Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その10)です。
# 表稼業の影響で大分間が空いてしまいました。^^;;;;
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その8)は<c05ag2$aqq$1@news01di.so-net.ne.jp>から
(その9)は<c12ghi$g3q$1@news01de.so-net.ne.jp>からどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第172話『弱きもの』(その10)
●水無月ギャラクシーワールド・レストラン『銀河亭』
術で眠らせたため、崩れ落ちそうになった都の身体。
それをユキはそっと片手で受け止めました。
「(急がなくちゃ)」
今は二人だけしかいないとは言え、この混雑した店内。
直ぐにでも誰かが入って来ないとも限りません。
もちろん、そうはならないように仕掛けは施してあるものの、それもあまり長
いと人間達に不審がられてしまいます。
流石に化粧室の床に都を横たえるのは躊躇われ、都を受け止めたまま、その額
にユキは掌を乗せました。
最近、神の御子──日下部まろん──の頭の中を覗いた時と同様に、雑多なイ
メージがユキの脳裏に浮かび上がります。
ユキが一番最初に見た映像は、この店に座っている神の御子の姿。
「(なるほどね。神の御子が溜息をついていたのは喧嘩したってことか)」
そのイメージに関連する情報を辿ったユキ。
次に浮かんだのは、最近の神の御子のお気に入りである筈のあの金髪の少女。
そして……。
「(私とアン?)」
自分とアンの姿が出て来て、軽い驚きを覚えたユキ。
しかし、直ぐに理由が判りました。
「(あの時、御子が私達を遊園地に誘ったことを気にしていたのね)」
都の頭の中をざっと眺め、ユキは現実に戻って来ました。
自分の腕の中で眠っている都の表情を眺めつつ、得られた情報をユキは整理し
ます。
「(そうか。この娘の頭の中は、神の御子で一杯なのね)」
疑問が解消したので都の意識を回復させようとしたユキ。
しかし、このまま意識を回復させて良いのかという想いが頭をよぎります。
「(でも、この娘はクイーンの“お手つき”だし……)」
暫くの間、ユキはその場で固まったままでいました。
●濱坂市・湾岸地区
魔界軍第二義勇親衛旅団「フィン・フィッシュ」第二大隊。
それが、彼が指揮する部隊の名前でした。
もっとも、魔界に住む人間が考えてつけた長い名前は彼の兵士達の多くは覚え
ておらず、覚えていても使おうとはしませんでした。
その代わりに兵士達の多くはこの名前を用います。「クイーン親衛隊」と。
*
普通であれば兵士達を死地に立たせ自分は後ろから指揮していれば済む立場の
隊長──シン──は、一人の準天使の追撃を受け、街の中を必死に逃げ回ってい
ました。
その両手には、彼が準天使を攻撃するのに使ったごつい武器がしっかりと握ら
れていましたが、この様な状況では反撃することなどままなりません。
その武器は人間達が対物狙撃銃と(建前で)呼んでいる代物で、持ち歩くには
少々どころでは無く骨な代物でしたが、それを持ったまま、ビルとビルの谷間を
軽々と走り回っているのは、その人間そのものの外観とは裏腹に、彼がれっきと
した魔族の一員であることを示していました。
彼には空間転移能力があったので、準天使の追撃をかわすことは本来容易でし
た。
それをしなかった理由の一つは、転移の瞬間に無防備な姿を敵に晒してしまう
ことでしたが、転移に関してはそれなりの実力のあった彼にとっては大した問題
では無く、彼には逃げる訳にはいかない事情があったのです。
*
結界の外に突き出ているらしいビルの上から、アクセスを攻撃して来た敵の
「隊長」。
見るからに弱そうなあいつなら、簡単に捕捉出来る。
しかし、その認識が誤りであったことをアクセスは直ぐに思い知りました。
敵は建物と建物の谷間に飛び込んだ上に巧妙に気配を消している──と言うよ
りもこの地域に棲んでいるらしい魔族の気配に紛れているために、上空からでは
捜索が困難であったからです。
それでも、何故か馬鹿でかい銃を抱えて彼が走っていたので、アクセスは彼の
ことを再発見することが出来ました。
ビルとビルの間を走り続ける「隊長」はヒト達の間を瞬く間に通り過ぎ、道行
くヒトはその異様な姿に振り返ります。
もっとも、あまりの速さで通り抜けたために、彼が抱えている物が何であるの
かを認識した者は希でしたが。
その人達の上空をアクセスが飛び去ると、姿は見えずともアクセスが引き起こ
した風を人々は感じるのでした。
「ちょこまかと!」
裏通りに入り、人影が途絶えたのを良いことに、アクセスは何度か攻撃を仕掛
けました。
しかし、その攻撃は彼に届く前に阻まれてしまいます。
「(障壁を使えるのか?)」
軽い驚きを覚えていると、横合いから別の実体化した魔族の攻撃を受けました。
これを軽く障壁で防ぎ、攻撃が加えられたであろう地点に向け、抑えた光球を
一撃。
爆発が起きましたが、それで建物に穴が空くという程の威力はありません。
それ故、敵を倒すことも出来ませんが、ひるませるだけの効果はありました。
その様子を見届ける事無く、アクセスは敵の隊長の追跡を続行しました。
*
「隊長」ことシンは、ただ逃げ回っていた訳ではありませんでした。
走りながら、囁く様な音量で何事かを呟いていたのです。
その呟きは、彼の直ぐ側に常に付き従っていた実体を持たない使い魔により、
その最も近隣にいる別の使い魔複数に声なき声により伝達され、その使い魔から
は別の使い魔に…という過程を経て、指令先となる魔族へと伝達されて行きまし
た。
そして、命令を受領した魔族達は、敵の天使をあの手この手で妨害、その進撃
速度を鈍らせて行きました。
数を揃え、慎重に戦ったとしても、例えば空の上や都市部の外。
都市の中であっても夜であれば、天使に難なく打ち破られていたことでしょう。
魔族は闇を好むと言うが、本当は昼間の人混みを選んで戦うべきなのでは無い
か。そう、シンは内心思いつつありました。
この街の迷路の様な路地。それを迷わずに進むことが出来たのは、朝からこの
街に散る彼の使い魔達が、道しるべとなってくれるお陰です。
その使い魔の中の一番のお気に入りが、彼の耳元で囁きました。
それを聞くと、シンは今日初めて、口元に笑みを浮かべました。
*
そのまま真っ直ぐ進むと思った敵の隊長が、急に角を右に折れました。
アクセスの記憶が間違っていなければ、そちらは広い通りとなっている筈で、
敵の隊長がこれまで慎重に避けている道でした。
若干疑問に思いつつも、角を折れたアクセス。
長い銃身を持つ銃を相変わらず抱えたまま、敵の隊長は通りを突っ切って行き
ました。
さぞや人間達は驚いているだろう。
そう思い、自分も広い通りへと出たアクセス。
しかし、人間達は隊長のことを見てはいませんでした。
近隣で交通事故が発生したらしく、人間達はそちらの方に注目していたからで
す。
しかも、アクセスが通りを横断している最中に事故を起こした車が火を噴いた
とあっては、銃を持った人間(人間ではありませんが)どころでは無かったでし
ょう。
通りを横断し、幾つか角を曲がったところで、アクセスはしめたと思いました。
道を間違えたのか、隊長が行き止まりに道を阻まれていたからです。
彼に上に逃げられないよう、慎重に高度を上げたアクセス。
隊長は、アクセスに向けて銃を一発撃ちました。
人間に命中すれば、肉塊に変えたであろうそれは、アクセスの展開した障壁に
簡単に弾かれてしまいました。
銃声が周囲に響き渡り、アクセスは緊張しました。
「(こりゃ、人間に聞かれたかもな)」
楽観的なアクセスですらそう思う程に、銃声はやけに大きく響いていたのです。
「?」
何か嫌な予感がして、アクセスは周囲を見渡しました。
すると、地上からニヤニヤと敵の隊長が見上げていたのです。
「何がおかしい!」
「今の銃声が外に漏れることはありませんよ」
そう言われて、アクセスは気づきました。
その日、僅かながら吹いていた風が止んでいることに。
「遮音結界か!」
「はい」
そう言うと、隊長の姿が突然、揺らぎ始めました。
「逃がすか!」
手加減は要らないとばかりに、力を抑えずに放った攻撃。
しかし、大爆発の後には路上に空いた穴以外に、何も残ってはいませんでした。
直後、笑い声が聞こえたような気がして、アクセスは上を見上げました。
すると、ビルの上から隊長がアクセスを見下ろし、嘲笑しているのが見えまし
た。
「馬鹿にしやがって!」
怒りのまま、隊長の所へと向かおうとするアクセスを見えない壁が阻みました。
「こんな結界…」
建物を壊さぬよう、注意深く狙いを定めてアクセスは光球を放ちました。
しかし、その光球は爆発することすら無く途中で阻まれてしまいます。
これを見て、流石のアクセスも状況が只ならぬことになっていることを理解し
ました。
「無駄です。この結界はそんなに柔ではありませんよ」
結界の中に「隊長」の声が響き渡りました。
音は外に漏れ出ない筈なので、何らかの手段で声を伝えているのでしょう。
「出しやがれ!」
「良いですよ。ただし、明日の朝まで待って頂きます」
「俺は急いでるんだ!」
「やはり、神の御子のことが心配ですか?」
「まろんに何かするつもりか!」
「さあ、それはどうでしょう」
「こんな結界…」
アクセスは、結界を破ろうと再び光球を放ちました。
……が、結界はまるで手応えがありません。
「(やはり全力じゃないと駄目か?)」
周辺部への多少の被害は止むを得ない。
そうアクセスは思い始めました。
「この結界を破ってはいけません!」
アクセスの心を読んだのか、慌てた声が響きました。
「やだね」
「この結界が破れたら、この周囲は消滅してしまいます!」
必死の形相で叫んでいるのがアクセスからも判りました。
「何!? 嘘つくな!」
「何故、私が今まで逃げ回っていたか判りますか? 結界とその消滅が起爆の鍵
となる爆発物の設置のための時間を稼ぐ必要があったのです。それが終わったか
ら、予め強力な結界を張ったこの場所に、貴方を招き入れた。とは言え、こんな
に簡単に引っかかってくれるとは思いませんでしたが」
「はったりだ!」
「ならば、試してみることです。ちなみに教えておきますが、この周囲の建物に
は今現在、人間が大勢居ます。その数は百や二百じゃ済みませんよ?」
「く…この悪魔!」
「その言葉は魔界では褒め言葉です。良いですか。明日の朝になったら、全ての
爆発物を撤去します。その後は、結界を破壊するなりご自由に。だからそれまで
は、くれぐれも結界を破ろうとなされないよう、お願いします」
そう言い残し、隊長はアクセスに背を向けました。
「おい、待てよ! まろんをどうする積もりだ! お〜い!」
アクセスがどれ程呼びかけようとも、それきり二度と返事が返って来ることは
無く、彼は結界の中、一人取り残されてしまうのでした。
*
敵の天使を一匹、結界の中に閉じ込めたシンに、休む暇はありませんでした。
銃を抱えたまま、ビルの反対側の飛び降りたシン。
彼の周囲には何時の間に集まったのか魔族達が集結していました。
「やりましたなお頭!」
「馬鹿、隊長だろ」
「天使の糞に一泡吹かせましたぜ!」
「しかし、何時の間に爆薬なんて仕掛けたんです?」
「そうそう。儂ら、結界を張るのに手一杯で…」
前の作戦以来、彼に忠誠を誓うようになった魔族達が口々に話しかけてきまし
た。
シンはそれに答えず一言。
「車の準備は?」
「へい。表通りに回してありやす」
「一部をあの天使の監視に残し、部隊は再び散開。敵の増援の警戒に当たれ」
「へーい」
シンの命令に従い、ある者は空間の狭間に、ある者は地面へと消えていきまし
た。
残されたシンは一人、表通りへ歩いて行きながら呟きます。
「嘘というのも、言ってみるものだな」
●水無月ギャラクシーワールド・レストラン『銀河亭』
料理が運ばれて来たのに、なかなか戻って来なかった都。
心配になって、化粧室に様子を見に行こうとまろんが考え始めた頃、都はユキ
と一緒に戻って来ました。
「あ、あのさ…」
とにかく謝ろう。
そう思い、着席した都に声をかけようとしたまろん。
「最後はメリーゴーラウンドね」
「え?」
都が何を言ったのか理解出来ず、まろんは聞き返しました。
「今日のデートはメリーゴーラウンドで締めるって言ったの。昼間も良いけど、
夜に乗るのも良いんだって! ガイドブックの受け売りだけど」
そう言うと、都は笑顔をまろんに見せました。
「都…」
都があっさり許してくれたとはまろんは思いません。
都がまろんのことを知っている程度には、まろんも都のことを知っているので
す。
きっと、今のことを我慢して、笑顔を見せてくれているのだろう。
だったら、それに答えなきゃ。
「うん。そうしよう!」
都の笑顔に負けないよう、精一杯の笑顔を見せて言うまろんは気づいていませ
んでした。
そんな都とまろんの様子をユキがじっと見つめていたことを。
(つづく)
投稿するのが溜まっているので、今週はこれ位で。^^;;;
では、また。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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