Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
1週間間を空けてしまいましたが、妄想本編第172話(その1)です。
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第172話『弱きもの』(その1)
●桃栗警察署
それが桃栗警察署に届いたのは、事件の第一報が枇杷警察を通じて届けられる
よりも早い時間のことでした。
桃栗警察署ジャンヌ特捜班の長である東大寺氷室警部は、FAXを通じて届け
られたそれを見て、首を捻ります。
「犯行声明、か」
そのFAXは、見慣れた紋様の飾り罫の中にワープロ文字で書かれた、怪盗ジ
ャンヌからの犯行声明文…のようなものなのでした。
桃栗警察 ジャンヌ特捜班 東大寺警部殿
本日、仕事のために枇杷高校の第一体育館を
壊してしまいました。ごめんなさい。
また、予告をせずに仕事をしたことを深くお
詫びします。
怪盗ジャンヌ
「しかし変ですよね。怪盗ジャンヌが仕事をする際、ついでに建築物を破損する
のは今に始まったことでは無いのに」
そう言い、首を捻ったのは秋田刑事。
「この前の体育館の事件の後で、反省したんじゃないのか?」
と、夏田刑事。
「怪盗ジャンヌが犯行声明を出したのは初めて…」
ぽつり、と冬田刑事が呟きます。
「警部。これは偽物では無いでしょうか」
FAXを見て、そう言ったのは春田刑事でした。
「根拠は?」
「冬田が言った様に、今まで犯行声明を出したことの無いのが一点。もう一点は
今までこの手の文書を直接送りつけていたジャンヌが、足のつきやすいFAXで
文書を送って来たということです。ジャンヌがそんな間抜けな真似をするでしょ
うか」
氷室がそれに答えようとした時、机の上の電話が鳴りました。
「はい、ジャンヌ特捜班。…そうですか。判りました、それはお借り出来るの
で? ああ、それは助かります。では」
「何か判ったんですか?」
氷室が電話を置く前に、勢い込んで春田が聞きました。
「FAXの送信元であるコンビニの監視カメラの映像が手に入ったそうだ」
*
「金髪の女性…ですな」
監視カメラの当該部分の映像を見て、春田はそう呟きました。
帽子を被っていて、しかも後ろ姿なので良く判らないのですが、金髪の女性が
FAXを操作している様子が映し出されていました。
「怪盗ジャンヌは髪はもっと長いぞ」
「付け毛か何かでは?」
「帽子を被っているのでは、本当の長さが良く判らんな」
「しかもサングラスか」
「店員の証言は得られたのですか?」
「それが、1人は検品作業中、もう1人は裏で作業中で、レジには立ち寄らなか
った彼女を良く見ていないらしい。ただ」
「ただ?」
「店の外には連れが居て、車で来て、去ったのだそうだ」
「車種とか、ナンバープレートとかは」
「店員は駄目だ。周辺住民には、現在聞き込み作業中」
そう言うと手帳を閉じ、氷室は自分の椅子に腰を下ろしました。
「本物の怪盗ジャンヌでしょうか?」
「判らない。だが、事件の第一報よりも前に犯行声明が届けられている。少なく
とも、この事件に関わりがある連中ということだけは間違いあるまい」
氷室が言うと、春田達も一様に肯きました。
●天界・神殿
天界の中心部に位置する、分厚い石造りの建物。
神殿と呼ばれるその建物の主はその中から滅多に出ることはありません。
その気になれば、天界はおろか認識出来る世界のどこへでも、その身を出現さ
せることは可能であるにも関わらずそうなのです。
その代わりに、神殿の主は寂しさを紛らわすために天界の住人を呼び寄せるの
が常となっていましたが、一人、孤独を楽しみたい気分になることもあります。
神殿の主──一般に神と呼ばれる──が、その光景を見ていたのは、そんな周
囲に誰もいない時でした。
