工繊大の塚本です.

In article <4fec8084-03fc-41b7-bc06-0f98ec4fd9a6@y34g2000prb.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> すいません。C^1級と全単射という条件だけからどうやって
> Φ(E)もLebesgue可測を引き出せるのでしょうか?

 Exercise 8 と同じにやれば良いのです.

 (a) の E が compact なら Φ(E) も compact は,
 Φ が連続写像であれば成立するのですから,
そのまま成立して, E が F_σ 集合なら
 Φ(E) も F_σ 集合になり, 可測です.

 (b) は |Φ(x) - Φ(x')| ≦ M |x - x'| となる
 M が取れれば, 即ち, Φ が Lipschitz であれば,
同じ議論が出来ることになります. C^1 級の Φ は
全体では Lipschitz になるとは言えませんが,
有界閉領域の上に制限すれば, Lipschitz である
ことが示せます.

 m(E) = 0 のとき, E = ∪_{n=1}^∞ E_n と,
有界な E_n に分けて, m(E_n) = 0 と
 E_n を含む有界閉領域上で
 |Φ(x) - Φ(x')| ≦ M |x - x'| が成立することから,
 m(Φ(E_n)) = 0 が言えて, m(Φ(E)) = 0 となります.

結局, Φ が C^1 であることから, locally Lipschitz 
であること, を示すことが残ります.

他のところでもそれを示すことの必要性を注意しましたね.

> つまり,lim_{x→∞}|ε/x^α|≦∃K∈Rの時,o(ε)=αなのですね。

違います. ある量 g が o(ε) であるとは,

  lim_{ε→0} |g/ε| = 0

となることです. 今, |x - z_k| < ε のとき

  Φ(x) = Φ(z_k) + Φ'(z_k)(x - z_k) + o(ε)

とは,

  Φ(x) - Φ(z_k) - Φ'(z_k)(x - z_k) = o(ε)

ということですから,

  lim_{ε→0} |Φ(x) - Φ(z_k) - Φ'(z_k)(x - z_k)|/|ε| = 0

であるとの主張です. これは Taylor の定理から明らかです.

> 多変数のTaylor展開とは
> Φ(x_1+h_1,x_2+h_2,…,x_d+h_d)=Φ(x_1,x_2,…,x_d)+DΦ(x_1,x_2,…,x_d)+1/2!
> D^2Φ(x_1,x_2,…,x_d)+…+1/(n-1)!D^{n-1}Φ(x_1,x_2,…,x_d)+o(ε)
> (但し,D:=∂Φ/∂x_1+∂Φ/∂x_2+…+∂Φ/∂x_d)ですね。

違います. 右辺に h_i がないのは変だと思いませんか.
 n 次の Taylor 展開は n 次近似を与えるはずなのに,
 o(ε) と 1 次近似にしかなっていないのは変だと
思いませんか.

> |x - z_k|<εから
> (x_1,x_2,…,x_d):=x, (h_1,h_2,…,h_d):=z_kと見立てると
> Φ(x-z_k)=Φ(x)+DΦ(x)+1/2!D^2Φ(x)+…+1/(n-1)!D^{n-1}Φ(x)+o(ε)
> となるのですね。

間違ってます.

> Φ(x)=Φ(z_k)+Φ'(z_k)(x-z_k)+o(ε)は一階微分したTaylor展開だと思いますが
> その場合,
> Φ(x-z_k)=Φ(x)+DΦ(x)+o(ε)でΦ(x-z_k)
> =Φ(x)+(∂Φ/∂x_1+∂Φ/∂x_2+…+∂Φ/∂x_d)Φ(x)+o(ε)
> となりますね。

間違ってます.

> それからΦ(x)=Φ(z_k)+Φ'(z_k)(x-z_k)+o(ε)に辿り着くには
> どのように変形すればいいのでしょうか?

先ず, Taylor の公式の復習をしてきて下さい.
変形も何もありません.

> つまり,Φ(Q_k)=Φ(z_k)+Φ'(z_k)(Q_k-z_k)+o(ε)は
> "∀x∈{x∈Q_k;|x-z_k|<ε}に対して,
> Φ(x)=Φ(z_k)+Φ'(z_k)(x-z_k)+o(ε)"という事を意味しているのですね。

少し不正確ですね. diam Q_k < ε なので,
「 ∀ x ∈ Q_k ⊂ { x ∈ R^d | |x - z_k| < ε } 」
とするべきです.

