Re: Ramanujanの和の等式の証明
工繊大の塚本です.
\sum_{n_1, n_2 = 1}^\infty (n_2)^\alpha/(n_1 n_2)^s
において, n = n_1 n_2, d = n_2 とすれば,
= \sum_{n=1}^\infty (\sum_{d|n} d^\alpha)/n^s
という変形が本当に分かっていますか.
In article <e9474f12-bf85-4cb9-8232-7599308c85fc@r16g2000yql.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> Σ_{n_1n_2}^∞Σ_{n_2|n_1n_2}n_2^α/(n_1n_2)^s
> =Σ_{k=1}^∞Σ_{n|k}n^α/k^s
> =Σ_{k=1}(1^α/1^s+1^α/2^s+2^α/2^s+1^α/3^s+3^α/3^s+1^α/4^s+2^α/4^s+4^α/4^s
> +1^α/5^s+5^α/5^s+1^α/6^s+2^α/6^s+3^α/6^s+6^α/6^s+1^α/7^s+7^α/7^s
> +1^α/8^s+2^α/8^s+4^α/8^s+8^α/8^s+…)
> となりますよね。
\sum_{k=1} が不要であることを除けばそうですが,
どうして折角まとめたものを又バラすのですか.
1^\alph/1^s
+ 1^\alpha/2^s + 2^\alpha/2^s
+ 1^\alpha/3^s + 3^\alpha/3^s
+ 1^\alpha/4^s + 2^\alpha/4^s + 4^\alpha/4^s
+ 1^\alpha/5^s + 5^\alpha/5^s
+ 1^\alpha/6^s + 2^\alpha/6^s + 3^\alpha/6^s + 6^\alpha/6^s
+ 1^\alpha/7^s + 7^\alpha/7^s
+ 1^\alpha/8^s + 2^\alpha/8^s + 4^\alpha/8^s + 8^\alpha/8^s
+ \cdots
= 1^alpha/1^s
+ (1^\alpha + 2^\alpha)/2^s
+ (1^\alpha + 3^\alpha)/3^s
+ (1^\alpha + 2^\alpha + 4^\alpha)/4^s
+ (1^\alpha + 5^\alpha)/5^s
+ (1^\alpha + 2^\alpha + 3^\alpha + 6^\alpha)/6^s
+ (1^\alpha + 7^\alpha)/7^s
+ (1^\alpha + 2^\alpha + 4^\alpha + 8^\alpha)/8^s
+ \cdots
= \sigma_\alpha(1)/1^s
+ \sigma_\alpha(2)/2^s
+ \sigma_\alpha(3)/3^s
+ \sigma_\alpha(4)/4^s
+ \sigma_\alpha(5)/5^s
+ \sigma_\alpha(6)/6^s
+ \sigma_\alpha(7)/7^s
+ \sigma_\alpha(8)/8^s
+ \cdots
となるのは明らかでしょう.
> ここから
> Σ_{k=1}^∞σ_α(n)/k^s
> とどうしてなりますでしょうか?
という疑問は何処から出て来るのでしょう.
> > In article <b5484929-8ea0-4632-aea7-cde3aba3ea37@y26g2000yqd.googlegroups.com>
> > KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> > > Σ_{l|k}c_l(n)=Σ_{l|k}Σ_{h∈{1,2,…,n},GCD{h,n}=1}exp(2π√(-1)hl/n)から
> In article <110131203019.M0116388@ras2.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > c_\ell(n) の定義が間違っています.
>
> この定義のどこが間違いなのでしょうか?
c_\ell(n)
= \sum_{(m, \ell) = 1, 0 < m \leq \ell} \exp(2 \pi i n m / \ell)
であって, 貴方の書く( h を m に直すと)
\sum_{(m, n) = 1, 0 < m \leq n} \exp(2 \pi i m \ell / n)
とは, \ell と n の立場が逆です.
\sum_{\ell|k} c_\ell(n)
= \sum_{\ell|k} \sum_{(m, \ell) = 1, 0 < m \leq \ell}
\exp(2 \pi i n m (k/\ell) / k)
において,
> > ここで, m (k/\ell) = h とおけば, 上の和では
> > 0 < h \leq k なる h がちょうど一度ずつ現れます.
> > 何故なら, (m, \ell) = 1 なる m, \ell について, m k = \ell h,
> > つまり, m (k/(k, h)) (k, h) = \ell (h/(k, h)) (k, h)
> > が成立するのは, m = h / (h, k), \ell = k / (h, k) のときのみ
> > であるからです.
として
= \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
となることを示す部分ですが,
> すいません。なかなかここの議論が理解できませんでしたので
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_v_2.JPG
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_v_3.JPG
> という具合にA=Bとなることで
> hがちょうど一度ずつ現れることを示そうと試みたのですが
何を為すべきかが分かっていないので, A, B の置き方が変ですね.
A' = { <\ell, m> \in N \times N ;
\ell | k, m \in { 1, 2, \dots, \ell }, (m, \ell) = 1}
とするとき(順序対を < , > で表しました),
<m, \ell> \in A' に h = m (k / \ell) を対応させる
写像 \phi: A' \to N が一対一であり, その像 B' が
B' = { 1, 2, \dots, k }
となることを示すのです.
> 途中から先に進めません。何か勘違いしてますでしょうか?
まあ, 勘違いというか, 分かっていないのでしょう.
先ず, <m, \ell> が A' に入っていれば,
0 < m \leq \ell なので,
h = m (k / \ell) \leq \ell (k / \ell) = k
となり, h \in { 1, 2, \dots, k } ですから,
\phi の像 B' \subset { 1, 2, \dots, k } となります.
又, h = m (k / \ell) なら, m k = h \ell で, それを
m (k/(k, h)) (k, h) = \ell (h/(k, h)) (k, h)
と書けば, m (k / (k, h)) = \ell (h / (k, h)) に
なっているわけですが,
(k/(k, h), h/(k, h)) = 1
ですから, k/(k, h) | \ell かつ h/(k, h) | m ですが,
組 <m, \ell> が A' に入っていれば, (m, \ell) = 1 なので,
\ell = k/(k, h) かつ m = h/(k, h) となります.
つまり, m, \ell は h, k から一意に決まりますので,
<m, \ell> \in A' に h = m (k / \ell) \in { 1, 2, \dots, k } を対応
させる写像は一対一です.
逆に h \in { 1, 2, \dots, k } に対して,
\ell = k/(k, h), m = h/(k, h) とすれば,
\ell | k であり, (m, \ell) = 1 であり, m \leq h \leq k ですから,
<m, \ell> \in A' となります.
勿論, \phi(<m, \ell>) = h ですから,
\phi の像 B' が { 1, 2, \dots, k } に一致することが
分かります.
> > そうでなければ, \exp(2 \pi i n h / k) \neq 1 ですから
と書いたのは「 k | n でなければ, \exp(2 \pi i n / k) \neq 1
ですから」の間違いでした. (h を消し忘れました.)
> > \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
> > = \exp(2 \pi i n / k) \sum_{h=0}^{k-1} \exp(2 \pi i n h / k)
> > = \exp(2 \pi i n / k) \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
> > より \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k) = 0 が導かれます.
>
> 最後部分の3箇所の変形が分かりませんでした。
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_v_4.JPG
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_v_5.JPG
この計算をするときには h = m (k / \ell) だったことは
忘れてしまえば良いのですよ. もうその h は
h = 1, 2, \dots, k を動くことが分かっています.
> どうしてこのように変形できるのでしょうか?
\sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
= \sum_{h=0}^{k-1} \exp(2 \pi i n (h + 1) / k)
= \sum_{h=0}^{k-1} (\exp(2 \pi i n h / k) \exp(2 \pi i n / k))
= \exp(2 \pi i n / k) \sum_{h=0}^{k-1} \exp(2 \pi i n h / k)
= \exp(2 \pi i n / k) (1 + \sum_{h=1}^{k-1} \exp(2 \pi i n h / k))
= \exp(2 \pi i n / k) (\exp(2 \pi i n k / k)
+ \sum_{h=1}^{k-1} \exp(2 \pi i n h / k))
= \exp(2 \pi i n / k) \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
ですから,
(1 - \exp(2 \pi i n / k)) \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k) = 0
となり, 1 - \exp(2 \pi i n / k) \neq 0 より
\sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k) = 0
となります.
或いは, (実は同じことですが,) 有限等比数列の和の公式を使えば,
\sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
= \sum_{h=1}^k (\exp(2 \pi i n / k))^h
= \exp(2 \pi i n / k)(\exp(2 \pi i n / k)^k - 1)/(\exp(2 \pi i n / k) - 1)
= \exp(2 \pi i n / k)(\exp(2 \pi i n) - 1)/(\exp(2 \pi i n / k) - 1)
= 0
とすれば良い.
> > \zeta(s) (\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
> > = (\sum_{m=1}^\infty 1/m^s)(\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
> > = \sum_{k=1}^\infty (\sum_{\ell|k} c_\ell(n) / k^s)
>
> すいません。ここの変形がどうしても分かりません。
上から一つ目の等号は \zeta(s) の書き換え,
二つ目の等式については,
(\sum_{m=1}^\infty 1/m^s)(\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
= \sum_{m, \ell = 1}^\infty c_\ell(n)/(m \ell)^s
で, m \ell = k と置けば,
= \sum_{k=1}^\infty (\sum_{\ell|k} c_\ell(n)/k^s)
となる. 何故なら,
任意の 2 つの自然数 m, \ell の組と,
任意の自然数 k とその約数 \ell の組とは,
k = m \ell, m = k / \ell で, 一対一対応するからです,
という説明をしました.
> ふと,疑問に思ったのですが無限個の足し算の積に
> 交換法則や結合法則や分配法則を自由に適用してもよいという保障は
> どこから来るのでしょうか?
> (勿論,有限個の足し算の積なら当たり前の話ですが)
今考えている級数は, Re(s) について定めた範囲において,
絶対収束しているからです. 絶対収束している級数は,
任意の和の順序交換について, 同じ値を与えます.
これは絶対収束級数についての基本的な性質ですから,
解析学を最初から学び直してください.
> > 自然数 n とその約数 f および g の組は,
> > 二つの自然数 f, g とその公倍数 n の組と
> > 一対一に対応するので,
> > 後者についての和に取り替えています.
>
> これもよく意味が分かりません。
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_v_6.JPG
> という風に開いてみたりしたのですが…
= (1/1^s) \sum_{[f, g]|1} f^\alpha g^\beta
+ (1/2^s) \sum_{[f, g]|2} f^\alpha g^\beta
+ (1/3^s) \sum_{[f, g]|3} f^\alpha g^\beta
+ (1/4^s) \sum_{[f, g]|4} f^\alpha g^\beta
+ \cdots
の所までは良いですが, 次は出鱈目です.
= (1/1^s)(1^\alpha 1^\beta)
+ (1/2^s)(1^\alpha 1^\beta + 1^\alpha 2^\beta
+ 2^\alpha 2^\beta + 2^\alpha 2^\beta)
+ (1/3^s)(1^\alpha 1^\beta + 1^\alpha 3^\beta
+ 3^\alpha 1^\beta + 3^\alpha 3^\beta)
+ (1/4^s)(1^\alpha 1^\beta + 1^\alpha 2^\beta + 1^\alpha 4^\beta
+ 2^\alpha 1^\beta + 2^\alpha 2^\beta + 2^\alpha 4^\beta
+ 4^\alpha 1^\beta + 4^\alpha 2^\beta + 4^\alpha 4^\beta)
+ \cdots
ですね.
> どうしてΣ_{f=1}^∞Σ_{g=1}^∞Σ_{LCM{f,g}|n}f^αg^α/n^sが出てくるのでしょうか?
f, g の値の組が同じところを集めてくれば,
そうなるでしょう.
= \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{[f, g]|n}
f^\alpha g^\alpha / n^s
において,
> > n についての和を
> > n = [f, g] d となる自然数 d についての和に
> > 書き直しただけです.
