Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その15)です。
少々間が空いてしまいました。
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
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(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
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^L
★神風・愛の劇場第172話『弱き者』(その15)
●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター『ウラヌス』
スタート直後の猛加速。その後の垂直降下とループ。
ジェットコースター『ウラヌス』は、そんな直線的なレイアウトのコースを僅か1分程
で駆け抜けました。
その時間を実際の時間以上に感じた都。
しかし、隣のまろんは停車したコースターの中で「もう終わりなの?」という表情を見
せていたのです。
「まろん」
「何?」
「あんたどうしてそんな涼しい顔してるのよ」
「そうでも無いけど。結構来たよ、このコースター。胸が潰れるかと思った」
どこまで本気か判りませんが、それなりに真剣な表情で言うまろん。
その胸をいきなり都は指で突きました。
「わっ。何するのよ」
「……別に。さ、次行くわよ」
「もう。変な都」
そんなことを話しながら、預けていた荷物を手にして出口の階段を降りて来た
まろん達。
すると、階段の下にアンが一人で立っていて手を振っていました。
「まろんさん」
「あら、アン。良く会うわね!」
「こんにちわ」
「あれ? ダイアナさんとか、ギル叔父さんは?」
先程紹介された、アンの双子の姉と叔父の名前をまろんは言いました。
「二人とも、用事があるので先に帰っちゃいました」
「折角の姉妹水入らずなのに?」
「姉は忙しい人ですから」
「そう…。じゃあ、一人なんだ」
「ええ。それで良かったら、一緒に遊園地を回りませんか?」
もちろん!
そう言いかけて、まろんは恐る恐る、隣の都の様子を見ました。
今日のこれまでの様子からして、うっかり肯いたりしたらもの凄い表情で睨まれるかと
思ったからです。
「もちろん、良いわよ」
「へ!?」
予想外の反応に、まろんは思わず奇妙な声を上げてしまいます。
「ひょっとして、ご迷惑ですか?」
まろんの反応を見て、おずおずとアンは言いました。
「ううん。そんな事無いよ! 都も良いって言ってるし、一緒に行こうよ」
「良かったー。それじゃ、宜しくお願いします」
「それじゃあ、次はどこに行こうか」
「まろんさん達の行くところで良いです」
「それじゃ、次はネプトゥヌスに行こう!」
*
自分に対して敵意を向けていた都の感情を自分の力で変えた時、アンは何とも嫌な気分
を抱きそうになり、それを意志の力で押さえました。
元々、何かを成そうとしてその『力』を使うことは殆ど無かったアン。
その力をアンは今、意識してそれも戦いのために用いようとしていました。
「(これは、みんなのためなんだから…)」
そう自分に言い聞かせて辺りを見回すと、周囲には遊園地のスタッフを別とすれば、自
分たちの仲間しか居ませんでした。
それは、作戦で予定されていたことであり、もう一人の自分が仕事をしている証明でも
ありましたが、やはりアンの目から見ても少々異様な光景でした。
まろん達の周りには、この地の人間達とは明らかに異なる髪の色と肌の色の者ばかりが
歩いていて、中には命令を柔軟に解釈出来ないのか、露骨にまろん達の後をつけて来る者
さえいたのです。
この様子に気が付かれたら、警戒されてしまう。
そう考えたアンは、一生懸命まろん達の注意が周辺に向かわないように、話し続けるの
でした。
*
これだけで良いんですかとは言ったものの、エリスにとってこの仕事は楽とは言い難い
ものでした。
人間全てを追い払うのであれば楽なのですが、例えば遊園地のスタッフを動かす訳には
行かず、更にはまろんの友人も自分の力の影響下に置く訳には行きませんでした。
従って、まろん達の姿を視界に収められる高所に陣取りながら、人間達に選択的に感情
──このジェットコースターの行列に並ぶのは、後回しにしよう──をエリスは押しつけ
て行きました。
例外は、障壁を無自覚に展開しているまろん、遊園地のスタッフ、そして都。
更には魔界の住人達は堕天使達が薄い障壁を展開しており、エリスの力の影響を受ける
ことを防いでいます。
障壁が展開されているという事実をまろんが気づくことが懸念材料でしたが、アンが積
極的に話しかけていることが幸いして、今のところ気づいてはいない様子でした。
「そろそろ移動しないと」
まろん達が乗っていた天王星の名を持つジェットコースターのコースを支えている骨組
みの一つに陣取っていたエリスは、まろん達の姿が見えなくなると、そこから何の躊躇い
も無く飛び降りました。
この日、髪の色と服装を変え、見かけ相応の少女として振る舞っていたエリスは、髪の
色を本来の色に戻し、服装も仕事をする時の服装──人間の言うメイド服──に着替えて
います。
ジェットコースターからメイド服を着た少女が飛び降りた様子をもしも見咎められれば
ちょっとした騒ぎになることは疑いもありませんが、もちろんエリスはそんなことは無い
ように手は打っています。
高さ数十メートルの場所から平然と着地したエリスは、彼女の制服姿でまろん達が消え
て行った方向へと駆けて行くのでした。
●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター『ユピテル』
一度は乗らずに通り過ぎた木製ジェットコースター『ユピテル』ですが、結局はツグミ
達はそれに乗ろうと戻って来ていました。
海面上に突き出たジェットコースター『ネプトゥヌス』に、偶然出会った麗子達と一緒
に乗ったツグミ達。
その後、用事があると言う麗子達と別れ、高速コースターである『ウラヌス』に乗ろう
と向かいました。
しかし、いざ行列に並ぼうという段に、弥白が「ここは止めておきましょう」と言い始
め、佳奈子や全もそれに同調したために、結局こちらの方に戻って来てしまいました。
どうして行列に並ぶのを躊躇ったのかツグミには判りませんでしたが、長蛇の列が出来
ていたのだろうと想像します。
佳奈子から聞いていたジェットコースターの内容を聞く限り、人気が出るだろうとはツ
グミにも想像出来ましたから。
「こちらですわ。さくらちゃん」
「これが『ユピテル』なんだ。凄〜い」
「ネーミングセンスはありませんけど、コースレイアウトはまぁまぁですわね」
場内のざわめきの中で、小学生位なのでしょう。
可愛らしい女の子の声をツグミの耳は捉えました。
こんな可愛らしい声ならば、その顔に触れてみたい。
そんな邪なことをツグミは一瞬考えます。
もちろん、思うだけですが。
「あら、あなた大道寺知世さん?」
何という偶然。ツグミが興味を抱いた少女達に、弥白が声をかけました。
「え…。あ! こんにちわ。山茶花さん」
「お母様はお元気?」
「はい。母も来たかったそうですけど、仕事の都合で」
「こちらの方はお友達?」
「はい。同級生の木之本桜さんですわ」
「こっ、こんにちわ」
「こんにちわ」
さくらと紹介された少女は、やや緊張した声で弥白に挨拶しました。
次は当然、自分が紹介される番。
そう思い、どう挨拶しようかと考えていたツグミ。
しかし、それは実現することはありませんでした。
「待って下さ〜い」
「あら」
遠くの方から、ツグミが知る人物の声が聞こえてきました。
「水無月さん」
「え? 大和さん?」
ツグミの呟きを聞きつけたのでしょう。
弥白もツグミが顔を向けている方向を見ている様子でした。
「しつこいですわね」
それは、普通の人では聞き落としてしまいそうな、小さな小さな声。
しかし、ツグミは普通の人ではありませんでした。
「弥白さん。それでは、私たちは先を急ぎますので。ごきげんよう」
「あ…。ごきげんよう」
「行きますわよ。さくらちゃん」
「あ、ちょっと知世ちゃん」
ほんの数ヶ月前までのツグミであれば、このまま見過ごしてしまったかもしれません。
しかし、今のツグミの大切な人はかなりのお節介──特に、可愛い女の子に対しては─
─であり、ツグミもその影響を全く受けないでは無かったのです。
「ねぇ、大道寺知世さんって言ったわよね」
「はい。あの…」
自分でも驚く程の瞬発力で、ツグミは知世達が去ろうとした方向に回り込んでいました。
「あの男性から逃げ回っているのかしら」
「それは…」
「あの方、私の知り合いなの。決して悪い人じゃないわ。出来れば、どうして逃げ回って
いるのか教えてくれないかしら」
出来るだけ詰問するような感じにならないよう、笑顔も見せつつツグミは問いかけまし
た。
「そうなの? 知世さん」
「……」
ツグミの話を聞き、弥白も知世に問いかけました。
「山茶花さーん。瀬川さーん」
そうしている内、大和の声が近づいて来ました。
「はぁはぁはぁ。やっと追いつきました」
「私はさくらちゃんと三…二人でここに遊びに来たんですの。案内は不要ですわ」
漸くといった感じで追いついた大和に対し、知世はきっぱりと言い放ちました。
「そんなぁ」
困惑した様子で大和が言いました。
僅かな会話でしたが、何となく事情が飲み込めたツグミ。
素直に案内して貰えば良いのにとツグミは思うのですが、二人だけで遊びたい気持ちも
判らないでもありません。
「駄目よ、知世さん。大和さん、困ってるじゃない」
どう諭したものかとツグミが悩んでいると、弥白は優しくもきっぱりと知世に言いまし
た。
「気持ちは判るけど、貴方は我が儘ばかり言える立場じゃないの。判るでしょ」
「判りましたわ」
ツグミにとっては少々意外なことに、知世はあっさりと同意しました。
「水無月大和さん」
「僕の名前、知ってたんですか」
「水無月さんもお仕事ですから、ついて来ても良いですけど…」
「ありがとうございます」
「案内は不要ですから」
「判ってます」
「それでは参りましょう。さくらちゃん」
「うん」
「それでは、弥白さん。ごきげんよう」
「ごきげんよう。大和さんもね」
「あ、はい。失礼します」
何とか話がまとまったらしく、知世達はその場を去って行きました。
「あの…」
「何ですの」
「そのビデオカメラなんですけど」
「私のですけれど?」
「良かったら、僕が撮りましょうか? お友達とツーショットで」
向こうの方に去って行く知世達の会話をツグミは聞いていました。
案内はいらないと言われたにも関わらず、大和は知世とコミュニケーションを取ろうと
している様子でした。
「駄目ですわ」
「え? でも、それだと大道寺さんは映らないんじゃ…」
「だって、さくらちゃんの美しい姿を本当に美しく撮影するのを他の方にお任せ出来ませ
んもの!」
「と、知世ちゃん……」
「は、はぁ…」
「さ、さくらちゃん。先に行って下さいな。私は後から撮影しますから」
「う、うん…」
大和の努力が空振りに終わった所まで聞こえてしまい、ツグミは思わずクスリと笑って
しまいました。
「どうしたのかしら?」
「変わった娘ね。お知り合い?」
笑い声を聞き、話しかけて来た弥白にツグミは聞きました。
「ええ。大道寺グループのご令嬢よ。パーティーとかで時々」
「山茶花さんの言う事は随分良く聞くみたいね」
「子どもの頃、ちょっとあって。それ以来」
弥白は、ただそれだけを言いました。
成る程、お金持ちの家に生まれるということは、自分には想像もつかない苦労があると
いうことらしい。ツグミはそのように解釈しました。
「お友達をビデオで撮影するのが趣味なのかしら」
「え? ビデオカメラを持っているのに気づいたの?」
「向こうから、ビデオカメラでさくらちゃんを撮影するとか何とか。よっぽど、あのお友
達のことが好きみたい」
「そうね。本当に仲が良さそう。羨ましいですわ」
弥白はそう言った後で、ぽつりと小さな声でこう呟きました。
「やっぱり、親子なのかしらね」
「え? 親子!?」
ツグミが思わず反応すると、弥白が息を飲むのが判りました。
「何でもありませんわ。行列に並んで来ます。ツグミさんはゆっくりといらして。佳奈子
さん、ツグミさんをお願い」
そう言うと、自分からさっさと『ユピテル』の行列に向けて歩いて行ってしまいました。
「ツグミさん。僕達も行くでぃす」
「そうね」
「こちらにどうぞ。段差がここにありますので、気をつけて」
「ありがとう。佳奈子さん」
「あの…ツグミさん」
「何」
「先程の弥白様の言葉なんですけど」
声を潜め、佳奈子は言いました。
「何?」
「大道寺グループの社長は、身近には女性しか置かない方なのだそうです」
「そうなの?」
「使用人もボディガードも女性。それも美しい方ばかりだとか。その筋では結構有名な話
です」
「そうなの」
「事実として言えるのはそれだけです。それ以上言うと憶測が混じります」
「成る程ね。娘さんも可愛い女の子のことが好きなのかしら」
「そうかもしれません。…すいません。余計な事を言って引き留めて。さ、行列に並びま
しょう」
「ええ」
「はぁい」
佳奈子の案内でコースターの行列に並びながら、どうしてこんなことを彼女は自分に話
したのだろうかとツグミは考えていました。
(つづく)
早めの夏期休暇には間に合うようにしようかと(謎)。
では、また。
--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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