> ∀x∈{x∈Q_k;|x-z_k|<ε}に対して

これは修正して,

> Φ(x)=Φ(z_k)+Φ'(z_k)(x-z_k)+o(ε)なら
> Q_kは有界なので適当なεで

 diam Q_k < ε なる ε を既に取っています.

> Φ(Q_k)=Φ(z_k)+Φ'(z_k)(Q_k-z_k)+o(ε)と書けるのですね。

まあそれは良いですが,

> これからΦ(Q_k)-Φ(z_k)=Φ'(z_k)(Q_k-z_k)+o(ε)で
> -η(ε)Φ'(z_k)(Q_k-z_k)⊂o(ε)⊂η(ε)Φ'(z_k)(Q_k-z_k)なる
> εの関数η(ε)が存在するのですね。

何故そうなるのでしょうか.

> これは∀x∈{x∈Q_k;|x-z_k|<ε}に対して
> -η(ε)Φ'(z_k)(x-z_k)≦o(ε)≦η(ε)Φ'(z_k)(x-z_k)の
> 象徴なのですね。

意味のない式の象徴といわれても困ります.

> ところで関数ηの定義域は(0,∞)でしょうが値域は何になるのでしょうか?

誤解に基づいた質問には意味がありません.

まあ, しかし, text は間違っています.

  (1-η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k)⊂Φ(Q_k)-Φ(z_k)⊂(1+η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k)

となるという主張は成立しません.

実際, f(x) = x^3 とすれば, y = f(x) という関数は C^1 であり,
 (-1, 1) から (-1 , 1) への bijectrion ですが,
 f'(0) = 0 ですから, 0 を中心とする Q = (-ε, ε) を取ると,

  (1 - η(ε))f'(0)(Q - 0) ⊂ f(Q) - 0 ⊂ (1 + η(ε))f'(0)(Q - 0)

とはならないのです. 真ん中は (-ε^3, ε^3) ですが,
両端は { 0 } です.

どう修正すれば良いかは, まあ, 難しいかも知れません.
 C^1 bijection というのを, 逆関数も C^1 になる
写像のことだとすると, 少し楽です. それでも,

  (1-η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k)⊂Φ(Q_k)-Φ(z_k)⊂(1+η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k)

というのはちょっと虫が良すぎます.
  
> ε→0の時
> lim_{ε→0}(-η(ε)Φ'(z_k)(Q_k-z_k))
> =lim_{η(ε)→0}(-η(ε)Φ'(z_k)(Q_k-z_k))
> lim_{ε→0}(η(ε)Φ'(z_k)(Q_k-z_k))
> =lim_{η(ε)→0}(η(ε)Φ'(z_k)(Q_k-z_k))
> からそれぞれどんな値になって,

 η(ε)Φ'(z_k)(Q_k - z_k) というのはベクトルの集まりを
表しているので, その極限というのは良くない書き方ですが,

> m(Φ(O))=Σ_k m(Φ(Q_k))=Σ_k |det(Φ'(z_k))|m(Q_k)+o(1)
> が言えるのでしょうか?

 m(Φ(Q_k)) = |det(Φ'(z_k))| m(Q_k) + ε_k となっていて,
 Σ_{k=1}^∞ ε_k → 0  (ε→0) となることを言えば良いわけです.

> -η(ε)Φ'(z_k)(Q_k-z_k)⊂o(ε)⊂η(ε)Φ'(z_k)(Q_k-z_k)から

それは言えませんし,

> (1-η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k)⊂(Φ(Q_k)-Φ(z_k))⊂(1+η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k)
> はどうして言えるのでしょうか?

実はそれも言えないのです.

> (1-η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k)⊂(Φ(Q_k)-Φ(z_k))⊂(1+η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k)
> が言えれば

言えれば,

> m((1-η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k))
> ≦m(Φ(Q_k)-Φ(z_k))
> ≦m((1+η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k))
> は単調性ですね。

そうです.

> m((1-η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k))
> ≦m(Φ(Q_k)-Φ(z_k))
> ≦m((1+η(ε))Φ'(z_k)(Q_k-z_k))
> から
> (1-η(ε))^d|det(Φ'(z_k))|m(Q_k)
> ≦m(Φ(Q_k))
> ≦(1+η(ε))^d|det(Φ'(z_k))|m(Q_k)
> はどうして言えるのでしょうか?
> どうしてΦ'(z_k)は線形になるのでしょうか?

