Re: アイコンを選択して機能説明の表示
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Wed, 2 Feb 2005 23:18:17 +0900,
in the message, <4200e12c$0$983$44c9b20d@news2.asahi-net.or.jp>,
"Minoru Nagai" <@m_nagai@d5.dion.ne.jp> wrote
>松下電器産業の訴状を支持する判決を出して、世間をにぎわせています。
「世間」は大してにぎわっちゃいないと思いますが……。
一番にぎわっているのは当の裁判所(文書は主に一太郎で作っていたりす
る。今回の判決文は一太郎を使わずにわざわざWordかなんかで作ったらし
い。)かも知れない。
まあそれはともかく。
# 「訴状を支持」という日本語も意味不明ではある。
支持するのは普通は「主張」。
> ジャストシステムは争点の1つにWindowsの機能であり、間接侵害だ、と
>主張しています。
のっけから間違い。
判決文を読みましたか?
(判決文を読まなくても新聞を読んだだけでも間違いだと判るが……。)
ジャストシステム(以下、JS。)の主張は「間接侵害には当らない」です
(判決文の「争点」を見てみましょう。
ボタンはアイコンか?間接侵害に当るか?無効事由が明白か?という3点
が争点であるとして判決文に書いてあります。)。
まず用語の理解からして誤っているのは確実。
特許法における間接侵害というのは、特許権の直接侵害に該当する「行為」に
加担しまたは幇助することであり、「間接侵害は特許権侵害とみなす」ので間
接侵害であっても「特許権侵害」です。
つまり、間接侵害であるとしても「侵害に変わりはない」です。
そして今回の件は「間接侵害として特許権侵害を認めたもの」に他ならず、
「間接侵害だ」と主張したところで「特許権侵害であるということを否定しな
い」のでぜんぜん意味がありません。
だから、JSは「間接侵害ではない」と言っているわけです。
# 間接侵害だなどと言ったらまんま自白。
と言うかそもそも「争いのない事実であって争点にすらならない」かも知れ
ない。
ちなみに、本件においては「ユーザーが被告製品を購入しPCにインストールし
使用する行為が直接侵害に該当する行為である」と捉えている
(該当と言うよりは相当と言うべきではないかという気はするけど、特許法に
おけるこの辺の用語法は未確認。)。
そして本件で問題となった間接侵害の類型は具体的には、発明品の生産に用い
る物であって、「その発明品による課題の解決に不可欠なもの」を、それが特
許発明の実施に用いられることを知りながら、業として生産・譲渡等する行為
(特許法101条2号)。
で、JSの主張は、大雑把に言えば、問題の機能はマイクロソフト(以下、
MS。)のOS自体が実現する機能であって一太郎(あるいは花子)を導入しなく
ても特許権侵害状態を作り出せるのだから一太郎は特許権侵害に不可欠な要素
ではないから特許権侵害の間接侵害に当らないというもの。
つまり、Windowsの機能であることは「(直接侵害は言うに及ばず)間接侵害
ですらない」という主張の根拠。
ちなみにこれに対する松下の反論は、同様に大雑把に言えば、「問題としてい
る侵害行為は被告会社の製品の導入によって実現する行為であるから被告会社
製品を導入しなければ実現することはありえない。そして、OSの機能であって
もそれを利用するかどうかは被告会社の意思によるのであり、その機能を利用
して現実に侵害行為を行えるようにしているのは被告会社以外にない。よって
被告会社の製品は『不可欠な要素』に当る」というもの。
裁判所の判断もほぼ同旨。
> もし、松下電器産業が勝訴してしまうと、マイクロソフトの言語ソフト
>を使ってこの機能を使ったソフトを作り、販売した人は全て直接侵害になっ
>てしまいます。
法律論として誤り。
直接侵害の意味をきちんと理解しましょう。
直接侵害とは、正当な権原のない第三者が、特許発明を業として実施するこ
と。
ここで、松下の特許権の内容は「件の機能を搭載した製品あるいは件の機能を
内容とする情報処理方法」であって「ソフトウェア製品ではない」です。
そして、「件の機能を搭載した製品あるいは件の機能を内容とする情報処理
方法」に該当するのはあくまでも「件の機能を実現するソフトウェア製品をイ
ンストールしたPC」であって、その機能を実現するソフトウェア製品を製造・
譲渡することは、特許の内容に該当する装置を生み出すことについて加担また
は幇助することであり間接侵害にしかなりません。
さらに言えば、事実の理解としても誤り。
MSの「言語ソフト」(多分開発言語のことだろう。)を使わなくても例えば
ボーランドの言語ソフトで開発してもまったく同じです。
何「で」造ったかではなく、何「を」造ったかが問われているのです。
# ま、言語ソフトではなくてOSの間違いだろうとは思うんだけどね。
> 間接侵害の主張が通ったとした場合、マイクロソフトが主として責任を
>負います。
根拠不明と言うか、趣旨不明
(ちなみにMSについては、自社製品を搭載した製品の製造販売業者に訴訟を提
起しないという契約を結んでいるので訴えられない様子ではあるが、当該契
約が独禁法違反かなんかの疑いで係争中らしい。)。
# まあ結局のところ「直接侵害・間接侵害」の意味が解ってないだけだろう
な。
> また、この特許はマイクロソフト製品に限らないので、国内で作られる
>または使用される全てのOSとその上で動く全てのソフトに影響する、と言
>うとんでもないものなので、特許が成立していること自体が問題です。
??
趣旨不明。
特許権侵害は「特定の会社の製品に限らないので国内で作られるすべての製
品に影響する」に決まっていますが。
基本的な特許ほど応用技術が多いので影響範囲が大きいということになります
が、いずれにしても、その特許権の保護にかかる技術を使ったすべての製品に
影響するのは当り前で、それがとんでもないから問題だというのなら「特許制
度止めよう」ということになります。
JSだって流石にそんな主張はしていません。
特許権の影響範囲の広狭は特許権の成否とは関係がありません。
特許の要件をきちんと理解しましょう。
> 私の認識では、そもそもプログラムとかは特許法第2条1項「この法律で
>「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものを
>いう。」の条文のせいで、通常、自然法則を利用していないため、特許に
>該当せず、著作権法の方で保護される対象のはずなんですが。
誤り。
条文を読みましょう。
プログラムは、明文で特許権の対象です(2条3項1号。)。
もっとも本件は改正前の特許なのでプログラムは対象でなかった時代ですが、
どっちにしてもまったく関係がありません。
そもそも本件の特許権の保護対象は「これこれの機能を有する装置あるいはこ
れこれの機能を内容とする情報処理方法」。
装置と方法が特許の対象なのであり「プログラムではありません」。
したがって、特許権の保護対象にプログラムを含むか否かは本件にはまったく
関係がありません
(判決のどこにもプログラムが特許の対象になるかどうかなんてことを問題
にした記述はない。)。
ちなみに、
その機能を有する装置を実現させるソフトウェア製品の製造・譲渡は当該装置
を直接製造しているわけではないので直接侵害ではない。
しかし、当該ソフトウェア製品の導入により当該装置を作り出すことが発明の
実施に当る。
そして、それを実現可能にする当該ソフトウェア製品の製造・譲渡は発明の実
施を幇助する行為に当り「間接侵害」であるから特許権侵害。
というのが判決の理屈。
> 皆さん、どう思います?
特許法についてもう少し正しく理解した方がいいと思います。
また、当該判例についてもきちんと読んで事実関係および判決理由を正しく理
解した方がいいと思います。
--
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