Re: Aは集合体,M:=σ(A)でμはpremeasureから拡張された測度.μがσ有限ならμは一意的に存在する
工繊大の塚本と申します.
In article <fe7e07b7-b953-416f-8085-5f81687ec592@w24g2000prd.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> プリントに載ってました命題
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/theorem1_5_first.jpg
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/theorem1_5_second.jpg
> で質問です。
>
> 証明は下記のように追ってみました。
一意性のところから見ましょう.
> 次に,μがσ有限測度ならこのμは一意的に存在する。
> 『我々は以下の様な議論をする。
> μをM上のσ有限測度とし,
> νをν|_A=μ_A=μ_0なるもう一つのM上のσ有限測度とする。
> 我々の主張は∀F∈Mに対して,μ(F)=ν(F)である。
> もし,F⊂∪[j=1..∞]E_j (但し,E_j∈A)とすると
> ν(E)≦Σ[j=1..∞]ν(E_j)』
>
> ここでどうして不等号が成立するのでしょうか?
> νは測度であって外測度ではないですよね。
> なので可算劣加法性は使えないと思います。
測度なので可算加法性があります. E_j らが交わりを
持たなければ等号が成立します. ここでは E_j らは
交わりを持つ場合もありますので, 不等号になります.
Lemma 1.4 の証明中にもその議論があります.
> 『=Σ[j=1..∞]μ_0(E_j) (∵E_j∈Aよりν(E_j)=μ_0(E)(∵νの定義)).
> それでν(F)≦μ(F) …①』
>
> ここでどうしていきなりν(F)≦μ(F)が言えるのでしょうか?
μ は外測度 μ_* で定義されたもので, その定義から,
μ(F) = μ_*(F)
= inf { Σ_{j=1}^∞ μ_0(E_j) | F ⊂ ∪_{j=1}^∞ E_j, E_j ∈ A }
でした. F ⊂ ∪_{j=1}^∞ E_j, E_j ∈ A のとき常に
ν(F) ≦ Σ_{j=1}^∞ μ_0(E_j) となっているなら,
ν(F) ≦ inf { Σ_{j=1}^∞ μ_0(E_j) | F ⊂ ∪_{j=1}^∞ E_j, E_j ∈ A }
ですから, 明らかです.
> 『逆の不等号を示す為に
> もしE=∪[j=1..∞]E_jなら
> μとνは
> Aがν(E)=lim[n→∞]ν(∪[j=1..n]E_j)=lim[n→∞]μ(∪[j=1..n]E_j)=μ(E)を
> 与える事に同意する二測度である事に気づけ。』
「逆の不等式を示すには, もし E = ∪_{j=1}^∞ E_j なら,
ν と μ が A の上では一致する二測度であるから,
ν(E) = lim_{n→∞} ν(∪{j=1}^n E_j)
= lim_{n→∞} μ(∪{j=1}^n E_j) = μ(E)
となることに注意する」
> ここでの等式成立の理由は
> ν(E)=ν(lim[n→∞]∪[j=1..n]E_j)=lim[n→∞]ν(∪[j=1..n]E_j)
> (∵E_jは集合体Aの元なので
> E=∪[j=1..∞]E'_j を E'_1⊂E'_2⊂…となるような
> E'_jが採れる。
> よって命題
> "{E_n}が増加集合列ならμ(lim[n→∞]∪[j=1..n]E_j)
=lim[n→∞]∪[j=1..n]μ(E_j)")
> =μ(E)
命題は「 { E_n } が可測集合の増加集合列 ( E_n ⊂ E_{n+1} )
であれば, 測度 μ について,
μ(∪_{n=1}^∞ E_n) = lim_{n→∞} μ(E_n) 」
ですね.
E'_n = ∪_{j=1}^n E_j はそういう増加集合列で,
∪_{n=1}^∞ E'_n = ∪_{j=1}^∞ E_j = E ですから,
明らかです.
> と考えたのですがこれで正しいでしょうか?
記述に混乱がありますが, そういうことです.
> 『もし,集合E_jをμ(E)≦μ(F)+ε…②となるように選べば』
>
> ここでどうして任意のεに対してこのようにE_jが採れるという
> 保証があるのかのか分かりません。
> 今,M∋F⊂E=∪[j=1..∞]E_j (但し,E_j∈A)となっているのですよね。
> A⊂MなのでF(∈M)の採り方によってはεで抑えれるE_jが
> 都合よく選べるとは思わないのですが。。
これも外測度の定義に戻っているのです.
μ(F) = μ_*(F)
= inf { Σ_{j=1}^∞ μ_0(E_j) | F ⊂ ∪_{j=1}^∞ E_j, E_j ∈ A }
下限の性質から, 任意の正数 ε に対して,
μ(F) ≦ Σ_{j=1}^∞ μ_0(E_j) < μ(F) + ε
となる, F ⊂ ∪_{j=1}^∞ E_j, E_j ∈ A を満たす, E_j が
存在します. E = ∪_{j=1}^∞ E_j とすれば,
μ(F) ≦ μ(E) ≦ Σ_{j=1}^∞ μ_0(E_j) < μ(F) + ε
となります.
> 『μ(F)<∞という仮定はμ(E\F)≦ε…③を意味する。
> 従って,
> μ(F)≦μ(E)=ν(E)=ν(E)+ν(E\F)
=ν(F)+ν(E\F)
> (∵可算加法性)
> ≦ν(E)+μ(E\F)
≦ν(F)+μ(E\F)
> (∵E\F∈Mなので①より)
> ≦μ(F)+ε
> (∵E∈Mなので①よりν(E)+μ(E\F)≦μ(E)+μ(E\F)そして②)』
>
> ここでμ(F)≦μ(E)成立の理由が分かりません。
> μ(F)≦μ(E)は可算劣加法性は使えませんよね。
μ は測度ですから, F ⊂ E なら μ(F) ≦ μ(E) です.
> 『εは任意なのでμ(E)≦μ(F)が分かる。』
> ここは上の不等式μ(F)≦ν(E)+μ(E\F)≦μ(F)+εより
> μ(F)-μ(E\F)≦ν(E)≦μ(E)+εと書け,
> ③とεの任意性からμ(E)≦μ(F)が言えるのですよね。
>
> 『ついに我々はμがσ有限ならμをνを示すために
> 最後の結果(μ(F)=ν(F)…④)を用いる。
> 実際にX=∪[j=1..∞]E_j (但し,A∋E_1,E_2,…は互いに素でμ(E_j)<∞)
> と書いてよい』
>
> σ有限測度の定義は「μがΣ上のσ有限測度⇔
> X=∪[j=1..∞]E_jでμ(E_j)<∞なるE_j∈Σが採れる」ですよね。
> もしAが自明な集合体A={X,φ}なら
> X=∪[j=1..∞]E_jでμ(E_j)<∞なるE_jは採れないと思うのですが…。
> 勘違いしてますでしょうか?
A = { X, φ } ならそれから生成される σ集合体 M も { X, φ } で,
その上の測度 μ が σ有限なら, μ(X) < ∞ だから, 問題は
ありません.
X = ∪_{j=1}^∞ E_j, E_j ∈ M, μ(E_j) < ∞ としましょう.
E_j ⊂ ∪_{k=1}^∞ E_{j,k}, E_{j,k} ∈ A, μ_0(E_{j,k}) < ∞
となる E_{j,k} が取れます. これも外測度の定義から
μ(E_j) ≦ Σ_{k=1}^∞ μ_0(E_{j,k}) < μ(E_j) + 1 < ∞
となるように取れるからです. X = ∪_{j,k=1}^∞ E_{j,k}
ですから, 元から E_j ∈ A としておいても良かったわけです.
> 『そこで∀F∈Mに対してμ(F)=Σ[j=1..∞]μ(F∩E_j)(∵可算加法性)
> =Σ[j=1..∞]ν(F∩E_j)(∵F∩E_j∈M且つμ(F∩E_j)<∞より④) =ν(F).
> そして一意性が示された』
> で最後は納得できました。
宜しいでしょうか.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
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GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735