自民党は「小さな政府」を目指すとしている。780兆円もの借金を抱えて、更に年40兆円もの借金が積み上がっていく財政破綻国日本だから、当然のことだが、自民党の言う「小さな政府」とは国民の負担を軽減するために政府のムダ遣いを徹底的に切り、財政支出を最小限に抑えようとするのとは違うのである。
 その狙いは、医療費の削減にあるのだ。厚労省の試算によると、20年後には医療費負担は56兆円に達するという。この計算自体があやしいのだが、それをたてに、70歳から74歳の高齢者の医療費負担を現在の1割から3割に引き上げたり、一回1000円以下の医療費を保険免責すなわち、国民負担にしようとするなどの試案を提出している。
 この年代の高齢者が、ほとんど年金暮らしであることを考えると、これは医療拒否に等しいのだ。また、こんな制度が実現したとしたら、診療を避けて却って重病になって、医療費が嵩むか、医師の思いやりで、毎回の診療費を1000円以上に引き上げて、患者負担を避けようとする結果、逆に医療費が膨らという二つの弊害を招くに決まっているのだ。
 厚労省の官僚はこんなことも予想できないのである。
 そんなことより、高すぎる薬価をジェネリックに切り替えて、安くするとか、医師資格の定期再審査で、医療の質を上げるとか、医師の公表評価制度を設けて、はしご診療を防ぐなどの方法で医療の質を上げ、効率的な医療に変えてていくような方策が先ではないか。
 政府の言う小さな政府とは、大きな国民負担だけを考えることなのだ。
 村上新八