8回裏[1]
◆20:15 8回裏 プロミストアイランドの攻撃
四葉 「さぁ来なさいってば!」
と打席で呼ばわる四葉。明らかにキャラが変わっているから既に
憑依モード全開だと思われるものの、はて誰かは判らない。背中に
妙なスケボー(しかも車輪なし)を背負っているが、流石のレイちゃ
んも心当たりが無い様だ。尤もセーラーチームは、実の所それどこ
ろじゃなかったのだが。
ちびう「だから私がピッチャーやるの!」
星野 「はいはい、判った判った判ったから。で、そうすると?」
亜美 「欠けちゃってるのはファースト・セカンド・ライト・セン
ターだから、それぞれに入ってくれれば。」
美奈子「んじゃ、私がまたうさぎちゃんに代わって、と。」
まこと「だからその無理矢理な変装は止めた方が良いよ。」(^^;)
大気 「しかし、ほたるさんがレフトですか? 失礼ながら…。」
レイ 「ちっちっち。彼女の鉄壁の守備を知らないな?」
夜天 「お、そりゃ凄ぇ。じゃ俺、それを近くで見たいから。」
星野 「仕方ないな。んじゃ俺は美奈子ちゃんとレイちゃんの近く」
大気 「何処が仕方ないんですか何処が。では私は余りですね。」
とまあ、珍しくも棒倒しも無ければすったもんだのバトルも無い
話し合いですんなり決まったセーラーチーム新ポジション。等幅
フォントな図で、以下の通り。
夜天
|
ほたる | 大気
\ /\ /
レイ 星野
/ \
まこと ちびうさ 美奈子 控:なし(失神者を除く)
\ | /
\ | /
亜美
6回裏に結構打ち込まれている以上、ちびうさのピッチャー起用
は如何にも冒険(と言うより無謀)だったが、彼女がピッチャー以外
はできない以上は致し方無し。と言う訳でグラウンドに散るセーラー
チーム。打席で待ち構えていた憑依済み四葉が悪態を付きながら構
える。これを見上げながら亜美は必死で「誰か」を考えていたが、
午後の御茶会の時に検索した結果で心当たりのあるキャラはいない。
不安げなまま、ミットを構える。これを確認し、主審がコールする。
爺や7「プレイ!」
ちびう「いきなりっ
ぴーんくしゅがぁ、はーと・あたっくぅうう!」
四葉 「無駄無駄無駄無駄無駄ァァァアアアア!
あったしっの技術は世界一ィィィイイ!」
そう叫びながらバットを振る四葉。身構える内野陣。・・・だが。
こん。
思いっきりバットを振りかぶって構えていたにも関わらず、すか
さず構えを変えてバントする四葉。その唐突な動きに思わずコケる
亜美・まこと・美奈子。そしてころころとマウンド方向へ転がって
ゆくボール。其処に居たのは「ピッチャーの練習しかしていない」
ちびうさ。当然フィールディング能力は未知数。
亜美 「ちびうさちゃん! ボールを拾って美奈子ちゃんに投げて!」
しかし所詮は只のバント。おまけに打ったのは小柄な四葉。どう
ゆっくり処理しても、1塁で彼女をさすのには十分。そう判断した
亜美はちびうさにボール処理を任せた。・・・だが。
四葉 「甘い! 発明少女プリシス・F・ノイマンの最新作の威力
を、その瞳をかっぽじって知れ!」
そう叫び、背中に背負っていたスケボー(らしき)ものを引っこ抜
く四葉。ぽい、と1塁方向の目の前に放る。ふわり、と浮くボード。
亜美 「え!?」
四葉 「いっけー!」
ボードの上に飛び乗る四葉。同時にボード後部にある呪力ジェッ
トが咆哮を上げる。魔法力と科学力が絶妙にブレンドされた発明品
が、弾かれたようにホームベース上から1塁方向へ突進した。
亜美 「そんな! ホバーボードだなんて!」
まこと「ちびうさちゃん、早く!」
ちびう「え?え?えぇぇ!?」
ゆっくり処理すればよい、と思っていたちびうさだから、そうは
容易く切り替えられない。四葉の乗る魔法科学ホバーボードは唸り
を上げ、たった2秒で1塁ベースに到着。当然ちびうさはようやっ
とボールを拾ったところ。四葉、バントヒット成功。・・・だが。
四葉 「あっはっはー! でもこんなもんじゃ済まないもんねー!」
なんとホバーボードから足を伸ばした四葉が1塁を蹴り飛ばした。
その反動で90度右に向きを変えたホバーボードが、姿勢を低くし
た四葉を乗せ勢いを殺さず、2塁方向へ突進した。
ちびう「ど、何処! 何処に投げればいーの亜美ちゃん!」
ボールを握ったままのちびうさはパニック状態。尤もこれはセー
ラーチーム内野陣も同様。それはそうだろう。まさか憑依力をメカ
ニックパワーに転換できるキャラがいるとは誰も考えていなかった
し、知らなかった。打たれたボールの処理さえ間違わなければ良い
と思っていたし、シスプリチームにこれまで「脚で稼ぐ」タイプは
いなかった。警戒が薄かったのもむべなるかな。
四葉 「ほぉらほら! 次ぎ行くよー!」
たった1.5秒で1塁−2塁間を駆け抜けた、四葉の駆るホバー
ボード。殆ど姿勢を寝かせる様にして足を出した四葉が、また2塁
ベースを蹴り飛ばす。忠実にその向きを3塁方向に向けたボードが
3塁のまことに向けて突進するのを、ベースに入った星野もカバー
のレイも黙って見送るしかなかった。
亜美 「ちびうさちゃん! 私に返して!」
この状況を見て取った亜美が苦渋の思いでちびうさに叫ぶ。それ
を聞いたちびうさがあたふたとボールをホームの亜美へトスする。
そのボールが空中を待っている間に、
四葉 「3塁、とうちゃーく! なぁんだ、ランニングホームラン
は無理だったか。まーいっか! プリシスちゃん大勝利!」
2塁−3塁間を1秒フラットで駆け抜けたボードから四葉が3塁
上に降り立った。どうやら魔法力を慣性制御にも使っているらしく、
塁上でいきなり速度がゼロになったボードをひょいと担ぎ上げると、
3塁に付いていたまことへニカリと笑う。
美奈子「レイちゃんレイちゃん、あんなキャラに心当たりある?」
レイ 「知らないわよ! でも、この島に来てから毎週のローテー
ション、見てないし・・・。」
不安げに3塁上の四葉を見るセーラーチーム。ちびうさへボール
を返しながら、亜美はマーキュリーのみが使えるサイバーバイザー
を呼び出し、其処から検索Webに繋いだ。
亜美 「プリシス・F・ノイマン・・・『スターオーシャンEX』?
・・・なにこれ! 先週放送されたばっかり!」
リアルタイムで最新情報を取得していなかった自分を悔やむが、
もう遅かった。四葉、バントヒットで3塁打。当然躍り上がって喜
ぶ1塁側ベンチから出てきたのは花穂。…バットを持っていない?
亜美 「か、花穂ちゃん? それで、どうやって打つの?」
手ぶらのままで打席に入った花穂に亜美が尋ねる。急いで最新情
報を検索してみるも、該当しそうなキャラはいない。と言うか検索
Webに花穂の名前そのものが無いから調べようが無い。
花穂 「大丈夫です。私にはこれがありますから。」
何時もの浮いた口調ではなく、どこかゆったりした丁寧語で答え
た花穂が、空っぽの右手を無造作に振った。
きん!
突然花穂の右手が光り、拳の上下に光の粒子が伸びる。一瞬後、
それは上下に宝石を頂く短い杖(ロッド)になった。
亜美 「杖・・・いえ、バトン? バトントワリングのバトン?」
その亜美が思わず漏らした疑問に答えず、花穂がじっと目を閉じ、
精神を集中させる。花穂の口から呪文らしきものが聞こえる。
花穂 「・・・星の子達、私に力を下さい・・・
・・・みんなの持ってる力を、一つの輝きにして・・・」
■8回裏0アウト|1|2|3|4|5|6|7|8|9|− ■
■Sailors|0|0|1|1|0|0|0|0| |2 ■
■Sisters|2|0|1|0|0|2|0| | |5 ■
■3塁 NEXT:花穂・白雪・衛 ◆ マウンド ちびうさ ■
水野夢絵 <mwe@ccsf.homeunix.org>
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