佐々木将人@函館 です。

わかる人にはsubjectでピンときたかも……。

井上薫裁判官の著書を読む限り

>From:"青龍" <shou77@hotmail.com>
>Date:2004/04/15 23:46:40 JST
>Message-ID:<c5m78n$djj$1@news511.nifty.com>
>
> この井上裁判官は、政教分離原則違反という判断の
>是非について何も述べていないし、

主文に対応しない判断をするのは誤りというのが
井上裁判官の指摘の骨子です。
(=何も述べていない訳じゃない。
  主文に対応しないのであればこの判断に対しては否なんです。)

>彼の論旨からすれ
>ば、今回の事例においては憲法判断事態が回避されま
>す。
> つまり、彼の主張は、私の
>・上訴されたとしても憲法判断が行われないだろう。

という点を言っているとは到底思えませんし
間違いなく

>・仮に憲法判断が行われたとしても

ここまでは言えないでしょうから

> 違憲となる可能性が高いであろう。
> 、という主張と何も矛盾しません。

とまでは言いきれないように思います。

井上薫裁判官は既にいくつかの著書を出していますし
私の記憶に間違いなければ「判決理由の過不足」の中で

>>「主文に影響しない憲法問題を理由にあえて書くのは『蛇足』というほかない」

>>上訴できずに「ぬれぎぬ」を晴らすことができない点

ということの問題点は指摘しているはずです。

すなわち民事訴訟法プロパーの問題提起が主であって
「違憲か否か」についての主張をしたかった訳ではないと読むのが
相当だと思います。

(以下、どこが民事訴訟法プロパーの問題かという点の補足)
私自身判決全文をあたったわけではないので
話半分に聞いてほしいのですが
報道を聞くかぎりどうも「国に対する損害賠償請求」に対する
「請求棄却判決」のようです。
これが正しければ
被告(国)が上訴できるかと言えば
これは「上訴の利益がない」から上訴できないはずなんです。
たとえ主文に対応しないことが書かれていて
そこが不服であっても。
この点
「「請求棄却判決」という主文に対応する理由を過不足なく書くべきであり
 主文に対応しないことは書くべきではない」というのが
井上薫裁判官の従前からの主張なのです。
その背景には今回みたいな事例で余計なことを書いてそこが不服であっても
争う手段がないじゃないかという問題提起があります。
それが「蛇足」「ぬれぎぬ」という新聞記事の表現の背景。

一方「判例の読み方」中野次雄編を読むとこれまたまるわかりのように
主文に対応する理由じゃない部分が判例となるかというと
これは結構微妙なんですね。
「論点と関係ない傍論は判例たり得ない」
ということは言えるにしても。
そして判例にならなきゃ法的効力なんてないんで……。

そうすると「判決の中に違憲とする部分があった」ことだけを理由に
それを守れなどというのは
これは法律的な主張とは言い難いのは間違いないところでしょう。
……法律的な主張にしたいなら
  もっと理論武装が必要。

一方で井上薫裁判官の発言とされる新聞記事を見て
違憲合憲を論じていると思うのは
(そう思うのは普通は仕方ないとはいえ)
これは井上薫裁判官がかわいそう。

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ルフィミア「本当に本が出そうなんですか?」
まさと「なんか出そうな感じだよ。」