Re: Ramanujanの和の等式の証明
工繊大の塚本です.
In article <e44f2bf1-a858-4c86-911d-b36c73c92d64@x3g2000yqj.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_iv_00.JPG
> で(1/1^s+1/2^s+…)(1/1^{s-α}+1/2^{s^α}+…)=Σ_{n_1,n_2=1}^∞ n_2^α/(n_1n_2)^s
> とどうして変形できるのでしょうか?
1/1^s + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s +\cdots
= \sum_{n_1=1}^\infty 1/(n_1)^s
であり,
1/1^{s-\alpha} + 1/2^{s-\alpha} + 1/3^{s-\alpha} + 1/4^{s-\alpha} + \cdots
= 1^\alpha/1^s + 2^\alpha/2^s + 3^\alpha/s^\alpha + 4^\alpha/s^\alpha + \cdots
= \sum_{n_2=1}^\infty (n_2)^\alpha/(n_2)^s
であるので, その積は
(\sum_{n_1=1}^\infty 1/(n_1)^s)(\sum_{n_2=1}^\infty (n_2)^\alpha/(n_2)^s)
= \sum_{n_1=1}^\infty (\sum_{n_2=1}^\infty (n_2)^\alpha/(n_2)^s) 1/(n_1)^s
= \sum_{n_1=1}^\infty (\sum_{n_2=1}^\infty (1/(n_1)^s)((n_2)^\alpha/(n_2)^s))
= \sum_{n_1=1}^\infty (\sum_{n_2=1}^\infty (n_2)^\alpha/(n_1 n_2)^s)
となりますが, 絶対収束する二つの無限級数の積ですので,
(n_2)^\alpha/(n_1 n_2)^s を全ての自然数 n_1, n_2 の組について
和を取ったものも絶対収束しますし,
その和の順序にかかわらず同じ値に収束するので, それを
\sum_{n_1, n_2=1}^\infty (n_2)^\alpha/(n_1 n_2)^s
と表記するわけです.
> In article <110204183810.M0101820@ras1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > \sum_{n_1, n_2 = 1}^\infty (n_2)^\alpha/(n_1 n_2)^s
> > において, n = n_1 n_2, d = n_2 とすれば,
> > = \sum_{n=1}^\infty (\sum_{d|n} d^\alpha)/n^s
> > という変形が本当に分かっていますか.
>
> よく分かりません。n = n_1 n_2, d = n_2と置く事によって,例えば
> Σ_{i,j=1}^∞ ij=1・1+1・2+2・1+2・2+…=1+2+2+4+…という和になるのに対し
> Σ_{ij=1}^∞ ijをd:=ijと置いてΣ_{d=1}^∞ dと書くと
> Σ_{d=1}^∞ d=1+2+3+4+…
> という風に意味合いが異なってくるのではありませんか?
\sum_{i, j=1}^\infty を ij = d とおいて書き直すのであれば,
\sum_{d=1}^\infty \sum_{j|d} としないといけません.
(i, j) の組の全体は,
(1, 1), (1, 2), (1, 3), (1, 4), (1, 5), (1, 6), \dots,
(2, 1), (2, 2), (2, 3), (2, 4), (2, 5), (2, 6), \dots,
(3, 1), (3, 2), (3, 3), (3, 4), (3, 5), (3, 6), \dots,
(4, 1), (4, 2), (4, 3), (4, 4), (4, 5), (4, 6), \dots,
(5, 1), (5, 2), (5, 3), (5, 4), (5, 5), (5, 6), \dots,
(6, 1), (6, 2), (6, 3), (6, 4), (6, 5), (6, 6), \dots,
\dots,
となりますが, それを ij の値 d で類別して,
ij = 1 のものは, (1, 1)
ij = 2 のものは, (1, 2), (2, 1)
ij = 3 のものは, (1, 3), (3, 1)
ij = 4 のものは, (1, 4), (2, 2), (4, 1)
ij = 5 のものは, (1, 5), (5, 1)
ij = 6 のものは, (1, 6), (2, 3), (3, 2), (6, 1)
etc.,
とした上で, それらについての和 \sum_{j|d} を取り,
更に ij = d についての和 \sum_{d=1}^\infty を取るのが
\sum_{d=1}^\infty \sum_{j|d} です.
同様に, \sum_{n_1, n_2=1}^\infty は,
n = n_1 n_2, d = n_2 とおくことにより,
\sum_{n=1}^\infty \sum_{d|n} に書き換えられます.
> > ここは, f|n, g|n となる n は [f, g]|n となる n であることを
> > 用いて和の順序変更をしています.
\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{[f, g]|n} f^\alpha g^\beta / n^s
の書き換えが,
> > f g = [f, g] (f, g) ですから, [f, g] = f g / (f, g) であり,
> > n/[f, g] = d とすれば, n = [f, g] d ですから,
> > = \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{d=1}^\infty
> > f^\alpha g^\beta / ([f, g] d)^s
> > = \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{d=1}^\infty
> > f^{\alpha - s} g^{\beta - s} (f, g)^s / d^s
> > = (\sum_{d=1}^\infty 1/d^s) \times
> > (\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty f^{\alpha-s} g^{\beta-s} (f, g)^s)
となるところですが,
> ここの部分が未だよく分かりません。
> n/[f, g] = dと置き換えずに書くと
置き換えないでいるから, 分かり難いのでしょう.
