@函館 です。

>From:IIJIMA Hiromitsu <delmonta@ht.sakura.ne.jp>
>Date:2004/08/17 22:19:29 JST
>Message-ID:<412205E1.7C995969@ht.sakura.ne.jp>
>
>> で、その保護の要件に「スト権確立」などということが
>> 「法律上」要求されているのん?
>
>組合が音頭をとってのストの場合は、「スト権確立」という言い回しは普通は
>しませんけど、直接投票または代議員投票で過半数の賛成が必要ですね。
>労働組合法5条2項。

それ不正確。
労働組合法5条2項が定めているのは(その他の要件も必要だけど)
「同盟罷業(=ストライキ)について規約で定めること」がないと
5条1項によって労働組合法でいうところの労働組合にはならないってことであって
「スト権確立」というある意味組合用語とは
直接の関連はないでしょう。

元々争議行為の概念自体説の分かれはあるところだけど
こと同盟罷業については
「業務の正常な運営を阻害する行為」という客観説(通説)にたっても
「自己の主張を貫徹することを目的とする手段としておこなう行為」
とする主観説にたっても
さらに「争議手段として(=争議意思をもって)労働組合が行う行為」
とする山口浩一郎説によっても
あまり結論は変わらないですね。

そして同盟罷業が正当な争議行為として違法性を阻却するのは
組合の意思決定の下に罷業した場合なのであって
組合の意思決定があると言えるのであれば
その意思決定方法は問わないはずです。

一方「スト権確立」という用語の意味するところは
必ずしも特定のストについてのスト開始ではないですよね?
むしろ一定の時期に組合執行部がストの指令をした時に
指令にしたがって実行することに賛成の意を示したということでしょう。
だからスト権確立の後それに基づいてストを実施したのであれば
まあたいてい組合の意思決定とは言えるでしょうから
正当な争議行為となるのでしょうが
だからといってこれが唯一の方法だとか
法律上要求されている方法だとかいうのではありません。
それ以外の方法による組合の意思決定を行うことで
スト権確立なるものが行われなかったとしても
直ちに正当な争議行為にならないということではありません。

結局スト権が確立しているか否かと
正当な争議行為となるかどうかは
必ずしも直接の関係がある訳ではないのです。

前出山口先生「労働組合法」p199にあるように
「争議決議がなされただけでは特別の法的意味はない。
 それは、
 組合が争議体制を確立して団結力を示威しているというにとどまる。」
ということなのです。

#余談ですが知らない人のために。
 スト権ストとは
 「争議権否定=ストライキ禁止」であった公共企業体等職員
 (有名なのは国鉄)が
 争議権獲得を目的に行ったストライキであって
 スト権ストにおけるスト権は
 争議権を持っている組合員が争議実行の賛否を意思表示する
 「スト権確立」におけるスト権とは意味が違うのです。

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