工繊大の塚本と申します.

In article <400837CB.4080100@d5.dion.ne.jp>
柳楽盛男 <nagira@d5.dion.ne.jp> writes:
> 疑問I. 集合Xに2元間の距離d: X x X -> R が与えられていると
> e-近傍 U(x,e) = {y| d(x,y)<e }が定義できて、
> 任意のUの元xに対してd(x,e)⊂Uとなるe>0存在するXの部分集合U全体を
> 開集合としてXに位相が入ります。写像d: X x X -> Rが距離といわれるための
> 条件は
> (i) d(x,y)>= 0,特にd(x,y) = 0とx = yとは同値。
> (ii) d(x,y) = d(y,x)
> (iii) d(x,z) =< d(x,y)+d(y,z)
> ですが位相が入るための必要条件は(i)だけよいと思いますが正しいでしょうか?

位相を各点 p での基本近傍系 N(p) を定めて与えるには, 集合の族 N(p) が

  (0) N(p) ∋ U ならば U ∋ p.
  (1) N(p) ∋ U, V ならば, ある W ∈ N(p) があって, W ⊂ U ∩ V.
  (2) N(p) ∋ U に対し, ある V ∈ N(p) があって, 任意の V の点 q に
      対し, ある W ∈ N(q) があって, W ⊂ U.

を満たす必要があります. (2) の条件は, p が N(p) の元 U の内点になって
いることを保障するものです.

# 集合 A の点 p が A の内点であるとは, ある V ∈ N(p) があって, 任意
# の V の点 q に対し, ある W ∈ N(q) があって, W ⊂ A となること.
# (2) を使うと, この V の点が全て A の内点であることも分かります.

距離によって定義される基本近傍系の元 U(p, e) = { q | d(p, q) < e } は
三角不等式 (iii) を用いると, それ自体開集合であることが分かりますし,
基本近傍系が (2) を満足することも明らかですが, (i) しか満たさないよう
な「距離」ではそうとは限りません.

例えば, F(x) = x ((sin x)^2 + exp(-x)) として d(x, y) = F(|x - y|) と
いう「距離」を実数全体に入れると, U(0, e) は大体, |x| が小さいところと
 |x| の大きなところでの π の整数倍の近くの小さな区間の和で, しかも
その区間の幅は |x| が大きくなればどんどん小さくなっています. p が 0 で
ないなら, U(p, c) は U(0. e) に含まれることはありません.

つまり, (i) だけでは位相を定義するには不足です.

> 疑問II.GL(n,C)に位相をいれるには距離
> d(X,Y) = Σ_(ij) (X_ij-Y_ij){(X_ij-Y_ij)の複素共役}
> を定義すればよいように思いますが正しいでしょうか?

これ自体は距離ではありません. 三角不等式が満たされませんから. これの
平方根をとったもの,

  d(X,Y) = \sqrt{Σ_(ij) (X_ij-Y_ij){(X_ij-Y_ij)の複素共役}}

は GL(n, C) を C^{n^2} と考えたときの自然なユークリッド距離です. 基本
近傍系は, 距離で考えても「距離」で考えても, この場合は同じですから,
位相を定義するにはどちらでも良いとも言えはします.

> あるいは一般的な方法でしょうか?

距離と単調連続関数との合成で作った「距離」では余り面白くありません.
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塚本千秋@応用数学.高分子学科.繊維学部.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@ipc.kit.ac.jp