 (多変数関数の)微分は線形写像ですよ.
既に det(Φ'(z_k)) という記述があるではありませんか.
 Φ'(z_k) が d×d 行列と見做せるから意味があるのです.
 d 次元空間で, k 倍の相似変換を行えば,
 d 次元体積は k^d 倍になるのも当たり前ですね.

> どうして|detΦ'(x)| は連続関数と分かるのでしょうか?

 d×d の行列 Φ'(x) の各成分は Φ(x) の1階偏微分で,
 Φ は C^1 ですから, それらは連続です. 従って,
 det Φ'(x) も連続です.

> Reimann積分するのに連続という条件が必要なんでしょうか?

連続であれば, Rimemann 積分が存在しますね.

> Σ_k |det(Φ'(z_k))|m(Q_k)+o(1)を積分すると

それを積分するのではありません.
第一項は Riemann 和の形ですから,
 ε→0 での極限を考えれば, o(1)→0 で,
 Σ_k |det(Φ'(z_k))| m(Q_k) → ∫_E |det(Φ'(x))| dx
となります.

> えーと,E_1,E_2,…をE=∪_{i=1}^∞E_iなる互いに素な有界開集合とすると
> 今,有界開集合Eに対してはm(Φ(E))=∫_E |detΦ'(x)|dxが言えたのだから
> m(Φ(E_i))=∫_E_i |detΦ'(x)|dxで
> m(Φ(E))=m(Φ(∪_{i=1}^∞E_i))=m(∪_{i=1}^∞Φ(E_i)) (∵??)
> Σ_{i=1}^∞m(Φ(E_i))(∵可算加法性)
> =Σ_{i=1}^∞∫_E_i |detΦ'(x)|dx
>  (∵有界開集合Eに対してm(Φ(E))=∫_E |detΦ'(x)|dxは証明済み)
> =∫_{∪_{i=1}^∞E_i} |detΦ'(x)|dx (∵Lebesgue積分の性質)
> =∫_E |detΦ'(x)|dx
> でいいのでしょうか?

そうなることは良いですが, 余り役立っていませんね.
 
> E=∪_{i=1}^∞E_iの箇所はどうやって証明すればいいのでしょうか?

何を証明したいのですか.

 E を有界な可測集合としましょう. E ⊂ F で m(F\E) = 0 であれば,
 (a) の証明の途中で, Φ が C^1 より, m(Φ(F\E)) = 0 が
示されますから, m(Φ(F)) = m(Φ(E)∪Φ(F\E))
 = m(Φ(E)) + m(Φ(F\E)) = m(Φ(E)) です.
 F として, 有界開集合 F_n の共通部分 F = ∩_{n=1}^∞ F_n を
取れば, m(Φ(F)) = lim_{n→∞} m(Φ(F_n))
 = lim_{n→∞} ∫_{F_n} |det Φ'(x)| dx
 = ∫_F |det Φ'(x)| dx
 = ∫_E |det Φ'(x)| dx となりますから,
 m(Φ(E)) = m(Φ(F)) = ∫_E |det Φ'(x)| dx です.

有界でない場合も自明ですね.

> 単関数fのcanonical formをf=Σ_{i=1}^m a_i χ_{O'_i}
> (但し,R∋a_iは相異なる.O'_iは互いに素,∪_{i=1}^m O'_i=O)とすると
> ∫_O' f(y)dy=∫_O'Σ_{i=1}^m a_iχ_{O'_i}dy=Σ_{i=1}^m a_im(O'_i)となり
> ここからどうすれば∫_O f(Φ(x))|detΦ'(x)|dxが得られるのでしょうか?

 Φ は bijection ですから O'_i = Φ(O_i) となっています.

  Σ_{i=1}^m a_i m(O'_i)
  = Σ_{i=1}^m a_i m(Φ(O_i))
  = Σ_{i=1}^m a_i ∫_{O_i} |det Φ'(x)| dx
  = ∫_O (Σ_{i=1}^m a_i χ_{O_i}(x)) |det Φ'(x)| dx
  = ∫_O f(Φ(x)) |det Φ'(x)| dx

となりますね.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp