工繊大の塚本と申します.

In article <ecde0663-8af3-4023-972e-b06aa363e505@b38g2000prf.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> プリントからの命題で質問です。
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/prop3_1.jpg

 Fubini の定理の準備ですね.

> 積測度の定義は
> 『(Ω_i,Σ_i,μ_i)を測度空間とする(i=1,2,…,n)。その時
> ,A:={Π[i=1..n]E_i;E_i∈Σ_i}は筒集合と呼ばれ,半加法族をなす。
> そしてAで生成されるσ集合体σ(A)を積σ集合体と呼ばれる。
> μ:A→[0,∞]が測度の公理とμ(Π[i=1..n]E_i)=Π[i=1..n]μ_i(E_i)を満たすμが
> 一意的に存在する。
> このμをΠ[i=1..n]Ω_i上の積測度といい,(Π[i=1..n]Ω_i,σ(A),μ)を
> (Ω_i,Σ_i,μ_i)の積測度という。

完備化しない場合ですね.

> 特にn=2の時は筒集合は半加法族でなく有限加法族となる』

 n = 2 でも有限加法族にはなりませんが, それはさておき.

> だと理解しました。そして模範証明を多少参考に自分なりに考えて証明を試みました。
> 
> [証]
> 「まず任意のx_2∈X_2に対してE^{x_2}がμ_1可測である事
>   (つまり,E^{x_2}∈M_1)を示す。
> (i) もし,Eが可測矩形(E=E_1×E_2,E_1∈M_1,E_2∈M_2)なら
>     E^{x_2}=E_1  (∵x_2断面の定義) ∈M_1 …①.
>    従って,E^{x_2}はμ_1可測」

勿論, E^{x_2} は空集合になる場合もあります.

> と上手くいきました。
> 
> 「(ii) もし,EがA_σの元なら
> (但し,Aは互いに素な可測矩形の有限和集合からなる族でX_1×X_2上の集合体をなす),
>  E=∪[i=1..∞]E_iなる互いに素なAの元E_1,E_2,…が存在する
> (もし,E_jが互いに素でないならE_j:=∪[k=1..j]E_k\∪[k=1..j-1]E_k)
>  と置くだけでよい)。
>  それで∀x_2∈X_2に対し,
>  E^{x^2}=∪[i=1..∞]E^{x_2}_i (∵x_2 断面の定義) ∈M_1 …②
> (∵E^{x_2}_i∈M_1(∵①)とσ集合体の性質)。
> 従って,E^{x_2}はμ_1可測。
> (iii) EがA_{σδ}の元なら
> ∃E_1,E_2,…∈A_σ;E=∩[i=1..∞]E_i(∵A_{σδ}の定義)。
> その時,∀x_2∈X_2に対して,E^{x_2}=∩[i=1..∞]E^{x_2}_i∈M_1と書ける
> (∵E^{x_2}_i∈M_1(∵②)より,σ集合体の定義)。
> 従って,E^{x_2}はμ_1可測。」
> 
> となったのですがこんな関単な証明で問題無いでしょうか?

任意の x_2 について E^{x_2} が μ_1 可測であることは
それほど問題ではありません.

> あと,μ_1(E^{x_2})がμ_2可測関数である事は,
> ∀r∈Rに対して{x_2∈X_2;μ_1(E^{x_2})>r}∈M_2を示せという
> 事でしょうか?

そういうことです.
 
> μ_1(E^{x_2})がμ_2可測関数である事と
> ∫_{X_2} f(x_2)dμ_2(x)=lim[j→∞]∫_{X_2}f_j(x_2)dμ_2(x)の成立は
> Monotone Convergence Theorem
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/mct.jpg
> も見てみたのですがちょっと理解きませんでした。
> どのような手順で証明してあるのでしょうか?

 (i) の E が矩形の時は良いですね. 後は,
 (ii) の E ∈ A_σ, つまり, E = ∪_{j=1}^∞ E_j で,
 E_j らが disjoint な矩形である場合に証明し,
 (iii) の E ∈ A_{σδ} の時, つまり, E = ∩_{j=1}^∞ E_j で,
 E_j ∈ A_σ, E_j ⊃ E_{j+1} の場合に証明することになります.
 (iii) は更に (μ_1×μ_2)(E) < ∞ の場合と一般の場合に
分かれます.
 
> 下記は一応訳です。
> 『Eが可測矩形なら直ぐに全主張が成立する事に気づく。
> 次にEをA_σの集合とする。
> その時,我々は互いに素な可測矩形の可算和集合にEを分割する事ができる
> (もし,E_jが互いに素でないならE_j:=∪[k=1..j]E_k\∪[k=1..j-1]E_k)
> と置くだけでよい)。

実際には E_j 自身は矩形ではなく, 矩形の disjoint な有限和
ですけれど. E を矩形の disjoint な加算和にできるのは大丈夫
ですね.

> 従って,各可測矩形 E_jに適用される(7)とMonotone Convergence Theoremより,
> 各E∈A_σに対して結論を得る。

 x_2 → μ_1((E_j)^{x_2}) が可測関数であれば, その和も
可測関数で, その極限も可測関数です.

  ∫_{X_2} μ_1((∪_{j=1}^∞ E_j)^{x_2}) dμ_2
  = ∫_{X_2} Σ_{j=1}^∞ μ_1((E_j)^{x_2}) dμ_2
  = Σ_{j=1}^∞ ∫_{X_2} μ_1((E_j)^{x_2}) dμ_2
  = Σ_{j=1}^∞ (μ_1×μ_2)(E_j)
  = (μ_1×μ_2)(∪_{j=1}^∞ E_j)

ですね.

> 次にE∈A_{σδ}と(μ_1×μ_2)(E)<∞と仮定すると
> E_j∈A_σでE_{j+1}∈E_jでE=∩[j=1..∞]E_jなる集合列{E_j}が存在する。

ここは良いですね.
 
> f_j(x_2):=μ_1(E^{x_2}_j)とf(x_2):=μ_1(E^{x_2})とすると
> E^{x_2}がμ_1可測であるで
> f(x_2)がwell-definedを分かる為に
> E^{x_2}は減少するE^{x_2}_jの極限である, 上記で見られたものは
> 可測,という事に気づく。

 f_j(x_2) = μ_1((E_j)^{x_2}), f(x_2) = μ_1(E^{x_2}) とする.
 E^{x_2} が μ_1 可測であって, f が well-defined であることを
確かめるには, E^{x_2} が (E_j)^{x_2} という集合の減少列の極限
 (E^{x_2} = ∩_{j=1}^∞ (E_j)^{x_2}) であることに注意する.
 ここで (E_j)^{x_2} は既に見たように μ_1 可測集合である.
 (可測集合の可算共通部分であるから, E^{x_2} も可測集合.)

> 更に,E_1∈A_σと(μ_1×μ_2)(E_1)<∞なので
> j→∞の時,f_j(x_2)→f(x_2)という事が分かる
> 従って,f(x_2)は可測,
> しかしながら{f_j(x_2)}は非負関数の減少列なので
> 
> ∫_{X_2} f(x_2)dμ_2(x)=lim[j→∞]∫_{X_2}f_j(x_2)dμ_2(x),
> 
> そして従って(7)は(μ_1×μ_2)(E)<∞の場合で示された。

更に, E_1 ∈ A_σ で (μ_1×μ_2)(E_1) < ∞ であるから,
各 x_2 について, j→∞ の時, f_j(x_2)→f(x_2) である
ことが分かる. 従って, f(x_2) は可測である.

と, 書いてありますが, 実は (μ_1×μ_2)(E_1) < ∞ の
仮定はここでは使っていません.

 f(x_2) = μ_1(E^{x_2})
        = μ_1(∩_{j=1}^∞ (E_j)^{x_2})
        = lim_{j→∞} μ_1((E_j)^{x_2})
        = lim_{j→∞} f_j(x_2)

となるのは μ_1 が測度だから当たり前. 但し, 両辺とも
 ∞ かも知れません.

又, この仮定は (μ_1×μ_2)(E) < ∞ の仮定とは少し違います.

ともあれ, (μ_1×μ_2)(E_1) < ∞ とすれば, 既に
示されたことから, f_1 は可積分であり, f_j ≦ f_1 ですから,
 dominated convergence theorem によって,

  ∫_{X_2} f(x_2) dμ_2(x)
   = lim_{j→∞} ∫_{X_2} f_j(x_2) dμ_2(x)

は成立します.

> 今,μ_1とμ_2はσ有限と仮定しているので
> F_1⊂F_2⊂…⊂X_1と G_1⊂G_2⊂…⊂X_2で
> ∪[j=1..∞]F_i=X_1,∪[j=1..∞]G_i=X_2で
> μ_1(F_j)<∞,μ_2(G_j)<∞なる集合列をとる事ができる。
> それで単にEをE_j:=E∩(F_j×G_j)に置換え,
> j→∞とすると一般での結果を得る』

 E = ∩_{k=1}^∞ H_k, H_k ∈ A_σ, H_k ⊃ H_{k+1} とすると,
 E_j = ∩_{k=1}^∞ H_k ∩ (F_j×G_j), H_k ∩ (F_j×G_j) ∈ A_σ,
 H_k ∩ (F_j×G_j) ⊃ H_{k+1} ∩ (F_j×G_j) であり, 更に,
 (μ_1×μ_2)(H_1 ∩ (F_j×G_j)) < ∞ ですから,
 E_j は先程の仮定を満たしていて,

  ∫_{X_2} μ_1((E_j)^{x_2}) dμ(x_2) = (μ_1×μ_2)(E_j)

が成立します. E 自身についてはもう一度 monotone convergence
 theorem を使うことになります.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp