毎年この時期になると教科書検定問題が浮上する。文科省は、第二次大戦での沖縄戦で、軍が住民に集団自決を強制したなどの記述について、これを訂正するように指導したという。その確かな証拠はないから、というのがその理由である。
 しかし、住民に手榴弾を渡したのは軍であり、それは、渡した数から考えて、敵をやっつけるためではなく、自決せよ、という意味を込めたものであることは明らかだ。
 軍の指揮官全部が、自決を強制したとは思わぬが、そのような雰囲気のなかで、自決を強要した指揮官もいたことは想像できるのだ。
 歴史を学ぶ目的は、歴史の知識を得ることだけでなく、「歴史から学ぶ」ことに主眼があるのだ。沖縄戦の歴史から学ぶことは、「戦争がいかに狂気を生むものなのか」ということではないか。「集団自決」もその「強制」も戦争が生んだ狂気なのだ。
 この点を忘れた「臭いものには蓋」的な文科省の教科書検定は、歴史教育の本旨を忘れた愚行であると言わねばならない。
 村上新八