工繊大の塚本です.

In article <acfb36b7-24da-48c8-8c00-eabced54239c@f40g2000pri.googlegroups.com>
cchikakoo <cchikakoo@yahoo.co.jp> writes:
> In article <081012200443.M0108213@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > V_0 の基底 u_1, u_2, ... , u_t から出発して,
> > V の一次独立なベクトルの列
> >  u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ... , w_s
> > で, 互いに直交し, <v_i, v_i> > 0, <w_j, w_j> < 0 となるもの
> > が構成できたとします. (最初は v_i, w_j が存在しない場合です.)
> 
> "最初は v_i, w_j が存在しない場合です."の意味がよく分かりません。

帰納法の最初は V_0 の基底 u_1, u_2, ... , u_t だけが
与えられたところです. r = 0, s = 0 の場合だと考えて
下さい.

もしこれらで生成される空間 (V_0 ですね) が V に一致
していれば, それでお仕舞いです. 与えられた内積が
すべての v, w について <v, w> = 0 であれば, そうなり
ます.

もしそうでなければ, 先に示した手順のようにして, それに
 v_1 とか w_1 とかを付け加えていくことになります.

一般的な注意を少し致しますと,

  u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ... , w_s

と書いていても, r = 0 のこともあれば, s = 0 のこともある.
 r = 0 であれば,

  u_1, u_2, ... , u_t, w_1, w_2, ... , w_s

となっているわけですし, s = 0 であれば,

  u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r

となっている. 更に言えば, t = 0 の場合もあるので,
その場合 (V_0 = {0} の場合) には, 「空の列」から
帰納法は出発して,

  v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ... , w_s

のような列を扱うことになります. 数学の議論では
こういった場合も, 然るべく解釈して, 場合を分けずに
話を進めることが良くあります.

> >  v' = v - Σ_{i=1}^r (<v, v_i>/<v_i, v_i>) v_i
> >         - Σ_{j=1}^s (<v, w_j>/<w_j, w_j>) w_j
> 
> v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ... , w_sらだけで直交化してやるのですね。

 <v', v_1> = 0, <v', v_2> = 0, ... , <v', v_r> = 0,
 <v', w_1> = 0, <v', w_2> = 0, ... , <v', w_s> = 0,

となっていて欲しいわけです. 因みに,

 <v', u_1> = 0, <v', u_2> = 0, ... , <v', u_t> = 0,

は, u_k が V_0 の元ですから, 成り立っています.

> > Case 1: <v, v> > 0 のとき.
> > このときは v_{r+1} = v とします.
> 
> このvはV_pの元として追加してやるのですね。

ここでは V_p のことは暫く忘れていて下さい. 勿論,
最終的には v_1, v_2, ... , v_r, v_{r+1} らは
 V_p の基底の一部となりますから, V_p の元と
なります.

> > Case 2: <v, v> < 0 のとき.
> > このときは w_{s+1} = v とします.
> 
> このvはV_nの元として追加してやるのですね。

こちらも同様.

> > Case 3: <v, v> = 0 のとき.
> > v は V_0 の元ではありませんから,
> 
> この場合のv(≠0)はV_pの元でもV_nの元でも,勿論V_0の元でもない
> Vの元という状態になるので
> V⊃V_p(+)V_n(+)V_0(+)V'というV'が存在し,v∈V'になっているかも
> しれないという訳ですね。

いえそうではありません. 未だ V_p, V_n は見つかって
いないのです. V の基底となる

  u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ... , w_s

が見つかった後で, V_p, V_n は構成されるものです.

> > <v, w> = 1 となる
> > V の元 w が存在します.

> > w は u_k, v_i, w_j, v では
> > 生成されない元です.
> 
> これはどうして分かるのでしょうか?

  w = a_1 u_1 + a_2 u_2 + … + a_t u_t
      + b_1 v_1 + b_2 v_2 + … + b_r v_r
      + c_1 w_1 + c_2 w_2 + … + c_s w_s
      + d v

であれば, <v, w> = 0 となってしまいます.

> 取り合えず,v,w∈V\span{u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r, w_1,
> w_2, ... , w_s}なのですね。

  u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ,,, , w_s, v, w

が一次独立であることが重要です.

> > やはり Gram-Schmidt の直交化で
> >  w' = w - Σ_{i=1}^r (<w, v_i>/<v_i, v_i>) v_i
> >         - Σ_{j=1}^s (<w, w_j>/<w_j, w_j>) w_j
> 
> v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ... , w_sらで直交化すると言う事は
> v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ... , w_sらとはw'は直交し,
> u_1, u_2, ... , u_tらとはw'とも直交しているのでしょうか?

 u_k は V_0 の元ですから <w', u_k> = 0 は成立しています.

> > を作ると, <v, w'> = 1 のままで, w' は u_k, v_i, w_j
> > の全てと直交します. w が初めからそうなっていると
> > しましょう.
> 
> やはりu_1, u_2, ... , u_tらとはw'とも直交するようですね。
> どうしてでしょうか?

上述の通りです.

> > Case 3-3: <w, w> = 0 のとき.
> 
> ここでもwはV_p,V_n,V_0いずれの元でもなくw∈V'となりますね。

  u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ,,, , w_s, v, w

が一次独立である, とお考え下さい.

> > <v, v> = 0, <w, w> = 0, <v, w> = 1 ですから,
> > <v + w, v + w> = 2 > 0, <v - w, v - w> = - 2 < 0
> > となっています. v_{r+1} = v + w, w_{s+1} = v - w
> > とします.
> 
> ここでさっきのvを利用するのですね。
> 今v,w∈V'となっていてそれらの一次結合v+wやv-wはV_pやV_nの元になる。
> と言う事はV_p∪V_n⊃spanV'と言う関係ですか?
> でも相変わらずv,wはV_p,V_n,V_0の元ではないんですよね。
> うーん,どのように解釈したらいいのでしょうか?

 v_{r+1} = v + w, w_{s+1} = v - w, とすると,

  u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r, v_{r+1},
                       w_1, w_2, ,,, , w_s, w_{s+1}

が一次独立となり, v, w はその生成するベクトル空間に
含まれます.

  v = (1/2)(v_{r+1} + w_{s+1}),
  w = (1/2)(v_{r+1} - w_{s+1}).

> 改めて考えてみるとどうして直交化が必要なんでしょうか?

一次独立であることが分かりやすくなります.

> Sylvesterの定理は今回の問題では役立たずなんですよね。

 V_p, V_n の次元がどのような手順の構成でも一定である
ことは保証してくれます.

> Case3のような元を処理するために直交化されたのでしょうか?

非定値な内積を扱う場合, <v, v> = 0, <w, w> = 0, <v, w> = 1
となる v, w が出て来るのが特徴的です. R^2 の内積として,
 <(x_1, y_1), (x_2, y_2)> = x_1 y_2 + x_2 y_1 を与えると
 v = (1, 0), w = (0, 1) がそうなります. この R^2 の内積は

  <081012200020.M0307921@cs1.kit.ac.jp>

で挙げた <(x_1, y_1), (x_2, y_2)> = x_1 x_2 - y_1 y_2
という例と同値です.

この例の場合にはどうなるか, 良くお考え下さい.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp