軌道選士ガンダムドライブ(その2)

 月面のクレーター。
マリー(アナウンス)「巨大隕石が衝突した月面の大爆発は、多くの破片が月面上に落下したものの、かなりの細かい岩石が地球に到達する恐れがあります。地球上では流星群に対する警戒が必要です」
 月面の道路を塞いだ岩石を剣で砕くガンダム。
レオ「この道路も、産業界の老人みたいな人が考案して設計したんだろうなあ」
アイカ「(ニュータイプ稲妻)文句言わない!老人になる産業界の人達が働いてくれたおかげで、私達は楽が出来たんだから」
レオ「そうだけどさ、まだアイカと僕の気持ち、つながってるのかな」
 アイカとバイヤーとリッチの食事。
アイカ「それでさ、レオったら子供は作りたくないけど一緒に暮らしたいって言い始めたのよ」
バイヤー「なんで、そうなったの」
アイカ「私が、結婚を迫られて困ってたのよ」
リッチ「あのニュータープなら子供を作らないから結婚しても安全と思った訳?」
アイカ「親は、それでは他の人と子供が出来て離婚にならないかって心配したけど」
バイヤー「これまでの宇宙世紀のマスコミ的な概念としては、人は結婚して子を産むのが当たり前だったからな」
アイカ「それをガンダムのレオったら、近親相姦じゃない離婚しない子供を作らないで永遠に生きている、そういう結婚を私としたいって言ったのよ、私が親戚じゃないからって」
リッチ「それは、人類社会を人口が増えないように改革できたけど、まだ結婚出産の風習が残っているから、昔の人達の慣らわしだった産めよ殖えよは否定しても、人が1人でいるのは良くないって事は尊重したかったって事じゃないの」
アイカ「だから迷った。私は子供が産みたいと思ってたから。それでも、産んで世代交代を続けているよりは、産まないで永遠に生きている方が人間社会は安全だろうと言われて、レオに結婚を求めてみた」
バイヤー「それまでの宇宙世紀の人々の習慣からは逆説的な結婚を、してみたかったんだ?」
アイカ「私だって、親戚じゃない人と一緒に暮らしている方が、平和かも知れないと思った。まだ結婚して子供を産んでいる人生を選んでいる人もいたから、嫉妬されないで、老人になり始めた親を安心させて、社会不安を増大させないためには、子供を作らない結婚生活が最良の人生と思ったのよ」
リッチ「それだけレオが好きで、アイカもレオが好きだったんだろうけど、これ、こういう子供のいない若い高齢者の夫婦の比率が、子供が出来た老人夫婦の比率よりも多くなったら、世の中は今までより平和になると思う?」
バイヤー「子供の犯罪が増えたそうだから、人口を増やさないのは、戦争を防ぐための苦渋の決断だったんだろうね。俺は、子供のいない若い高齢者の夫婦の比率が多くなればなるほど、世の中は平和になると思うよ」
アイカ「誰も結婚相手を決めないで生きている事を不安じゃないとは思わないって事かしら」
バイヤー「それはレオと結婚したアイカには、わからないよな」
リッチ「あははは」
アイカ「じゃあ、やっぱりあなた達も結婚相手を決めたいんだ」
バイヤー「子供は、いつですかなんて社会的圧力が無いなら、俺だって誰かと結婚してみたいよ」
リッチ「俺だって今どこかで生きている誰か1人だけと永遠のパートナーになりたいさ」
 月軌道衛星宇宙ステーションから出た、コロニーへ行く宇宙船。
ノット「ニュータイプのレオが婚約者を決めたから、マリーも婚約者を決めたい?」
マリー「それは当然、決めたくなってます。今までのところレオには私の一番大事な仕事で世話になってたから」
カワチ「それでアナウンサーやってたんだろうけどね。当然、皆で次々結婚相手を決めても、スペース・コロニーの建設材料が足りなくなってきている事は認めるんでしょ」
マリー「そうですね。それは何度も言われましたから。この宇宙に住む人間を増やせない事を認めてくれる人が相手でなくてはならないと思っています」
ノット「人口の増加に制限を掛けないと戦争の勃発を抑止できない事を歴代のニュータイプは、ずっと証明してきたからな」
カワチ「地球の温暖化が止まらない場合に自分が火星に住めないって事だけは、お断りだよ」
マリー「気をつけたいと思います」
ノット「宇宙への世界観が狭い話と言われようと、今は、これを考えるべきだもんね」
カワチ「子孫や永遠に生きたい人達に、巨大な世話を残さないで下さいって事でね」
マリー「はい」
ノット「ところで、火星移住計画は、順調なの?」
カワチ「地球連邦政府は地球温暖化を抑止できているようになるはずだって、どうしても信じたいようだから、火星では水を施設の外へは絶対に出さない事、なんていう移住者の常識を希望者に教えるかどうか、まだ考えてないらしい」
マリー「火星に住む事が出来たら、私達も齢に達して亡くなる事も出来そうだね。地球も、スペースコロニーも、ずっと住んでいられるならだけど」 

 ガンダムのコクピットで、声がモニター画面のテキスト文書に成る。
レオ「私達は、孫が生まれない人は親も生きていると言う信仰で、生きていました。それが事実なのかも、わからない状況で、生きていました。それは、もしかしたら、地球温暖化が人間には停止できない事である事を理解できないで、いたずらに地球脱出計画を自分からは積極的には出来ない親に付き合って、人類が救われるチャンスを遅らせてしまっている事なのかも知れません。地球人類よりもスペースコロニーの人類の方が多いなんて誰が考えた妄想だったのか知りませんが、世代交代が責任の伴わない事である限り、自分も、宇宙世紀は現実とは違う夢だった事を認めます。しかし、あの夢を最初に考えた人1人だけ生きているなら、あの夢は実現しているのでしょうか。その夢を考えた人は、いつまでも生きていて人間の歴史を導いてくれるのでしょうか。その夢を最初に見てくれた人は、生きている事を楽しいと思っているのでしょうか。月に澄めるようになった自分は、これからも、そういうことしか考えないのかも知れません」
 スイッチをオフ。
レオ「この言葉をバベルの著作者に伝えたいと思った」
 声がモニター画面のテキスト文書に成らない。
 宇宙を行く建造中のスペース・コロニー。

3月22日からのfj.life.religionに続く。