佐々木将人@函館 です。

>From:Hiroyuki Oikawa
>Date:2004/06/11 14:27:02 JST
>Message-ID:<cacffk$1747$1@news.jaipa.or.jp>
>
>ってことで、
>
>>単に領収書を請求できるだけなのでしょうか?
>
>というよりむしろ、受領証を渡さなければならないし、拒否した場合は弁済
>を拒否でき、その場合は弁済者が履行遅滞を問われることはない、と読めま
>すが、如何なもんでしょう。

完璧です。非の打ち所なし。

若干角度の変わった説明をしますが
(手続法から実体法を説明するのは反則に近い(笑))
例えば貸金返還請求訴訟
(金銭消費貸借契約だから原則は要物契約
 すなわち実際に現金を貸さないと成立しない契約。
 したがって原則にしたがうと
 借主の側の返還義務だけが残る形。)
貸主が原告となって請求した場合
貸主が主張立証しなければならないのは「契約の成立」のみ、
すなわち貸金の契約の存在と実際にお金を渡したことのみで
まだ返してもらってないことを主張立証する必要はなく、
借主の側でお金を返したことを主張立証する必要があります。
で、借主の側でお金を返したことを立証するための証拠となるのは……。

まあ領収書ですわな。
それ以外の方法が全く不可能な訳じゃないけど
領収書があれば楽だし
領収書がないと大変。

ちゃんともらっているのに
「まだもらってない」という主張を封ずるためには
領収書の発行を義務づけるのが一番簡便な訳で
ゆえに民法はその発行を義務づけたにとどまらず
その義務を果たさない時にはそもそも渡さなくてもいいし
渡さないことが約束違反にもならないという構成をとった訳です。

ちなみに
「渡さなかったことが不法行為になって損害賠償請求ができるか?」
という点ですが
原理的にはできるんでしょう。
しかし損害額の算定となるとかなり少額になるんではないかと思います。
というのはじゃあ普通の人が普通の買い物をして
領収書なりレシートを必ずもらっているかというと
そんなことはない訳だし
それは「損害が発生しているけどその賠償請求権を放棄している」
訳でもないんじゃないんですか?
領収書をもらえないことによる損害ってなんなんでしょう?
ってことになります。
(特に弁済時から時間がたつにつれ、この疑問は大きくなります。)
さらに「領収書をもらえないなら返さなくともいい」ってルールがあるのに
返してしまう自体、過失相殺の対象になると思います。
結果損害額はきわめて小さいってことになるし
その究極の形として「損害賠償請求はできない」って見解まで
成立し得るでしょう。

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ルフィミア「本当に本が出そうなんですか?」
まさと「なんか出そうな感じだよ。」