工繊大の塚本です.

In article <af5ce6b5-f0c5-40ff-b1ea-0dcd769c700b@a29g2000pra.googlegroups.com>
cchikakoo <cchikakoo@yahoo.co.jp> writes:
> 何となく分かってきました。つまり
> <v,v>>0 for all v∈V_p,v≠0,
> <v,v><0 for all v∈V_n,v≠0
> とは
> V_pの任意の元はv≠0なら<v,v>>0を満たす元,
> V_nの任意の元はv≠0なら<v,v><0を満たす元,
> と解釈すると
> V_p:={v∈V;もしv≠0なら<v,v>>0}
> V_n:={v∈V;もしv≠0なら<v,v><0}
> と書けない事もないがこれは間違いなんですよね。

 V_p の零ベクトル以外の元について <v, v> > 0 となりますが,
 <v, v> > 0 であるからといって, v ∈ V_p とは限りません.
 V_n についても同様です.

> "構成する"とは
> V_pの任意の元はv≠0なら<v,v>>0を満たす元,
> V_nの任意の元はv≠0なら<v,v><0を満たす元,
> で少なくとも
> V_p:={v∈V;もしv≠0なら<v,v>>0}
> V_n:={v∈V;もしv≠0なら<v,v><0}
> とは異なる
> V_p,V_nで線形部分空間の条件を満たすものがある(具体的に作れる)はずなのですね。

そうです.

> 帰納的にとはGram-schmidtの直交化法ですか。

それも使います.

> "<v_i, v_i> > 0, <w_j, w_j> < 0,となるものを作って,"
> これはどうすれば作れるのでしょうか?
> うーん、全く見当も付きません。

 V_0 の基底 u_1, u_2, ... , u_t から出発して,
 V の一次独立なベクトルの列

  u_1, u_2, ... , u_t, v_1, v_2, ... , v_r, w_1, w_2, ... , w_s

で, 互いに直交し, <v_i, v_i> > 0, <w_j, w_j> < 0 となるもの
が構成できたとします. (最初は v_i, w_j が存在しない場合です.)

これらで生成される空間が V に一致していればお仕舞いです.

 V に一致しない場合, これらで生成されないベクトル v を
取りましょう. Gram-Schmidt の直交化で,

  v' = v - Σ_{i=1}^r (<v, v_i>/<v_i, v_i>) v_i
         - Σ_{j=1}^s (<v, w_j>/<w_j, w_j>) w_j

を作れば, v' は u_k, v_i, w_j の全てと直交し, それらでは
生成されないベクトルですから, 初めから v がそうなっている
としましょう.

Case 1: <v, v> > 0 のとき.
このときは v_{r+1} = v とします.

Case 2: <v, v> < 0 のとき.
このときは w_{s+1} = v とします.

Case 3: <v, v> = 0 のとき.
 v は V_0 の元ではありませんから, <v, w> = 1 となる
 V の元 w が存在します. w は u_k, v_i, w_j, v では
生成されない元です. やはり Gram-Schmidt の直交化で

  w' = w - Σ_{i=1}^r (<w, v_i>/<v_i, v_i>) v_i
         - Σ_{j=1}^s (<w, w_j>/<w_j, w_j>) w_j

を作ると, <v, w'> = 1 のままで, w' は u_k, v_i, w_j
の全てと直交します. w が初めからそうなっていると
しましょう.

Case 3-1: <w, w> > 0 のとき.
このときは v_{r+1} = w とします.

Case 3-2: <w, w> < 0 のとき.
このときは w_{s+1} = w とします.

Case 3-3: <w, w> = 0 のとき.
 <v, v> = 0, <w, w> = 0, <v, w> = 1 ですから,
 <v + w, v + w> = 2 > 0, <v - w, v - w> = - 2 < 0
となっています. v_{r+1} = v + w, w_{s+1} = v - w
とします.

こうしていずれの場合も性質を満たす一次独立な V の
ベクトルの列で, 個数が増えたものが構成できます.

 V が有限次元であれば, この構成を続けることにより
 V の直交基底で求める性質を満たすものが得られる
ことになります.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp