工繊大の塚本です.

In article <489457d1-3e43-46aa-b11d-7aa20a5686da@e1g2000pra.googlegroups.com>
cchikakoo <cchikakoo@yahoo.co.jp> writes:
> In article<081102180048.M0326996@cs2.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 基底ではありません. 重複無く取るのであれば, 基底の
> > 一部ではあります. V×W の全ての元を集めたものが
> > 基底です. 上の # の所に書いた通りです.
> 
> uはspan(V×W)の元であるにもかかわらず,
> 全基底ではなく基底の一部を使って表せれるという訳ですね。
> それは何故なのでしょうか?

代数学での「基底」の定義を誤解されているようです.
(有限次元とは限らない) R 加群やベクトル空間 V の
(有限集合とは限らない) 部分集合 A がその基底である
とは, 勿論, A が一次独立であり, かつ,
 A が V を張っている, ということですが,
このどちらの部分においても, A から有限個の元を
取り出して作った一次結合が用いられるのです. つまり,

  A が一次独立
  ⇔ A の任意の相異なる有限個の元 v_1, v_2, ... , v_N の
     一次結合 k_1 v_1 + k_2 v_2 + … + k_N v_N が
     零元になれば, k_1, k_2, ... , k_N は全て零である.

  A が V を張る 
  ⇔ V の任意の元 v に対して, A の有限個の元
     v_1, v_2, ... , v_N をとって, その一次結合
     k_1 v_1 + k_2 v_2 + … + k_N v_N が
     v = k_1 v_1 + k_2 v_2 + … + k_N v_N と
     なるように取れる.

そもそも, 位相の入っていない, 代数的な意味での
 R 加群やベクトル空間においては, 無限和には
意味がありません.

> uは無限次元span(V×W)の元だから,u=Σ[i=1..∞]r_i(x_i,y_i)
> (但し,{(x_1,y_1),(x_2,y_2),…}はV×Wの元)
> と書けれねばならない筈。。。。

ですから, そのようなことはないのです.

> もしかしてv(×)wはV(×)Wの類別の中の一つの類に過ぎない
> それでu=Σ_{i=1}^N r_i (x_i, y_i) と有限和で書かれたのですか?

 (x_i, y_i) というのは色々と変わるのですが, 有限和
しか考えていないのです.

> とにかくuはspan(V×W)の元でu=Σ_{i=1}^N r_i (x_i, y_i)
> (但し,r_i∈R,(x_i,y_i)∈V×Wなのですね)
> 繰り返しですがuははV×Wの有限個の元とR係数の一次結合なのですね。

 span(V×W) 自体がそういう有限和の全体であるので,
そういうことです.

  span(V×W) = (+)_{(v, w) ∈ V×W} R(v, w)
 
であって,

  Π_{(v, w) ∈ V×W} R(v, w)

ではないのです.

> a'∈C(a), b'∈C(b)ならa'≡a (mod T),b'≡b (mod T)で
> 合同の性質からa'+b'≡a+b (mod T)となるのですね。

合同の性質というより, 加群である T を法とした
合同を考えているから, です.

> (0,0)modTは(v,0)や(0,w)を含むのですね。

そうです. T を法として, 0 ≡ (0, 0) ≡ (v, 0) ≡ (0, w)
です.

> 代表元は異なってもやはり, 零元はあるのですね。

そうです.

> (v,rw)-(rv,w)∈T(∵Tの定義),つまり((-1)v,(-1)w))-((-1)(-1)v,w)∈Tだから
> 性質(ii) C(a)=C(b)⇔C(a)∩C(b)≠φ⇔a≡b(mod T)より
> を使って,[(-v, -w)] = [(-1)v, (-1)w)] = [((-1)(-1)v, w)]
>  = [(v, w)]が言えるのですね。

そうです.
 
> > 逆元は [-(v, w)] = [(-1)(v, w)] = [((-1)v, w)] = [(v, (-1)w)]
> > = [(-v, w)] = [(v, -w)] ∈ V(×)W です.
> 
> もし,(v,w)modTの逆元が(-v,-w)modT∈V(×)Wなら
> [(-v, -w)] = [(-1)v, (-1)w)] = [((-1)(-1)v, w)] = [(v, w)]より
> (v,w)modT自身が逆元になってしまいますよね。

ですから, 一般には [(v, w)] の逆元は [(-v, -w)] では
ありません.

> もし,[(v,w)]の逆元が[(v,w)]なら,
> (v,w)modT+(v,w)modT=(2v,2w)modT (∵類の和の定義)
> =(0,0)modTで無ければならないのですが
> この場合何か不都合が起きますでしょうか?

 [(v, w)] = [0] であれば不都合はありませんし,
 R において 1 + 1 = 0 であれば, やはり不都合は
ありません.

しかし, 今問題になっているのは, R の性質の仮定なく,
どんな [(v, w)] についても, 常にその和の逆元が存在する
ことを示すことであったのですから, 特別な場合の存在を
言っても仕方がありません.

> えっ? Tの元をV×Wの一次結合で表す事ができるんですか?
> 無限和になると思いますが

 T の元とは,
 
  (x_1 + x_2, y) - (x_1, y) - (x_2, y),
  (x, y_1 + y_2) - (x, y_1) - (x, y_2),
  (rx, y) - r(x,y),
  (x, ry) - r(x,y),

の形の元を有限個選んで, その R 係数の一次結合を作ったもの
ですから, 無限和ではありません.

> > Σ_i a_i((x_{i1}+x_{i2}, y_i) - (x_{i1}, y_i) - (x_{i2}, y_i))
> > + Σ_j b_j((x_j, y_{j1}+y_{j2}) - (x_j, y_{j1}) - (x_j, y_{j2}))
> > + Σ_k c_k ((r_k x_k, y_k) - r_k (x_k, y_k))
> > + Σ_l d_l ((x_l, r_l y_l) - r_l (x_l, y_l))

これらの式で, それぞれの和は有限和です.

> これはTの元uを表したものですよね。
> どうしてこのような形になるのでしょうか?
> x_i1,x_i2,x_j,x_k,x_l∈V,y_i1,y_i2,y_j,y_k,y_l∈W,a_i,b_j,c_k,d_l∈Rで
> 夫々のi,j,k,lは有限和でしょうか?

そうです.

> Tの元uは
> (x_1+x_2,y)-(x_1,y)-(x_2,y),(x,y_1+y_2)-(x,y_1)-(x,y_2),(rx,y)-r(x,y),
> (x,ry)-r(x,y)
> (但し,x_1,x_2,x∈V, y_1,y_2,y∈W, r∈R,つまりTの生成元はM の元)
> の一次結合として表されるので

それぞれの型を一つずつという制限はありません.

> u=a((x_1+x_2,y)-(x_1,y)-(x_2,y))+b((x,y_1+y_2)-(x,y_1)-(x,y_2))
> +c((rx,y)-r(x,y))+d((x,ry)-r(x,y))
> (但し,a,b,c,d∈R)と表されると思うのですが…。

ですから, それよりも色々なものがあります. そうでないと
 T が和について閉じません.

以上, 宜しいでしょうか.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp