Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その5)です。
# 二週間程私用でお休みしてしまいました。
# その割には短いし。^^;;;;
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>からどうぞ
^L
★神風・愛の劇場 第172話『弱きもの』(その5)
●魔界
見せたいものがあると言い、王宮の外へとフィンを連れ出した魔王。
その日一日、魔王がフィンとしたことは、人間界風の構築物が立ち並ぶその場
所を歩き回り、その構築物について案内したり、その構築物を動かして見せるこ
とでした。
フィンは人間界で少なからぬ時を過ごしていたので、その場所が人間界の遊園
地と呼ばれる娯楽施設をそっくり移植したものであることは判りました。
動力源が電力では無く、魔力に一部置き換わっていることを除けば、それは人
間界のものとほぼ同じであり、魔王はそのことを直接フィンの口から確認したが
っている様子なのでした。
一度まろんと共に遊園地には行ったことがあるので、その質問には答えられた
フィンですが、ジェットコースターに乗せられその乗り心地を問われた時だけは
答えようがありませんでした。何しろ、自分で乗ったことは無かったのですから。
そのことを恥じ恐縮するフィンの頭に手を載せ、魔王は言いました。
「気にするな。実は今、人間界で遊園地のことについて調査させている」
「それは、まさか…」
「そう。君の親衛隊に増援として送った人間達に依頼した。多分、今頃はその調
査に取りかかっている筈だ」
この近辺に存在する世界のあらゆる場所を見通すことの出来る魔王。
彼の言葉は推測では無く事実であるように思われました。
実際にはこの頃、エリスとトキが激闘を交わしていたのですが、そのことをフ
ィンが知るのは再び地上に彼女が戻ってからのことでした。
結局その日の夜は、その遊園地を模した場所に宿泊することになった二人。
野営でもするのだろうかと思えばさにあらず、最初に見せられた王宮に似た建
物が、そのまま宿泊先になっていたのでした。
ここだけは、人間界の遊園地とは違うと思ったフィンは、その建物の中に入っ
た後で唖然とすることになりました。
「ここは…」
大きな寝台が置かれたその部屋は、一面の壁が鏡張りとなっていました。
そして魔王が何か操作をすると、寝台が回転を始めたのです。
フィン自身はそれを直接見た事はありませんでしたが、ここがどの様な場所で
あるのかは直感的に判りました。
「どうだい? 面白い部屋だろう?」
部屋の機能を魔王から一通り聞いて、直感が正しいことを知ったフィン。
「え、ええ…。だけど、遊園地にはこういう施設は無いのかと」
「うん。判っているけど、これは僕の趣味だ」
「はぁ…」
何かが間違っている。
そう感じつつ、結局その夜にすることを考えれば、それはそれで間違ってはい
ないのかもと思ってしまうフィンなのでした。
●桃栗学園
朝のホームルームの時間。
担任のパッキャラマオ先生の口から稚空はまろんと都が風邪で欠席と聞かされ
ました。
実はその後で大和も家の都合で欠席だと先生は話していたのですが、こちらの
方は稚空は聞き流していました。
「(あの二人…)」
揃って早朝出かけていく音を聞いていたので、まろん達が学校をサボっている
ことだけは間違いありません。
稚空自身も学校をしばしばサボっていましたから、そのこと自体をとやかく言
うつもりはありません。
ただ、魔界の者に何時襲われるか判らない状況で、まろんが何処に行ったのか
判らないと言うのは危険な状況であることは間違いないと思います。
本当は、それだけが心配の理由では無いことは判っていましたが、兎に角そう
思うことにしたのです。
一時限目の授業が終わり、短い休みの間に屋上でアクセスを呼び出し、まろん
の所在を尋ねた稚空。
「少なくとも、この町内には気配を感じることが出来ない」
「この町の外のどこかに二人で出かけたということか…」
「まろんさんだけではありません」
気配も感じさせず、二人の側に現れたトキはそう言い稚空を驚かせました。
「セルシアに何かあったのか?」
「はい。セルシアと心が繋がりません」
「弥白の側にいるんだよな」
「はい。駅から電車に乗り、どこかに出かけようとしていると連絡があったきり」
「どこか?」
「北の方角に向かう電車だそうですから、ハマサカの方面かと」
「濱坂市か…」
指を頬に当て、何かイベントがあったかなと稚空は思い出そうとしました。
「それともう一つ。弥白嬢は例の眼鏡の女性と一緒だそうです」
「佳奈子か」
「悪魔は封印したので、特に問題は無いと思うのですが」
「だな。昨日も特に何もなかったみたいだし」
そう口を挟んだのは、アクセス。
「だが、連絡が取れないと言うのは気になる。判った、弥白とセルシアの行方に
ついては任せろ」
「まろんさんはどうしますか?」
「無闇に探しても仕方無いだろう。気配を感じたら連絡してくれ」
天使達が飛び去った後、次の授業が始まる前に教室に戻った稚空。
「おい、三時限目の授業は自習だってよ!」
「ラッキー!」
「えー。先生、お休みなんだ」
男子生徒の声で顔を上げた稚空は、授業が何だったかを思い出すと、他の男子
生徒とは違う表情を示しました。
「(紫界堂の授業が休み? まさか)」
●濱坂市・水無月島
水無月ギャラクシーワールドの入場門前の広場。
開場を控え、招待を受け入場を待つ人々が列を作っていました。
入場券の配布数は限定されたものと言いながら、それでも千の単位でばらまか
れていたらしく、行列もそれ相応に出来ていました。
その列の中に、一際目立つ美男美女の一団があり、人目を引いていました。
そしてその一団の前方には、後ろとは逆に頬に傷のある如何にもその筋の者と
しか思えない顔つきと出で立ちの白人の男性がいて、彼の周囲にいた人間達を恐
れさせていました。
その彼と親しげに話していたのは、二十代前半位の黒髪の美少女を従えた優男。
事情を知らない者が見れば、マフィアかヤクザの若旦那とその女に見えないこ
ともありません。もっとも若旦那の方は、その筋の者として見るには人が良すぎ
という印象でしたが。
「ミカサ様。なんだか、人間の注目を集めている気がするのですが」
「多分その考えは間違っていないと思うよ。ユキ」
「な、何ですかい」
若旦那とその女に見つめられ、強面の男は後ずさりました。
「私の顔はこうなんですから、仕方無いでしょう」
「魔術でその傷を消すことも可能ですが」
「それは嫌ですな」
ユキの提案をあっさりと却下したのは、ヒト族第三魔導猟兵中隊長、オットー。
オットーが肯くとも思っていなかったので、ユキはこの件についてはこれ以上
追求しませんでした。
「それで、首尾の方はどうだい?」
「既に何人か、中に入っています」
「御子の方は?」
「行列の中にいます。我々よりも後方ですが」
「どれどれ」
周囲を見回すミカサに合わせ、ユキもそれとなく周囲の様子を伺いました。
「(…いた!)」
ミカサは気づきませんでしたが、ユキの心の中の眼はまろんと都の姿を捉えて
いました。
それ位の術力は残っていたのです。
「ミカサ様。確かに、我々の後方に御子がいます」
「そうか。僕には見えないよ。ユキの力は凄いな」
ミカサに褒められ、ついにへらと表情を緩ませてしまうユキなのでした。
*
「それでは、次は水無月造船社長、マリアンヌ藤堂からの挨拶であります」
濱坂市湾岸地域開発計画の目玉の一つであるが故に、そのリニューアルオープ
ン記念式典に招かれた来賓は遊園地のそれにしては豪華なものでした。
市長の挨拶の後、演壇に上がったのは、現役のモデルでありながら水無月造船
の女社長を務めるマリアンヌ藤堂。
「あ、あの人知ってる」
入場門の側にある大画面に映し出されたマリアンヌの顔を都は指さしました。
「委員長に招待された豪華客船にいた女社長さんでしょ」
美しい心を持っていない寂しい人よね。
そう、心の中で付け加えたまろん。
「そうそう」
「そう言えば委員長は今日は来ているのかな?」
