Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その16)です。
# 週末に投稿するはずがまたまたこんな遅れてしまいました。
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その8)は<c05ag2$aqq$1@news01di.so-net.ne.jp>から
(その9)は<c12ghi$g3q$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その10)は<newscache$sfa7uh$klk$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その11)は<newscache$9pfavh$4kg$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その12)は<newscache$t8l1xh$f2h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その13)は<newscache$d6j5yh$q4j$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その14)は<newscache$sjiiyh$nsj$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その15)は<newscache$vkkgzh$hqd$1@news01b.so-net.ne.jp>からどうぞ
^L
★神風・愛の劇場第172話『弱き者』(その16)
●濱坂市・水無月島・海の聖母マリア教会
ジャンヌの予告とは別に発生した銃撃事件。
その対応に追われる現地警察の代わりにジャンヌの予告状への対処を全面的に
任されることになった桃栗警察署ジャンヌ特捜班長、東大寺氷室は当初の警備方
針を変更し、悪く言えば面白みが無く、良く言えば堅実な作戦を部下と、現地警
察からの増援部隊に指示していました。
教会の周囲は隙間無く警官隊が取り囲み、敷地内はもちろん建物の内部、屋根
の上にまで警官が配置され、日没後の予告に備えての投光器やジャンヌが逃走し
た時の追跡部隊もそれぞれ準備を終えつつあり、予告状のことを知らない通りが
かりの市民が何事かという様子で警官達を不安な様子で見ていました。
中には、警官に何のための警備かを問う者も居ましたが、もちろん正直なこと
を答えることは厳禁してあり、銃撃事件の関連での警戒配置ということにしてあ
りました。
「総員、配置を完了しております。警部」
最終的に氷室の部下の一人、春田が彼の前に進み出てそう報告をしたのは日が
傾いた時刻でした。
「うむ」
氷室はそれだけを言うと、春田を伴い教会の中へと入りました。
聖堂の中にある聖母子像。
怪盗ジャンヌからの予告状には、盗む対象は「聖女の命」としか記されていま
せんでしたが、この島の中で聖母と名のつく物で盗む価値のある物は他に無いは
ず。そう氷室は確信していました。ただ、それを「命」と表現した意味が分かり
ませんでしたが。
「これが聖母子像ですか」
祭壇の聖母子像を見上げていた春田は、突然思い出したように言いました。
「ところで警部、都さんのことなんですが」
「おう。連絡は取れたのか」
「それが、PHSにつながりません。電波が届かないか、電源を切っているよう
です」
「そうか…。まぁ、連絡が取れないなら仕方がない。それに、これは本来我々の
仕事だ」
「そうですね」
そう答えつつも、春田は少々がっかりした様子なのでした。
●水無月ギャラクシーワールド中心部
作戦決行までの僅かな時間。
紫界堂聖の姿でノインは遊園地の各所を歩き回っていました。
術を使えば様子を伺うことは可能だが、直接顔を見せることに意味がある。
元々武人であったノインはそう考えていました。
魔界の仲間達が要所を固めている様子を満足げに見回っていたノインは、ふと
歩みを止めました。
「!?」
ノインが足を止めたのは、背中に視線を感じたからです。
その方向に向け、ゆっくりと振り返ったノイン。
「子ども?」
ノインの方を見ていたのは、眼鏡をかけた小学生位の少年と、高校生位の少女。
姉弟と言われればそう見えなくもありません。
ノインが二人を注目しても、その二人は視線を逸らそうとはせず、むしろ見つ
め返して来ました。
「(何者?)」
そう思い、彼らに近づこうとした時です。
ノインの懐にあった携帯電話が震えました。
こんな時にと思いつつも、緊急事態の可能性もあるので電話を取ったノイン。
電話の内容は、生真面目な天使が事前の打ち合わせに従い一々寄越した些細な
報告事項で、内心こんなことを一々報告するなと舌打ちしつつも、言葉だけは丁
寧に電話を切りました。
そしてノインが再び視線を向けると、あの二人の姿は少なくともノインから見
える範囲からは居なくなっており、ノインの疑問だけがその場に残されていまし
た。
●ジェットコースター『マルス』
エリスがまろん達を視界に入れるための居場所として選んだのは、遊園地の中
心部のやや南側、海側の方向に外れた場所にある火星の名を冠したジェットコー
スターでした。
人間が作った宇宙へと打ち上げられる乗り物のレプリカの頂点に立つと、この
コースターを取り囲むように配置されているアトラクションを一望することが出
来ました。
もちろん、それぞれ距離を置いて設置されているために、普通の人間が裸眼で
見る限りにおいてはまろん達の姿を捉えることは出来ませんが、もちろんエリス
は人間ではありません。
「お、居た居た」
エリスの能力であれば、まろん達を肉眼で捉えることすら可能な筈ですが、彼
女は敢えて首から下げていた双眼鏡を使って彼女の様子を観察していました。
「エリス」
突然隣から声をかけられ、エリスは身体を微妙に震わせます。
実のところ、気配の接近を直前まで察知しておらず「驚いた」のでした。
もちろん、それを突然の訪問者に見せたりはしませんでしたが。
「レイ様」
空中に浮かんでいる訪問者に、エリスは呼びかけました。
「そんな目立つ所にいて、人間に姿を見られたりしないのか?」
「それならばレイ様も同じです」
「私は姿を消す術を今使っているから問題ない」
「私も同じです。誰も、私のことなど気にも止めていませんよ」
エリスは自信満々にそう答えました。
「そうか。例の能力の効果というものだな」
「レイ様、そのことですが」
「判っている。だから、肝心なところは話していないだろう」
レイは今朝方と先程の会議のことについて話していました。
エリスにしてみれば、極々限られた幹部であればこそ、自分の能力のことを明
かされても仕方がないかと感じていたのですが、レイは昨日知ったばかりのその
能力を作戦に早速利用しようとしたのです。
エリスはその場にはいませんでしたが、朝の会議の場でレイが軽々にそのこと
を口にしようとした時、トールンが口を挟み魔界の花から抽出した秘薬を大規模
に散布し、エリスが魔術で人を操るということにしてありました。もちろん、龍
族の者は真相に薄々気づいていたのですが。
「(全く、ノイン様の馬鹿!)」
心の中でエリスは毒づきました。
昨日の作戦の時、大規模な精神操作を行うことが出来る者が魔界軍にいないこ
とを指摘したレイを納得させるために、エリスの能力の一端についてノインは話
していました。
もちろん、ノインも全てを話した訳ではありませんが。
結局、レイ達は今朝の会議後にトールンから強く口止めをされることになった
のですが。
「レイ様、この能力のことはくれぐれも」
「安心しろ。天使はこのことは気にしないだろう。対抗する手段があるからな。
問題は人間だが…。私の見る限り、魔界に来た人間は、他の種族がどんな特殊な
能力を持とうと気にしないだろうからな。もちろん、だからと言ってもうこのこ
とを広言はしない」
「そう願います」
融通は利かないが、少なくとも約束したことは必ず守る。
エリスはそのようにレイのことを評価していました。
それ故、エリスは彼女の言葉を信じることにして、このことをそれ以上追求し
ませんでした。
「それにしてもレイ様、作戦はまもなくです。こんな所に居て良いんですか?」
「お前に伝えておきたいことがあってな」
「何ですか?」
「アンのことだ。私は作戦決行時に彼女の側にいる」
「しかしあなたは」
「部隊全体の指揮は、ミカサ殿にお任せして来た」
「神の御子の直ぐ近く。危険ですよ?」
「指揮官たるもの、先頭で戦わずにどうする?」
「後方にあって、戦場全体を見るのも指揮官の役目ですよ?」
聞くはずはないと思いながら、一応エリスは口にしました。
この調子だと、昨日は作戦から事実上外されて、余程悔しい思いをしていたに
違いないと思いながら。
「残念ながら、私はそのような指揮官にはなれないようだ。とにかく、そんな訳
だから、アンのことは心配するな」
「別に私は…」
「隠しても判る。いや、隠してもいないか。大切な人なのだろう?」
「彼女は、ユキ様が…」
「ユキは大分疲れているようだ。彼女の実力は認めるが、万が一のことがあれば、
ミカサ殿に申し訳が立たないからな。それじゃ行くぞ。アンは私が必ず守る。だ
から、何があっても任務を果たして欲しい。私が言いたいのはそれだけだ」
そう言い残し、レイは『ネプトゥヌス』の方に向け飛び去って行きました。
「心配しすぎだと思いますけどね」
その背中に向かい、そう呟くエリスでした。
●ジェットコースター『ネプトゥヌス』の近く
「あれが『ネプトゥヌス』ですね。結構並んでますね」
「そうだね〜」
「あ、ちょっとあたしトイレ」
「あ、じゃあ私も」
「じゃ、私も」
時計を見ながら、アンは自分の能力を発動していました。
支給された携帯電話のメール機能を通じて要求しただけの人数が行列要員とし
て集まっているのを確認して、アンは胸を撫で下ろします。
これなら予定通りに作戦は決行出来そうね。
行列に向けて歩きながら考えていたアン。
ですが、やはり急に揃えた人員には無理がありすぎました。
「○☆※□×」
魔界語を平然と話している者達を見て、アンは内心頭を抱えました。
「何だか、ここも外人さんばっかり…」
まろんがぽつりと呟きました。
「そ、そうですね。ここが出来るということは、海外でも報じられていましたか
ら」
「そうなの?」
「外国から来たアンが言うなら間違い無いでしょ」
「でも、今日はご招待客だけなんじゃ…」
「そ、その。ネットとかで海外からも申し込めるんですよ」
「へー。意外とやるじゃない。委員長の所も」
口から出まかせを続けるアン。
しかし、その努力も限界に近づきつつありました。
そんな時、思いもかけぬ援軍が現れました。
「(レイさん!?)」
黒髪をなびかせて、自分たちの背後に人間の姿をしたレイが回り込みました。
まろんもそれに気づいたらしく、ちらりちらりとレイの方を見ていました。
正体がばれたのかと一瞬慌てたものの、直ぐに単純に美少女に見とれているだ
けなのだとアンは気づきます。
アンがレイを見つめても、レイは自分のことを気づかないふりをしている様子
でした。
ここでレイに話しかけ、まろんの気を逸らすことも考えましたが、レイの方が
こちらを気づかないふりをしているのであれば、話しかけるべきでは無い。そう
判断しました。
「ねぇ、まろんさん」
「え、何?」
「後ろの女の人、綺麗ですね」
「アンもそう思う!?」
小声でまろんに話しかけたアン。
すると我が意を得たりという表情をまろんは浮かべました。
「ええ。あの長い黒髪が綺麗ですよね」
「そうそう。実はあの人、さっきも見たの」
「そうなんですか?」
「あの時は、金髪の女の人と一緒だったのに、今は一人なのかしら?」
「まるで、私みたいですね」
「ねぇ、話しかけてみようか。一人だったら、一緒に遊びましょうって」
自分、そしてエリスの能力の影響を受けないまろん。
彼女の気を逸らせればそれで良いとアンは考えていました。
しかし、まろんの反応はアンの予想を上回っていたのです。
「ほほーう」
まろんがレイに話しかけるなら、それはそれで良いか。
そう考えていたアンですが、話を聞きつけた都はそうは思わなかったようでし
た。
「み、都」
「あたしがいながらナンパとは良い度胸ね」
まろんの顔を都は睨み付けました。
「ち、違うよぉ。ただ、一人で寂しそうだから…」
「同じじゃ」
「もう、冗談よ。都」
「どうだか、ね」
「信じてよぉ」
そう言い、都の腕にまろんはしがみつきました。
「ま、良いわ。信じてあげる」
どこまで本気で言っているのかは判りませんが、都はそう言いました。
「あの…」
「え?」
「何よ」
「行列、先に進んでますよ」
「あ…」
二人の世界に入っていて、先に進むのを忘れていた都達。
流石に放置出来ず、声をかけるアンなのでした。
●ジェットコースター『ユピテル』の近く
日没の時刻が迫り、全は焦りを感じていました。
時間までにはツグミ達を安全な場所に移動させるように言われていたものの、
怪しまれず自然にこの場を離れる方法が思い浮かばなかったのです。
ジェットコースター『ユピテル』を降りた頃には、既に時刻は午後五時半に迫
っていて、日没まで二十分弱となっていました。
預けてあった荷物を受け取ると、全は今日になって持たされた携帯電話を取り
出します。
その画面をのぞき込むと、予想通りメールが届いていました。
「(海王星…。あれでぃすね)」
自分たちが先程乗ったジェットコースターを全は見やりました。
決戦場がそこならば、そこから出来るだけ離れた場所に。でもどこに?
悩んだ彼が見上げると、そこには大観覧車がありました。
「(あれでぃす)」
●海の聖母マリア教会・聖堂内
「時間だな」
時計を見て、氷室は言いました。
「今のところ、ジャンヌらしきものが現れたという報告は入っておりません」
隣に立っていた春田が言いました。
「油断するな。既に奴は中に入り込んでいるかもしれん」
「そうですね。これまでもそうでした」
そう言い、春田が祭壇の聖母子像を見上げました。
氷室は逆に窓の方を見ています。
今のところ、聖母子像は無事。
春田が確認して周囲に目を転じようとした時です。
聖母子像が飾られている祭壇の前が眩く光り始めました。
光の粒が幾つも出現し、やがてそれは幾つかの光球となり、一つの大きな光球
となりました。
「警部!」
「出たか。時間通りだな」
驚きの声を上げた春田に対し、落ち着き払った声で氷室は呟きました。
氷室が振り返ると、既に光は消えかけており、白い衣装を纏った怪盗ジャンヌ
の姿がそこにあるのでした。
(第172話・つづく)
やっとジャンヌ登場。^^;;;;
では、また。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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