In article <3989281news.pl@insigna.ie.u-ryukyu.ac.jp> kono@ie.u-ryukyu.ac.jp (Shinji KONO) writes:
>保険は本来「儲けがないはず」のものです。
だったら、私企業が保険業に参入しませんけど。

>市場原理はどれでもそ
>うだけど、誰もが儲からない価格で均衡するはず。それが経済学の
>基本的な結果です。
「はず」は単なる「はず」であって、それが成り立った例って殆どみませんぜ。
マクロで見ればゼロサムなんだけど、ミクロには儲ける奴・損する人が居るのが
現実だって事は河野先生も御存じでしょう。経済学の理論が間違ってるからでは
なくって、経済学が前提としている (と言うか前提にしないと数学的に扱えない)
誰もが自由に合理的な決定を行うとか、個々の持つ情報に偏りが無いとか云った
事がそもそも成り立ってないからです。


>それが「個人が」あるいは「保険会社が儲ける
>方向にいく、あるいは、儲からないからやらない方向にいく。それ
>がおかしい。

いや、おかしいのは、個々の保険会社ではなくて、私企業が保険業に参入する事
とか、資本主義経済その物です。で、資本主義経済の他に上手く回るシステムが
見つからない限りはしょうがないんだと思います。
# 倫理的に「正しい」システムでは全くないんですがね

>医療ミスや個人が重病になる確率は前もって決まっているわけでは
>ないけど、結果的には、ある比率で起きることになります。それを
>補償するのに必要な金額を「広く薄く」負担するというのが保険の
>考え方です。それが基本。

これは、加入者の重病に罹り易さに差が無い (又は確率が判らない) と云う仮定
の元の話です。ランダムとみなせる場合の話。重病に罹り易いと判っている人が
加入すると、保険会社の儲けは度外視しても、他の加入者が不当に高い保険料を
払うと云う事となります。
又、「広く薄く」負担するってのが上手く働くのは、加入の任意性が無い場合に
限ると思われます。例えば、誰でも加入できるけど保険料の高い保険と、重病に
罹り易いと判ってる人は入れないけど保険料の安い保険と、二つを任意に選べる
時、罹り易いと判ってない河野さんだったら、どちらを選びますか?

船の保険は、船の種類毎に色々構造上・安全上の規則を設けて、これを審査して
「船級」を与えます。船級を取得出来たか、どのクラスかで保険料は違うんだそ
うです。船級を取れないとそもそも保険を引き受けて貰えない。その為に、商船
はそれなりの費用を掛けて一定以上安全と思われる船に造る訳です。
船級と、河野さんの生命保険の例では、費用を掛けて安全を増せるか、遺伝的に
決まってその人にはどうしようもないか、の差が有って人道的には気になる物の、
私企業たる保険会社に取っては一緒ではないでしょうか。
そう言えば、事故を起こした人の自動車保険料が上がるとか、煙草喫みの生命保
険料を上げるとかは、河野さんはどう思われますか?

河野さんの仰る様なリスク対策は、保険会社の様な私企業ではなく、国とか自治
体とかの役割だと思います。国の場合、参加・不参加の任意性はかなり低くなる
ので、確率はかなり意味を持つからです。

>だから、例えばハンチントン病になったことがわかってから保険を
>かけるのと、なることが判明してから保険をかけるのと、なること
>がわからずに保険をかけるのとは、本来は同等なはず。

私には、ボートレースで、スタートしてから船券を買う様な物に思えます。条件
付の確率は、条件の無い時の確率とは明らかに違います。

>医療ミスもそれを駆逐することができないなら、その補償は、医師
>に対する懲罰的なものではなく、ミスの結果に対する補償であるべ

一度ミスをした医師が、その後ミスをする確率が他の医師と変わらないのであれ
ば変えるのはおかしいでしょうね。より注意深くなって (又は何人か殺して一人
前になって :-p) ミスの確率が下がるなら、安くなっても良さそうです。一方、
ミスをする奴ぁしょっちゅうするんだてえ事なら高くなるのは当たり前だと思わ
れます。保険会社は、一度ミスした奴ぁ又すると思ってる (又はそう云う調査結
果を持ってる) んじゃあないでしょうか。
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                                椎野正元 (しいの まさよし)