# 本論は特に言うこともありませんが。

At Wed, 03 Nov 2004 07:09:32 +0900,
in the message, <4188059C.4D67BE6@ht.sakura.ne.jp>,
IIJIMA Hiromitsu <delmonta@ht.sakura.ne.jp> wrote
>> ……てっきり行政代執行だと思ってた……。
(中略)
>で、仮処分がかかって、1審のときには被告寮生側は供託金を積んで取り壊し回
>避。でも、記憶が確かならば、上告審確定前(2審判決の後だったとは思います
>が)に執行がかかっています。これを『東京大学新聞』は「強制執行」と表現し
>ていますが、正しい用語を使っていたかどうかは私は保証できないです。

そもそも、「(行政)代執行」を「強制執行」とは別ものと考えること自体が
誤りです。
代執行とは、行政上(公法上と言っても良い。)の義務について行政庁が行う
代替執行という形式の'強制執行'のことです。
つまり、代執行もまた強制執行であることに変りはありません。

# 強制執行=民事上の強制執行+行政上の強制執行。
 民事上の強制執行=直接強制+代替執行+間接強制。
 行政上の強制執行=代執行(+執行罰+直接強制+強制徴収)。
 註:行政上の強制執行において代執行以外の強制執行手段は一般的には認め
 られない。
 なお、代替執行≒代執行、間接強制≒執行罰。

さて、実際どんな内容の執行を行ったのか不明なので正確なところは何とも言
えませんが、代執行は「行政庁が自力執行として」自らの判断で行うことがで
きるものであって裁判所は関係ありません。
ですから、仮に、仮処分命令にしろ本訴の判決(仮執行宣言付判決でないと確
定前には執行できない。)にしろ裁判に基づく強制執行だったのであれば代執
行ではありません。

ちなみに、不法占拠者である寮生の立退き義務が問題なのであれば行政上の義
務ではなくてただの民事上の義務なので代執行ではないと思います。
……て言うか、不動産の明渡しは「代替的作為義務」じゃないから代執行のわ
けがないですが。
不動産の明渡しは、民事執行なら直接強制になりますが、仮に直接強制ができ
ないと仮定しても代替的作為義務ではないので代替執行は原理的にできませ
ん。

それとも、寮の建物が寮生の総有だったとか?
建物が寮生の所有物で収去義務があるとすれば、収去は代替的作為義務だから
代替執行(あるいは代執行)ということはあり得ます。

結局、「強制執行」の中身がなんだったか次第の話です。


なお、明渡しの仮処分の執行後、建物を債権者が勝手に収去したとしてもそれ
は「強制執行ではない」です。
建物収去についての債務名義が無いですから。
典型的な自力救済です。
まして、建物が債権者所有ならこれは自分の物を自分で収去するだけなので強
制執行のわけがないです。


まあなんにせよ、

>#でも編集には法学部生もいるはずだから、かなり力を入れて取材を積み重ねて
>#きているはずの駒場寮問題なのに民事・行政訴訟のイロハを知らない人だけで
>#執筆するとも考えにくいし…

「正しい用語」であると考えて問題ないと推測します。

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SUZUKI Wataru
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