At Tue, 17 Aug 2004 10:39:11 +0900,
in the message, <cfrnjp$fdp$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>,
"Takachan" <takatsuka@k3.dion.ne.jp> wrote
>結局スト権を有するか有しないかは、そのストライキが争議権の行使による
>もので、刑事上・民事上の責を免れるものかそうでないか、で判断されると
>言えそうです。違法なものはそもそもスト権という権利たり得ない。

それは、法律上の問題の理論的な整理の仕方としては逆です。
法律上の免責は、結果であり原因ではありません。

# ただし、一般論として実際の思考はそのような順番でやることもある。

そもそも法律上「スト権」などという権利はありませんし観念する必要もあ
りません。
ですから、法理論的に考えれば、スト権を有するか否かなどという設問自体が
無意味です。
争議権の行使の態様として「ストライキ(同盟罷業)」という行為があるわけ
で、法律的には、「争議権の有無」「争議権の具体的行使態様としてのストと
いう手段の可否」「(個別の)争議行為の正当性」「争議行為の結果に対する
刑事・民事免責の可否あるいは責任の範囲」だけを問題にすれば十分です
(いや、細かいことを言えば他にもあるだろうけど。)。

そして上記二番目を以て「スト権」と仮に呼ぶのであれば、それは当然に「争
議権の行使」であるし、その争議行為としてのストの正当性は別の問題である
し、正当であるならば「その結果として」民事・刑事上の責任を負わないとな
るのです
(実際問題として二番目を問題にすることはほとんどありません。
 ストライキは争議行為として「ほとんど当然に」認められます。
 と言うか、労組法5条2項8号など条文上も当然の行為として規定しているわ
 けですし。
 「典型」とまで言いいます。)。
民事・刑事上の責任がないから正当なのではありませんしまして民事・刑事上
の責任を負わないから争議行為としてのストが可能となるわけでもありませ
ん。

あくまで、争議権が存在しその行使方法としてストは可能であるという前提の
元で正当性があると認められる範囲内のストであるから当該ストが適法になり
その結果として法律上の免責を受けられるのです。
法律上の責任を負うか否かで正当性が決るわけではありませんし、正当性を逸
脱したストが違法であるというのは、「争議行為としてのスト」ができないこ
とを意味しませんし、まして「争議権がない」ことを意味しません。

ということで、
「争議権の行使としての当該ストライキは正当性を欠き違法であり、刑事・民
 事上の責任を免れない。」
ということが起りうるわけです。
これは、法律上の免責がなくても争議権の行使としてのストライキが「権利の
行使でないことにはならない」ということに他なりません。

# 一般論としても権利の存否と権利行使の態様・正当性・結果に対する法的責
 任は別の問題です。

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SUZUKI Wataru
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