そう言ってしまった後、まろんはしまったと思います。
「委員長のご両親の会社のイベントだもの。当然来ているわよ。チケットなら何
枚も持っているんでしょ。あたしにも二枚くれた位だし」
まろんの心配を余所に、都は眉一つ動かさず答えました。
本当は委員長は都を誘いたかったのではないか。
ほんの少しだけですが、まろんはそのことを気にし続けていたのです。
「それに今日は委員長にとって、ご両親やお兄さんに会える機会なんだし」
「お兄さん?」
「いるらしいよ。それにご両親も仕事で委員長、大分顔も見ていないらしいし」
「へー」
「何よ、その目は」
ジト目で都を見つめるまろんに気がついた都は言いました。
「随分と、委員長と仲良さそうじゃない?」
「ば、馬鹿! 委員長とはそんなんじゃないわよ」
「ほー。じゃあどんな関係なの?」
「委員長は…そう、パートナーよ。仕事上の」
「パートナーねぇ」
「…ろんだけなんだから」
周囲のざわめきに紛れ、都の声が聞き取れなかったまろん。
「え?」
「二度は言わん!」
そう言うと、都はまろんの腕にしがみつくのでした。
*
「お待たせしました。いよいよ開場です!」
テープカットが行われた後、続々と入場して来る招待客を弥白達は眺めていま
した。
「そう言えば、今日来られる予定の瀬川ツグミさんってどんな方なんですか?」
「そうね…。何時も上から下まで黒ずくめの服で、金髪の方よ」
大和の祖父、鏡太郎には知り合いだということを隠していましたが、佳奈子に
は正直なところを話した弥白。
「知っている方なんですか?」
「ちょっとお世話になったことがあって」
「そうなんですか」
そう言うと、入場者の中からツグミがいないのかと探す佳奈子。
本当は遊園地の係員が教えてくれる筈なので、そこまで熱心に探す必要は無か
ったのですが、弥白もそれに倣って人混みの中に目を凝らします。
「!」
急に、弥白は佳奈子の手を引き柱の陰に隠れました。
「どうしたんですか? 弥白様」
「ちょっと…」
誰か会いたくない人が居たのだろうか。
そう思い、そっと柱の陰から入り口の方を伺った佳奈子の目の前を二人の少女
が慌ただしく通り過ぎて行きました。
「まろん、早く早く」
「待ってよ、都〜」
二人の声が遠ざかると、再び弥白は柱の陰から出て、人混みの中からツグミを
再び探し始めました。
なんでツグミを放置して、この二人はここで遊んでいるのだろうと思いながら。
*
市営地下鉄に乗って水無月ギャラクシーワールドに到着したツグミと全。
地下鉄の駅出口を出ると、やがてツグミの周りを騒音が包み込み、彼女の「視
界」を奪って行きました。
こうなると、ハーネスを通じて繋がっているイカロスと、側に付き添っている
全だけが彼女の頼りです。
「思ったより、混んでいるわね」
「入り口はこっちでぃす」
全に導かれるまま、遊園地の入場ゲートに辿り着き、係員に声をかけたツグミ。
暫くお待ち下さいと言われるまでも無く、今日のガイド役が現れました。
「こんにちわ。瀬川ツグミさん」
「え!? 山茶花さん?」
流石のツグミも驚きを隠せないようね。
そう思い、弥白の口元に微かな笑みが浮かびました。
「こんにちわ。大門佳奈子と言います。今日は山茶花と一緒にこの遊園地を案内
させて頂きます。宜しくお願いします」
「あ、はい。こちらこそ宜しくお願いします」
「宜しくでぃす」
礼儀正しく頭を下げた佳奈子を真似するかのように、全も頭を下げました。
やがて佳奈子を先頭に、四人と犬一匹は楽しい一日を過ごすべく、遊園地の中
へと歩いて行きました。
もっとも、その中の一人は楽しいことばかりでは無いと知っていたのですが。
(つづく)
開園するまでに5回もかかってしまいました。^^;;;;
二・三週間程、黒ミサの準備のためにお休みします。では、また。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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