Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その12)です。
# 前回の投稿から一ヶ月も空いてしまった……
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その8)は<c05ag2$aqq$1@news01di.so-net.ne.jp>から
(その9)は<c12ghi$g3q$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その10)は<newscache$sfa7uh$klk$1@news01a.so-net.ne.jp>
(その11)は<newscache$9pfavh$4kg$1@news01a.so-net.ne.jp>からどうぞ
^L
★神風・愛の劇場 第172話『弱きもの』(その12)
●魔界
魔王が作った遊園地の真ん中にある人間界の王宮を模して作られた宿泊施設。
そこで一夜を過ごしたフィンと魔王は、翌日も同じ場所に留まっていました。
「…あの、聞いても良いですか?」
「何だい?」
フィンが魔王に問いかけたのは、昼食の席。
給仕をしていた侍女を魔王の合図で下がった後のことでした。
「私たちは何時までこうしているのでしょうか?」
「私がここに居るのに飽きるまで…かな」
「良いんでしょうか」
「何がかな?」
「地上では我らの仲間が臨戦態勢にあると言うのに」
「臨戦態勢か。…見てみるかい?」
「え?」
「人間界の様子をさ」
魔王はそう言うと、目の前の空間に遙か人間界の映像を投影して見せました。
「フィンが心配せずとも、皆それぞれ羽根を伸ばしているようだね」
「あの娘たち……」
遊園地で遊んでいる人間に化けた堕天使の仲間達を見て、小さく溜息をついた
フィン。
とは言え、それを言える立場でも無いとも判ってはいます。
「もっとも、ただ羽根を伸ばしている訳でも無いらしい」
「え!?」
映像が代わり、遊園地の建物の中にいるフィンの仲間達の姿が浮かび上がりま
した。それに続いて、遊園地の中にいる日下部まろんと東大寺都の姿も。
「成る程。これは、レイ達の作戦なのでしょう」
「天使達の?」
「願いがあり、私が行動の許可を出しました。神の御子の力を計りたいと」
「天使は働き者だな。上司の留守も仕事を休まない」
呆れたという表情を魔王は浮かべます。
「与えられた生命の長さが魔族と違いすぎるのです。一時でも無駄な時間は」
真剣な目で魔王を見据えつつ、フィンは言いました。
「そうであったな。では、時間は有効に過ごすことにしよう」
「え?」
「今後の作戦について、話をしに来たのだろう?」
「はい。しかし」
周辺は偽りの光とは言え陽光に溢れていて、出来損ないとは言え小鳥の囀り。
戦の話をするような場所とは思えませんでした。
「実は、時を待っている」
フィンの心を見透かしたように、魔王は言いました。
「え?」
「直に判る」
そう言うと、魔王は手を叩いて侍女を呼び、お茶のお代わりを所望しました。
●水無月ギャラクシーワールド・ショッピングモール
作戦の前の僅かな時間を遊園地で過ごすことにしたレイとミナ。
二人がまず最初に向かったのは遊園地に点在する鋼鉄で出来た乗り物…では無
く、『銀河亭』と看板の掛かったレストランでした。
「デザートが欲しいわね」
そうミナが呟いたのは、食後のコーヒーを飲んでいた時のこと。
二人が頼んだランチセットには、デザートがついていなかったのです。
贅沢に関する話となるとうるさいレイも、この時は何も言いませんでした。
「あれなんかどうだ?」
それどころか、自らアイスクリーム屋を指さしてすらいます。
「いらっしゃいませ」
アイスクリーム屋には自分たちと(外見上が)同じ年頃の店員が二人いました。
アルバイトらしい店員は、一人は眼鏡をかけた優しそうな表情をもう一人は鋭
い視線をそれぞれ二人に向けました。
鋭い視線を向けられ、一瞬緊張したレイ。しかし、その店員も直ぐに隣の少年
と同じような微笑みを浮かべたので、緊張を解きました。
「うーん…」
たくさんの種類があるアイスクリームを前に、どれにしたものかと悩むレイと
ミナ。そもそも、アイスクリームに関する知識が足りないのです。
その間、目つきの鋭い店員が何故かレイとミナを睨んでいましたが、真剣に品
定めをしていた二人はそれには気づきませんでした。
「あの…」
二人が品定めを初めて数分が経過した時、眼鏡の店員が声をかけて来ました。
「本日のお勧めは、この胡麻と宇治金時と…」
「ふんふん」
「じゃ、これとこれ」
店員に勧められるまま、アイスクリームをそれぞれ二段重ねで注文したレイと
ミナは、支払いを済ませると早速アイスを舐めつつ、遊園地の中心へと歩いて行
くのでした。
●水無月ギャラクシーワールド・中心部
「ちょっと疲れた。休憩しよ、まろん」
ロケットコースター「マルス」から降りて来たまろんと都。
この日二つ目のジェットコースター体験に、都は少々疲れた表情を浮かべてい
ました。
「大丈夫? 都」
奇跡的に空いていたベンチを確保したまろんと都。
「こんなのちょっと休憩すれば大丈夫よ」
「もうちょっと大人しい乗り物にしようよ」
「それは却下」
「どうして?」
「まろん、こう言うの好きでしょ」
「まぁ、それは…」
「コースターに乗ってる時のまろんの表情、なかなか良かったよ」
そう言うと、都はバックの中から一枚の写真を取り出しました。
それは、コースターに据え付けられたカメラで撮影されたもので、悲鳴を上げ
ている都の隣で、まろんは確かに嬉しそうでした。
「都、そんなの買ってたの?」
「うん」
「恥ずかしいなぁ、もう」
「なら、ジェットコースターの写真にVサイン出して写るんじゃないわよ」
「何か、光っているのが見えたから、つい…」
「これは、私が一生宝物にして保管してあげるから」
「え〜」
写真を奪おうとしたまろんの手をかい潜り、都はその写真を再びバッグにしま
ってしまいました。
「ねぇ、都。喉乾かない?」
「んー。それより、アイスか何か食べたい」
「あ、それも良いわね。じゃあ私、買って来るよ」
「それならあたしが」
「良いから、都は休んでて」
そう言い、まろんは立ち上がりました。
都が無理に止めようとしなかったのは、きっと本当に疲れていたからなのでし
ょう。
まろんは、昼食時に見つけていたアイスクリーム屋に走って行こうとして、そ
の足を止めました。
「…どうしたの?」
「……」
都の呼びかけに応えなかったまろん。
ピンと来て辺りを見回した都。
彼女の予想は半分は当たり、半分は外れました。
「まろん!」
「あ…」
「可愛い子に見とれてないで、とっとと走る!」
「はぁい」
固まってしまったまろんの視線の先。
そこには、金髪と黒髪の美少女が、腕を組んで歩いていました。
都に急かされ、ショッピングモールの方に走って行くまろんは、名残惜しそう
に二人の方をちらちらと見ていました。
*
“おい、今の”
“ええ。気づいてる。御子ね。でも、まだ時間じゃない。無視しましょ”
“でも、あいつはこちらを見ているようだが”
“御子は可愛い女の子が好きだから”
“喜ぶべきだろうか”
“それで良いんじゃない?”
遊園地の中で腕を組み、アイスクリームを舐めながら歩いていたレイとミナ。
二人は視線を動かすことなく、心の声で会話をしていました。
カップルのように腕を組み歩いていた二人を見て、女だけだと見て取った身の
程知らずの男達──本人達はそうは思っていません──が何人か声をかけて来ま
したが、二人は彼らに無視で応えます。
この日の招待客はどちらかと言うと金と女性に不自由を感じない層が多かった
ので、大半はそれで諦めて去って行ったのですが、例外はどこにでもいます。
「おい、無視すんなよ」
無視されたことでプライドでも傷ついたのか、レイの肩に手を置いた男は、そ
の直後にミナに腕を掴まれ、睨まれるとそれまでの威勢は何処へやら、逃げ去っ
てしまうのでした。
「全く、これで何人目かしら」
“6組目、だな”
ミナのぼやきに対してレイは即座に心の声を触れた肌越しに返しました。
“数えていたの!? 呆れた”
“ここは戦場だぞ。それ位は当然だ”
“まだ、ここでは戦いは始まっていないのに”
“日が暮れればそうなる”
「はいはい」
最後は口に出して、ミナが言いました。
それを議論の終了と受け取ったレイもそれ以上は何も言いません。
「とにかく、時間のあるうちは楽しもう?」
「ああ」
腕に手を回したまま、レイに寄り添う形となったミナ。
レイはそれを受け入れていましたが、突然ミナを突き放しました。
「何!?」
レイに乱暴に扱われたことで、ミナが不満の声を上げることはありません。
彼女がその様な態度を取る時は、必ず何か異変があった時。
そう感じたミナは警戒の視線を周囲に走らせ、すぐに警戒を解きました。
“あの子たちったら…”
“全く、隠密行動中なのだぞ”
そう心の声で会話はしたものの二人はその場を無言で立ち去りました。
直立不動で立っている、数組の男女に見守られながら。
●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター『ユピテル』
「手始めに、ここから行こうか」
「そうね」
まろん達と別れた後、各所に配された絶叫マシンとそれに乗り悲鳴を上げてい
る人間達を興味深げに眺めつつ、遊園地の奥へ奥へと歩いて来たエリス達。
その視界に海が潮の香りとともに広がり、これ以上奥は無いと判りました。
そんな彼女達の目の前に建っていたのは、巨大な木で出来た構造物。
その構造物の上を中を他のものと同じ様な形をした乗り物が、他の同種の乗り
物とは明らかに違った轟音を立てて走り回っていました。
その轟音をエリスはいたく気に入ったのですが、もちろんそれを口に出して言
うことはありません。
「儂はローラーコースターなど乗りませんぞ」
乗り場には短いながらも出来ていた行列。
そこに並ぼうとしたアンの背中に向け、トールンは主張しました。
「え? どうして?」
「あんな子供じみた乗り物などに…儂は乗りませんぞ」
「私も子どもじゃ無いけど?」
「それは…」
「トールン、まさか…。ローラーコースターが怖いんだろ」
「馬鹿な! この龍族一の猛将、トールンが…」
「『皆殺しのトールン』が良く言うぜ」
「貴様…何故それを……」
「エリス! 言い過ぎよ!」
二人の喧嘩をまたかという表情で見つめていたアン。
しかし、エリスがその言葉を発した瞬間に、大音声でエリスを叱りました。
その声は、周囲の人々全てがエリス達を注目する程のもので、こうなってはエ
リスもそれ以上喧嘩を続けることは出来ません。
「エリス。トールンに謝りなさい」
先程よりは幾分抑えた声で、アンは言いました。
「何で俺が…」
「貴方の言葉はトールンに対する侮辱。トールンに対する侮辱は私に対する侮辱。
そして…」
「ああ、判った。判ったから…。すまなかったな。トールン」
不承不承という感じは明らかでしたが、とにかくエリスは謝りました。
「フン。まぁ、良かろう」
「それとトールン」
「はい。姫」
「トールンも一緒に乗ってくれるわよね」
「それは…」
「正直なところ、私も少し怖いの。だから…」
「姫がそう仰るのなら」
「ありがとう」
こうして、ジェットコースターに並ぶことになったエリス達。
それから暫くして、木製のコースの中から遊園地中に響く大音声が響き渡り、
遊園地で遊ぶ人々を驚かせるのでした。
(第172話・つづく)
後1ヶ月位…かなぁ(笑)。
では、また。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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