今日は一日、背もたれの高い木製の椅子に背中を預け、目の前の空間にある映
像を眺めて過ごしていたのです。
何の媒体も用いず、しかも立体的に遠方の映像を浮かび上がらせることが出来
るのは、その能力の高さを象徴していましたが、そんなことは彼女──見かけ上
──にとって、息をするのと同じく、ごく自然な行為に過ぎません。
映像に映し出されていたのは、かつて彼女を裏切り、この世界からあらゆる物
を持ち去った憎き者が作り出した生き物。
その生き物は、この世界から逃げ出そうとしたモノに手をかけ、その身を何度
も切り刻まれながらも暴走を食い止め、ついに落ち着かせることに成功しました。
そして再びそのモノと共に地上に降り立ち、今は疲れ果て眠っています。
その一部始終を見守っていた彼女は、手を出さずに事態が落ち着いたことを確
認すると、小さく安堵の溜息をつくのでした。
●魔界
魔界に帰還し、魔王への挨拶という儀礼を済ませたフィンは、エリスが去った
後の離宮に戻るよりは王宮に留まることを希望し、魔王もそれを許しました。
その夜、王宮でフィンの帰還を祝うささやかな宴が開かれました。
そこで魔王はフィンにこう耳打ちしたのです。
「フィンに見せたいものがある。明日、外に出かけよう」
「見せたいものとは、何ですか?」
「それは、見てのお楽しみ」
そう悪戯っぽく微笑み、魔王は片目を瞑りました。
その表情から、自分を驚かせる何かを隠していると直感したフィンは、期待と
不安が混ざった表情を一瞬だけ浮かべ、直ぐに微笑を浮かべて言いました」
「それは、私を驚かせる様なものですか?」
「多分ね」
「楽しみにしてますわ」
二人の会話は、何とかと言う種族の族長がお祝いの言葉を述べたいという侍従
長の言葉で遮られてしまい、それきりとなるのでした。
*
その夜は、二人だけの親密な時を過ごしたフィンと魔王。
翌朝、侍従の一人が二人を起こそうとした時、二人は既に身支度をすっかり整
えていましたが、魔王の頬には何故か傷がありました。
そのことに侍従は気づいたものの、もちろんそのことを口外することはありま
せん。
朝食の後、フィンは魔王と共に王宮の外へ出かけました。
とは言え、単純に外へと出かけた訳ではなく、魔王に連れられ空間を跳躍して
行ったという方が正確な表現ではありますが。
魔王に手を引かれ出た場所は、鬱蒼と茂る森の中。
どれ程の距離を跳んだのかと辺りを見回すフィンに、魔王はある一点を指さし
ました。
その方角には王宮の尖塔が見えていたことから、それ程の距離を跳んだという
訳では無いのだと、フィンは理解しました。
そこから歩くこと数分。急に辺りが開けた場所に出ました。
「ここは…」
この辺りは、フィンの記憶ではただ森が連なる場所でした。
それが今では森は切り開かれ、大小様々な魔族達が熱心に働いていました。
ある者は地面を熱心に掘り起こし、またある者は掘った土を盛り上げ、固めて
いました。
何よりフィンの目を引いたのは、巨大な鉄骨や機械を運ぶ力自慢の一つ目の巨
大な魔族達。
「まさか、こんな物を魔界で?」
「もちろん、この世界で造られたものでは無い」
「ではどこで?」
「人間界から、少し拝借したのさ」
「少しって…」
「この世界には、ヒトの協力者が大勢いる。運ぶ術もある。決して難しいことで
は無い」
「……」
力自慢の魔族達が資材を運んで行った先。
その方向からは、魔界では珍しい轟音が響いていました。
人間界では聞き覚えのある音。
ヒトの用いる土木機械が魔界で動き回り、運ばれて来た資材を持ち上げていて、
力は無いが、手先は器用な魔族達がそこかしこで何やら作業をしているのが見え
ました。
「この世界にも、人間界の情報が広まるようになって来てね。こういうものも必
要となった」
森を切り開き、何か大きな建造物を幾つも作っている。一体何のために?
