Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その21)です。
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その8)は<c05ag2$aqq$1@news01di.so-net.ne.jp>から
(その9)は<c12ghi$g3q$1@news01de.so-net.ne.jp>から
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(その11)は<newscache$9pfavh$4kg$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その12)は<newscache$t8l1xh$f2h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その13)は<newscache$d6j5yh$q4j$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その14)は<newscache$sjiiyh$nsj$1@news01d.so-net.ne.jp>から
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(その17)は<newscache$03mh0i$c1i$1@news01e.so-net.ne.jp>から
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^L
★神風・愛の劇場第172話『弱き者』(その21)
●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター・『ネプトゥヌス』
「未だ死ぬのは早いですよ。お二方」
颯爽と登場し、ジャンヌの攻撃を障壁──見かけは似ていても、天使の障壁とは別のも
の──で受け止めたユキ。
レイ達には格好良く告げたものの、内心では冷や汗をかいていました。
「(強い…!)」
これまでの戦いの記録と自分が目にした神の御子=日下部まろんの様子から、障壁によ
る防御力は兎も角、攻撃力の方は大したことが無いと判断していたユキ。
しかし、現実に“変身”したジャンヌと手合わせをして見ると、その実力は一撃でユキ
の障壁を無力化する程のものでした。
「(姉様はこれ程の敵と…?)」
ミストとジャンヌが直接戦った時の詳細な記録は魔界には届かず、戦いを目撃していた
はずのノインも詳しくを語りません。
それ故、ジャンヌがミストと直接対峙した際、やはり一撃でミストの障壁を破ったこと
など知らなかったのでした。
「レイ様。ミナ様を連れて早く後退して下さい! 私もすぐ行きます!」
障壁が役立たずであれば、こちらから。
そう迅速に判断したユキは、自分からジャンヌに仕掛けます。
*
障壁による防御は限界があると判断したのか、ユキはジャンヌに対して攻勢に転じまし
た。
ユキの移動はレイが目で追うことが出来ない程の迅速さで、瞬きをする間にジャンヌの
後ろを取ると、彼女の身体に手を回し持ち上げ、自らは仰け反る形でジャンヌを頭から
コースターのレールに叩き付けました。
これはかなり効いたらしく、ジャンヌの動きが止まりました。
素早く立ち上がったユキは、俯せに横たわるジャンヌの身体に跨り、両手を頭の上に載
せました。
「(まさか…零距離で攻撃!? 無茶よ!)」
そんなことをしたら、只では済まない。
そう感じたレイは叫びます。
「ユキ、止めろ!」
*
極短距離の空間跳躍でジャンヌの真後ろに移動。
ジャンヌの身体を抱え上げ、彼女の頭を鋼鉄のレールに叩き付けたユキ。
跳躍前に戦闘モードに移行。思考遮断も完璧に施し、自らの意図を完全に隠していたた
めか、ユキの行動が障壁に妨げられることはありませんでした。
ユキは両手をジャンヌの頭に翳し攻撃準備に入ります。
かつて試みて果たせなかった零距離射撃による攻撃。
ユキ自身どころか、レイ達にすら危険が及びかねない行動。
しかしユキの心の中には一片の躊躇もありません。
*
「あの子…心……」
レイの後ろでミナが何かを呟いていました。
ユキとミナの双方を見比べたレイ。
躊躇したものの、レイはよろけつつ起き上がり、ミナの側に寄りました。
そのまま抱き抱えようとしたところ、ミナはよろけつつも立ち上がりました。
「無理するな」
「大丈夫…。浮く位なら、何…とか。レイこそ、無理しないで」
ミナと二人、浮き上がり脱出する前に、レイはユキの方を見ました。
まさにジャンヌに対して攻撃をかけようとしていたユキ。
その身体が光りました。
「ユキ!」
目をこらして良く見れば、光っているのはユキの身体ではありません。
ジャンヌの身体自身が光っていました。
レイの本能が危険を察知し、ユキを引き離すべきと主張しています。
しかし、レイの傷つき消耗した身体は言う事をすぐには聞きません。
やがて、光が爆発しました。
*
ジャンヌの上に跨り、攻撃を加えようとしていた筈でした。
ユキはコースターのレールに身体を叩き付けられる衝撃で自分を取り戻しました。
「(戦闘状態が解除されたか…。奇襲攻撃、失敗ね)」
立ち上がりつつ、ユキは心の中で呟きます。
とは言え、焦りや動揺はありません。
「おい、ユキ。大丈夫か!」
「え!?」
未だ逃げていなかったの?
レイ達がとっくに逃げ去っていると思っていたユキは驚きました。
「(そうか。天使達は情に厚いんだったわ)」
今少し、ユキは時間を稼ぐ必要がありそうでした。
*
「何をしているんですか! 早く逃げて下さい!」
ジャンヌから目を離さず、ユキが叫びました。
警戒するようにユキに向かってジャンヌは身構えていました。
ユキが後ろに投げ飛ばしたとは言え、元々ジャンヌは直ぐ側にいたので距離は僅か数メー
トル程。ほんの一瞬でユキと接触してしまいます。
「早く! 私なら大丈夫!」
しかし、レイはユキを見捨てて去ることがどうしても出来ません。
ミナは何も言いませんが、思いは同じでしょう。
“早くこの場から立ち去るのです!”
とうとうユキは振り向き、レイに向かって心の声で語りかけました。
その勢いに気圧され、レイはミナを連れ空中に浮かび上がりました。
*
「(やっと、逃げてくれた…)」
天使相手に通じるかどうか不安でしたが、心に直接呼びかける手は上手く行ったようで
した。
しかし、レイ達の後退速度は傷故かゆっくりとしたもので、今ここで自分が撤退してし
まえば、忽ち彼女達はジャンヌに追いつかれてしまう。そう思えました。
「(せめて、もう一撃)」
先手を取ったのは今度はジャンヌの方でした。
剣を両手で構え、無言でユキに向かって突進して来ました。
ユキは掌に小さな黒い光球を幾つか生成し、それらを同時に放ちます。
それらは全て、別々の方角に飛び去り、直後にそれぞれが僅かな時間差を置いてジャン
ヌ目掛けて降り注いで行きました。
ジャンヌの周囲が淡い緑色に光り、一弾、また一弾とユキの攻撃は防がれました。
「(一つ、二つ……)」
ユキは目を閉じ、自分の攻撃が防がれる様子を“見て”いました。
一瞬の内にジャンヌは剣の射程に迫っていましたが、ユキに動きはありません。
ジャンヌの背後に最後の一弾が迫り、ユキは目を開けました。
ジャンヌが身体毎ぶつかり、手にした剣でユキが貫かれようとした時。
ユキの身体は塵となって消えるや、急進中のジャンヌの背後にユキが現れ、更にその背
後でユキが放った攻撃が炸裂。
これらのことが同時に起こりました。
塵から実体へと変わりきらぬ内、ユキは先程の攻撃からこれまでの間に生成していた反
応弾を零距離でジャンヌに向かって叩き込み……。
「あれ?」
片手を伸ばしたまま、ユキは硬直していました。
攻撃を放つことが出来なかったのです。
生成した反応弾もいつの間にか消えてしまっています。
「きゃんっ!」
ジャンヌはユキの伸ばされたままの手を取り、投げ飛ばしました。
上手く受け身を取ったユキ。
ただ、下は鋼鉄なのでそれなりの衝撃が身体を襲ったのですが。
「(限界、かな…)」
周囲の反応をユキは探ります。
レイとミナは自分に構わず後退を続けているようでした。
どうやら上手く“命令”を聞いてくれたらしいとユキは安堵します。
時間は十分稼いだ。
そうであるとすれば、最早この場に留まる必要はありません。
ユキは空間を跳躍し、脱出しようとしました。
「(跳べない!?)」
周辺の空間を走査し、跳躍先を決定。
そこまでは何時も通り。
しかし、実際に跳躍することが出来ません。
「(力、使い過ぎちゃったかな…)」
そう気付くと、身体が急に重くなりました。
考えるまでも無く、龍族との戦いの傷が癒えていない。
そんな状態で、御子に戦いを挑んだ報いでした。
がっくりと膝をついてしまったユキ。
目の前ではジャンヌが、両手で剣を振り上げていました。
「(ミカサ様…!)」
身体を多少刻まれた程度で、死ぬ筈は無い。
そう判ってはいても、恐怖心を完全に拭うことは出来ません。
助けを求めるつもりは無くとも、ユキはその人の名を心の中で呟きつつ、覚悟を決めま
した。
*
「ユキ!」
ジャンヌとユキの間に割って入るつもりでした。
しかし、魔術の未熟さ故にミカサが姿を現したのは、ユキの居場所から十数メートルは
離れた空中。
足場が無いことに気付き、慌てて魔術で空中に身を浮かべることに専念したため、今目
の前でユキがジャンヌに串刺しにされようとしているのに、只見ていることしか出来ませ
んでした。
「ユキ〜!」
剣を下向きに両手で保持していたジャンヌ。
一気に剣を振り下ろし…その動きが途中で止まりました。
膝をついて俯き、目を瞑っていたユキが呆然と顔を上げるのが見えました。
「ユキ!」
「ミカサ…様?」
ミカサの呼びかけに応え、ユキがこちらを向きました。
しかしそれは一瞬で、再びユキはジャンヌの方を向きました。
ジャンヌは両手で剣を振り下ろそうとしたそのままの格好で固まっていました。
「(一体何が…?)」
*
身体の中で不思議な力を感じました。
それは、これまでに感じたことの無い暖かな…そして強い力。
ユキが目を開けると、ジャンヌが剣を構えたまま動きを止めていました。
「(これは…障壁? 何で?)」
ジャンヌの剣は障壁によって阻まれていました。
しかし、ユキに障壁を展開した覚えもその力もありません。
ミカサが自分を呼ぶ声がしました。
横を見ると、ミカサが空中に浮かんでこちらを見ていました。
恐らく、自分を助けるつもりで出現場所がずれたのでしょう。
ミカサの魔術の未熟さをこの時ばかりはユキは感謝しました。
と同時に、障壁を出したのがミカサでは無いということも理解しました。
再び、ジャンヌの方を見据え、自分がどうして助かったのか推論を重ねたユキ。
程なく、ある理由からその結論にユキは到達しました。
「まさか…そんな…私が、なんて……」
しかし、目の前の現実は変えようがありません。
「そうか、そう言う事なのですね。魔王様」
ユキは、ジャンヌの瞳を見据えました。
相変わらず、ジャンヌに動きはありません。
ジャンヌから目を逸らさぬまま、ユキは立ち上がりました。
ジャンヌは再びユキを攻撃する事無く、一歩後ずさりました。
既にジャンヌとの間を阻むものが無くなっていることにユキは気付いていましたが、躊
躇はありません。
剣を構えたままの姿で固まっているジャンヌ。
ユキはその身体に手を回し、彼女の身体を抱きました。
信じられない。そんな表情を浮かべているジャンヌの顔が間近にありました。
そんなジャンヌの耳元に口を寄せると、ユキは何かを囁きました。
*
それは、不思議な光景でした。
ジャンヌに追い詰められていたはずのユキが、今はジャンヌを抱きしめている。
そしてユキが何事かを耳元で囁くと、剣を持つ手がだらりと下がりました。
当面の危険は無さそうだが、これは一体どういうことか。
ミカサが戸惑っていると、ユキはジャンヌの身体に回していた手のうち片腕を彼女の頭
に回し、長い金髪を束ねていた赤いリボンを解きました。
二人の身体が眩い光に包まれたと思った次の瞬間、ユキの腕の中にいたジャンヌは、元
の日下部まろんの姿となっているのでした。
(第172話・つづく)
次週で第172話は完結予定…と宣言しておきます。(次回とは言えないらしい^^;;;)
では、また。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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