佐々木将人@函館 です。

青龍さんはわかったとされているけど
読者の中には誤解しそうな人がいると思うので
(特に憲法をそこそこ勉強していると
 かえってはまりやすい罠だと思うので)
念のために補足です。

「憲法判断を回避」という表現を見ると
すぐ「ブランダイスの7原則」を思いだし
「その事件を処理することができる他の理由がある場合には
 憲法問題について判断しない」
「その問題を回避できるような法律解釈が可能であるか否かを
 まず確認すべきである」
「法律の施行によって侵害を受けたことを立証しない者の申立てに基づいて
 その法律の効力について判断することはしない」
あたりをこの例について思い出した人は
はっきり言って私より先に進んでいます。
……あたし全部をきれいには書けなかったので
  佐藤憲法の本から引き写しています。

だけど井上薫裁判官の主張はその著書を読む限り
ブランダイス7原則に代表される
いわゆる司法消極主義の議論とは全く別次元の話である
民事訴訟法の問題を議論しているんだってことは
絶対におさえておいてほしいのです。

言い換えるならば
井上薫裁判官自身が司法消極主義の立場なのか
司法積極主義の立場なのかはわかりませんが
そのどちらの立場をとったとしても
「主文に対応しないことを判決で述べることには反対」
なのです。

そして批判しているのは
「主文に対応しないことを判決で書いたという行為」なのであって
「書いた内容を問題にしている」のではないのです。

(以下
|読者の中には誤解しそうな人がいると思うので
|(特に憲法をそこそこ勉強していると
| かえってはまりやすい罠だと思うので)
|念のために補足です。
 であることを再度強調しておきますが……。)

したがって
「井上薫裁判官は司法積極主義をとっている」
「井上薫裁判官は司法消極主義をとっている」
「井上薫裁判官は憲法判断をしたことに批判的だ」
などという主張は全部間違い。

「井上薫裁判官は憲法判断をしたことに批判的だ」は間違いと書いて
あれって思った人は「よ〜く考えよう!」
ここポイントね
正確には「主文に対応しない憲法判断をしたことに批判的だ」
なのであって「主文に対応しない」が重要なポイント。
主文に対応する憲法判断ならむしろ書くべきという主張だから
主文に対応するのであっても
別の道があるならそっちを選べという司法消極主義とは
別次元の話なんですよ!

もっとも
井上薫裁判官の著書は
芦部憲法なみに読みやすいんで
直接読んでもらうのがいいと思います。
……あたしがああだこうだ言うのを読むより。

なお

>> そうすると「判決の中に違憲とする部分があった」ことだけを理由に
>> それを守れなどというのは
>> これは法律的な主張とは言い難いのは間違いないところでしょう。
>> ……法律的な主張にしたいなら
>>   もっと理論武装が必要。

も

>> 一方で井上薫裁判官の発言とされる新聞記事を見て
>> 違憲合憲を論じていると思うのは
>> (そう思うのは普通は仕方ないとはいえ)
>> これは井上薫裁判官がかわいそう。

も

|読者の中には誤解しそうな人がいると思うので
|(特に憲法をそこそこ勉強していると
| かえってはまりやすい罠だと思うので)
|念のために補足です。

です。

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