>
> ここの部分をチキンと書き直したら
> Σ_{f=1}^∞Σ_{g=1}^∞Σ_{n∈{n∈N;[f,g]|n}}f^αg^β/n^s
> =Σ_{f=1}^∞Σ_{g=1}^∞Σ_{n∈{n∈N;n/[f,g]=1}}f^αg^β/n^s
> ですよね?
違いますよ.
= \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{d=1}^\infty
f^\alpha g^\alpha / ([f, g] d)^s
です.
> それで{n∈N;[f,g]|n}={n∈N;n/[f,g]=1}成立が言えれば
そんなことは成り立ちません.
{ n \in N ; [f, g] | n } = { [f, g] d \in N ; d \in N }
> Σ_{d|n}φ_s(d)=n^sはどのように証明し始めればいいのでしょうか?
n の素因数分解を
n = (p_1)^{e_1} (p_2)^{e_2} \cdots (p_r)^{e_r}
とすると,
\sum_{d|n} \phi_s(d)
= \sum_{f_1=0}^{e_1} \sum_{f_2=0}^{e_2} \cdots \sum_{f_r=0}^{e_r}
\phi_s((p_1)^{f_1} (p_2)^{f_2} \cdots (p_r)^{f_r})
= \sum_{f_1=0}^{e_1} \sum_{f_2=0}^{e_2} \cdots \sum_{f_r=0}^{e_r}
((p_1)^{f_1} (p_2)^{f_2} \cdots (p_r)^{f_r})^s
\times \prod_{f_i>0} (1 - (p_i)^{-s})
= \sum_{f_1=0}^{e_1} \sum_{f_2=0}^{e_2} \cdots \sum_{f_r=0}^{e_r}
\prod_{f_i>0} (((p_i)^s)^{f_i} - (p_i)^{f_i-1})
= \prod_{i=1}^r
(1 + ((p_i)^s - 1) + (((p_i)^s)^2 - (p_i)^s) +
\cdots + (((p_i)^s)^{f_i} - ((p_i)^s)^{f_i-1})
\cdots + (((p_i)^s)^{e_i} - ((p_i)^s)^{e_i-1}))
= \prod_{i=1}^r ((p_i)^s)^{e_i}
= (\prod_{i=1}^r (p_i)^{e_i})^s
= n^s
となることから明らかです.
> (vi') Σ_{(n/[f,g])|n}(n/[f,g])^s=Π_{p|1/[f,g]}(1-p^-s)=n^s
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_v_7.JPG
> と書くべきだったのですね。
n/[f, g] = 1 などという間違った話になっているので駄目です.
> > s の関数として, \sum_{d=1} 1/d^s と
> > \sum_{n=1} 1/n^s とが異なると思う理由は何ですか.
>
> 今,d:=n/[f,g]ですよね。
d はそう決めましたが, d は全ての自然数を動いていくので,
\sum_{d=1}^\finty 1/d^s という因子が出て来たわけです.
> それでもって
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_v_8.JPG
> という具合になっているのだと思います。
だから, 貴方の間違った変形について議論しても無駄です.
> その際,
> Σ_{n∈{n∈N;n/[f,g]=1}1/(n/[f,g])^s}とΣ_{n=1}^∞1/n^sが
> 等しいとは思えないのですが、、、
今問題になっているのは \sum_{d=1}^\infty 1/d^s と
\sum_{n=1}^\infty 1/n^s です. この二つは違いますか.
> 後者のnは1,2,3,…と順に足されていますが
> 前者はn=1,2,3,…となっているとは限らないように思えてしまうのです。
前者も d = 1, 2, 3, \dots となっているのですよ.
> つまり,
> {f∈N;f/n/[f,g]=1,n∈{n∈N;n/[f,g]=1}}×{g∈N;g/n/[f,g]=1,n∈{n∈N;n/[f,g]=1}}
> =N^2
> という関係が成り立っているから
> (where Re(s)>max{1,1+Re(α),1+Re(β),1+Re(α+β)}…【0】)
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_v_9.JPG
> と書けるかと思ってましたがどうも自信が無くなって来ました。
ここも間違った式を前提にしているので意味がありません.
> やはり勘違いしてますでしょうか?
はい.
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塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735