そんなフィンの疑問に答えるように魔王が言うと、ある一点を指さしました。
「これは…王宮?」
魔王が指さした先には、王宮の塔に良く似た建物が建っているのでした。
「うん。見かけだけだがね」
「これが、私に見せたかったものですか?」
「これも見せたかったんだけどね。本当に見せたいものは別にある」
「それは一体?」
「行こう」
そう言うと、魔王はその王宮そっくりの塔へと歩いて行き、フィンは慌てて後
を追いました。
●人間界・桃栗町久ヶ原神社跡地・ミカサ達の本陣
未だ夜も明け切らぬ早朝。
ミカサ達の本陣を守る見張りの兵──天使でした──は、一人の少女が結界を
無視して近づいて来ることに気づきました。
ここの存在は人間には決して気づかれることが無い筈。
つい先程まで欠伸などしていた兵は、慌てて手にしていた長槍を構えます。
が、その姿に見覚えがあることに気づき、緊張を解きました。
「ユキか?」
「はい。ただ今戻りました」
「どうしたの? 顔が青いわよ」
「いえ、大丈夫です」
「龍族とやり合ったという噂は本当?」
「そんな噂が?」
「だから、暫くはお休みだって聞いていたのだけど」
「大したことはありません」
「そう…。無理しないで」
「ありがとう」
そう言い、宿営地となっている洞窟の入り口へとユキは向かって行きました。
その影が何となく薄い様に感じた見張り兵。
ですが、それを確かめる前にユキの姿は洞窟へと消えて行き、見張り兵も任務
へと視線を戻すのでした。
*
その日の朝は、昨日の作戦を踏まえての幹部会が予定されていました。
普段の習慣通り、無駄とは知りつつも定刻の5分前に士官食堂──そう、ヒト
達が呼んでいる場所──の扉を開けたレイ。そして続いて入って来たミナは、部
屋の片隅に居るとは思っていなかった人物が立っているのに驚きます。
「ユキ?」
「大丈夫なの? 顔色が青いわ」」
「はい。一晩横になったらすっかり」
そう言い、微笑んでいるユキ。
部屋は薄暗く、彼女の顔色は良く判らないものの、かなりの無理をしているの
では無いか。その様にレイには思えてなりませんでした。
「まだ、休んでいた方が良いんじゃない?」
ミナも気持ちは同じらしく、レイが言おうとしたことを先に言いました。
「いいえ。従兵たるもの、この程度では」
「ユキ!」
入り口の方から、驚いたようなミカサの声が聞こえました。
「ミカ…大隊長殿。昨日はすいませんでした」
「今日は休んでいて良いとノイン様には」
「勝手に出て来ちゃいました」
「顔が青いぞ、ユキ」
「そう言われるのは、ミカサ様が三人目です」
また、二人きりの時の呼び方が出てしまっていることに気づき、レイは口元に
微笑を浮かべます。
「今日は、仕事は予定されていない。無理をしなくても良い」
「私なら大丈夫。大隊長殿はそれをご存じの筈です」
「それは…」
何故か、レイ達の方を見たミカサ。
その視線を見て、レイは脳裏に何かが浮かんだ気がしました。
が、それが何であるのかを思い出すことはありませんでした。
「おはよう! 隊長殿。それに天使諸君!」
定刻丁度。珍しくも時間通りに現れたのは、ミカサを別にすればヒト達の筆頭
格である第三魔導猟兵中隊長のオットー。
自称、歴戦の勇者ということで、頬についている傷跡は、戦場での傷跡かと思
えばさに非ず。人間だった頃に決闘でつけたものだと言うことです。
「おはようございます」
「お前は…」
オットーの後に入って来た男を見て、レイは驚きの声を上げ、ミカサとミナも
驚きの声を上げます。
「シン殿?」
「はい。お邪魔しております」
フィン旅団の第二大隊長、名はシン。
ヒトの姿をとる「だけ」が取り柄の魔族の男がそこに居るのでした。
*
数分後。幹部全員が揃ったところで、会議が始まりました。
昨日の夜、所用で洞窟を訪れたところオットーに捕まり、飲み明かしたのだと
言うシンは、格に応じてミカサの横に席を与えられていました。
そして従兵のユキは本来であれば後ろで立っているべき所をミカサの配慮で背
後にパイプ椅子を置き、そこに大人しく座っているところを見ると、やはり本当
は疲れているのでしょう。
「それでは、昨日の反省会の内容を私から」
反省会とは言え、ただ飯を食べていただけでは無いか。
そうレイは思いましたが、ミカサは昨日の作戦の経過報告、今後作戦を進める
に当たっての注意点を淀みなく、そして簡潔に話していたのでレイは少し彼の評
価を上げました。
「今後の予定だが、取りあえず今日は休養日ということになっているので…」
「ちょっと宜しいか?」
会議では滅多に提案などしないオットーが手を上げていました。
「何だい?」
「実は今日、実行したい作戦があるのだが」
「作戦?」
「大隊長殿はご存じでしょう。魔王様直々に…」
「ああ、あれか。あれは今日だったのか?」
「やっぱり忘れていましたか」
「何だ、私達は聞いていないぞ」
自分達の知らないところで何か作戦が進められている。
そう感じたレイは、内容を聞く前から口を挟みました。
「今回、地上に降下するに際し魔王様から頼まれていたことがある」
「神の御子に関することか?」
「それとは関係が無い。ちょっとした偵察任務だ」
「偵察?」
「それでだな。我々だけでやっても良いのだが、天使達の力も借りたい」
「我々の力を?」
「と言っても、戦いをする訳では無い。その姿を借りたいのだ」
そう言うと、オットーは傍らに立っていた自分の従兵に向かって肯きました。
するとその従兵──見かけは少年兵でした──は、部屋の後方に置いてあった
機械に灯りを灯しました。
そして反対側にスクリーンを下ろし、部屋の照明を一部を除き落としました。
「まずは、これを見て貰いたい」
オットーが言うと、暗闇の中に巨大な円形の構造物──観覧車──が映し出さ
れました。
「遊園地だね」
「はい」
「人間達の娯楽施設だな」
それが、先日瀬川ツグミからチケットを貰った施設だと気づいていましたが、
敢えてレイはそう言いました。
「その通り」
「それと、魔王様からの依頼と何が関係あるのだ」
「実は、この遊園地についての情報収集を頼まれていましてね」
「そうだったね」
そう言い、肯いたミカサ。
「どういうことだ、ミカサ」
「そうか。レイとミナは知らないのだな」
「実は、魔王様は魔界に遊園地を造ろうとしているんでさ」
「遊園地を?」
「魔界にも新しい娯楽が必要だってね」
「本当なのか?」
「ノイン様が言うには、本気らしい」
「情報収集というと、建造技術か何かを持ち出すということか?」
そうだとすると、案外大儀な作戦なのでは無いか。
そう思いつつ、レイは発言したのですが、オットーの答えはそれを否定するも
のでした。
「そうでは無い。我々が収集するのは、アトラクションの乗り心地、従業員の
サービスといった、見かけだけでは判らないものだ」
「つまりは、実際にその遊園地に行き、遊ぶということか?」
「察しが良いな。その通りだ」
「(これってもしかして…)」
話の成り行きに、ミナが少し頬を弛めてレイの方を見ると、彼女の表情は意外
にも厳しいものでした。
「(この非常時に、魔王様の命令とはいえ遊びに行くとは!)」
そう思い、レイが一言文句を言おうとした時です。
「この非常時に遊ぶだと! 貴様らは何を考えているのだ!」
食堂の空気を震わせて、怒りの声を上げたのはトールン。
その声は、食堂はおろか洞窟の外の見張り番にまで届いていました。
「まぁ、トールン殿。魔王様の命令だから、これも立派なお役目だ」
「ミカサ殿。しかしだな…」
「それに、魔王様が言うにはこれも神の御子との戦いの作戦の一環らしい」
「遊園地で遊ぶことがか?」
「私にも良く判らないけどね。とにかく、そういうことだ。作戦は今日なんだね」
「はい。今日の開園日は招待客しか入れないので、空いているんで」
「我々の力を借りると言っていたな。まさか…」
「そう。遊園地と言えばカップル。そして我々人間族には女性が殆どいない。故
に、天使族から女性を選抜して…」
「巫山戯るな!」
オットーの言葉を最後まで聞かず、レイは立ち上がり机を拳で叩きました。
「つまり、我々にお前達の恋人の代わりをしろということか! そんなのは…」
「ちょっと待って!」
即座に断ろうとしたレイを制したのはミナでした。
ミナはレイの肩に手を置き、心の中に直接囁きかけました。
”落ち着いて、レイ”
”これが落ち着いていられるか!”
”今日が開園日って、多分あの遊園地のことでしょう? ほら、ツグミさんに貰
った…”
”らしいな”
”何だ、気づいてたんじゃない”
”だから、なんだ”
”堂々と遊びに行くチャンス!”
”それは…”
ミナはレイの肩を押し、座らせると言いました。
「その遊園地って、水無月何とかワールドってところですか?」
「おう! 良く知ってるな」
「(やっぱり!)」
先程からある予想を立て、話を聞いていたユキは、椅子の上で小さく飛び上が
りました。
ですが、皆がミナとレイを注視していたので、ユキの変化に気づいた者はあり
ません。
「実は私達、そこのチケットを知り合った人間から貰っているんです。仕事なの
で半分諦めていたのですが、そういうことであれば私達も同行したいと思うので
すが」
「ミナ!」
「それからもう一つ提案があります」
レイを無視して、ミナは話を続けました。
「同行するのは、ヒトの姿をとる術を持っている者であるのは当然として、同行
するのは希望者のみ。カップリングもこちらで選ばせて。それが協力の条件」
「まぁ、そう言うだろうと思った。OKだ。うちの若い者の写真付きリストを出
すから、好きなのを選んでくれ」
最初からこの展開を読んでいたらしく、既に彼の手にはリストがありました。
「勝手に話を進めるな!」
「ああ、私とレイは一緒だから、男は不要よ」
「おい」
「何だ、レイ殿には小官と同行して貰おうと思ったのに」
「誰があんたなんかと!」
「ミカサ隊長も如何ですか? 一日位、羽根を伸ばされては…」
オットーもレイのことを無視して、ミカサに言いました。
「いや、私は…」
「ユキ殿と一緒なら、丁度お似合いだ」
「え!」
急に名前を出され、心の準備が出来ていなかったユキが顔を赤らめると、オッ
トーを始めとしたヒト族の男達がやんやと囃し立てました。
「いや、私は仕事があるからここに残るよ」
きっぱりと、ミカサがそう言ったのでユキが肩を落としたのが、ミナには良く
判りました。
しかし、彼女の表情が急に明るいものとなりました。その変化にミナが戸惑っ
ていると、ユキは立ち上がり、発言の許可を求めました。
「大隊長殿も、遊園地に出かけられるべきだと思います」
ユキが言うと、今度は冷やかしの声を上げたヒト達は、急に静まりかえります。
ユキが普段の微笑みとは別の凄みのある表情を浮かべ、ヒト達を睨み付けてい
たからでした。
「ユキ…」
「あ、失礼。実は今日、神の御子がその遊園地に出現するという情報があります」
表情を元に戻してユキが言うと、ミカサは驚きの表情を浮かべました。
「何だって?」
「神の御子が友人と話していたのをこの耳で直接聞きました。間違いありません」
そう言えば、一緒に行こうと言っていたのはどうなったのだろう?
一瞬、ユキは思い出しましたが、それを深く気にすることはしませんでした。
「ですから、神の御子を間近に偵察する良い機会です。人が多い場所であれば、
敵に悟られる危険も少ないでしょうし」
「そりゃあ良い! だったら、偵察メンバーに隊長とユキ殿もプラス…と」
ミカサの答えを聞く前から、メンバー表を書いているらしき紙に、二人の名を
オットーは書き付けていました。。
「そうだな」
「(やったわ!)」
心の中で快哉を上げるユキ。
しかし、彼女の喜びは長続きはしませんでした。
「そうであれば、提案がある」
「何だい、レイ」
「私はフィン…クイーンより、神の御子を襲撃する許可を得ている。それで本日、
神の御子を襲撃したいのだが」
「おいおい、こっちの作戦を忘れて貰っちゃ」
「判っている。要は、情報を収集してから作戦を決行すれば良いのだな?」
「人が大勢居るぞ」
「それについては、考えがある」
そう言うとレイはオットーに遊園地の図面を出す様に言います。
プロジェクターを通して遊園地の見取り図が投影されると、レイはそれを一瞥
し、自らの構想を述べるのでした。
「(折角ミカサ様と二人で…)」
淡い期待を一瞬で潰されてしまい、落ち込んでしまうユキなのでした。
(つづく)
今度の被害総額は幾らだろう。^^;;
では、また。
--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735