工繊大の塚本です.

In article <d7elb7$rif$1@bluegill.lbm.go.jp>
toda <toda@lbm.go.jp> writes:
> うーん、必ずしもそういうことではないんですが^_^;

うーん.

> #「幾何学的な考察」を経てから立式するのであれば、

中心が y軸の上にあることが簡単な「幾何学的な考察」で示せ
ましょうか.

幾何学的に考察すると, Euclid 平面 E という Riemann 多様体
に埋め込まれた y = f(x) のグラフという部分多様体の法ベク
トル束 N から E への指数写像 exp: N → E による(N が自明束
であるので, fibre の「定点」に対応する) N の部分多様体の
像の特異点(この場合は二重点)を求めることに帰着します.

早い話が, (x, h) に対して (x, f(x)) での法線上を y座標が
増える方向に距離 h だけ (x, f(x)) から進んだ点

  (x - hf'(x)(1 + (f'(x))^2)^{-1/2}, f(x) + h(1 + (f'(x))^2)^{-1/2})

を考え, x を動かしたときの曲線が持つ特異点はどうなるか,
です. パラメータであることが分かり易いように x を t として,

  x(t) = t - hf'(t)(1 + (f'(t))^2)^{-1/2}
  y(t) = f(t) + h(1 + (f'(t))^2)^{-1/2}

と置きましょう.

  x'(t) = 1 - hf''(t)(1 + (f'(t))^2)^{-3/2}
  y'(t) = f'(t)(1 - hf''(t)(1 + (f'(t))^2)^{-3/2})

となります. ある t において, 偶々 h が

  κ = f''(t)(1 + (f'(t))^2)^{-3/2}

の逆数になっていると (x'(t), y'(t)) = (0, 0) となり,
その意味で曲線には特異点が現れます. この κ を曲率と
呼び, その逆数 h を曲率半径と呼ぶのは御承知の通り.
(正確には逆数の絶対値を, ですが.)

 f(x) = x^2 の場合は

  κ(x) = 2(1 + 4x^2)^{-3/2}

ですから x = 0 の所で最大値 2 を取ります. 0 < h < 1/2
であれば, 微分が消えるような特異点はなく, 二重点もなく,
正則な曲線になります. (x(t) は狭義に単調増加.)

 h = 1/2 となると t = 0, (0, 1/2) に特異点が現れます.
但し, 像の曲線を見ているだけではそうとは気付かないで
しょう.

 h > 1/2 となると t = 0 の両側に微分が消える特異点が
現れ, そこで曲線は尖点(cusp)を持ちます. この場合に,
 t が実数全体を動くときに, t の増加に伴い, x(t), y(t)
がどう変化するかを考えましょう.

 x(t) は最初の尖点が現れるまで狭義に単調増加, 次の尖点
までは狭義に単調減少, 二つ目の尖点を超えると狭義に単調
増加です.

 y(t) は最初の尖点が現れるまで狭義に単調減少, 尖点を越
えると狭義に単調増加に転じますが, t = 0 を越えると次の
尖点まで再び狭義に単調減少, 二つ目の尖点を越えると狭義
に単調増加です.

曲線の一つ目の尖点までの部分と二つ目の尖点からの部分が
交差することは明らかで, 曲線の対称性からそれが y軸上に
あることが分かります. 曲線の「傾き」 y'(t)/x'(t) = 2t
が狭義に単調増加であることを考慮すると, 他には二重点が
ないことも分かります.

さて, 同じような分析を f(x) = x^4 について行うとどうなる
でしょうか. 二重点が現れるのは y軸上だけでしょうか. h を
少しずつ大きくしていって, 尖点が四つ出て来始めた辺りでは
何が起こるでしょうか.
-- 
塚本千秋@応用数学.高分子学科.繊維学部.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp