長島です。

In article <20050604220541cal@nn.iij4u.or.jp>,
cal@nn.iij4u.or.jp (SASAKI Masato) wrote:

>憲法9条の問題って結構法解釈のトレーニングには使えると思うんですね。
>「事実認定(及びその評価)でも答が分かれる」
>「言葉についての厳格な議論によっても答が分かれる」
>「自分の思想信条に左右されやすい」

ざっくり、説の分かれを私なりに整理しておきます。
mac-inさんのお考えもたぶんどれかの経路を辿ると思いますから、
考える材料になればと思います。

1. 9条1項について

(1) 「国際紛争を解決する手段として」の戦争放棄
  (a) いわゆる侵略戦争を意味し、自衛戦争は含まれない
  (b) 戦争はすべて国際紛争の解決手段なのだから、すべて含まれる

2. 9条2項について

(2) 「前項の目的を達するため」の「前項の目的」
  (a) 「正義と秩序を基調とする国際平和の希求」という一般的動機
  (b) 戦争放棄等そのもの

(3) 「戦力」
  (a) 戦争に役立ち得る一切の潜在的能力
  (b) 軍隊、および有事の際に転化しうる程度の実力部隊
  (c) 自衛のための必要最小限度を超える程度の実力

(4) 「国の交戦権」
  (a) 交戦状態に入ったときに交戦国に国際法上認められる権利
  (b) 文字通り、交戦する権利
  (c) (a)(b)の両方

だいたい、こんなところでしょうか。

で、通説も(現在の)政府見解も(1)は(a)説をとっていますが、
(たぶん(2)も(a)で争いはないと思います)
その説と(3)とを直接関連付けるか否かが
説の分かれ目になっているようです。

政府見解は関連付けて考えており
「自衛権がある以上、自衛のための戦力保持までは禁止されていない」
ということで(c)説、
通説は(1)と(3)はまた別の問題と考えており、(b)説です。

ところで(ここから便乗質問って感じですが)…

(4)については、芦部先生は(a)が妥当だと書いているんですが、
一方で法律学小辞典(第3版)の「交戦権」の記述を読む限り、
「その意味は必ずしも明らかにされていない」としつつ、
(b)が妥当だと説明しているように思われます。
これ、説が分かれているってことなんでしょうか?

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Yasuyuki Nagashima
yasu-n@horae.dti.ne.jp
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