先ず, \sum_{[f, g]|n} というのは [f, g] で割り切れる n 全てに
ついての和ですが,
f^\alpha g^\beta / n^s
= f^{\alpha-s} g^{\beta-s} (f, g)^s / (n/[f, g])^s
と書き直すとき, n に関係するのは, (n/[f, g])^s だけで,
残りは n についての和を取るときには定数になります.
\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty
(\sum_{[f, g]|n} f^{\alpha-s} g^{\beta-s} (f, g)^s / (n/[f, g])^s)
= \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty
(f^{\alpha-s} g^{\beta-s} (f, g)^s \sum_{[f, g]|n} 1/(n/[f, g])^s)
ところが, \sum_{[f, g]|n} 1/(n/[f, g])^s は,
f, g が何であっても, 同じ値を持ちます.
それは \sum_{d=1}^\infty 1/d^s (= \zeta(s)) と書けるわけです.
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_vi_00.jpg
> となりますよね。左辺は問題ありませんが右辺では
> Σ_{f=1}^∞Σ_{g=1}^∞部分より前にΣ_{n/[f,g]=1}1/(n/[f,g])^s
> が来ているのでfとgをどのように採ればいいのか分からなくなってしまってます。
f, g に関わらない定数だから,
\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty
(\sum_{[f, g]|n} 1/(n/[f, g])^s) f^{\alpha-s} g^{\beta-s} (f, g)^s
= (\sum_{d=1}^\infty 1/d^s) \times
(\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty f^{\alpha-s} g^{\beta-s} (f, g)^s)
と \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty の和の前に出したわけです.
> Σ_{n/[f,g]=1}1/(n/[f,g])^sでのfとgはΣ_{f=1}^∞Σ_{g=1}^∞のfとgに
> 勿論,連動しているんですよね?
> どのように解釈すればいいのでしょうか?
書き換えれば, それが f, g に関わらない定数であることが
見やすい筈ですが, それをしないのであれば, ちゃんと
定数 \zeta(s) になることを別に確かめて下さい.
> あと,そこから相変わらず四苦八苦して
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_vi_01.JPG
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_vi_02.jpg
> という具合に変形していってみたのですが
> (こんがらがるのでわざとdとか別文字に置き換えませんでした)
その式変形の問題点は, (f, g)^s を \phi_s を用いて
表すところが間違っているところにあります.
(前に出したものは正しく \zeta(s) に置き換えているではありませんか.)
> これで正しいでしょうか?
正しく (f, g)^s = \sum_{d|(f, g)} \phi_s(d)
= \sum_{d|(f, g)} d^s \prod_{p: prime, p|d} (1 - p^{-s})
と置き換えれば,
\zeta(s) \times
(\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty f^{\alpha-s} g^{\beta-s} (f, g)^s)
= \zeta(s) \times
(\sum_{f=1}^\finty \sum_{g=1}^\infty f^{\alpha-s} g^{\beta-s} \times
\sum_{d|(f, g)} d^s \prod_{p:prime, p|d} (1 - p^{-s}))
が得られます. 但し, ここで d は \phi_s に書き換えるのに
新しく導入された変数であり, 言うまでもなく
先の n/[f, g] とは無関係です.
> 因みに最後の式変形の理由が相変わらず分かりません。
> どうして
> ζ(s)ζ(α-s)ζ(β-s)Σ_{n/[f,g]=1}^∞Σ_{n/[f,g]|(f,g)}(n/[f,g])^sΠ_{p|1/
> [f,g]}(1-p^-s)(n/[f,g])^{α+β^2s}
> に辿り着けるのでしょうか?
d = n/[f, g] だと思い込んで, 辿り着く先を間違っていますね.
ともあれ, \phi_s(d) = d^s \prod_{p: prime, p|d} (1 - p^{-s})
と書き換えるのは未だ早い.
\zeta(s) \times
(\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty f^{\alpha-s} g^{\beta-s} (f, g)^s)
= \zeta(s) \times
(\sum_{f=1}^\finty \sum_{g=1}^\infty f^{\alpha-s} g^{\beta-s} \times
\sum_{d|(f, g)} \phi_s(d))
(念の為に何度も言いますが, この d は n/[f, g] とは無関係です.)
と書き換えておいて, f = f'd, g = g'd により, f', g' を導入し,
(f, g, d) (但し, d|(f, g)) での和を (f', g', d) での和に書き換えて,
= \zeta(s) \times
(\sum_{d=1}^\infty \sum_{f'=1}^\infty \sum_{g'=1}^\infty
(f'd)^{\alpha-s} (g'd)^{\beta-s} \phi_s(d))
= \zeta(s) \times
(\sum_{d=1}^\infty \sum_{f'=1}^\infty \sum_{g'=1}^\infty
f'^{\alpha-s} g'^{\beta-s} \phi_s(d) d^{\alpha+\beta-2s})
= \zeta(s) \times
(\sum_{f'=1}^\infty 1/f'^{s-\lapha}) \times
(\sum_{g'=1}^\infty 1/g'^{s-\beta}) \times
(\sum_{d=1}^\infty \phi_s(d) d^{\alpha+\beta-2s})
としてから, \phi_s(d) = d^s \prod_{p: prime, p|d} (1 - p^{-s})
を代入することになります.
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_vi_prime_00.jpg
>
> すっすいません。ここの出だしの変形が分かりません。どうしてこのように変形できるのでしょうか?
ここでも, d = n/[f, g] の呪縛から抜け出せていないようですね.
n^s = \sum_{d|n} \phi_s(d) というときの d は
単に n の約数全てを動く変数と言うだけの意味です.
--
塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735